【中国編】 変化のスピードが速い大連の街

Reported by ラオゴン
中国の大連市に住み、現地にある日系メーカーに勤務。休日の楽しみは、大連市街での外食や、街歩きなど。最近は中華料理のおいしさに気づいて、大連の地元料理である水餃子(ギョーザ)専門店や四川料理、上海料理、台湾料理、海鮮料理などさまざまなレストランに行くように。牛タンが食べたくなると、日式(“日本の”という意味でよく使われる言い方)焼き肉レストランを訪れている。

前方に人がいるとわざとスピードを上げる車も

こんにちは。ラオゴンです。今回は、大連という都市についてお話しします。

大連市は、中華人民共和国の北東に位置する、人口約600万人の都市です。大連経済技術開発区には日系メーカーが数多く進出し、大連ハイテクゾーンと大連ソフトウェアパークにも中国系・日系や外資系のIT企業が進出。北京・上海・広州に次ぐ中堅の経済都市となっています。

大連に来て一番驚いたのは、自動車の運転マナーが悪いこと。日本と違って右側通行なので、対向車を気にせずに右折できるのですが、歩行者がいてもスピードを緩めず右折するので、歩行者にとってはとても危険です。加えて、歩行者に対してクラクションを大きな音で鳴らしたりと、マナーも良くなくて、私自身、何度か危険に直面したことがあるのです。例えば、前方に人を確認したドライバーは、車のスピードを弱めるか、そのままのスピードで歩行者に向かってくるのがほとんどなのですが、2割くらいの確率で、なんとスピードを速めてくる人がいるのです。そのため、片側3車線の道路を歩いて渡っているときなど、中央分離帯までたどり着けずに、白線上で車が通過するのを待ちながら、その合間を縫って渡ることが少なくありません。また、市内を走る路面電車の線路のレールに足を取られて転んだこともあります。転んだ傍らを車が通り抜けてヒヤリとしたこともあるので、それ以来、足元をしっかり確認しながら転ばぬように歩いています。

左折の場合は、対向車の通行が途切れたタイミングを見計らって曲がらなければならないわけですが、皆さん、阿吽(あうん)の呼吸で譲り合い、絶妙なタイミングで交差点に進入していますね。歩行者も、車との距離感を自然と身につけているようで、上手に間合いをとって左折車をやり過ごしています。このあたり、自動車と歩行者が日本よりも見事に共存しているように思えます。

もっとも、歩行者も歩行者で、信号のないところでも平気で車の間をすり抜けて横断したり、赤信号でも車がいないと平気で横断するなど、そのマナーは決して褒められたものではありません。警察も特に取り締まったりはしていないようなので、やりたい放題です。かく言う私も、よほど大きな交差点でない限り、車の走行のタイミングを見計らってさっと渡る術(すべ)を身につけるようになりました。日本のように信号や横断歩道が多くないので、信号のあるところだけを渡ろうとすると、相当、回り道をしなければならないからです。赴任して1年たったころから、「怖いな」と思いながらも、頑張って横断するようにしていますが、どうしても通行量が多く危険な場合もあるので、そういうときは、現地の人と同じタイミングで渡るのがコツ。最近では、私も妻も、あまり戸惑うことなく大胆に横断できるようになってきました。

こうした流儀に慣れない限り、ドライバーにとっては非常に過酷な環境なので、日本から大連に駐在している人の多くは、勤務先から車の運転を禁止されているようです。車線変更や追い越しがしにくい上、マナーが悪く事故を起こす車が多いことがその一因。加えて、万が一事故を起こした場合、警察の到着を待って損害保険を含む所定の手続きをしなければならないことを考えると、リスクが高すぎるということのようです。ただ、日本人経営者や現地企業に就職した人、会社を経営している中国人男性と結婚した女性の中には、自分で車を運転している人も少なくありません。日本人男性と結婚している中国人女性にも自動車を運転する人が多く、私や妻の感覚値で言うと、8割くらいの女性が運転しているような感じです。彼女たちには、BMWやメルセデスベンツなど、高級外車が人気ですね。

