「オヤカク」って?就活を心配する親や家族の干渉を、どう乗り越えればいい?

就活中、学生が親や家族からアドバイスを受けたり、「本当にちゃんと就職できるのか」と心配されたりすることがあります。初めはありがたく聞いていても、就活が本格化し、心にゆとりがなくなる中で、いろんな情報を聞かされると、うっとうしく感じてしまうこともあるのではないでしょうか?

また近年は、内定先企業が親や家族に連絡し、入社の確認をとる「オヤカク」という言葉も、よく耳にするようになりました。就活での親や家族の存在感は増しつつあります。

そのような中で、就活生はどのように親や家族と向き合い、自分が志望する業界や企業への就活を進めていけばよいのでしょうか。今回、子どもの就活を心配する親や家族の心情とその背景、就活を進めるポイントなどをテーマに、リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザー・中嶌稚恵さんと、就職みらい研究所所長・増本全さんに対談をしていただきました。親・家族に相談する就活生

プロフィール中嶌稚恵(なかじま・ちえ)さんリクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザー。2007年、株式会社リクルートに新卒入社。アルバイト情報の営業から、リクナビの企画職、大学渉外などを経て、企業向けリクルーティングアドバイザーを経験。2017年からはキャリアアドバイザーとして、年間350名以上の学生をサポートする。3児の母。

 

増本 全(ますもと・ぜん)さん就職みらい研究所 所長。2004年、株式会社リクルートに新卒入社。以来、一貫して人材採用に関する営業・企画・スタッフ職に従事し、主に新卒市場にかかわる業務を担当。2014年4月より、リクナビ副編集長として、大学生・大学職員向けにこれまで300回を超える講演・セミナーなどのキャリア支援を行う。2018年4月より就職みらい研究所 主任研究員に着任し、同年10月より現職。

「オヤカク」とは?入社直前に親や家族に反対されてしまうことはある?

増本 キャリアアドバイザーとして、就活生から親や家族への対応について相談を受けることはありますか?

中嶌 そうですね。実際に「家族から内定先についていろいろ質問され、どうしたらいいのかわからない」「内定承諾のタイミングで家族に話したら、入社を反対された」というお話を聞いたことがあります。

また、時々就活準備期の学生から聞くのは「家族から『早く就活を始めた方がいい』と言われた」という声です。私がキャリアアドバイザーとなった2017年と比べ、親や家族への対応に関する相談は増えつつあるように思います。

増本 実際に家族の反対で入社を取りやめた学生もいるんですか?

中嶌 過去に相談に来た就活生で、本人が強く志望していた企業から内定をもらったものの、家族に報告したら反対されてしまい、結局説得することができずに、内定を辞退したケースがありました。こうしたケースもあるため、リクナビ就職エージェントに相談に来た学生には、内定が出たタイミングで就活の状況を家族に初めて伝えるのではなく、早めに意思確認をしておくようアドバイスしています。

増本 本人が進みたい業界や職種、企業について親や家族が過干渉してしまうケースというのは、以前からありましたよね。ですが、私の実感としては2008年のリーマン・ショックで雇用不安が起きたころから目立ってきたように思います。

そのころから、子どもと一緒に説明会に参加したり、企業パンフレットをもらいに来たりする親や家族の姿をちらほら見るようになりました。雇用不安の中で、子どもの進路に対する不安が高まってきたのでしょう。それ以降、大学や自治体から保護者向けの講演を依頼されるケースが増えてきていました。

その後、景気が回復して売り手市場になりましたが、企業が内定者の保護者にフォローをするスタンスはいまだに残っています。

中嶌  企業が内定を出した学生の親や家族に連絡を入れて入社の確認をとる、いわゆる「オヤカク」などがありますね。

増本 「オヤカク」は、どちらかというと人材を確保したい企業の都合があるように思います。家族への理解や不安を払拭してもらいながら承諾につなげることで、学生が内定辞退するのを防ぎたいというのが事情でしょう。

