生物系学科の学生は、どのような業界・職種に就職しているのでしょう?生物系学科の就職動向や就活のポイントなどについて、リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーにうかがいました。先輩の就活事例も紹介しています。
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目次
生物系学科の就職は厳しいって本当?傾向や評価のポイントは?
「生物系学科の就職は厳しい」との声があるようです。限られた募集枠の中で「自分の専門性を生かした就職」にこだわる学生の志向が、その一因になっているのかもしれません。専門性へのこだわり自体は良いことですが、中には、視野を広げて就活に臨み、新たな選択肢を見つけた就活生も多くいます。
まずは生物系学科の学生の就職動向を見てみましょう。
専攻を生かせる職種が限定され、進路確定が遅れがちな傾向
株式会社リクルートの研究機関・就職みらい研究所が発表した「【2025年卒】理系の学科系統別活動状況」(※1)内の、「就職志望者のうち、6月12日時点に進路が確定している割合」を見ると、生物・農学・水産系の学生の割合は59.2%でした。大学生全体が71.8%であるのに比べると、やや低い数値となっています。
※1 【2025年卒】理系の学科系統別活動状況(株式会社リクルート・就職みらい研究所)
考えられる理由としては、理系全般に言える傾向ではありますが「自身の専攻を生かせる仕事に就きたい」と考える学生が非常に多い点が挙げられます。
一方で、生物系の専門性が生かせる求人は少なく、専攻にこだわる人は就活が難航してしまうケースが少なくありません。
その事実を知って危機感を持った一部の学生は早くから行動を開始していて、希望する業界や職種の内定を複数獲得する例もあります。
ただ、多くの学生はそこまでの危機感は抱いておらず、専門性を生かせるかどうかにこだわり続けて就活が長引く人もいます。
生物系学科ならではの継続力、忍耐力が評価されるケースは多い
一方で、生物系学科の学生ならではの知識や経験、強みは、アピールがしっかりできれば評価される傾向にあります。
生物系はヒトや植物、微生物などの生物を扱う学問であり、日々細胞や遺伝子などに向き合っている人も多いです。研究対象はいずれもデリケートなものであり、研究対象によっては、途中で保留にすることができないこともあります。毎日決まった時間に進捗状況や生育状況を正しくチェックしないと、思うような結果に到達できない可能性もあるのです。
このような、地道な研究に臨み続けることで培われた「粘り強さ」や「根気強さ」「継続力」は、評価につながりうる強みになります。
また、理系全般に共通する強みとして、プロセスをつくり込む力が挙げられます。
専攻にもよりますが、理系の学生の多くは想定されるゴールに向けてどのような方法で研究を進めるのか、そのプロセスを考え、設計し、振り返ってブラッシュアップするという経験を繰り返しています。「課題に向き合い、課題解決のためのプロセスをつくり込む力があれば、自社の業務を遂行する上でも力を発揮してくれそうだ」と評価する企業も多いようです。
ただ、前述のように、生物系の学びがダイレクトに生かせる求人の採用人数は決して多いとは言えません。専攻にこだわり過ぎず、自身の強みを言語化した上で、複数の選択肢を持ちながら就活に臨むことが大切です。
生物系学科の就職先業界例
生物系学科出身の学生は、主に次のような業界に進んでいる人が多いようです。
食品業界
生物系学科ではヒトや動物の身体の仕組みや生命、健康にかかわることを学ぶ機会が多いことから、食品業界の志望者が多い傾向にあります。
知識を基に、新しい食品や食品素材の研究開発に携わりたいと考える人が多いようですが、募集人数は多いとは言えず、倍率も高くなりがちです。
製薬業界
生物系学科に進んだ人は、製薬業界を志望する傾向にあります。
生理学や遺伝学、病理学や生態学など、生物学科で学ぶ内容の多くを製薬会社で生かすことができることから研究開発職を目指す人が多いですが、採用枠は多いとは言えず、狭き門です。
製薬業界の中でも、研究開発にこだわり過ぎず職種の視野を広げて就職活動に臨むことも必要です。
