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掲載日:2011年7月4日

Vol.92 総合商社編

資源価格の高騰が追い風となり決算は大きく改善。
今後は、環境関連ビジネスが有望視される

将来の収益源として期待されているのが「水ビジネス」。商社は水処理器メーカー、エンジニアリング企業と手を組み、海外での上下水道・海水の淡水化プラントなどを進めている。

リーマン・ショックに端を発した世界的な不況により、いわゆる5大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)の2008・09年度決算は、すべて連続減収だった。ところがその後、急成長を遂げる新興国での資源需要が増えたことで、石油・天然ガス・鉄鉱石・石炭などの価格が高騰。これらの分野で投資を続けてきた総合商社にとって、強い追い風となった。これにより、10年度における5大商社の連結純益は大幅な改善傾向を示している(下表参照)。

商社のビジネスモデルは、原料・加工品の売買を通じて手数料を得る「トレーディング」から、事業会社に投資を行って利益を配当などの形で回収する「事業投資」にシフトしつつある。特に、製造業から小売りまでの企業をグループの傘下に収め、独自のネットワークや物流機能を活用することで企業価値を高める動きは、今後も勢いを増すだろう。ただし、事業投資や資源の分野では、市況の変動による収益の振り幅が大きい。そこで各社とも、リスク資産を考慮した社内指標を設定するなど、リスクマネジメントの徹底に努めている。

現在、各社が最も重視しているのは、資源・エネルギー分野だ。例えば、三菱商事は「中期経営計画2012」の中で、3年間における投資額の半分を資源・エネルギー分野に投じる方針を表明。10年8月にカナダの大手エネルギー会社ペン・ウェスト・エナジー・トラストと、11年1月にはインドネシアの国有石油・ガス会社メドコ・エナジー・インターナショナルと契約を結び、天然ガスの権益確保を果たした。他社も積極的な動きを見せており、目が離せない分野だ。

食品分野の動きにも注意が必要。例えば、三井物産は10年10月に食肉卸のスターゼンと業務提携を行った。これにより、同社傘下の企業とあわせて、食肉事業の生産・加工・製造・物流・販売におけるバリューチェーンが強化された。三菱商事も、10年7月に食品卸の菱食、酒類販売の明治屋、物流企業のフードサービスネットワーク、菓子類卸のサンエスの4子会社を経営統合。今後も、商社主導で食品業界の再編が進むケースは十分に考えられるだろう。また、海外市場での動きも目立つ。11年6月、三菱商事が中国最大の国有食料企業である中糧集団と協力し、中国で食肉事業を展開することで合意。現地でのビジネス拡大はもちろん、日本向け調達力の強化も狙いとみられる。

一方、将来の収益源を模索する試みも進んでいる。一番の有望株は環境分野だ。太陽光発電などのクリーンエネルギーは、脱原発の動きを受けて市場拡大が期待できそう。また、新興国での人口増により、世界的に水資源の不足が問題になっているため、上下水道や工業用水の整備、海水の淡水化プラント、下水の再生や有効利用といった取り組みは需要急増が見込まれている。そして、国家や企業ごとに定められた温室効果ガスの排出枠をトレードする「排出権取引」も有望。例えば丸紅は、日本政府向けに排出権の供給を行うなど実績豊富だ。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

「5大商社」の10年度決算は大幅に改善

三菱商事 【2009年度連結純益】2731億円
【2010年度連結純益】4632億円(+69.6%)
三井物産 【2009年度連結純益】1497億円
【2010年度連結純益】3067億円(+104.9%)
伊藤忠商事 【2009年度連結純益】1282億円
【2010年度連結純益】1610億円(+25.6%)
住友商事 【2009年度連結純益】1552億円
【2010年度連結純益】2027億円(+30.6%)
丸紅 【2009年度連結純益】953億円
【2010年度連結純益】1365億円(+43.2%)

※各社2011年3月期有価証券報告書より

【このニュースだけは要チェック!】

環境ビジネスの動向に気配りを

・伊藤忠商事が、米国子会社であるソーラーネットとソーラーデポの2社を経営統合し、持ち株会社「ソーラーネットホールディングス」を設立。同社によれば、この統合によってアメリカでの太陽光発電システムのシェアは首位に躍り出るという。(2011年2月1日)

・三井物産が、中国での水ビジネスの展開を目指し、大手水事業会社のハイフラックスとの間で合弁契約を締結。都市化が急ピッチで進んでいる江蘇省や河北省などをはじめとする地域で、地方自治体や工業団地などの新規顧客向け事業を拡大する予定。(2010年8月2日)

この業界の指南役
日本総合研究所 研究員 千葉岳洋氏
日本総合研究所 研究員 千葉岳洋氏
一橋大学社会学部社会問題・政策課程卒業。専門は、国際会計、経営管理・グループ経営改革、グローバルマーケティング、グローバルサプライチェーンマネジメント。製造業を中心として、グローバルを共通テーマに、マーケティング・会計・業務改革などを幅広く手がける。米国公認会計士。
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取材・文/白谷輝英 撮影/平山 諭 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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