ベトナムのハノイにある日系オフィスに勤務。現地では、ローカルフードの食べ比べや、テニス、写真撮影、旅行を楽しんでいる。
ビー玉で床の傾きをチェック
こんにちは。回遊魚です。今回は、ハノイでの私の暮らしについてお話しします。
ハノイでの住まいは、現地のフリーペーパーにある広告やインターネット、知人の紹介で探しました。外国人がセキュリティー面で安心して住める場所で、生活が便利な場所となると、ベトナムではまだ限られているので、その中で20軒くらいを見て回りました。赴任当初まだ日本にいた家族とは、部屋の写真をメールで送って見てもらったり、スカイプでビデオを見せながら相談したりしていました。
「外国人が安心して住める」「無駄に広くても管理が大変なので、自分の目が届きやすい広さ」「英語が通じやすい」「タクシーが拾いやすい」「場所がわかりやすい」「買物や食事に便利」「家賃が職場の補助の限度内」「豪華過ぎない」「アパート内にジムとテニスコートがある」という条件で探したところ、家具・家電・キッチン付きで、毎日の掃除やベッドメーキング、タオル交換ありのいわゆる“サービスアパート”が見つかりました。街なかにあるランドマーク的なビルのため、常時タクシーが待機しており、外出先から帰ってくるときにもタクシードライバーにビルの細かな説明が不要な点で便利です。管理がしっかりしていて、夜もガードマンが巡回しており、セキュリティは一流ホテル並み。フロント、ドアマン、管理事務所スタッフたちのフレンドリーな対応にも満足しています。
ビルの中にスーパーマーケットをはじめとして、レストラン、カフェ、美容院、雑貨店、旅行代理店などがあるので、雨の日などにも便利。最終的な決め手となったのは、きちんとしたテニスコートがあることでした。夫婦共にテニスが趣味なので、気軽にテニスを楽しめることが最優先だったのです。普段がタクシーでの移動ばかりで、運動不足になりがちなため、汗をかける場所としてジムも必須でした。
ただし、見学しただけではわからなかったことが、住み始めて初めて見つかるようなことがあります。「夜に道が暗くて不安になる」「時間帯によって騒音が出る」「雨が降ると道路が冠水しやすい」「虫がよく出る」「屋外からの悪臭」などの周辺環境に始まり、部屋の設備でも、「バスのお湯の出方や排水具合」「トイレの水漏れ」「窓の閉まり具合」「キッチンの排気」など、できるだけ、事前に確認しておき、必要ならば直してもらうことも必要です。バスタブが傾いているとシャワーの水が床にあふれてしまうので、住まいを探していたころの私は、ビー玉を持ち歩いて、床やバスタブの傾きチェックに使っていました。ベトナム人は霊の存在を信じているので、古くから住む人は「あそこはお化けが出る」といった話もしてくれます。気になる人は聞いておくとよいようです。
ハノイでは、小さなお子さんがいる家族は湖沿いの静かで子どもが遊べる環境のあるところ、単身赴任や子どもが一緒でない家族は市中の便利なところと、大雑把に住み分けができています。日本の不動産業者や、日本語で案内をしてくれる地元業者もあるので、住まい探しにはあまり苦労しませんでした。
隣国カンボジア・ラオスの魅力も味わえる
ここでは、旅行も手軽な額でできます。ベトナム国内で訪れたのは、北部の山岳民族で知られるサパ、ベトナムの世界遺産で最も有名なハロン湾、抗仏戦争の決戦場となったディエンビエンフー、中部地方の世界遺産フエとホイアン、南部ではベトナム最大の都市であるホーチミン、ビーチリゾートとして売り出し中のフーコック、メコンデルタの生活に触れるカントーなどなど。サパへの旅は寝台列車を利用しましたが、「寝台列車の旅」そのものに興奮しました。ハノイから車で片道3時間強のハロン湾には、日帰りで出かけられますが、船での宿泊も可能です。ほかの街には、ハノイから飛行機で行きましたが、2年くらい前から格安航空会社が出てきたので、安く旅行することもできるようになり、ベトナム人の旅行客も増えています。ホテルはバックパッカーが利用するゲストハウスから高級リゾートホテルまで選択肢が多く、インターネットで簡単に手配できるので、気軽に出かけられます。
