農学部の就職動向は?就職先の業界、職種や就活のポイントを紹介【事例あり】

農学部の学生は、どのような業界・職種に就職しているのでしょう?農学部の就職動向や就活のポイントなどについて、リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーにうかがいました。先輩の就活事例も紹介しています。

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農学部の就活、傾向や評価のポイントは?

農学部の学生には、自身の専門性を生かした就職を目指すケースが多く見られます。就活においては、農学部出身ならではの知識や経験を強みとして自己PRなどでアピールすることが可能で、企業の評価へとつなげる工夫はしやすいと言えるでしょう。

まずは農学部の学生の就職動向から見てみましょう。

専攻を生かせる職種が限定され、進路確定が遅れがちな傾向

株式会社リクルートの研究機関・就職みらい研究所が発表した「【2025年卒】理系の学科系統別活動状況」(※1)内の、「就職志望者のうち、6月12日時点に進路が確定している割合」を見ると、生物・農学・水産系の学生の割合は59.2%でした。大学生全体が71.8%であるのに比べると、やや低い数値となっています。

※1 【2025年卒】理系の学科系統別活動状況(株式会社リクルート・就職みらい研究所)

実際、農学部の学生に接していると、ほかの専攻の学生に比べると内定獲得ペースも比較的ゆっくりで、就活を終えるタイミングも一拍遅いという印象です。

主な理由としては、「自身の専攻を生かせる仕事に就きたい」と考える学生が大半を占める点が挙げられます。例えば種苗会社や農薬メーカー、肥料メーカー、林業などの専門職を目指す学生は非常に多いものの、いずれの領域も新卒採用枠が少なかったり、採用そのものを行っていなかったりする企業が多いのが特徴です。

少ない新卒採用枠に、多くの応募が集中してしまうため、倍率が跳ね上がってしまい、なかなか内定が得られず就活自体が滞ってしまう人も見受けられます。

もちろん、高い倍率の中、希望通りの就職をかなえる人もいます。そのような人が研究室の先輩にいた場合、「自分もきっとうまくいく」と信じ込み、専攻以外の職種には目を向けず視野が狭まってしまう人もいます。

農学部ならではの継続力、忍耐力が評価されるケースは多い

一方で、農学部の学生ならではの知識や経験、強みが評価されるケースは少なくありません。

専攻にもよりますが、植物など生態系に日々向き合う農学部では、毎日決まった時間に水をやったり生育状況をチェックしたりと、地道にコツコツ取り組まねばならない作業が多いのが特徴です。成果が出なければ、その理由をじっくり探り、何度もトライアンドエラーを繰り返すことも求められます。

このような経験から、「継続力がある」「忍耐力やストレス耐性が高い」ということを自分の強みとしてアピールし、評価につなげる学生が多いです。裏打ちするエピソードがしっかりしていれば、企業の評価につなげやすくなります。

また、理系全般に共通する強みとして、「ゴールに向かってプロセスをつくり込む力」が挙げられます。

理系の学生の多くは、想定されるゴールに向けてどのような方法で研究を進めればいいのか、そのプロセスを考え設計し、振り返ってブラッシュアップするという作業を繰り返し行っています。「課題に向き合い、課題解決のためのプロセスをつくり込む力があれば、自社の課題解決にも力を発揮してくれそうだ」と評価する企業も多いようです。

ただ、前述のように、農学部での学びがダイレクトに生かせる求人は決して多いとは言えません。専攻にこだわり過ぎず、自身の強みを言語化した上で視野を広げて就活に臨むことが大切です。

農学部の就職先業界例

農学部出身の学生は、主に次のような業界に進んでいる人が多いようです。代表的な例をご紹介しましょう。

農林水産業界

勉強してきたことを生かしやすいことから、農業、林業、水産業を志す人は多いようです。特に林業は企業数が比較的多いことから、根強い人気があります。ただ、新卒採用を行っている企業自体が少なく、狭き門でもあります。

農林水産省や国土交通省などの公務員を目指す人も少なからずいます。

化学業界

農薬や肥料を手がける化学メーカーも、農学部出身者に人気です。特に農芸化学系出身者は知識を生かしやすいことから、化学業界を目指す人が多いようです。

食品業界

農学部では食物に関することを学ぶ機会が多いことから、食品業界の志望者が多い傾向にあります。

知識を基に、新しい食品の研究開発に携わりたいと考える人が多いようですが、募集人数は多いとは言えず、倍率も高くなりがちです。

製薬・化粧品業界

バイオ系の研究を手がけてきた人は、製薬や化粧品業界に注目するケースが多いようです。研究職が人気ですが、ほかの業界同様に採用数が少なく狭き門と言えるでしょう。

建設・土木業界

農業工学や農業土木学を学んだ人の場合、建設・土木業界に進むケースも少なくありません。
土木系の建設会社や、建設コンサルティング会社などで、農地整備や公園の増設、環境保全などにかかわっている農学部出身者もいます。

IT業界

農学部に限らず、理系学部は研究を通してパソコンなどの電子端末で情報処理を行う機会が多いため、視野を広げてIT業界に注目する人もいます。

専攻を生かせる業界だけでは倍率が高く不安という学生が、新卒採用実施企業が多く採用数も多いIT業界に目を向けるケースが多いようです。

農学部の就職先職種例

農学部出身の学生が就いている職種の代表的な例を紹介します。

研究職

最も人気が高く、応募が集中するのが研究職です。これまでの経験やスキル、知識が生かせることから、専攻に関係する業界・企業の基礎研究や応用研究に携わりたいと考える人は非常に多いです。

