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掲載日:2010年12月20日

Vol.70 CRO編

新薬の開発に不可欠な「臨床試験」で
高度な専門性を発揮し、急成長中の業界

CROは、医療機関で実施される臨床試験を監視したり、集まった症例データを集計、分析するなど、高い専門性を発揮して医薬品メーカーを支援。近年、新薬の開発スピードを高めようとしている医薬品メーカーにとって、不可欠のパートナーとなっている。

CROとは、Contract Research Organizationの略。医薬品メーカーから医薬品などの開発業務の一部を受託する、「受託臨床試験機関(企業)」を指す。欧米では1970年代から始まった業態。日本では、1997年に「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」が改訂され(いわゆる「新GCP」)、法的に認められる存在となった。

日本CRO協会によれば、医薬品の開発は下表のような流れで進められる。このうち、臨床試験と製造販売後調査の段階で医薬品メーカーを支援するのが、CROの役割だ。具体的には、臨床試験が正しい方法で行われているかを保証する「モニタリング」、臨床試験のデータを集計・分析する「データマネジメント」、さまざまな申請書類や報告書を作成する「メディカルライティング」といった業務を手がける。

近年、新薬の臨床試験は、大規模化・複雑化する傾向にある。一方、医薬品業界では世界的な競争が激化しており、ライバルに先んずるため、新薬開発にはいっそうのスピードアップが求められている。そこで、高い専門性を生かして臨床試験を効率的に支援できるCROは、新薬開発に大きな役割を果たすようになっているのだ。

現在の日本にはシミック、イーピーエス、メディサイエンスプラニングといった企業を筆頭に、約30社のCROが存在している。2007年度の市場規模は955億円(日本CRO協会会員企業の売り上げ合計額より)。これに対し、08年度には1025億円(対前年度比7.3%増)、09年度には1130億円(同10.2%増)と、着実に成長中だ。現在、日本の医薬品メーカーは、年間売上高1000億円以上の大型医薬品が相次いで特許切れを迎える「2010年問題」に直面しており、新薬の開発が急務。そこで、CROへの期待も高まっている。また、IT・バイオ技術の進歩により、医薬品メーカーがより多くの新薬を開発できるようになっているのも追い風といえる。

年平均10%程度のペースで急成長を続けてきたCRO業界だが、規模の拡大とともに、成長が鈍化する可能性もある。そこで焦点となっているのが、評価項目などを日本・米国・欧州などで共通化し、世界各地で同時に臨床試験を行う「国際共同治験」への対応。医薬品メーカーは、グローバル市場で新薬を一気に販売する戦略を進めており、国際共同治験への対応力が今後のCROの成長の鍵を握りそうだ。また、経営を効率化するため、臨床結果を分析するためのデータセンター業務などを、中国など人件費の安い地域の企業に委託する動きもある。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

新薬の開発過程を理解しよう ※日本CRO協会資料による

基礎研究 開発開始から2〜3年かかるのが普通。新薬になる可能性のある物質を、新たに作ったり、選別したりする。
非臨床試験 開発開始から3〜5年。主に動物を使い、薬の効果や安全性などを調べる。
臨床試験 開発開始から3〜7年。まずは、少数の健常者を対象にした安全性確認試験を実施。次いで少数の患者で安全性と有効性を確認。最後に、大勢の患者を相手に安全性と有効性を確かめる。
承認審査 厚生労働省により、安全性と有効性の審査を受ける。
製造販売後調査 開発開始から4〜10年。新薬が販売された後も調査を行って、安全性や効果をさらに確認する。

【このニュースだけは要チェック!】

新薬の開発動向に注目

・医薬品大手エーザイが、抗がん剤「エリブリン」の米国における承認を獲得。一方、認知症治療薬「アリセプト」の米国での特許が切れた。医薬品メーカーは大型医薬品の特許切れを迎え、新薬の開発ピッチを急速に速めているところだ。(2010年11月16日)

・イーピーエスが、顧客企業のデータ入力・分析事業に進出すると発表。CRO事業で培ったデータ分析のノウハウを、販売やマーケティングでも生かすのが狙いだ。中国に設立したデータマネジメントセンターを活用し、中国事業を強化する方針。(2010年11月26日)

【この業界とも深いつながりが!】

医薬品メーカーと密接な関わり

この業界の指南役
日本総合研究所 研究員 千葉岳洋氏
日本総合研究所 研究員 千葉岳洋氏
一橋大学社会学部社会問題・政策課程卒業。専門は、国際会計、経営管理・グループ経営改革、グローバルマーケティング、グローバルサプライチェーンマネジメント。製造業を中心として、グローバルを共通テーマに、マーケティング・会計・業務改革などを幅広く手がける。米国公認会計士。
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取材・文/白谷輝英 撮影/平山 諭 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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