【ハンガリー編】年齢に応じて定められるハンガリーの有給休暇

Reported by YOU
日系企業から、ハンガリーの首都ブダペストにある現地事務所に出向中。現地での楽しみは、連休の際、ヨーロッパ各国へ旅行に行くこと。

年次有給休暇は20歳で20日、45歳なら30日

はじめまして。YOUです。日系企業から、ハンガリーのブダペストにある現地事務所に出向しています。

一緒に働いている同僚の約9割はハンガリー人です。残りは、英国人、ドイツ人、イスラエル人、韓国人といった顔ぶれになります。私が担当している顧客は、ハンガリーで事業活動を行う日系企業なので、私自身は日本人マネジメントの方と接することが多いですね。

組織としては日系企業以外の企業相手の仕事も多く、社内の同僚も皆、英語を使用するため、社内では口頭・文書ともにすべて英語を使っています。顧客とのやりとりのみ、日本語になります。

ハンガリーで仕事をしていると、日本との違いを感じることがよくあります。ただ、それは、おそらくハンガリーだけの特徴ではなく、ほかのヨーロッパの国々全般に言えることだとも思います。

まず1点目に挙げられるのが、労働力の流動性が高いということ。平たく言うと、人々が頻繁に転職を繰り返すため、中途入社の社員が多いということになります。日本のような新卒一括採用の習慣はなく、各社で必要な人材・ポジションを、その都度、募集・採用しているようです。もちろん、学生のインターンシップ制度はありますが、採用とは切り離されているケースが多いですね。また、新卒で入社した会社に定年まで勤め続けることは一般的ではなく、3~5年のサイクルで転職を繰り返し、自分のスキルやポジションをステップアップさせていくのが典型的なパターンだと思います。加えて、各人の仕事の役割が明確に線引きされているので、日本のように「部署内で情報を共有する」といった横の連携は弱いと思います。そのせいか、引き継ぎもそれほど丁寧に行われません。

次に挙げられるのが、一般的に労働時間が短いこと。勤務時間は朝8時から昼の1時間休憩をはさんで夕方5時までの1日8時間ですが、皆さん、基本的に残業はしません。とは言え、決して仕事をしないわけではなく、「明日できることは明日する」といった考えから来るものと思われます。繁忙期や締め切りが迫っている場合は、残業してでも頑張る人もいますが、その判断は人それぞれのように見えます。

3点目として、日本と比較して、労働者の権利を保護する制度が手厚いことを感じます。残業する社員が少ないのは、そもそも国が定めている残業時間の規制が厳しいせいでもあるのでしょう。従業員の就労時間は最大1日12時間、1週間で48時間が上限。また、残業時間の上限は、1年間で250時間以内、労使協定で合意した場合は1年間で300時間以内となります。日本の労働基準法では、時間外労働の1年間の上限が360時間ですから、だいぶ違うことがわかります。

また、これはハンガリー特有の制度ではないかと思いますが、有給休暇の日数が、年齢に応じて決められています。例えば、20歳前後では20日の有給休暇を取ることができますが、歳を重ねるごとに追加年次有給休暇が増える仕組みになっていて、40歳になると30日まで増えます。年次有給休暇の3割までは、勤務先が休暇日を指定できることになっていて、ほとんどの場合は、夏期の一斉休暇の期間を指定されます。そこで、従業員は、その期間の前後にくっつける形で長期の休暇を取ったり、あるいはクリスマス休暇をまとめて取ったりするわけです。もちろん、個人的な事情でそれ以外の時期に取ることも可能です。その上、年次有給休暇は消化することが法律で義務付けられているため、ほとんどの人が有給休暇を使い切っていますね。ただし、一部を翌年に繰り越すことも可能です。

議事録なら1時間で仕上がってくるけれど…

このように、ハンガリーと日本とでは、働き方がかなり異なります。それぞれ文化も異なるので、現地のスタッフに何か仕事を依頼する際には、依頼の背景とともに理由などを詳細に伝えるようにしています。例えば、「○○の商品を○日までに顧客に提出しないといけない」といったタスクの場合、「顧客の担当者が、本社から○○の方針の了解を得るために、この商品が必要になった」といった背景を説明した上で、「顧客の担当者に確認・理解してもらうためには、遅くとも1週間前には提出が必要になるので、○日までに用意した方が良い」といった理由を添えて依頼する感じでしょうか。慣れたメンバーばかりのときは、これほどくどくど説明しませんが、初めて仕事をするメンバーの場合は、なるべく細かく説明するようにしています。

また、このように急ぎの案件の場合は、締め切り日を依頼時に必ず伝えるようにしています。ただしそのときは、実際の締め切り日よりも早い締め切り日を設定し、いざという場合に備えなければなりません。そうしないと、期限に間に合わない場合もあるからです。例えば、本当の期限が2日後の場合は1日前、翌週末だったらその3日前、月末だった場合はその1週間前といったところでしょうか。これも、お互いにすでに信頼関係のあるメンバーとの仕事であれば、本当の締め切りを伝えても、まったく問題ありません。

ただ、期限に遅れがちな彼らも、決して仕事のスピードが遅いわけではありません。組織の規模の違いもありますが、こちらでの仕事のスピードは、日本と比べると総じて速いと感じます。例えば、書類を作成する場合、日本の場合は正確に作ろうと、慎重にチェックする傾向にありますが、こちらは依頼したら、すぐにできあがってきます。議事録のような簡単なメモであれば、1時間程度という具合で、フォーマットや文体などに注意を払うために2~3時間はかかる日本と比べると、格段に速いですね。ところが、セルフチェックなどを行わないためか、得てして間違いも多いのです。その間違いも、指摘すればすぐに直してくれるのですが、はじめにさまざまな要望をとりまとめて、効率的に進めようとする日本のビジネスパーソンと比べると、ハンガリーでは都度コミュニケーションをとって、直していかなければならないという点でやや効率を欠く印象。トータルで考えて、どちらが速いかは、微妙なところかもしれません。

次回は、ハンガリーの文化についてお話しします。

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ブダペストにあるハンガリーの国会議事堂。ドナウ川の岸辺に建っている。

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パプリカパウダーを使ったソースで骨付きの鶏肉を煮込んで作る「パプリカチキン」。写真のパプリカチキンは、ハンガリー人の同僚宅で作られたものだが、ハンガリーの名物料理だけあって、たいていのレストランで注文できる。

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自宅アパートメントのバルコニーからの眺望。ドナウ川を挟んだブダ側のヤーノシュ山方面が望める。

構成/日笠由紀

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