面接で「学生と社会人の違い」を聞かれたとき、「なんのために聞くのだろうか」「社会人になったこともないのに、どう答えればいいの?」など、疑問や不安を抱いている学生もいるでしょう。
しかし、社会人経験のない学生に対し、「学生と社会人の違い」を質問することには、きちんと意味があるのです。今回は、面接担当者が「学生と社会人の違い」を聞く意図と、答え方のポイントをリクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーに聞きました。回答例文も紹介するので、自分なりの考えと照らし合わせて参考にしてみましょう。
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目次
面接で「学生と社会人の違い」について質問する理由・意図
面接担当者が「学生と社会人の違い」について聞くのは、基本的には「その学生ならではの価値観や強みを理解したい」と考えているからです。
今は学生でも、これから社会人になる立場であるため、「どれだけ社会に対しての理解を深めているのか」「自分の立場や立ち位置を自覚しているのか」などを知り、思考の深さや客観的な分析能力、物事を見つめる視点などを推し量っています。
「学生の回答内容が正しいかどうか」は面接担当者にとって重要でなく、評価の対象にすることはまずありません。
それよりも、「社会における立場の違い」「学生である自分の立場・立ち位置」「社会人として対外的に求められること」などについて、これまで経験してきたことをベースに、どのように捉えているのかを見ているのです。
回答の中から見える「その学生ならではの考え方や価値観」「それらを基に発揮できそうな強み」を、採用の判断材料にしたいという意図があります。
学生とはここが違う!社会人に求められること
ここでは「学生と社会人の違い」を紹介します。自分のこれまでの経験も踏まえながら「学生と社会人にどのような違いがあるのか」を考えてみましょう。
立場の違い
学生は、大学に学費を支払い、教育サービスを受けているため、「サービスを受けるお客さまの立場」にあると言えます。
一方、社会人は、勤務先の会社から給与をもらっているため、その対価として会社の業績に貢献することが求められます。つまり、「サービスをお客さまに提供する立場」にあるのです。
サービスを受けて当たり前の学生とは違い、サービスを提供する側の社会人には、相手の求めていることを知り自ら創意工夫して価値を提供することが求められます。
責任を果たすことの違い
社会人が仕事に取り組む際には、自分のやりたいことだけでなく、求められる責任を果たすことが必要です。
学生の場合でも、高校・専門学校・大学において進級・卒業するためには、試験で一定以上の成績を上げたり、課題に対するレポートの提出をしたりすることが必要ですが、そこに取り組むかどうかは本人の意思に任されています。
つまり、学生の場合は「やりたくない」と感じたら、本人が何かを失うリスクはあっても無理に取り組まなくても許される環境のため、「やりたいこと」をベースに過ごすことができると言えるのです。
しかし、社会人の場合は、本人の「やりたい・やりたくない」には関係なく、与えられた責任を果たすことが必要です。
例えば営業職なら課された数字目標を達成することが求められますし、ITエンジニアなら自分の興味がある技術・知識だけでなく、仕事に必要な分野について学ぶことが必要になるでしょう。
時間の使い方の違い
学生の場合、授業の時間以外は、自分の好きなことに費やすことができます。しかし、一般的な社会人の働き方では、一日のうち8時間は仕事に費やすことになります。
仕事の時間が多くを占めるため、自分の好きなことに費やす時間や、休養・休息する時間など、時間の使い方をよりシビアに考えることが必要になります。
評価基準の違い
学生は試験の点数や取得した単位数など、明確に評価される道筋がありますが、社会人の場合は、職業や職種、そして企業によってもさまざまな評価基準が存在します。
その評価基準は実績などの数字で表れるものから、スキルなどの能力、勤務態度・コミュニケーション力などの情意といった数字に表れないものまで多岐にわたっています。
よって学生よりも成果の及ぼす影響範囲を考えていくことが必要となるでしょう。社会人は仕事における目標を課されますが、それを達成するためには、自分で方法を考え、試行錯誤していくことが必要です。
決断力を求められる違い
社会人になると、自分で決断することが求められる場面が増えていきます。親や先生など、周囲の大人に決断を委ねることができた学生時代とは違い、社会人の場合は、仕事についてもプライベートについても、多くの場面で自ら判断し、どうするのかを決めることが必要になります。