日用品業界
食品、製薬と並んで生物系学科の学生に人気なのが日用品業界です。
化粧品やトイレタリーなどは日常的に使用することから、高い品質と安全性が重要であり、生物系の知識が生かせる場面が多いのが特徴です。
日用品業界も求人が多いとは言えず、かつ知名度の高いBtoCメーカーに応募が集中する傾向にあるため、倍率が高くなる傾向にあります。
化学業界
専攻を生かせる可能性が高く、かつ求人数が比較的多い化学メーカーも、生物系学科出身者に人気があります。
BtoBのメーカーは、就活当初に認知がなくても、製品そのものや企業の技術力に惹かれる学生が多くいます。また生物系の学生には、種苗や肥料などバイオ系の知識が生かせる製品を扱っているメーカーが、特に注目度が高いようです。
新素材の開発など、研究開発職を希望する人が多いですが、求人数が限られることから製造職や営業職などに就く人もいます。
医療機器業界
製薬だけでなく、医療機器においてもライフサイエンス系の知識は必要とされます。
例えばカテーテルやステント、人工心肺など、ポジションによって化学系の知識が必要な医療機器メーカーであれば、生物系学科の専門性を応用し活躍できる可能性は高いでしょう。
IT業界
理系学部は研究を通してパソコンなどの電子端末で情報処理を行う機会があり、また研究によっては自らプログラムを組むことも。そのため、視野を広げてIT業界に注目する学生も多く見られます。
専攻を生かせる業界だけでは倍率が高く不安と危機感を持った学生が、新卒採用実施企業が多く採用数も多いIT業界に目を向けるケースが多いようです。
生物系学科の就職先職種例
生物系学科出身の学生が就いている職種の代表的な例を紹介します。
研究職
生物系学科の学生から最も人気が高く、応募が集中するのが研究職です。これまでの経験やスキル、知識が生かしやすいことから、専攻に関係する業界・企業の基礎研究や応用研究に携わりたいと考える人は非常に多いです。
ただ、各企業とも採用数は数名程度であることから、非常に狭き門となっています。
生産技術職
「食品や薬品、化粧品などの各種生産ラインの設計やメンテナンスを行う」「生産の効率アップを目指し、生産工程をブラッシュアップしていく」ポジションです。
品質と安全性を担保しながら、滞りなく生産を行うための仕組みを作るのが主な役割です。生物系学科の学びの他に、理系専攻での経験を通じたプロセス作りの経験を生かせる職種として、志す人が多いようです。
成分分析職
食品や薬品、化学物などを分析して製品の安全性や環境への影響を調査する成分分析職も、生物系学科出身者が比較的多い職種です。研究活動を通じて、細かい作業や試料作製が得意だったという方が、実際に手触り感を感じながらできる業務として、志望するケースが多いようです。
品質管理職
製造する製品の品質や安全性を管理する品質管理職も、生物系学科出身者が多い職種です。
社内の関係者や顧客との関わりも多く、相手が求める基準を満たす責任の大きさをやりがいに感じ、志望するケースが多いようです。
営業職
専攻に関する知識が生かせる製品やサービスを扱う会社で、営業職に就く人も増えています。自社の製品・サービスの魅力を、説得力を持って語れるのが生物系をはじめとする理系学科出身者の強みと言えるでしょう。
専門分野に関する高度な知識を生かして、技術営業職として活躍するケースもあります。
生物系学科の就活のポイント
生物系学科の学生がスムーズに就活を進めるためのポイントを紹介します。
学業を通して培った専門性を企業ごとにアピール
生物系学科の学生は、理系科目の中では生物が好き・得意、という理由でこの学科に進学したという人が多いことから、卒業後も専攻を生かして働きたいと考える人が大半です。
勉強を通して身につけた経験やスキル、専門性を洗い出し、その中から応募企業ごとに「特に生かせると思うスキル」を抽出してアピールしましょう。
自身のスキルや専門性を、応募企業が求めているスキルや専門性と接続させることがポイントです。
理系ならではのスキル、強みのアピールも有効
前述したような、ゴールに向かってプロセスをつくり込む力や、PDCA(※2)を回す力、目標達成意欲の高さなど、理系ならではのスキル、強みもアピールポイントになります。