一方で、就活において保護者の存在が無視できなくなってきたのは、企業だけではありません。学校も同様です。学費を払っているのは多くの場合が保護者ですし、入学させるかどうかを判断するのに就職率も重要です。そういった背景から保護者向けに就活セミナーなどを行う学校も増え、参加する人数も増加傾向の印象です。就活への親や家族の関与は、さらに強まってきたのだと思います。

とはいえ、企業や学校が親や家族の存在を意識しすぎている風潮もあると、個人的には思います。以前からあった親や家族の干渉が顕在化してきているということは言えるでしょう。

親や家族が就活を心配する理由とその背景を理解しておこう

増本 2020年3月卒業予定の全国の大学生・大学院生を対象に行ったリクルートキャリアの調査で、就職活動における保護者とのかかわりで「嫌だったこと」を学生に尋ねています。6割超の学生が「特になかった」と答える一方で、4割弱の学生が「あった」としています(グラフ1)。「嫌だったこと」の具体的な内容はグラフ2です。(※1)

グラフ1:保護者とのかかわりの中でつらかったこと、やめてほしいと思ったこと

(大学生全体/就職志望者/保護者とのかかわりの中でつらかったことやめてほしいと思ったことの回答内容をまとめ)(N=1162)

グラフ(1)保護者とのかかわりの中でつらかったこと、やめてほしいと思ったこと

 

グラフ2:保護者とのかかわりの中でつらかったこと、やめてほしいと思ったこと(あった・計の内訳)

(大学生全体/就職志望者/大学院生除く/複数回答)

グラフ(2)保護者とのかかわりの中でつらかったこと、やめてほしいと思ったこと(あった・計の内訳)

中嶌 半分以上の学生は、家族の関与を嫌がっていないんですね。悩んでいる学生からお話を聞くことが多いので意外でした。

相談を受けた学生さんが家族からよく言われるのは、「有名企業じゃない」「福利厚生や残業は大丈夫?」「この業界は不安定なのでは?」といった意見ですね。

確かな情報がない中、先入観から不安を口にしている場合が多い気がします。もしくは、「自分が勤めていて大変だから、同じ業界に進んでほしくない」と反対されることもあるようです。私も子どもがいますので、そういった親心もよくわかります。

増本 どちらかといえば、旧来のイメージを元に、就職先や働き方を勧めている親や家族が多いように思います。多くの企業や業界でグローバル化やIT化などが進み、親世代が就活していた当時には存在していなかったような職種や業種も登場したことで、多様で柔軟な働き方や選択肢がある時代ですからね。こうした変化を親世代が把握していなかったりするんです。

中嶌 おっしゃる通りです。親世代が就活していたころとは、時代背景も労働環境もかなり違いますね。

増本 親世代が学生だった1988年ごろの大学進学率は25.1%で、2018年度は53.3%。大学進学率は4人に1人から2人に1人と増えています(※2)。さらにいえば、2000年ごろを境に共働き世帯が専業主婦世帯を上回るようになり、今や共働きが当たり前の時代です(※3)。

これだけ社会が変化しているのですから、就職の傾向も働く価値観も違うのは当たり前。こうしたギャップが家族との意見の食い違いの背景になっているのです。

中嶌 それに加えて、新型コロナウイルスの影響で大学の授業がオンラインになり、対面で就活の相談や情報交換をする機会も減っているようです。家庭の事情にもよるでしょうが、身近にいる家族と一緒にいる時間が増えていることで就活に関する会話も増え、そういったギャップを感じる機会が増えているのかもしれませんね。

親や家族とコミュニケーションを取りながら、就活する方法とは?