目的の違い
学生の本分である学業の目的は、「学ぶことで知識・経験を得ること」と言えますが、社会人の本業である仕事の目的は、「働いて成果を上げ、お金を得ること」だけにとどまらず、自分の経験・スキルを磨くことや、社会に貢献することなど、自分なりにさまざまな目的を持つことが重要になります。
お金の使い方の違い
社会人は自分でお金を稼ぐため、学生と比べて自由に使える金額も大きく違います。しかし、その一方で税金や生活費なども自分で支払うことが必要なため、好きなようにお金を使えるわけではなく、自分で使い道を管理することが求められます。
人間関係の違い
学生時代には、同級生や先輩・後輩、友人など、年齢や価値観の近い人と過ごすことがほとんどですが、社会人になると、仕事を介して世代も価値観も違う人と協力して仕事を進める場面が多くあります。
また、同じ職場の中だけでなく、取引先や協力会社、顧客などとの付き合いもあり、立場の違う相手と付き合う必要もあるでしょう。
社会人は、「苦手な相手とは一切付き合わない」という選択はできないため、苦手なタイプの人と関係性を築く力も求められます。
社会常識の違い
学生時代は、自由な服装や髪形で過ごすことができ、正しい敬語が使えなくても大きな問題になることはないでしょう。
しかし、社会人になった場合は、業界や企業文化などに合わせ、ビジネスシーンにふさわしい服装や身だしなみで働くことが求められるケースが多くなります。
また、ふさわしい敬語を使うことや、来客応対や電話、メールなどにおいてビジネスマナーを身につけることも求められます。
社会人について学ぶには
ここまで一般的な「学生と社会人の違い」について見てきましたが、より現実的な、例えば自分が関心のある業界で働く社会人について学びたい、という人もいるでしょう。
そのような場合は、家庭や学校、アルバイト先やインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムで体験した職場など、これまでかかわってきた社会的なコミュニティーで経験したことを振り返る方法があります。
最も身近な社会人としては保護者や学校の先生などが挙げられますが、そうした人々が「自分にしてくれたこと」について考えてみるのもよいでしょう。
また、アルバイトやボランティア活動などで出会った社会人の先輩たちが「どのような対応をし、どのような責任を担っていたのか。自分との違いは何か」を考え、より客観的な視点で自分を捉えてみることもできます。
たとえ自分自身がバイトリーダーなどの責任あるポジションや塾講師などの教える立場を経験していたとしても、社会人と学生では対応する範囲や責任の重さなどが違うはずです。
また、家族やバイト先などの身近な社会人や、OB・OG訪問などで出会った先輩などに、「学生と社会人にどのような違いがあるのか」を率直に聞いてみることもおすすめです。
こうしてより深く社会人について学ぶことで、学生との違いについて自分なりの分析ができる、自分らしさを決定づける価値観が鮮明になってくる、などのメリットも得られます。
面接での質問「学生と社会人の違い」の答え方【ポイントと注意点】
ここでは、「学生と社会人の違い」について面接で聞かれた際に、評価につながる答え方のポイントを紹介します。
ポイント1 「責任の違い」を大前提とし、客観的に捉える
大前提として、「社会人になったら、良いことも悪いことも、すべて自分の責任である」ということを念頭に置くのが大事です。その上で、「現在、学生である自分と何がどう違うのか」を考え、客観的に自分の立場を捉えてみましょう。
ポイント2 「違い」についての理由を掘り下げる
ただ単に「ここが違うと思った」という点だけを伝えても説得力がありません。違いについて掘り下げて考え、「なぜ違うと考えたのか」という理由を明確に回答できるようにしましょう。自分の考えや価値観を言語化し、自分なりの根拠を持って伝えることが重要です。
ポイント3 理由を裏付けるエピソードまで回答する
説得力を持って自分の考えを伝えるためには、その根拠となる理由に加え、裏付けとなるエピソードまで回答することがポイントです。
面接担当者がイメージできるような具体的な場面と共に、「このような経験をしたことで、こう感じ、こう考えた」という思考の流れを伝えましょう。それにより、「なるほど。その経験をしたことで、そのような価値観が芽生えたのか」という納得度を高めることができます。
また、アルバイトなどの経験がなく、身近な社会人から話を聞いて考えをまとめた場合には、「誰からその話を聞き、どう感じ、どう思ったのか」という流れをしっかりと伝えるとよいでしょう。