そして今、計画しているのがバスでのベトナム縦断。『深夜特急』で有名な沢木耕太郎による『一号線を北上せよ』という紀行があり、ホーチミンからハノイまで国道1号線をバスで旅行した話が載っているのですが、この逆ルートを試したいと思っているのです。
ただひとつベトナムで不便なのが、外国人は飛行機に乗るにも、ホテルに泊まるにも、必ずパスポートが必要になるということ。国内旅行だからと持たずに出かけると、空港でチェックインできないし、ホテルにも泊めてもらえません。予約票があってもダメです。
ベトナムから非常に近いカンボジアやラオスにもよく訪れています。カンボジアでは、首都プノンペン、世界遺産として有名なアンコールワットに何度も行きました。ビーチ開発が進んでいる南部のシハヌークビルもまだのんびりしていて、美しい風景が残っていました。ハノイからプノンペンへは、最近始まった直行便で2時間、片道150ドル(約1万4000円・2013年2月現在)、アンコールワットのあるシェムリアップは同じく直行便1時間半程度で片道200ドル(同約1万9000円)くらいです。50ドル(同約4700円)でも快適なホテルが見つかります。1日2ドルで自転車がレンタルできるので、自分の足で動きまわるのがお勧め。プノンペンやシェムリアップなどでは、インフラ整備が急速に進んでおり、購買力の高い“中間層”も増えているため、市内の車の通行量も急増していて、交通渋滞が激しくなってきています。
ラオスでは、首都のビエンチャン、世界遺産のルアンパバン(旧王朝の首都)と同じく世界遺産のワットプーに行きました。ハノイからビエンチャンは飛行機で1時間、100ドル(同約9300円)くらい、ルアンパバンも1時間で120ドル(同約1万1000円)程度です。ラオスの魅力としてよく言われるのが、「何もないところ」であること。そのことからもわかる通り、開発された大都市はなく、昔ながらの自然な生活が残っています。ラオスの国名は、英語だと「Lao Peoples’ Democratic Republic (Lao PDR)」となるのですが、「PDR は 『Please Do not Rush(慌てないで)』の略だ」とも言われるくらい皆さんのんびりしたいい人ばかりで、「癒やしのラオス」と称されるほど。食べ物もタイ料理と似ていて、日本人が抵抗なく楽しめる味です。ラオスでは、いつかメコン川をボートで旅行したいと思っています。
ラオスやカンボジアはベトナムから陸続きなので、「国境を自分で越える」という日本では絶対に味わえない体験もできます。時間さえあれば、国際バスを使ってお金をかけずに国境越えの旅をする方が楽しいでしょう。安全に対する注意は必要ですが、非日常の新鮮な経験ができるはず。私もいつかベトナム、カンボジア、ラオスをのんびり巡る旅をしたいと思っています。ベトナムに住んでいるからこそ、同時にカンボジアやラオスの活気や風情を味わうことができているんですね。
次回は、英語の勉強法についてお話しします。
ベトナム北部にあるサパ。ベトナムには50以上の少数民族がおり、サパでは綺麗(きれい)な模様の衣装を着たいろいろな山岳民族に出会える。
ベトナムの紙幣に印刷されているのは、ハロン湾に浮かぶ島。実物をバックに撮影した。
経済発展が著しいカンボジアの首都プノンペン。内戦終結から20年、外国資本による開発が進み、龍をかたどった奇抜なデザインの高層ビルも建設中。
ラオスの首都ビエンチャン。仏教への信心が篤く、あちこちにお寺がある。僧侶の托鉢(たくはつ)はもちろんのこと、オレンジ色の服を着た僧侶にも日常的に出会える。
まだ古い景観が残っているビエンチャン中心部。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』にあるような日本の昭和の佇(たたず)まいが味わえるためか、訪れる日本人の多くが「癒やし」を感じているよう。
構成・文/日笠由紀