店舗の開店・閉店サイクルが速い

加えて目を引くのが、中国の人は、他人のことをあまり気にしないらしいということ。自分の価値観が第一で、他人からどう見られているかはあまり気にならないようなのです。例えば、服装。夏になると、パジャマで商店街をそぞろ歩きする人を見かけるようになるし、上半身裸の男性や、お腹(なか)だけ出して歩く男性も目にするようになります。大連は北国なので、暑さの体感センサーがとりわけ鋭くなるのか、日中の気温が30度を超えると、そのような男性が途端に多くなります。ただ、大連に3年以上駐在している方に話を聞くと、こうした服装で出歩く人の数は、以前よりもずっと少なくなったのだとか。ビビッドな色の服も好まれる傾向にあるようで、赤、ピンクはもちろんのこと、黄色や蛍光黄緑の服を着ている人もよく見かけます。妻も、白黒ボーダーTシャツに赤いカーディガンを羽織るような、コントラストの強い色彩の服を組み合わせたりすると、「今日のファッション、すごくいいね!」と褒められたりするそうです。

そのように、人目を気にせずに自分を貫く人が多い社会であることは、日本人にとってもラクなのかもしれません。むしろ、日本人同士の付き合いの方が、お互いの目を気にする傾向にあるからです。やはり日本人社会は狭い世界なので、駐在員の家族は日本の社宅生活と似た感覚で暮らさなければならず、気疲れする人が多いように思います。

特筆に値するのは、大連の街の変化のスピードの速さ。店舗があっという間に開店したり、あるいは閉店したりするのです。市内にお気に入りのレストランがあったのですが、ある時気づいたら、あっけなく閉店していました。ほんの1年ほどの営業だったようですが、とても残念でたまりません。「現地の人で賑(にぎ)わっていたのに、なぜ閉めてしまったのだろう」と、日本人駐在員夫人の間でも話題になっているほどです。また、東京にある蟹(かに)料理専門店の大連支店も、やはり先ごろ閉店してしまいました。大連は、いわゆる“洋食”のお店が少ないので、この店のカニクリームコロッケが食べられなくなったのはかなりの痛手。半面、新しいお店を探す楽しみもあるのですが…。

規模の大きな商業施設も、日本の半分くらいの工期でできあがるようです。そのせいか、街全体の様子は、5年単位でガラッと変わっているように思います。20年前に当社が進出した時と比べても、大きく様変わりしていると聞きます。

現在、大連では、海沿いの地域の開発に特に力を入れているようで、海を埋め立ててどんどん高層マンションを建てています。「部屋から海が見えます」という点をセールストークにしているマンションが多いのですが、完成したマンションの前がさらに埋め立てられて、別のマンションが建設されてしまうことも少なくなく、オーシャンビューが楽しめるのはわずか1年だけだったというケースもあるそうです。こうしたマンションを買ってしまった現地の人は、仕方なく「わが家の窓からは他人の家が見えるよ」と、自虐ネタにしているのだとか。私が赴任した時期には建設が始まったばかりだった巨大複合施設も、それから1年たつかどうかという現在、そろそろ完成してしまいそうな勢いです。映画館やマンションを有する非常に大きな施設でさえそうなのですから、大連は日本よりも建物の建築基準がだいぶ緩いのではないかと、日本人の間で話しています。大きな地震は起こらないと言われていることも影響しているのでしょう。

次回は、大連での暮らしについてお話しします。

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皆が自動車を駐車してしまうために、実質的に駐車場状態になってしまっている歩道。歩行者は車道にはみ出して歩かなければならないことに。

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急ピッチで進められるためか、建材が周りに放置されたまま使用されている地下鉄の出入り口。

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あまりの暑さに背中を丸出しにして涼を取る男性。人目を気にしている気配はないように思える。

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中国でよく目にする巨大なモニュメント。大連には、勝利広場の巨大ギターと巨大サックスなど、ほかにもランドマーク的な巨大モニュメントが存在する。

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1950年代に中国とソビエト連邦の友好の記念として名称が決められた「友好広場」。そのシンボルでもあるガラス球体は、夜にはライトアップされて市民の目を楽しませる。

構成/日笠由紀

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