【南アフリカ共和国編】けんかの仲裁も仕事のうち。南アフリカ共和国のビジネス

Reported by 南アフリカ★太郎
南アフリカ共和国のヨハネスブルクにある日系メーカーの現地法人に勤務。プライベートでは、日本人サークルのリーダーとして、日本人コミュニティーでの活動にも精を出している。

優先順位のつけ方がわからない

まず、簡単に自己紹介をしよう。私は、南アフリカ★太郎。当然ながら、ペンネームだ。南アフリカ共和国のヨハネスブルクにある日系メーカーの現地法人に勤務しており、南アフリカを生まれた場所の東京、思春期を過ごした英国、新入社員時代を過ごした尼崎(兵庫県)に続く、第4の故郷だと思っている。いつのまにか、そう思えるほどの期間を、この国で過ごしてきたことに戸惑ったりしている日本人だ。

 

同僚は、イギリス人1名、日本人1名、香港人1名。現地スタッフは17名。顧客の大多数は、アフリカーンスという現地の言語を話す白人。ダーバン(南アフリカ南東部の港町)では、インド人系列の顧客も多い。南アフリカには公用語が11言語あるので、それぞれ自分が一番使い勝手のよい言語で話を試みる。だが、全員がコミュニケーションしようとすると英語しかないのが現状のため、結局はビジネスも政治も英語で行われる。英語が第1言語な人口は10パーセントにも満たないので、なまりがきついことはあるが、第2外国語として話される英語はえてして、平易な用法が多いので、実は話しやすかったりする。

 

英語で大体コミュニケーションが取れるといっても、当然ながら、相手が教育をどのように受けたかで大きく趣は異なってくる。以前、採用面接をしていた時、まったく英語が通じないズールー人(南アフリカ共和国最大規模の民族集団)が応募したため、引き取ってもらうにも身振り手振りだった覚えがある。全スタッフに「一番信用できて仕事を探している人を一人紹介してくれ」と言ってもそんな感じだったので、きっと地方に行けばその傾向はますます強まるのだろう。

 

さて、南アフリカ・ヨハネスブルクの一日を考えると始業の朝は早い。大体、8時には始業して、16時30分には終業することが多い。オフィス街だともう少しゆったりと仕事をしているところも多いが、通勤に時間もかからないので、早く始めて早く終わることが多い。ただし、スタッフは交通事情により、たびたび遅れてくる。終業時間が早い理由は、夜になると治安上の不安が出てくるからだ。原始の生活ではないが、日が出ている間が勝負といってもよいかもしれない。日が暮れた後まで仕事を続ける職場もなくはないが、シフト体制の職場や病院などを除けば、非常に少数派だ。

 

労働基準法で「少なくとも21日間連続の有給休暇を与えなければならない」となっており、これをクリスマス期間の休暇に使うところが多い。そのため、12月の15日にもなると、交通量は普段の半分以下に激減し、「12月第1週までの車はどこにいったのか?」と思ってしまう。また、取引先企業の社員たちが職場に戻ってくるのが1月の中旬なので、約1カ月間、取引先が不在となってしまう。当社のスタッフたちは、大体が出稼ぎなので、何を買って帰省するかで地元に帰ったときの待遇が変わるらしく、年末が近づくだけでそわそわしてしまい、12月と1月はほぼ仕事にならないというのが正直な感想だ。

 

さらに、大企業や労働組合が強い業界だと年に別途1カ月ほどのストライキ期間もあったりするらしい。自動車関連企業は一番ひどくて、まず、車のメーカーが1カ月、その後、部品の会社が1カ月、その後工程の物流系の会社が1カ月止まったりすると、最大3カ月間仕事にならない年もあったと聞いたことがある。

 

