東京海上日動火災保険株式会社 堀内武文さん【人事部長インタビュー】

急速に加速するグローバル展開

私は東京海上ホールディングスの人事部長も兼任しており、グループ全体の人事戦略も統括していますが、現在の大きなテーマは、加速しているグローバルな事業展開に対して、グローバルな人事体制をどう充実させていくか、ということです。東京海上グループには、国内損害保険事業、生命保険事業、海外保険事業、金融・一般事業と大きく4つの収益の柱がありますが、2010年度の修正利益720億円のうち約34パーセントがすでに海外で得たものになっています。保険事業の中だけで見ても、海外保険事業の修正利益は、すでに国内損害保険事業、生命保険事業とほとんどイーブンの規模にまでなっています。現在、2012年度以降の次期中期経営計画を策定中ですが、海外保険事業はさらに全体の収益に対する割合を引き上げていく計画を作ることになると考えています。

日本国内では中核事業のひとつである国内損害保険事業は、少子高齢化の影響もあって収益環境が厳しい状態が続くことが予想されますが、今以上に、お客さまに価値提供を通じて東京海上グループをご支持いただけるよう一層の努力をしていくつもりです。したがって、今後は国内の損害保険事業を維持拡大しながら、保険引受リスクの地域分散効果による利益水準の安定化および資本効率の向上のために、より一層海外保険事業を伸ばしグローバルベースで安定的に収益を拡大させていきたいと考えています。

東京海上のグローバル展開には、実はかなりの歴史があります。1879年の創業と同時に上海、香港、釜山でビジネスをスタートさせ、翌年にはイギリス、フランス、アメリカでも営業活動を始めています。2000年ごろまでは日本のお客さまの海外進出をサポートする、という海外ビジネスが中心でしたが、2000年以降は、非日系ビジネスへの進出を強化し、現地のお客さまを対象とした事業展開が急速に加速しています。こうした事業では、海外でゼロから事業を立ち上げるのではなく、M&Aによってビジネスを拡充させています。2008年には、イギリス、アメリカで大型買収を行い、これが現在の海外収益の大きな柱になっています。

海外に駐在している社員は現在、約200名。語学研修生、海外留学生を含めると、約220名の社員が海外に出ています。私たちのグローバル人材に対する考え方は、「どこでも活躍できる人材になる」、ということです。英語ができてアメリカやイギリスで活躍ができる、というだけではなく、中東でもアジアでも活躍ができる。そしてもちろん、日本でも活躍ができる。海外で活躍するには、海外の文化を理解しておくことが必要になりますから、早い段階で海外に出て行き、経験を積む。そして国内でも経験を加えて、さらに海外で国内の経験を活かす。こうして、海外、国内で経験を積み上げることで、将来、会社を支えていくコア人材が育っていくと考えています。

「全国型」のみならず「地域型」からも海外赴任者が

グローバル展開の拡大に伴って、国内での仕事も変化を始めています。私たちには勤務地区分により「全国型」「地域型」の2つの職種がありますが、両者の違いは転居を伴う転勤があるかないか、です。役割等級制度を導入しており、等級が同じであれば、地域型も全国型と同等の仕事を担ってもらいます。地域型の活躍が進んだ結果、全国型の仕事も変わり始めています。海外をはじめ、さまざまな業務にチャレンジする機会がますます増えているのです。

また、地域型からも海外赴任者が現れています。JOBリクエスト制度の一環で、地域型が従来の勤務エリアにはない新たな仕事にチャレンジできるよう、一定期間転居を伴う転勤をする「Uターン異動」を実施しています。これに新たに海外ポストが加わり、2010年にはシンガポールに1名、そして2011年はインドの新規生保事業でムンバイに1名がこの制度を活用しUターン異動を実現しています。
シンガポールやインドからは、現地のナショナルスタッフに素早く溶け込み、コミュニケーションをうまく取り活躍している、という評判が伝わってきています。日本で培った能力は、海外の第一線でも間違いなく発揮できるのだと、あらためて感じました。今後は、「全国型」「地域型」にこだわらず、海外に行くチャンスはさらに拡大していくと思います。