評価につながらない回答と注意点を紹介
評価につながらない回答と、その理由や注意したいことを紹介します。
「違いはない」と回答する
学生と社会人にはさまざまな違いがあるものなので、しっかりと掘り下げて考えてみれば、必ず自分なりの視点が見つかるはずです。
答えが見つからないまま「違いはない」と回答した場合、「社会や自分自身について客観的に捉えることができていない」と判断されてしまうでしょう。
また、「考えた結果、違いはないと思った」という場合には、そこについても自分なりの理由や根拠、エピソードなどを語ることが大事です。
「違い」のみで、回答に理由がない
例えば、「責任感の違いだと思います。社会人になると責任の重い仕事が多くなると思うからです」とだけ回答した場合、自分の考えに対し、「なぜそう思ったのか」という理由まで伝えることができません。自己分析や自己理解が足りないと判断されてしまうでしょう。
例文を拾ったような一般論のみを回答する
「学生の勉強には責任を求められませんが、社会人の仕事では責任を求められる点が違いだと思います。なぜなら、お金をもらうためには、仕事の責任を果たすことが必要だからです」など、例文をそのまま拾ったような一般論のみを回答しても、「自分らしさ」を伝えることはできません。
一つの視点として参考にすることには問題ありませんが、自分としてどう考えたのか、なぜそう思ったのかをしっかり伝えることが大事です。
回答内容が質問とズレている
「学生は時間を自由に使えますが、社会人は自由になるお金があると思います」などの回答は、違いについての論点がズレている上に、違いに対する自分の考えや価値観を答えることができていません。
質問の意図を理解する力があるのかどうかを判断できず、「論理的に考えることができない」などの評価につながるでしょう。
「学生と社会人の違い」についての回答例文
最後に、「学生と社会人の違い」について質問された際の回答例文を紹介します。回答をそのままなぞるのではなく、自分なりの考えを回答する際の参考にしてみましょう。
「責任感の強さ」の違いを伝える例文
社会人に求められることは責任感の強さだと思います。
飲食店のアルバイトでリーダーを務めていた時、お客さまからクレームを受けたことがあり、自分では判断できないと考えて店長に対応してもらいました。その際、店長はお客さまのご要望を軽視することなく、細かく丁寧に聞き、真っすぐに向き合い、できること・できないことを説明していました。店長の姿から、お客さまや従業員・お店のブランドなどに対し、すべてを背負って判断し、対応していく責任感の強さを感じました。
この経験から、社会人になると責任の重い仕事に誠実に向き合う力が求められると感じました。
「決断力」の違いを伝える例文
学生と社会人の違いは、決断力の重要性だと考えています。学生の場合、大きな決断を求められる機会はほぼなく、猶予が与えられていると感じます。
社会人4年目となる姉に、仕事について大事だと思うことを聞いたところ、「大きな仕事を任せてもらった時、自分1人では対応しきれず、周囲に迷惑をかけてしまったことがある。自分の力を過信せず、もっと早く周囲に協力を仰ぐ決断をすべきだったと思う。それ以来、自分1人で対応できるかどうかを見極め、無理ならば迅速に協力を仰ぐ決断をするようになった」という話をしてくれました。
学生の自分は、「できるところまで頑張りたい」と考えてしまいますが、仕事の場合は、それが周囲に大きな影響を与えてしまうのだと感じました。社会人には、自分の気持ちを優先するより、全体のために必要なことを決断する力が求められると思います。
「立場」の違いを伝える例文
学生と社会人の違いは「立場の違い」だと思います。学生はお金を払ってサービスを受ける立場ですが、社会人はお金をもらってサービスを提供する立場のため、仕事に取り組む姿勢そのものも違うと感じています。
私はレストランで調理補助のアルバイトをしていますが、初日に社会人の先輩からグラスを丁寧に洗うように指導を受けました。「お客さまに非日常の空気感を楽しんでいただくためには、一つひとつに手を抜いてはいけない。サービスで最も重要なのは、小さなことの積み重ねであり、お客さまが支払うコストに見合うだけの価値を提供することが大切だと思っている」という話をしてくださいました。プロとしての姿勢に憧れを抱き、私自身も一つひとつの仕事を大事にするようになりました。
社会人になったら、先輩のようにプロとしてサービスを提供していけるようになりたいと思います。
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取材・文/上野真理子