中嶌 身近な存在である家族に必要以上に干渉されたり、将来について反対されたりすると、不安になりますし、聞き入れたくないと思うこともあるかもしれません。ですが、就活準備の段階からコミュニケーションをとっておくことは、自分が志望する業界や企業への就活を進めるポイントの1つだと思います。

自分を心配している家族の気持ちを理解して、業界研究や企業研究のタイミングから自分の志望先について会話をすること。また、自己分析など進めた上で「自分はこういった仕事観を持っているから、将来はこういう仕事をしていきたい」など、伝えることを意識しておくと、就活準備もはかどると思うのです。

増本 就活では、自分の思いや価値観を「言語化する力」が非常に重要になります。幼いころからのさまざまな経験や変化を傍で見ている家族だからこそわかる、学生本人の持ち味があるかと思います。自分の思いを聞いてもらいながら言語化していく相手としても最適でしょう。

中嶌 確かに、就活では欠かせないプロセスである自己分析も、初めは難しく感じることも多いと思います。協力してもらえるだけでも、心強いですね。

増本 そうですね。それでも家族から過干渉された、反対を受けたと感じた場合は捉え方を変えてみましょう。2つのポイントを押さえておくと、コミュニケーションしやすくなるのではと思います。

1つは、家族からの支援を引き出すようなコミュニケーションを心がけること。そのためには自分をさらけ出すことで、家族から最適な支援を引き出すことができると思います。「自分は今こんなことで困っている」としっかりと言語化し、悩んでいる自分を見せることも大切なのです。

2つめは、家族という先入観をはずし、“社会人の先輩”の一人と見立ててみること。自分の仕事観を知るために、できるだけ多くの社会人から、会社で働く大変さややりがいを聞くことは有効です。身近な社会人モデルとして参考になるかもしれませんし、親や家族が仕事に対してどんな価値観を持っているのかもわかることで、コミュニケーションのポイントもつかめます。

中嶌 「どうしても自分だけの力では、説得できない」という場合は、内定先企業に相談して、親や家族が納得するような情報を提供してもらう方法もあります。実際、リクナビ就職エージェントで内定した企業であれば、親や家族の反対理由をヒアリングし、どのように解決できるかを内定先企業と相談するなどの対応をしています。

増本 内定先企業に相談するなど、多面的なアドバイスを求めることは有効ですね。学校のキャリアセンターなど、就活に関する情報を持っているところに相談するのもいいと思います。

身近な人が心配してくれるポイントがあるときは、自分にとってもつぶしておいた方がよいはずです。不安要素を聞いた上で、払拭する材料を集め、きちんと説得できれば、より納得感をもって就活を進められると思います。その上で、最後は自分で決断すればいい。入社するのは自分なのですから。

家族と会話し「言語化する力」を鍛え、納得感のある就活を。最後は自分の意思を尊重しよう

中嶌 一方で、親や家族が身近な存在であるがゆえに「口出しされると面倒だから」「今は自分のことでいっぱいだし、後で話せばいいか」と就活について話題に上げることを避けてしまう学生の気持ちもわかります。ですが、あえて自分から考えを話しにいくことで、「言語化する力」を鍛えながら就活を効率よく進めることができると思います。また、親や家族に「自分はどう考え、何を大事にして頑張っているのか」がきちんと伝われば、「あれほど頑張って内定をもらった会社なら」と理解し、応援してくれるでしょう。

増本 就活準備の段階では、社会のことも仕事のこともまだわからないし、自分がどう在りたいのかもつかめていない不安な状況です。そんなとき、一番身近にいて応援してくれる社会人は、親や家族でしょう。だからこそ、協力を得ながら進めることが、納得した就職活動にしていく第一歩だと思います。

就職は人生の選択ですから、最後は自分自身が納得感を持って意思決定をすることが大切です。たとえ反対された会社に入社したとしても、その会社でイキイキと仕事をしている姿を見せれば、親や家族は安心するでしょうし、それが何よりの親孝行になるのではと思います。

(※1)就職プロセス調査(就職みらい研究所)2020年卒:2019年12月1日時点
調査対象:2020年卒業予定の大学生および大学院生6,371人(内訳:大学生5,247人/大学院生1,124人)
調査期間:2019年12月1日~12月9日
集計対象:大学生1,290人/大学院生445人
(※2)文部科学省 年次統計 学校基本調査(2019年12月25日)
(※3)厚生労働省「厚生労働白書」、内閣府「男女共同参画白書」、総務省「労働力調査特別調査」(2001年以前)及び総務省「労働力調査(詳細集計)」(2002年以降)

取材・文/笠井貞子


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