ただ、各企業とも採用数は数名程度であり、非常に狭き門となっています。

生産技術職

「食品や薬品、肥料などの各種生産ラインの設計やメンテナンスを行う」「生産の効率アップを目指し、生産工程をブラッシュアップしていく」ポジションです。

品質と安全性を担保しながら、滞りなく生産を行うための仕組みを作るのが主な役割です。
農学部での経験や、理系専攻での経験を通じたプロセス作りの経験を生かせる職種として志す人が多いようです。

品質管理職

製造する製品の品質や安全性を管理する品質管理職も、農学部出身者が多い職種です。

社内の関係者や顧客との関わりも多く、相手が求める基準を満たす責任の大きさをやりがいに感じ、志望するケースが多いようです。

営業職

専攻に関する知識が生かせる製品やサービスを扱う会社で、あえて営業職に就く人も増えています。自社の製品・サービスの魅力を、説得力を持って語れるのが農学部出身者の強み。
豊富な専門知識を生かして、より高度な情報を提供する「技術営業職」として活躍するケースもあります。

農学部の就活のポイント

農学部の学生がスムーズに就活を進めるためのポイントを紹介します。

学業を通して培った専門性を企業ごとにアピール

農学部の学生は、専攻を生かして就職したいと考える人が大半です。勉強を通して身につけた経験やスキル、専門性を洗い出し、その中から応募企業ごとに「特に生かせると思うスキル」を抽出してアピールしましょう。

自身のスキルや専門性を、応募企業が求めているスキルや専門性と接続させることがポイントです。

理系ならではのスキルや強みのアピールも有効

前述したようなゴールに向かってプロセスをつくり込む力や、PDCA(※2)を回す力、目標達成意欲の高さ、論理的思考力など、理系ならではのスキル、強みもアピールポイントになります。

エピソードを交えつつ具体的にアピールすることで、企業からの注目度を高められる可能性があります。

※2 PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字を取ったもので、これらを繰り返すことによって継続的に改善していく手法のことを指す。

専攻が生かせる仕事以外にも視野を広げてみる

専門性を生かせる職種だけでなく、それ以外の業界や企業、職種にも視野を広げましょう。
繰り返しになりますが、農学部での経験や知識、専門性をストレートに生かせる職種はそう多くはなく、応募が集中するため倍率も高い傾向にあります。

自己分析で自身の強みや持ち味を洗い出し、それを軸に専攻以外で第2志望群、第3志望群を作っておくといいでしょう。

「就職でかなえたいと思っていること」に立ち返り、ほかの業界や職種でも実現できないかどうか考えてみるのも有効です。

「この業界・会社で何がやりたいのか」を明確にしておこう

面接では、かなりの確率で「農業を学ぶだけでなく、仕事にしたい理由は何か」を聞かれます。卒業後も農業に携わりたい理由を、自分の中で明確にしておきましょう。

「実家が農業をしているから」「ずっと勉強してきたから」という回答では企業の納得は得られにくいと思います。仕事で何を実現したいのか、自分の知識や専門性をどう生かしたいのか、具体的に語れるようにしましょう。

納得のいく就職先を選んだ「農学部の先輩」の事例紹介

リクナビ就職エージェント経由で就職した農学部の先輩の中から、希望通りの就職先に入社した人、紆余(うよ)曲折の上納得して新たな道を選んだ人の事例をそれぞれご紹介します。

専門性を生かし、農薬メーカーの営業職に内定

大学で農作物に害を及ぼす虫や病気の研究をしてきたAさん。実際に田畑で農作物を育て、被害を分析してきた経験を持っていました。

志望企業群は、これまでの知識や専門性が生かせる農薬メーカー。当初は研究職を検討していましたが、自己分析で「自分の強みは周りに情報を波及させる力だ」と気づいたことから途中で営業職に切り替え、就職活動を継続。農作物の生産に携わった経験から、どういう場面で生産者が苦労するか実感できたため、「生産者目線に立って、営業として自社の製品の魅力を波及させたい」との思いを伝え、見事内定を得ることができました。

自己分析を経てIT業界に視野を広げ、SE職に内定

大学で樹木の研究にいそしんでいたBさん。卒業後は林業にかかわりたいと思っていましたが、応募できる企業自体が少なく、どのように応募先を広げればいいのか悩んでいました。

あらためて学んできた内容を振り返ってみたところ、樹木の管理や適正な植林の算出などをコンピュータを駆使しながら行っており、システムで課題を解決することに面白さを感じていたと気づいたとのこと。そこから「システムの力で業務を効率化する仕事」に視野を広げ、IT業界のSE職にも応募。成長中のIT企業から内定を獲得しました。

農学部の就職をスムーズに進めるには、就職エージェントを活用するのも有効

農学部をはじめとする理系の学生は、学業と就活の両立に不安を抱く人が少なくありません。研究などが忙しく、就活がうまく進められないのではと悩む人も多いようです。

専任のアドバイザーがマンツーマンで就活をサポートする就職エージェントを活用すれば、忙しい農学部の学生でも就活を計画的に進められるでしょう。

リクナビ就職エージェントでは、理系の専攻ごとに特化したアドバイザーが付き、就活全般をフォロー。農学部ならではの知識や専門性が生かせる業界や職種はもちろん、自身の強みや持ち味が生かせる別の選択肢も提示しているので、無理なく視野を広げることもできるでしょう。

農学部の先輩の就職事例も多数保有しているので、さまざまな視点からの就活アドバイスが可能です。農学部の就職に不安を抱いている方は、ぜひリクナビ就職エージェントの活用を検討してみてください。


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プロフィール 八下田 護(やげた・まもる)リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザー。新卒で入社した旅行代理店では、ハネムーンや退職旅行など、“人生の節目でのサポート”にやりがいを感じ、さらに多くの人々が直面する就職の場面でのサポートができればと、株式会社リクルートへ中途入社。現在は大学生・大学職員に向けたキャリア支援を行っている。

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