富士ソフト株式会社 中村誠治さん【人事部長インタビュー】

システムの受託開発で培った技術で自社製品の開発に注力し、さらなる成長を目指す

私たち富士ソフトは、1970年の設立以来、さまざまな業態のお客さまのパートナーとして、流通、金融、医療などの「業務系ソリューション」や、自動車制御、デジタル家電、社会インフラなど「組み込み系・制御系ソフトウェア」と呼ばれる、製品に組み込まれるソフトウェア、例えば、携帯電話の予測変換機能などの開発などを行ってきました。これまで取引させていただいたお客さまは約4000社に上ります。

IT業界を取り巻く近年の状況を見るに、東京オリンピックが開かれる2020年ごろまでは、さまざまな業種・業態でIT投資が活発に行われることが見込まれます。そこで、当社も、コアビジネスである受託ビジネス、すなわち、お客さまからの受託開発に注力していきます。特に伸びが期待できるのは、自動車制御分野や、通信制御をはじめとした社会インフラ分野、ECサイト構築をはじめとしたインターネットビジネス分野。これらの分野を中心に、各分野で確実にお客さまの期待に応えつつ、新たな案件を積極的に開拓するべく、開発体制を強化しています。また、ITを活用した近代的な都市を当社の技術で創れないか?という声も社内で出ていますので、新しいビジネスの芽がこれからたくさん、出てくるのではないかと期待しています。

一方で、受託ビジネス、ソリューションサービスとともに当社の事業の柱とするべく推進しているのが、「プロダクト化」、自社製品の開発です。これまで以上に、より多くのお客さまに新しい価値をお返しできる製品やサービスを開発することにより、システム開発で培ってきた当社の技術を有効活用し、事業の拡大を狙います。

プロダクト化を推進する上で鍵を握るのは、すでに販売を開始している3つの製品。コミュニケーションロボット『PALRO(パルロ)』、スマートドキュメントサービス『moreNOTE(モアノート)』、総合教育ソリューション『みらいスクールステーション』です。

『PALRO』は、会話が得意なロボットです。また、人の顔と名前を100人以上覚え、歩き、インターネットに接続してニュースや天気予報などを伝えることもできます。現在、高齢者福祉施設を中心に導入されており、『PALRO』と一緒に歌やダンス、クイズなどを行うことで、介護予防に対して効果があると期待されています。将来的には、一家に一台、ロボットのいる生活、そんな未来を目指して研究開発を進めています。『moreNOTE』は、文書や動画、画像などをサーバーで一元管理し、タブレット端末やスマートフォンなどから簡単かつ安全に閲覧・共有できるサービスです。そして、『みらいスクールステーション』は、教室のテレビやプロジェクターとタブレット端末とをつなぎ、校内放送や動画・音楽などの教材コンテンツ、地震・津波情報などの配信などを行ったり、反転授業に対応したホームスタディ機能を持ったサービスです。

いずれも、販売を始めてまだ3〜5年。改良を加えながら、さらにマーケットを開拓していきます。そして、将来的には徐々に自社製品の売り上げ比率を上げ、収益基盤を盤石なものにしていくことが理想です。

なお、この「受託ビジネス基盤の強化」と「プロダクト化の推進」に「プライム化の推進」「グローバル化の推進」「グループ力の強化」を合わせた5つを、当社の長期成長戦略の柱としています。

新しい事業の芽を見つける視野の広さと、企画力・営業力が求められている

当社は技術力の高さや、プロジェクトごとにメンバーが一丸となって確実に開発をやりきることによって、お客さまから信頼を得て成長してきました。社員の育成においては、一人ひとりが専門性を高め、何かしら自信を持てる分野や技術を持って開発に取り組めるよう、OJT(On-the-Job Training:オンザジョブトレーニング。実際の仕事を通じて行う人材育成)を行っています。

具体的には、新卒入社の社員の場合、入社後2カ月間は全体研修としてビジネスマナーや情報処理、プログラミング言語の基礎を学びますが、その後は、配属先の事業部ですぐにプロジェクトに加わりながら、担当を任せられます。

年齢や年次に捉われず、とにかく「信じて任せる」というのが、当社の文化。たとえ失敗しても、上司や先輩がリカバリーする体制で、まずは自分でプログラムを組んでみることを重視しています。わからないなりに調べ、教わりながら開発要件を定義し、プログラムを組み、テストするという一連の開発工程を経験し、半年ないし1年後に「あれってこういうことだったんだ」と気づく。その繰り返しによって、必要な知識や技術が身につき、技術者として独り立ちできると考えています。

また、担当以外の分野・技術に興味を持ったときに方向転換しやすい環境があるのも、幅広い分野・技術を扱っている当社の強みです。基本的には、配属された事業部で経験を積み、技術を身につけていきますが、得意・不得意や興味の方向性の変化による異動希望や、開発工程の一部分だけに特化して携わりたいといった希望を出す機会が年に2回あります。

このように社員一人ひとりが得意な分野・技術を持つことは大前提として、今後、事業戦略を実現していく上で課題となるのは、企画力や営業力を伸ばしていくことです。刻々と市場が変化するIT業界の中で、いかにお客さまの潜在的なご状況やご要望を先回りし、ご期待を頂けるかが、非常に重要です。また、自社製品の売上比率を上げるためには、新しい事業の芽を見つけることも必須。社員たちは今、さらなる「富士ソフトブランド向上」のため、これらの力を日々磨いています。

