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掲載日:2013年2月4日

Vol.160 百貨店編

市場規模の縮小が下げ止まりの兆しか?衣料品分野での新たな動きに注目しよう

ここ数年、百貨店は「デパ地下」など食料品売り場の充実に取り組んできた。ところが最近では、アパレル分野でてこ入れを図る動きが目立ち始めている。

日本百貨店協会の公表資料によると、2012年における全国百貨店の売上高は6兆1453億円。11年(6兆1526億円)に比べ、0.1パーセントのマイナスとなった。売上高の減少は、これで16年連続。市場規模は、ピーク時の1991年(9兆7130億円)の3分の2ほどに縮小している。ただし、既存店ベースの売上高は0.3パーセント増えており、下げ止まりの兆しが見え始めているのは明るい材料だ。

従来の百貨店において、収益の柱になっていたのは衣料品分野だった。しかし、ファーストリテイリング(ユニクロ)に代表される低価格業態店が勢力を伸ばし、百貨店は押される一方。さらに、景気の動向に左右されやすい高級衣料品が近年の消費不振で落ち込んだことも影響し、売り上げは大きく減少していた。そこで、2008年以降の百貨店業界では、「デパ地下」に力を入れるなどして食料品売り場を改革。高額商品ではなく、中・低価格帯の生鮮品や総菜に力を入れ、来店客数を伸ばしてきた。

ところが、ここに来て衣料品分野でてこ入れを図る動きが活発化している。その筆頭が、三越伊勢丹ホールディングスだ。同社は13年にもSPA(Speciality store retailer of Private label Apparelの略。製品の企画から販売までを一貫して手がける「製造小売業」のこと)を目指すと発表。自社ブランドを展開することで、これまでアパレルブランド側に握られていた価格決定権を百貨店側に取り戻すことが狙いと見られている。ただし、自ら企画・製造した衣料品が売れ残った場合、在庫リスクを自社で負わなければならないのは懸念材料だ。

また、「衣料品バーゲン期間の後ろ倒し」も、各社にとって争点の一つとなっている。12年夏、三越伊勢丹ホールディングスは「夏物のセールを7月1日から始めるのは、商売上おかしい」とし、夏のセール時期を先送りした。他社もこれに追随し、セールは約2週間後の7月13日から本格スタート。商品を正価で売る期間が長くなったことで、利益を得た百貨店・アパレルブランドもあった半面、バーゲン期間が短くなったことで在庫処分の機会が失われ、損失をかぶったところも多かったという。そのため、12年冬セールでは、多くの百貨店がセール期間の後ろ倒しを取りやめた。セールの扱いについては今後も百貨店ごとに方針が分かれるとみられており、成り行きを見守る必要があるだろう。また、百貨店とアパレルブランドの関係性がどのように変化するかという点にも、ぜひ注目しておきたい。

12年は、「東京ソラマチ」(東京都墨田区)、「渋谷ヒカリエ」(東京都渋谷区)など、大型商業施設の開業が相次いだ。競争環境がさらに激化しているため、各社では都心部の大型店を中心に改装計画を進め、店舗の魅力アップに努めている。12年10月に大丸東京店、12年11月には阪急うめだ本店がそれぞれオープン。ほかにも、改装を予定している大型店は多い。また、アジアへの出店に力を入れる百貨店も増加。高島屋のように「日本スタイル」を強く打ち出すことで、現地の富裕層を取り込もうとする動きも表れている(ニュース記事参照)。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

百貨店の売り上げを支えているのは「衣料品」と「食料品」

衣料品 百貨店の総売上高に占める割合……34.7パーセント
食料品 百貨店の総売上高に占める割合……28.3パーセント
雑貨(化粧品、貴金属など) 百貨店の総売上高に占める割合……13.8パーセント
身の回り品 百貨店の総売上高に占める割合……12.3パーセント

※日本百貨店協会「平成24年12月 全国百貨店売上高概況」より抜粋。

【このニュースだけは要チェック!】

「日本式」の海外展開に注目

・高島屋が、中国・上海で新店をオープン。地下に食品売り場、1階に化粧品、最上階にレストランを配置するなど、日本の百貨店と似通った規模・品揃えで展開しているのが特徴。「日本スタイル」が海外でも受け入れられるか、注目を集めている。(2012年12月19日)

・伊勢丹三越ホールディングスは、13年3月期の連結営業利益が従来予想を上回りそうだと発表。採算が改善した背景には、セール期間を短縮したことで正価商品の販売が増えたことがある。今後も、SPAの開始などで利益率改善を目指すとみられる。(2012年9月1日)

この業界の指南役
日本総合研究所 コンサルタント 田中靖記氏
日本総合研究所 コンサルタント 田中靖記氏
大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。専門は、新規事業・マーケティング・海外市場進出戦略策定。鉄道・住宅・エネルギー等、主に社会インフラ関連業界を担当。また、インド・ASEAN市場開拓案件を数多く手がけている。
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取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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