初任給の手取りってどうなっているの?いつ支払われる?【プロが簡単解説】

就職したら、自分の収入で生活していくことは社会人の基本。それだけに最初のお給料、「初任給」はいつもらえるのか、どれぐらいなのか、生活費にどれくらいかかるのかは気になるところです。そこで、今回は、お給料の額面と手取り額の違いやその理由を専門家に聞きました。また後半では、さまざまな業界や職種の先輩たちのお給料の使い道とやりくりをご紹介します。

プロフィール 今泉叔徳(いまいずみ・よしのり)さん特定社会保険労務士 社会保険労務士法人大野事務所グループリーダー
東京都立大学(現、首都大学東京)法学部法律学科卒業。都内法律事務所にて労働法に関する実務を学んだ後、2005年大野事務所入所。労務管理に関するアドバイザリー業務やIPO(株式公開)支援コンサルティングなどに従事。

初任給の疑問!額面と手取り額が違う訳は?

厚生労働省の調査によると2018年の平均初任給は、大学卒で20万6700円でした(「平成 30 年賃金構造基本統計調査(初任給)」より)。しかし、これはいわゆる「額面給与」。「手取り給与」とは違います。

額面給与とは、基本給に残業代、交通費や各種手当を合計したものです。「額面金額」や「額面」とも呼ばれ、一般的に「月収」や「年収」はこの金額のことを指します。

また「手取り給与」とは、「基本給+各種手当-社会保険料や税金など」のことを指します。差し引かれる(控除される)主なものは以下の通りです。

額面から引かれるもの 1. 社会保険料

まず、毎月の額面給与から引かれるものの1つ目は「社会保険料」です。
社会保険料には、以下の3つの項目があります(これ以外にも、年齢によって介護保険料が引かれる場合もあります)。

健康保険料

医療保険制度の保険料。支払額の半分は会社が負担しています。金額は、健康保険組合もしくは全国健康保険協会(協会けんぽ)といった会社の加入する保険者によって異なります。

厚生年金保険料

年金を支給してもらうための掛け金です。こちらも支払額の半分は会社が負担。金額は、額面給与に一定の保険料率を掛けて算出します。保険料率は、日本年金機構が発表している「保険料額表」を確認するといいでしょう。

雇用保険料

失業給付などを受けるための保険のことです。金額の算出方法は、額面給与に一定の保険料率を掛けて算出します。保険料率は、「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」と3種類に分けられており、事業の種類によって異なります。厚生労働省が各年度で算出しています。

額面から引かれるもの 2. 税金

続いて、額面給与から引かれるものの2つ目は「税金」です。一般的に引かれる税金は、以下の2項目です。

所得税

額面給与に掛かる税金のこと。額面給与から社会保険料を控除した後の額に対して税率が決まっています。また、所得税は扶養家族などの数によっても変わってきますので、詳しい税率は国税庁が発表している「源泉徴収税額票」を確認しましょう。

住民税

都道府県が徴収する都道府県民税と、市町村が徴収する市町村民税(東京23区は特別区民税)の総称。こちらも、額面給与から社会保険料を控除した後の額に対して税率が決まっています。詳しい税率は、住んでいる場所によって異なるので、調べてみるといいでしょう。

また、住民税について注意しておいてほしいのは、前年の所得に対して課せられるものであるため、額面給与から引かれるのは「入社から2年目の6月」からになるということ。 ただしこれは、入社から1年目時点での「前年の所得」が非課税限度額以下だった場合に限ります。

初任給の手取り額を確認している新入社員

初任給よりも翌月の方が手取り額が減る!?理由は控除のタイミングにある

社会保険料のうち、「雇用保険料」は当月から差し引きされますが、「健康保険料」と「厚生年金保険料」は、通常前月の支払い分を翌月の給料から差し引きます。このため初任給と翌月では、控除額が異なります。

入社初月(初任給)と次の月ではどのくらい手取り額が違う?