つまり、朝早く始業して夕方には終業し、仕事をする期間も短いということ。したがって、現地企業やパートナーに何かを依頼する際は、注意が必要になる。日本の感覚で「これくらいなら大丈夫だろう」と思えることも、彼らの稼働時間が日本に比べて圧倒的に短いことを考えると、決して「大丈夫」ではなかったりするためだ。特に、9時ごろから始業してしまうと、国内の他企業との間に「時差」が生まれてしまうので、気をつけた方がよいだろう。

 

さらに、これは全体的に言えることだが、複数の仕事を同時に行うマルチタスキングは決して得意な国民ではないと感じさせられることが多い。社内の簡単な例で恐縮だが、「質とスピードを上げよう!」という活動をしたところ、「どっちを優先するんだ!?」という質問が真っ先に飛んでくるのだ。日本だったら、誰もが、「どのようにしたら両立できるか」と考えるところだろうが、まず、そもそも両立しないと考えている時点で、これまでのしつけや教育のあり方を示しているなぁということと、マルチタスキング能力の低さを感じさせられて脱力したことを覚えている。

 

ということで、彼らには、彼らがキレる寸前まで、嫌がらせのようにこまめに連絡を入れないと、物事が進まない。今は使っていない銀行を例に出すと、ひとつの処理をお願いしたところ、1週間でできると言われたことが、結局3カ月待たされたことがある。当然ながら、その間は、毎日のように催促の連絡を入れた。どこまで待ってもダメな場合もあるが、最近は、電話やメールではらちがあかないからと直接見に行って、「どうなっている?」と聞いてしまうのが一番手っ取り早い気がしている。「わざわざ面会に?」と思うかもしれないが、その日の相手の対応が、単に忘れていたのか、あるいはそもそもできなさそうなのかといった事情を推し量る術(すべ)になるからだ。そうした経験から、依頼ごとは、日をまたいでしまうと、感覚値で3割くらいの相手から忘れられてしまうということがわかってきた。どうやらこのような経験をする日本人は私だけではないようだ。

 

社内スタッフにも同じことが言えて、毎日、フレッシュな気持ちで出社してくれるのはいいことなのだが、残念ながら、頼んだことを忘れられることは日常茶飯事。日々の確認は欠かせない。

 

また、先ほどの話に戻るが、両立しにくい要望を出すと混乱をして、何から手を付けたらいいかわからなくなり、結果、とりあえず手を動かすだけになってしまってどちらかがおろそかになる傾向がある。また、その点を注意すると、「そもそもの指示がおかしい」などと言い訳に終始して逆ギレすることもしばしばで、仕事の仕方や指示の出し方などはなかなかどうして、難しい。先回りして注意しても通じなかったりするので、彼ら自身にやらせてみて、彼らなりの発見をさせていかないことには始まらないのかもしれない。このように、赴任当初は何かともどかしいことばかりだったため、「これも成長の過程だと割り切って、一歩でも前に進めばいいか」と自分に言い聞かせたりする日々だった。

 

とはいえ、自分の目の前の仕事に黙々と取り組むことには慣れているようで、得意分野を把握して集中させてやれば、決して悪い働き手ではない。「まずは、相手を理解して、相手にも理解されることが大切」と肝に銘じたことを覚えている。

 

スタッフが歌を歌い始めたら要注意

南アフリカ共和国でのビジネスというと、黒人に囲まれて、和気藹々(あいあい)としたアットホームな雰囲気を想像する人が多いかもしれない。実際、インターネット上で南アフリカ共和国の企業の情報を見ても、その職場に、白人がいることはいるが、やはり多くは黒人。旅行代理店や国際協力の方たちが紹介している写真などを思い浮かべる人もいるかもしれない。

 

実際、私自身も黒人スタッフに囲まれて仕事をしているが、確かに彼らの笑顔は輝いている。ちょっとしたことで、笑い、踊り、歌う。普段、彼らのふるまいに文句ばかり言っている私だが、小さな幸せに踊り、歌う彼らを見て、うらやましく思う時もある。だが、実は、踊って歌っているからといって、喜びを表しているわけではないこともあり、非常にややこしい。

