【南アフリカ共和国編】南アフリカ共和国では、日本の認知度は今一つ

Reported by 南アフリカ★太郎
南アフリカ共和国のヨハネスブルクにある日系メーカーの現地法人に勤務。プライベートでは、日本人サークルのリーダーとして、日本人コミュニティーでの活動にも精を出している。

日本人とわかると「ニーハオ」と話しかけてくる

さて、今回は南アフリカでの日本についての認知度についてお話ししよう。ステレオタイプな日本のイメージとしては、「侍」や「芸者」「てんぷら」「寿司(すし)」「相撲」などと紐(ひも)付いた、神秘的なイメージが浸透していると皆さんは思うだろう。

ところが残念ながら、そのレベルにすら達していないのが実情だ。端的に言えば、日本人だと相手に伝えると、「ニーハオ!」と中国語であいさつされてしまうほど、日本人や日本文化の認知度は低い。古くからの中華系移民がいることもあり、日本は中国の一地方だと思っているらしいのだ。その上、中国や韓国、タイなどの東南アジアを含めたアジア全体を「中国」だと思っている人さえいるようだ。タイ人や韓国人の友人も同様に、「ニーハオ」と言われることにうんざりしているらしい。

もちろん、経済力があってマネジメントや経営を行うような人々や、大学教育を受けたオフィスワーカーなどであれば、アジアの歴史や民族についてある程度理解があるが、残念ながら、残りの大半の国民は国内の事情を把握するのに精いっぱい。ヨーロッパとアメリカの情報以外には、それほど興味がないのが現状だ。地上波のテレビが取り扱う内容が、そういったごくごく身近な世界なので、致し方ないと言えば、致し方ない。

日本の良いブランドイメージが浸透していないことによる悪影響もある。当社が現地企業を買収した時も、中国資本と勘違いした社員たちが、即座に労働組合を設立してしまったのだ。「中国資本や中国人経営者は人使いが荒く、給料などの支払いぶりも非常に悪い」という先入観があるらしく、「労働者が団結して闘わなければ、給料アップなど望めない」などと思い込んでしまったらしい。そのくらい、彼らの日本に対する無理解ぶりは根が深いのだ。しかし、買収前よりも昇給レベルを改善したり、彼らが抱える困難を解決する姿勢を示し続けたり、日本の本社の方針に基づいた教育を継続的に続けることで、「日本の経営は思ったほど悪くない」という理解が浸透してきたようだ。そのおかげで、最近になってようやく労働組合の代表を招かずに労使が直接交渉で妥結できるようになった。

労働組合の組合費は、組合員の従業員の給与から1パーセントが天引きされており、最近は、その出費をもったいないと感じる社員もいるようだ。当社のような日本資本が労働環境を改善して、給与体系などにも非常に配慮してくれることが最初からわかっていれば、彼らは労働組合など設立する必要はなく、不要な組合費も払わずに済んだかもしれない。また、今後、日本企業の良い評判が南アフリカ共和国全体に浸透していけば、日本企業を優遇するような政策を政府が講じる可能性もあるだろう。ただ、それには官民を挙げた息の長い活動と、各企業の努力が必要だ。

日本文化の認知度が低いといっても、『ドラゴンボール』や『NARUTO -ナルト-』は有名で、誰でも知っている。さらに、以前は『アルプスの少女ハイジ』『超時空要塞マクロス』(現地では『ロボテック』と呼ばれていた)が流行(はや)っていたらしく、35歳以上の現地人はみな“ハイジ”を知っている。ただし、ハイジは南アフリカ制作と勘違いされており、それだけでも現地の人々がどれだけ大雑把な人たちかおわかりいただけると思う。その代わりに、「日本には、リアル忍者やドラゴンボールのキャラクターのような超人がいっぱいいる」と誤解されていないことが、救いと言えば救いなのだが…。