それでは、具体的な例で紹介しましょう。
東京都在住の社会人1年目のAさん(扶養家族0人)の額面給与額は「20万円」でした。この場合、入社初月と翌月の手取り額はそれぞれいくらになるのでしょうか?

入社初月の給与(初任給)例

入社初月の給与(初任給)例

  • 健康保険料:入社初月なので控除なし
  • 厚生年金保険料:入社初月なので控除なし
  • 雇用保険料:厚生労働省「平成30年度の雇用保険料率 一般事業」より税率は「0.003」。したがって、雇用保険料は、「20万円(額面給与)×0.003(税率)=600円」となる
  • 所得税:国税庁が発表している「平成30年分 源泉徴収税額表」から算出すると、「20万円(額面給与)-600円(雇用保険料)=19万9400円」の場合は「4770円」となる
  • 住民税:前年度の所得が非課税限度額以下だったので、控除なし

入社翌月の給与例

入社翌月の給与例

  • 健康保険料:「協会けんぽ 平成30年度保険料額表(東京都)」を基に算出すると、額面給与20万円の場合は、「9900円」となる
  • 厚生年金保険料:年金機構「厚生年金保険料額表(平成29年9月分~)」を基に算出すると、額面給与20万円の場合は、「1万8300円」なる
  • 雇用保険料:厚生労働省「平成30年度の雇用保険料率 一般事業」より税率は「0.003」。したがって、雇用保険料は、「20万円(額面給与)×0.003(税率)=600円」となる
  • 所得税:「20万円(額面給与)-2万8800円(社会保険料)=17万1200円」を基に、国税庁が発表している「平成30年分 源泉徴収税額表」から算出すると、「3770円」となる
  • 住民税:前年度の所得が非課税限度額以下だったので、控除なし

入社翌月以降の社会保険料3項目の控除額は、「合計2万8800円」となりました。一般的には、初月以降は額面給与の8割程度が手取り額として残ることになります。

通勤手当や住宅手当が付くと、控除額も変わる

前述した通り、社会保険料や税金は「額面給与」に対して税率が決まっています。もし会社が通勤手当や住宅手当を支給している場合は、手当を加算した額に対して料率が適用され、差し引かれます。しかし、手当によっては、所得税や社会保険料がかかる場合とかからない場合があります。

所得税がかかる手当・かからない手当

例えば、所得税では通勤手当は一定の範囲内であれば「非課税対象」となる一方で、住宅手当は金額にかかわらず「課税対象」となります。これ以外にも、以下のような違いがあります。

【所得税がかかるもの】
基本給、残業手当、住宅手当、家族手当、休日出勤手当、役職手当、退職手当など
【所得税がかからないもの】
通勤手当、制服、社宅、旅費、技術習得費用など

社会保険料がかかる手当・かからない手当

続いて、所得税では非課税対象だった通勤手当は、社会保険料ではかかってきます。これ以外にも、以下のような違いがあります。

【社会保険料がかかるもの】(標準報酬月額に含まれるもの)

  • 基本給、家族手当、残業手当、役職手当、通勤手当、住宅手当など
  • 食事、住宅、通勤定期など現物で支給されるもの など

【社会保険料がかからないもの】

  • 結婚・出産祝い金、見舞金など恩恵的なもの
  • 出張費など、実費精算するようなもの
  • 退職金など一時的・臨時的に受けるもの など

通勤手当と住宅手当が付いた場合の手取り額はどのくらい?