これはまだ構想中ですが、私自身はグローバル人材を育成するための新たなキャリアパスを考える必要があると考えています。例えば、今後は特に入社後3年の間に積極的に海外に行くチャンスを提供する。短期の海外研修なども含め、早い段階で海外に触れる機会を作ることにより、異文化を早期に理解してほしいと考えています。このサイクルが回り出すことにより、グローバル人材は確実に増えていくと考えています。入社3年目までに、海外での経験を積める土台を作っていくということです。

これから3年ほどの間に、こうしたグローバル人材育成にかかわるさまざまな制度を充実していきたいと考えています。つまり、グローバル人材育成のための新しい制度のもとで育成されるのが、これから入社される若い皆さんということになります。
私自身、入社の決め手になったのは、魅力的な先輩たちの姿でした。「この会社がいかにいい会社か」「自分はどうもっとよくしたいか」「自分がこの会社の新しい歴史を作るんだ」「存在感と足跡を残したい」…。そんな強い想いを持った先輩たちに次々に会うことができました。今もなお、こうしたカルチャーはしっかり息づいていますし、若い皆さんにはさらにグローバルベースでそういったカルチャーを広げていってほしいと思います。

どんな人生を送りたいのか。どんな日々を過ごしたいのか。大事なことは、自分の価値観や人生の目的と、会社の目指す方向が一致していること。それをお互いにしっかり確かめることが大切だと思います。就職はゴールではなく、そこからがスタートなのですから。

学生の皆さんへ

私たちが求めているのは、相手を理解し、課題を見つけ、自ら行動し、まわりを巻き込んで解決できる能力を持った方。こんなふうに書くと、難しいことのように思えますが、実はこれは、学生時代のいろいろな場で培うことができる能力です。スポーツでもクラブ活動でもアルバイトでも勉強でも。私が大事にしてほしいのは、日々そうした活動をする中で、意識を持つことです。自分は何を感じたか。何を問題として捉えたか。そしてその問題を、自分なりにどう解決しようとしたか。どう人を巻き込んで、自分はどう行動したのか。結果としてどんなものが出せたか…。必ずしも結果は重要ではありません。失敗してもいい。重要なのはどのように向き合ったのか、ということです。学生の皆さんの日々の中に、自分の力を高める環境はあるのです。そしてそれは、自分の内面を見つめられるチャンスでもあります。だからこそ、いろいろなチャレンジにたくさん飛び込んでほしいと思います。実際、学生時代にしかできないこともあります。ぜひ、今を大切にして過ごしてください。

同社の30年の歩み

1879年に、日本最初の損害保険会社として創業。翌1880年にはロンドン、パリ、ニューヨークでの営業を開始。現在、国内拠点125営業部・支店、海外拠点39の国・地域、427都市で事業を展開。ますます巨大化・複雑化する国内外のさまざまなリスクに対峙し、社会・経済の発展を支え続けている。
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1976年

ニューヨークにトウキョウ・マリン・マネジメント(TMM)を設立。
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1990年

ロンドンにトウキョウ・マリン・ヨーロッパ(TME)を設立。

2002年

「超保険」発売開始。持ち株会社「株式会社ミレアホールディングス」を設立。

2004年

東京海上と日動火災が合併し、東京海上日動火災保険株式会社となる。

2005年

「自動車保険トータルアシスト」発売開始。日本の損害保険会社として初めての中国現地損害保険会社へ出資。

2006年

外国資本による元受会社への直接出資としては初めてのマレーシアにおける元受タカフル事業免許取得。

2008年

英国ロイズ「キルン社」、米国損害保険グループ「フィラデルフィア・コンソリデイティッド社」買収。持ち株会社の商号を「東京海上ホールディングス株式会社」に変更。

2010年

火災保険「トータルアシスト住まいの保険」、生損保一体型保険「トータルアシスト超保険」の発売開始。

取材・文/上阪徹 撮影/平山諭 デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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