 

ある日、スーパーマーケットの前で、そこの店員と思わしき制服を着た人たちが、踊りを踊りながら歌を歌っていた。「セールの催し物か何かか?」などと思って見ると、店の中は閑散としている。話を聞いてみると、どうやら賃上げストライキをしているとのこと。ぱっと見ただけでは、何を言わんとしているかが伝わらない。これは外国ならどこにでもあることだろうが、海外生活、特に南アフリカ共和国での生活が長い私でも真逆の印象を受けるのだから、コミュニケーションは常に確認の連続である。

 

そこで私は、彼らが歌を歌い出したら、必ず「何かあったのか?」と聞くようにしている。彼らの感情は表に出やすい。自らの欲求は、考えるよりも前に口から出てくるため、歌は、ちょっとした前触れだったりするのだ。それは、妹に子どもが生まれたからかもしれない、地元のおじさんが亡くなったからかもしれない。はたまた、午前中に、伴侶と大げんかをしてきたからかもしれない。

 

「仕事は仕事」と気持ちを切り替えられるだけの精神力を持つ人間は、残念ながら全員ではなかったりする。また、黒人たちは、「感情を閉じ込めておくことは体にも心にも悪いこと」と考えている上、感情を爆発させたことで暗いアパルトヘイト(人種隔離政策)時代を打破した成功体験もあいまって、あまり、我慢をいいことだとは思っていない節が見受けられる。

 

口の利き方が少し悪いという理由で、女性スタッフに暴力をふるって辞めさせられた男性スタッフがいた。そもそも、少し男尊女卑の文化が残っているズールー人の男性とあって、別民族の女性から少しいらいらしている雰囲気をからかわれたのか、かっとなって手を上げてしまったらしい。あとで、落ち着いたところでヒアリングをしたのだが、奥さんとうまくいっていないとか、子どもの学校の支払いが滞りそうでストレスだったとからしく、導火線がどれだけ短いのかとびっくりしてしまった。労働組合の代表を務めていた男性だったが、労働組合も旗色が悪いと思ったのかサポートにも現れず、彼は結局退職していった。

 

つまり、歌やジェスチャーや声が大きくなってきたら、要注意なのだ。可能であれば、早めに話を聞いてやるなど対処してやるべきなのだが、そういった役割をしてくれるまとめ役のスタッフがいてくれると、こちらも楽だ。

 

何件か、女性スタッフ同士のけんかを収めたことがあったが、「両親の悪口を言われた」とか、「以前に仕事ができなかったことをからかわれた」とか、どうしようもない理由だったこともある。その場合は、話をさせて、それぞれの落ち度を認めて、謝罪させる。「この場は“職場”であり、仕事をしに来ているところである」ということを思い出させて、「それ以外のことは職場でするべきではない」などと話して聞かせる。時々「おれは小学校の先生か」と思わされることもあった。

 

そうした出来事があってからは、「手を上げたら一発退場」ということが浸透したのか、そういった案件は少なくなった。不幸なことだが、そういった状況をうまく活用して、将来の教訓として生かすという考え方も、マネジメントとしては必要になるかもしれない。

 

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毎朝の通勤風景。大都市なだけに、朝晩には慢性的な交通渋滞がある。

 

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先住民による伝統舞踊。次第に熱気を帯びてくるダンスを間近で見るときの迫力は満点だ。

 

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ヨハネスブルクは、夏でも最高気温26度程度と穏やかな気候。雨が降るのは、ほとんどが夏。こうして虹が出ることもある。

 

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ヨハネスブルクの中心部から車を走らせると、1時間ほどでこのような風景に。

 

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ヨハネスブルクの空港と中心部を結ぶ鉄道「ハウトレイン」。2010年のワールドカップ開催を機に開通した。

 

構成/日笠由紀

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