では、東京都在住の社会人1年目のAさん(扶養家族0人)に通勤手当と住宅手当が付いた場合の手取り額がどのようになるのか、見てみましょう。

通勤手当、住宅手当が付いた入社翌月の給与例

通勤手当、住宅手当が付いた入社翌月の給与例

額面の支給額は、通勤手当(1万円)と住宅手当(3万円)の計4万円の差があるにもかかわらず、手取り額との差額は「3万3380円」となりました。

  • 健康保険料:「協会けんぽ 平成30年度保険料額表(東京都)」を参考にした結果、額面給与24万円の場合は、「1万1880円」となる
  • 厚生年金保険料:年金機構「厚生年金保険料額表(平成29年9月分~)」によると、額面給与24万円の場合は、「2万1960円」となる
  • 雇用保険料:厚生労働省「平成30年度の雇用保険料率 一般事業」より税率は「0.003」。したがって、「24万円(額面給与)×0.003(税率)=720円」となる
  • 所得税:「24万円(額面給与)-1万円(通勤手当)-3万4560円(社会保険料)=19万5440円」を基に、国税庁が発表している「平成30年分 源泉徴収税額表」から算出すると、「4630円」となる
  • 住民税:前年度の所得が非課税限度額以下だったので、なし

給与が支払われる時期は、会社によって異なる

給与が支払われる時期は、必ず4月(入社した月)なのでしょうか?答えは「NO」です。支払われる時期は会社によって異なります。

例えば、4月末までの基本給を4月25日に支払い、残業代だけを翌月に加算する会社もあれば、4月末日までの労働を残業代も含めて計算し5月から給与の支払いが始まる会社もあります。

給与計算の締め日と支払日は、社員に明示することになっていますので、就業規則や通知書類などで入社時に示されます。特に一人暮らしの人などは、給料の振り込み日が1カ月違えば、家賃の支払いなど影響も大きいので、入社時に書類を確認しておくといいでしょう。

先輩たちの給与の使い道&やりくりのコツ大公開!

続いて、社会人の先輩たちが毎月どのようなことにお金を使っているのか、そしてどのようなやりくりをしているか、聞いてみました。

Case1. 手取り額18万円・東京都で一人暮らしの男性

T.Mさん/東京都在住/一人暮らし/男性/メーカー勤務/営業職/1年目

東京都・一人暮らし/男性の給料のやりくり例

やりくりのポイント

家賃は会社の全額補助があり、光熱費も1万円の補助があるためほぼ0円で済んでいる。営業手当も1日につき900円出ているが、昼食・途中の時間調整のための喫茶店代などで、オーバーしてしまうこともたびたび。朝はパンだが、昼・夜外食のため食費の比率が高い。被服費はワイシャツやスーツのクリーニング代も含めたもの。交際費は月によって大きく変わるが、それぞれの月で残額をそのまま貯金している。

Case2. 手取り額16万円・東京都で姉と二人暮らしの女性

A.Kさん/東京都在住/姉と同居/女性/エンタテインメント会社勤務/事務職/1年目

東京都・姉と二人暮らし/女性の給与やりくり例

やりくりのポイント

姉と二人暮らしのため家賃や光熱費は折半。食費は1週間交代の当番制なので食材費など無駄がなく助かっている。夕食は基本的に家で食べ、昼も弁当を持って行き食費を節約。貯金は自動引き落としにして残った範囲で、書籍や交際費、化粧品・美容代などをやりくり。月の後半になると残高を見ながらなんとか赤字にならないようにしている。もう少し貯金に回すことが目下の目標。

Case3. 手取り額21万円・山口県で一人暮らしの男性

M.Kさん/山口県在住/一人暮らし/男性/建設会社勤務/事務職/2年目
※給与の情報は1年目同時のもの

地方・一人暮らし/男性の給与やりくり例

やりくりのポイント

残業の量によっては額面36万円になる月もある。家賃は会社の補助があり、車も仕事で使うため駐車場代はかからずガソリン代も補助が出ている。意外にかかっているのが被服費。学生時代に比べ3サイズダウンしたため、大幅に買い替えになった。結婚式に出席したりすると赤字になる月もあるが、その場合はボーナスで補填(ほてん)。通常は、月のお給料で残ったお金は全額貯金に。

自分なりの節約術で手取り額の範囲でやりくりをしよう

社会人になると、自分の給与の中で生活を送ることになるでしょう。先輩たちのように無理のない範囲で上手に節約し、社会人ライフを楽しみましょう。

取材・文/中城邦子
撮影/鈴木慶子

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