日本の認知度がさほど高くない理由を考えてみると、南アフリカ共和国には多様な文化が共存して民族構成が複雑なため、自国以外の国の民族や人種には興味がなく、結果として日本のことも中国などとごっちゃになっていることが挙げられるかもしれない。南アフリカの人口の大多数は黒人が占めているが、白人も約10パーセント、インド系や中華系の南アフリカ人も歴史的にたくさん住んでおり、多民族・多文化国家であることは確かだ。また、民族同士も、決して仲が良いわけではなく、それぞれお互いに思うところはあるようだ。そういう意味では、多様な要素から構成される“モザイク国家”だとも言えるだろう。

ただ、彼らは白人と黒人が共に歩み寄って「アパルトヘイト」という人種隔離政策を克服したことについて非常に誇りを持っており、アパルトヘイト廃止後の「南アフリカ共和国憲法」は、世界で一番進んでいる部類の憲法とも言われている。同性婚や事実婚を認める「シビル・ユニオン法」と、一夫多妻制を認める法律が共存していることを取ってみても、法律が非常に幅広い層の文化を許容していることがわかる。

アパルトヘイトの名残が色濃い国の政策

とはいえ、最近そうした流れが、過度に加速しているように思えることもある。アパルトヘイト下で、「旧黒人区分民」として不当に差別され続けた人々は、これまで要職に就くことができず、比較的高い給与を得られる職場に勤めることも高級住宅街に住むこともできなかったが、その「アファーマティブアクション」(是正のための改善措置)のための黒人優遇政策が、極端になってきているのだ。

まず、旧黒人区分民という理由で、経営やマネジメント、株式の所有などを禁じられていた人たちを、優先的に経営などに参画させなければならない範囲が年々広がっている。旧黒人分類の人々が株式を一定割合所有しなければならなくなったり、これまで黒人同様に被差別対象だったインド系・中華系を、旧黒人分類として扱うことができなくなりそうだ…。インド系・中華系の人材は、比較的優秀な人が多い傾向があるので、彼らを雇用できる枠が狭まることは、私たち雇用する側には痛手なのだ。しかも、2016年になってついに、「年度初めに立てた旧黒人優遇計画を履行できない場合は、管理職が禁固刑を受ける可能性もある」となるようで、黒人優遇政策を義務付けられている大企業や、中央・地方政府と取引したり彼らの認可を受ける必要があるビジネスを手がける企業にとっては、対応が難しくなっているようだ。

したがって、政府からの補助金なども得て経営をしようと考えている企業は、こうした優遇政策をよく勉強した方が良いだろう。ただでさえ、資源安や、南アフリカ共和国の通貨であるランド安が進む現在、南アフリカ共和国での経済活動は、世界の中で相対的に軽視される方向に向かっている。その上、本来は失業を減らし、雇用を確保するためのこれらの施策が逆に作用してしまえば、「結果的に海外資本を締め出すことになるのではないか」と心配する南アフリカ人の経営者たちも少なくない。アパルトヘイトは終わったが、その影響が本格的になくなるまでには、まだまだ時間がかかるようだ。

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ソフトクリーム販売車に描かれたハイジらしき少女の絵。日本でアニメ化されたことはまったく知られていない模様。

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国内にある「cultural villages」では、先住民族の伝統文化に触れることができる。

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緑の渓谷「ブライデリバー・キャニオン」。南アフリカ共和国北東部にあり、世界三大峡谷の一つに数えられる。

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紫色の花は「ジャカランダ」。毎年10月ごろになると、南アフリカの街は街路樹に植えられたジャカランダによって紫色に彩られる。

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クリスマスの季節になると、ショッピングセンター内にもクリスマスの飾りつけが。南半球なのでクリスマスは真夏となる。

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反アパルトヘイト運動の後に南アフリカ共和国の大統領を務めた故ネルソン・マンデラ像。首都プレトリアにあるこの像は、高さ9メートルにも及ぶ。

構成/日笠由紀

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