企画力や営業力を発揮するための基盤になるのは、視野の広さです。自分の担当範囲にのみに没頭していては、仕事を取ってくることも、新しい事業の芽を見つけることもできません。また、システムが巨大化・複雑化している中、自分の担当範囲が全体に及ぼす影響を理解して開発に取り組むことができる社員が、的確な設計や、高品質の開発を実現しています。人事部としても、周りの社員の担当分野に興味を持ったり、国内のみならず海外の業界動向にも目を向けたりするような視野の広さを社員が持てるよう、研修を行っていくことを考えています。

システムやソフトウェアの開発の面白さは、ものによっては製品として直接目にすることができる点にあると思います。例えば、組み込み系・制御系ソフトウェアや、自社製品の開発であれば、携わった製品を世の中で目にすることができる。これは、大きなモチベーションになります。私は長年、携帯電話関連の開発に携わっていたのですが、自分が開発した仕組みが組み込まれた製品が発売されれば、思わずうれしくて買っていました。

また、業務システムなど、自分が直接目にすることができない仕組みの開発であっても、納品後しばらくしてお客さまから「不具合がまったくなかった」「品質がいい」などの言葉をもらうと、やはり、うれしくなります。もちろん、自分の担当する部分のプログラムを組み、製品を完成させた瞬間の喜びはひとしおです。

このような、モノづくりにやりがいを感じつつ、プログラムの開発以外にも興味を持てる広い視野を持った社員が活躍する。それが、当社のこれからの姿だと考えています。

学生の皆さんへ

皆さんには、ぜひ、学生のうちに何度か経験するであろう、「壁や問題にぶつかる経験」を大切にしてほしいと思います。どんな業界や職種でも、仕事をしていると必ず壁にぶつかったり、つまずいたりします。そのときに、「困った時・悩んだ時、自分はどうやって乗り越えてきたか?」「こんなとき、〇〇したら気持ちが切り替えられたぞ!」と思える経験があると、実はすごく助けられたり役に立ったりするものです。

経験の大小は問いません。大事なのは、自分が「壁にぶつかったけど、対処できた」と思えたこと。どんな小さな壁でも、「こうすれば回避できる」「こんな工夫をすれば解決・改善できる」と実感したことがあれば、社会人になって壁にぶつかったときに、その経験を生かすことができるでしょう。

また、リフレッシュ方法については、友達と話す、体を動かすなど、自分に合った方法で構いませんが、社会人になっても継続できるものをぜひ見つけてほしいと思います。

そしてもう一つ。学生生活を悔いなく、楽しんでください。社会人になると自由に使える時間が極端に少なくなります。学生のときのように、何カ月も自由に過ごしたりはできません。なので、今のうちにやりたいことを思い切りやっておいてほしいですね。

同社30年の歩み

1970年に富士ソフトウェアとして設立。以来、モバイル・自動車・家電などに関連する組み込み系ソフトウェアの開発や、金融・製造・流通・文教分野などにおける業務系システムの構築を行っている。近年では、「クラウド×ロボット×モバイル」をキーワードに、独立系の強み/高い技術力/豊富な経験を生かした“お客さまに最適なサービス”を提供。また「ワークスタイル変革」として、ビジネスにおけるコミュニケーションをITの力で変革し、タブレットやスマートフォンを活用して、いつでもどこでも仕事ができる環境づくりを提案し、顧客企業のより良いワークライフバランスの実現に取り組んでいる。

1986年
コンピュータで毛筆文字が出せる毛筆ソフト『毛筆わーぷろ』発売。
1987年
日本証券業協会東京地区協会に株式を店頭登録。
1990年
第1回全日本ロボット相撲大会開催。
1992年
東京証券取引所市場第二部に株式上場。
1993年
『筆ぐるめVer.1.0』を発売。
1995年
富士ソフトウエア株式会社から富士ソフト株式会社に社名変更。
1996年
株式会社ABCと合併し、富士ソフトABC株式会社に社名変更。
1998年
東京証券取引所市場第一部に株式上場。
2004年
本社ビル落成(神奈川県横浜市)。
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2006年
富士ソフトABC株式会社から富士ソフト株式会社に社名変更。
2007年
秋葉原ビル落成。
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2010年
台北オフィス開設(現:台北支店)。
2010年
コミュニケーションロボット『PALRO』アカデミックシリーズ販売開始。
2012年
コミュニケーションロボット『PALRO』高齢者介護福祉施設向けモデル販売開始。
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2012年
ソウル支店開設。
2012年
スマートドキュメントサービス『moreNOTE』販売開始。
2014年
2月、再生医療事業を行う富士ソフト・ティッシュエンジニアリング株式会社を設立。4月、中国山東省に富士軟件科技(山東)有限公司を設立。
2014年
第1回世界大会「INTERNATIONAL ROBOT SUMO TOURNAMENT 2014」開催。ph_hrmanager_vol63_04

取材・文/浅田夕香 撮影/刑部友康

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