周りの友人がインターンシップに積極的に参加している中、「やりたいことが見つからないから、インターンシップ先を選べない」と悶々(もんもん)とする方もいるのでは。インターンシップってやっぱり参加した方がいいの?ではどうやって選べばいいの?そんな疑問に、人事として新卒採用を20年担当し現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんが答えます。

インターンシップに参加するメリットとは
夏休みや冬休みなど長期休暇を利用して参加することが多いインターンシップ。2019卒採用のアンケート調査では、学生のインターンシップの参加率は55.9パーセントと、就活生の過半数がインターンシップを経験していると言えます(就職みらい研究所『就職白書2019』より)。
インターンシップは、業界動向や具体的な仕事内容などについて直接話を聞けるほか、そこで働く社員の方の雰囲気、カルチャーに触れられる貴重な機会。曽和さんも、「インターンシップには参加した方がいい」と話します。
「各企業の事業内容、業務内容、企業理念など、ある程度の情報はWeb上で集められます。でも、そこで説明されているものは、現実の一部を切り取って編集された情報。実際に企業に足を運び、そこで働いている方と接しなければ感じられないもの、わからないことがたくさんあります。ぜひ、企業カルチャーの異なる複数社に参加し、その違いに触れてみてはいかがでしょうか。
インターンシップとひと言で言ってもその内容はさまざま。企業側がプログラムを用意しているものもありますが、実際に実務経験を積める長期インターンシップの方がよりリアルに“働く”面白さ、大変さを知ることができるでしょう」
「やりたいことが見つからない」人は発想の転換を
行った方がいいと言われても、特にやりたいことが見えてこない。そんな方は、インターンシップ先をどう選べばいいのでしょう。
曽和さんは、「やりたいことを見つけなくちゃ、という発想にとらわれずもっと自由になっていい」と話します。
「やりたいことがないと悩む学生は多くいますが、その多くが“仕事上で個別具体的に扱うもの”にとらわれています。『何か特定の商品やサービスに興味関心がなければ、業界を選べない』『何に対しても強く関心がないので、仕事に適していないのではないか』という発想に陥り、動けなくなっているのです。
でも、それは違います。私自身、人材、不動産、生命保険とまったく異なる業界でキャリアを積んできたからわかりますが、何を扱おうと、仕事の本質は、“お客さま問題を解決し、理想を実現させる”ことにあります。何が何でもこの商材が好きだ!という強い思いがなくても、仕事の進め方や周りとの協業の仕方など、“働き方”に関する好き嫌いから選べばいいのです。
例えば、スピード感のある仕事か、ゆっくり着実に進める仕事か。チームでやる仕事か、個人プレーか。競争が激しい社風か、ゆったり成長を見守る社風か。専門知識の蓄積が必要な仕事か、目先の変化への対応力が必要な仕事か。個別具体的なものにこだわる業界視点から離れてみると、企業選びの軸はたくさん見えてくるでしょう」
仕事の進め方や企業文化の軸にいったん広げたところで、ぶつかるのは「では、自分に合った会社をどう選ぶのか」という問題です。商品やサービスはホームページに書いてありますが、どんな雰囲気で働いているのかという情報は、自分で空気に触れて感じなければわかりません。
だからこそ、「やりたいことが見つからない、という人にとってインターンシップは重要な情報収集の機会」だと曽和さんは言います。
「『やりたいことがない』のは、逆に言えば選択肢がそれだけ広いということ。業界や組織規模にとらわれず幅広くインターンシップに参加することで、『ここで働く人たちの雰囲気がいいな』『この仕事のスピード感は自分に合いそうだな』など、好き嫌いを明確にしていくといいのではないでしょうか」
「やりたいことが見つからない」人向け、インターンシップ先の選び方
では、インターンシップ先を選ぶ際、どんなふうに絞り込むといいのでしょうか。
「選択肢を狭めないよう、あえてバラバラな数社を選んでみては」というのが、曽和さんからのアドバイスです。
ポイント(1)企業特性を、計画的に分散させる
「ランダムに選ぶのではなく、計画的に分散させた4~5に足を運んでみるのはどうでしょう。
一つオススメなのが、自分だけのポートフォリオを作ってみること。例えば、仕事がBtoB(法人向けのビジネス)かBtoC(個人・消費者向けのビジネス)か 、組織規模が大きいか小さいか(大企業か中小・ベンチャーか)。それぞれの縦軸、横軸を設け、各分類に当てはまる企業を選んでいきます。異なる事業モデル、組織体制、風土の企業にインターンシップに行くことで、自分は何が好きか嫌いかを整理して考えることができます」
ポイント(2)参加させてくれる企業に行く
「インターンシップに必ず参加させてくれる企業にエントリーする」のも、ポイントだと言います。
「インターンシップはあくまでも情報収集の機会。経験することが大事です。最近は、インターンシップにも選考があるところも多く、エントリーシートや面接準備を本選考さながらに進めたのに落ちる…といったケースが少なくありません。就活スタートの前段階で、早くも出ばなをくじかれ、挫折してしまう。本選考のための情報を集めたいだけなのに、心が折れてしまうのはもったいないし、大きな機会損失です。
本当に行きたい企業へは選考で挑めばいいのです。インターンシップでは、積極的に経験させてくれる企業を選んではどうでしょう。実際の業務を経験したいという方は、ベンチャー企業の方が、学生にいろいろな経験をさせてくれる傾向があります。就活ナビサイトで情報が開示されていなくても、企業ホームページから直接問い合わせる形でも、対応してくれるところはたくさんあります。リアルな情報を得られるせっかくの機会を、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか」
文/田中瑠子
撮影/刑部友康
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