就職ジャーナル | 1日10分の社会勉強サイト

HOME > 業界研究 > 業界トレンドNEWS > 携帯電話キャリア編

掲載日:2012年10月1日

Vol.146 携帯電話キャリア編

スマホ需要が急増も、価格競争は激化の一途。映像・音楽の提供や通信以外の事業展開が重要に

各社はネットワークを提供するだけでなく、付加価値の高いサービスによって高収益を得ようと工夫している。映像や音楽、アプリなどを提供する「コンテンツのリッチ化」、Eコマースとの連携などが注目分野だ。

社団法人電気通信事業者協会(TCA)によれば、2011年8月時点での携帯電話・PHS契約数は1億3142万件。すでに日本人の総人口を上回っており、計算上「1人1台」以上に行き渡っている状態だ。そのため、ここ数年は「契約純増数」(新規契約数から解約数を引いたもの)が伸び悩んでいた。ところが、10年度末における大手3社(NTTドコモ・au・ソフトバンク)の契約純増数は669万件と、久しぶりの大幅増を達成。そして11年度末の契約純増数は777万件と、さらなる成長を果たした。

契約数が伸びた背景には、スマートフォンやタブレット端末の普及が本格化したことや、パソコンをインターネットに接続するデータ通信機器(データ通信カードやモバイルWi-Fiルーターなど)の人気などで、「2台持ち」をする人が増えたことがある。IT市場専門のリサーチ・コンサルティング企業であるMM総研によれば、11年度のスマートフォン出荷台数は対前年度比2.8倍の2417万台。携帯電話端末の総出荷台数(4274万台)の56.6パーセントを占める 。今後も、スマートフォンの比率はさらに高まると予測されている。

スマートフォンなどの普及により、データ通信量は飛躍的に増えている。こうした状況に対応するため、LTE(下記キーワード参照)方式への移行が急ピッチで進行中だ。NTTドコモでは、12年8月時点におけるLTEサービス「Xi(クロッシィ)」の契約者数が541万件と好調。ソフトバンクモバイルとauも、12年9月の「iPhone5」の発売とともにLTEサービスの提供開始を開始した。また、ソフトバンクモバイルが、新たに取得した900MHz帯を使ったサービス「プラチナバンド」を12年7月からスタートしたのは大きな話題。この周波数帯域の電波は、遠くまで届きやすく、障害物を回り込んで伝わるという性質を持つため、同社の電波品質が改善されるのではと期待されている。このように、大容量のデータ送信を可能にしたり、「つながりやすさ」を改善したりするためのインフラ整備は、今後も活発に進められるだろう。

また、既存顧客を囲い込むため、長期契約者向け割引制度や、同キャリア利用者間の割引制度などの料金施策が、引き続き盛んだ。通話・通信料金の価格が値引き合戦に陥りつつあることは、各社の懸念材料。仮に事業がネットワーク分野だけにとどまり、通話・通信の仲立ちをするだけのいわゆる 「土管型ビジネス」になると、高収益を得るのは難しくなるからだ。そこで各社は、映像や音楽といったリッチコンテンツを提供したり、通信以外の事業分野に乗り出したりして、高付加価値の創出に努めている。例えば、auの「うたパス」「ビデオパス」は、定額料金で多彩な音楽や映画・ドラマ・アニメが楽しめる新サービスとして注目を集めているところ。また、NTTドコモは、CD販売チェーン・タワーレコードや、有機・低農薬野菜の販売会社・らでぃっしゅぼーやの子会社化などを通じ、新事業への展開を目指している。

マルチメディア放送の動向も気にとめておきたい。12年4月、NTTドコモが始めた携帯端末向け放送「NOTTV」は、ワンセグ放送の約10倍の高画質や、SNSと連動して視聴者同士がコミュニケーションできる点が売り物。現在のところ、利用料金の高さや対応端末の少なさ、放送エリアの狭さなどが影響して契約者は期待ほど伸びてはいないが、今後の展開には注目が必要だ。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

携帯電話キャリア志望者が知っておきたいキーワード

LTE Long Term Evolutionの略。現在主流となっている携帯端末に比べ、はるかに高速でデータ通信が可能。また、データ送信時の遅延が少ないとされており、映像の配信などに向いている。NTTドコモは、10年12月から各社に先駆けてLTEサービスを手がけている。
M2M Machine-to-Machineの略。ネットワークに接続された機械同士が、自動的にやりとりをすること。例えば、携帯端末に入力した体重・食事・運動などのデータを自動的に分析して健康上のアドバイスを行うなど、さまざまな新サービスが構想されている。
O2O Online to Offlineの略。「OtoO」とも表記する。インターネットとリアルな世界の連携などを指す言葉。携帯端末を通じてリアル店舗の情報を発信したり、GPS機能を活用したマーケティング手法などが広まりつつある。
多彩な割引制度 auは、指定された固定通信サービスの利用者に対してスマートフォンの料金を 割り引く「auスマートバリュー」を提供。NTTドコモも家族同時購入で携帯端末の価格を割り引く「家族セット割」を提供するなど、各社は既存顧客向けの割引制度を拡充している。
プライバシー問題への対応 スマートフォンでは、十分な説明がないままユーザー情報を取得するなど、プライバシー侵害につながりかねないアプリも多い。そこで、総務省が設立したワーキンググループによって、ユーザーが安全にサービスを活用できるような対策が検討・提言されている。

【このニュースだけは要チェック!】

大手キャリアの新サービスに注目

・ソフトバンクモバイルが「プラチナバンド」の運用を開始。同社はNTTドコモ、KDDI(au)とは異なり、通信品質が高い700〜900MHz帯の免許を持っていなかったが、今回900MHz帯を手に入れたことで電波状況を改善できるとアピールしている。(2012年7月25日)

・auが、月額390円で500以上のスマートフォン向けアプリが使い放題になるサービス「auスマートパス」を提供開始。安い料金でアプリを使いたいユーザーの支持を得て順調に会員数を伸ばし、12年8月には会員数200万人突破を果たした。(2012年3月1日)

この業界の指南役
日本総合研究所 副主任研究員 山浦康史氏
日本総合研究所 副主任研究員 山浦康史氏
慶應義塾大学大学院工学系研究科修士課程修了。通信・メディア・テクノロジー分野を中心としたさまざまな業界における経営戦略・計画策定、事業性評価、新規事業展開支援、R&D戦略策定支援などのコンサルティングに従事している。
この記事を共有する

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

  • バックナンバーはこちら
page top