エピソードを交えつつ具体的にアピールすることで、注目度を高められる可能性があります。
※2 PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字を取ったもので、これらを繰り返すことによって継続的に改善していく手法のことを指す。
専攻が生かせる仕事以外にも視野を広げてみる
専門性を生かせる職種だけでなく、それ以外の業界や企業、職種にも視野を広げましょう。
繰り返しになりますが、生物系学科での経験や知識、専門性をストレートに生かせる職種はそう多くはなく、応募が集中するため倍率も高い傾向にあります。
自己分析で自身の強みや持ち味を洗い出し、「専攻を生かす」という軸以外で第2志望群、第3志望群を作っておくといいでしょう。
「就職でかなえたいと思っていること」に立ち返り、ほかの業界や職種でも実現できないかどうか考えてみるのも有効です。
「この業界・会社で何がやりたいのか」を明確にしておこう
面接では、かなりの確率で「生物について学ぶだけでなく、仕事にしたい理由は何か」を聞かれます。卒業後も生物系の分野にかかわり続けたい理由を明確にしておきましょう。
「生物が好きだから」「ずっと勉強してきたから」というだけの回答では、企業の納得は得られません。仕事で何を実現したいのか、自分の知識や専門性をどう生かしたいのか、具体的に語れるようにしましょう。
納得のいく就職先を選んだ「生物系学科の先輩」の事例紹介
リクナビ就職エージェント経由で就職した生物系学科の先輩の中から、希望通りの就職先に入社した人、紆余(うよ)曲折の上納得して新たな道を選んだ人の事例をそれぞれ紹介します。
早くから選考対策に注力し、第1志望の化粧品メーカーに内定
人の細胞についての研究を行ってきたAさん。化粧品会社で人体に優しい製品を開発したいという、強い思いを持っていました。
化粧品業界以外はチャレンジするモチベーションがなかなか湧かず、少ないチャンスを最大限生かすために、応募先企業の研究開発体制について調べ上げることを徹底。自分との接続ポイントを探し、「これまで培ってきた専門性が、いかに御社と親和性が高いか」を明確に語れるように準備していました。
化粧品会社であれば製品開発だけでなく、品質管理や営業、製造などにも幅広く応募していましたが、1社1社の徹底的な分析が功を奏し、研究開発職の内定を見事獲得しました。
専門性を軸に視野を広げ、半導体メーカーの製造職に内定
食品や化学メーカーの研究職を目指していたBさん。しかしなかなか選考を通過できず、どのように視野を広げればいいか悩んでいました。
そこで、Bさんの専門性を考慮した上で、半導体メーカーという選択肢を提案。半導体メーカーというと、工学系の知識が必要であるように思えますが、例えば半導体材料の中には、生物由来の材料、化学材料が含まれることもあり、新しい材料の開発や評価など、生物系の知識を生かせる場面も多いのが特徴。製造プロセスをあらためて理解したBさんは「ここならば専門性が生かせそうだ」と興味を持ち応募を決意。製造管理や生産ラインのプロセス開発などを手がける製造生産職に内定しました。
就職エージェントの活用も検討を
生物系学科をはじめとする理系の学生は、学業と就活の両立に不安を抱く人が少なくありません。研究などが忙しく、就活のスケジューリングに悩む人も多いようです。
専任のアドバイザーがマンツーマンで就活をサポートする就職エージェントであれば、忙しい生物系学科の学生でも就活を計画的に進められるでしょう。
リクナビ就職エージェントでは、理系の専攻ごとに特化したアドバイザーが付き、就活をフォロー。生物系ならではの知識や専門性が生かせる業界や職種はもちろん、自身の強みや持ち味が生かせる別の選択肢も提示しているので、幅広い視点を持ち新たな選択肢を検討することもできるでしょう。
生物系専攻の先輩の就職事例も多数保有しているので、さまざまな視点からの就活アドバイスが可能です。生物系学科の就職活動に不安を抱いている方は、ぜひリクナビ就職エージェントの活用を検討してみてください。
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