【ニューヨーク編】帳尻が合えばOKなアメリカ式工程管理

Reported by 音速の貴公子
アメリカ・ニューヨークにある日系金融機関の支店に勤務。週末は、妻と共通の趣味であるサイクリングのイベントに参加したり、地元のおいしいレストラン巡りを楽しんでいる。

期限内に完了すれば結果オーライ

はじめまして。音速の貴公子です。アメリカのニューヨークにある日系金融機関の支店に勤務しています。

支店のスタッフの内訳は、アメリカやヨーロッパなどの欧米系が約半数、中国や韓国などのアジア系が約3割、残り約2割が日本人となっています。内部管理業務に従事しているため、取引先の方と接する機会はありませんが、米国金融当局や外部コンサルティング会社の担当者とは定期的に接する機会があります。

チームのメンバーは全員がアメリカ人なので、彼らと話すときは英語を使います。一方、直属の上司は日本人なので、そのときは日本語です。比率としては、日本語:英語=5:5 か4:6くらいでしょうか。

日本との仕事の進め方の違いは、スケジュール管理のやり方に如実に表れています。プロジェクトの進捗管理を例に挙げると、日本人は定期的なミーティングを行い、きめ細やかに進捗を管理することを好みますが、主にアメリカ人を中心とした現地スタッフたちは、そういった細かい進捗管理を好みません。もっと大雑把な管理の仕方の方が合っているようです。

日本人は、まず線表(プロジェクトを管理するシート)を作成し、そこにタスクを書き出して、「誰が・何を・いつまでに・どのように・どういうアウトプットを出すか」を定めてからプロジェクトに取り組みます。プロジェクト開始後は、定期的に打ち合わせを行い、線表を使いながら、その時点でのタスクの進み具合を確認するので、週に1回はこうしたチェックを行うのが一般的です。

一方、現地スタッフの場合は、スタートとゴール、プロジェクトの期間だけ定めてしまうと、その後は比較的自由に仕事に取り組みます。彼らは、「最終的に期限内にアウトプットが出せればそれで十分」と考えており、途中経過にはあまりこだわりません。そのため、週次ベースで進捗を確認すると、「何もやっていない」ことが判明することもよくあります。

そんなときも、基本的には本人のやり方に任せます。日本式の細かな工程管理は、アメリカ人には「ミクロマネジメント(上司が部下の業務に強い監督・干渉を行うこと)」と映り、信頼をなくしてしまう可能性もあるからです。実際、プロフェッショナルとしての自覚があるスタッフは、最終的には期限内にしっかり仕上げてきてくれます。ただ、こちらが管理しないとまったく手をつけないタイプのスタッフもいるので、その場合は細かく管理しなければなりません。以前、現地スタッフに任せていたプロジェクトが、期限までに間に合わないかもしれないと事前にわかったことがあり、そのときは、上司と私が週末を返上して働くことで、なんとか期限に間に合わせました。

頼みごとは本人にメリットのある形で

現地スタッフは、あらかじめジョブディスクリプション(職務記述書)で定められている職務内容以外のことは、一切やりません。中には、職務内容以外の業務にも協力的な現地スタッフもいますが、少数派ですね。また、ジョブタイトル(役職)をとても意識していて、自分を評価する立場の人の発言や、自分より上の役職の人の言うことには従順な一方で、そうでない人の言うことは聞かないことがあります。私自身、自分のグループのスタッフに言うことを聞いてもらえなかったことがありましたが、身近なスタッフにそういうことをされたときは、少なからずショックを受けたものです。

そうした経験を踏まえて、私も対策を考えました。ジョブディスクリプションに書かれていないことや、自分の評価に影響しないことに興味を持たないということは、言い換えると、ジョブディスクリプションに少しでも関係がありそうなことなら、自分の評価に直結すると考え、目の色を変えて取り組んでくれるということ。頼みごとも、上司からの依頼ならきちんとこなしてくれるはずです。そこで、現地スタッフには、依頼したいことをジョブディスクリプションにうまく絡めてお願いしたり、彼らの上司を通じて依頼をしたりするようになりました。

次回は、ニューヨークの共働き事情についてお話しします。

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ニュ―ヨークのパークアヴェニュー沿いの夜景。オフィス街も夜にはまた別の佇(たたず)まいとなる。

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「アイビー・リーグ」と呼ばれるアメリカの有名私立大学群のひとつに数えられるYale(イェール)大学。ニューヨークのグランドセントラル駅から電車で約2時間で到着するニューヘブン市にある。独特の雰囲気を醸し出す学生寮、歴史を感じさせる建物、さらには大学を中心とした活気ある街並みがニューヨークとはまったく異なっている。

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平日のマンハッタンは、ビジネスマンや観光客が慌ただしく街を歩き回っていて、体調が悪いときや気分が乗らないときは、うんざりすることもしばしば。そんなとき、決まって足を運ぶのが、マンハッタンの北西に位置するこのジョージワシントンブリッジだ。マンハッタンの喧騒から少し離れるだけで、普段とはまったく異なる景色に触れられる。晴れた日の緑と空の青さのコントラストに映えるマンハッタンの姿は、まるで芸術作品のよう。

 

構成/日笠由紀

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