インドのグルガオン(首都デリーの近郊都市)にある日系メーカーの現地法人に勤務。日本人駐在員ファミリーとのホームパーティーを通じた家族ぐるみの付き合いや、写真サークルでの活動が現地での楽しみ。現地の気候に育まれたおいしい果物を味わうのも日々の楽しみのひとつ。
非常に狭いパーソナルスペース
こんにちは。はるおです。今回は、インドの人々についてお話しします。
インドの人々についてとても特徴的だと思うのが、家族を非常に大事にすること。例えば、インド人スタッフが会社を休む理由は、圧倒的に「家族の体調不良」が多く、それだけ家族思いであることがわかります。しかもそんなときは家族総出で病院に行くので、待合室はいつも大混雑です。
加えて、インドでよく見るのは男性同士で手をつないで歩いている光景。決して男性同士のカップルというわけではなく、単に仲が良いだけのようです。これは推測ですが、体を密着させることで、相手とつながっているという感覚を楽しんでいるのではないでしょうか。意外と寂しがり屋が多いのかもしれません。あるいは、インドでは人と会うとよく握手をするので、その延長線上にある行為なのかも? 実際、私自身も毎朝毎晩、出勤時や退社時に同僚と握手しますし、イベントなどでは一人ひとりのお客さまと握手して回るので、そのせいでたまに手が痛いことがあるくらいです。
なお、男性同士が手をつないでいることはよくありますが、男女が手をつないで歩いている光景はめったに目にしません。宗教的、あるいは文化的な背景があるせいなのかもしれませんが、公の場で男女がオープンに愛を表現することは、好まれない傾向にあります。結婚も、いわゆる「恋愛結婚(Love marriage)」をするカップルは非常に少なく、大多数は親が結婚相手を用意する「お見合い結婚(Arranged marriage)」です。
インドで暮らしていると、彼らには列に並ぶ習慣がないことに驚かされます。スーパーのレジに並んでいても、逆側から乱入してきたインド人があっさりと優先されてしまう始末。どうやら、入った者勝ちらしく、店員も後から入ってきた方を優先してしまうのですが、まったく悪気はないようです。病院の受付、空港のチェックインカウンターなど、あらゆる場所で同じ状況なので、列に並ぶときは前の人に密着しなければなりません。隙間があると、誰が入ってきても文句が言えないからです。男同士で手をつなぐ行為とも通じているのかもしれませんが、インドでは、人と人との間の「パーソナルスペース」が狭いことをつくづく感じます。
なお、道路でも似たような状況が見受けられます。派手なクラクションや追い抜き、逆走、当て逃げはしょっちゅう。道路を牛の集団が横断していて大渋滞になることも決して珍しくありません。そのため、外国人駐在員はたいてい「自分で車を運転することのないように」と会社から言い渡されています。当社でも、駐在員にはインド人ドライバーをつけてくれているので、自分では運転せずに済んでいます。
赴任生活でインドの踊りをマスター
「賄賂社会」であることも、インドの特徴のひとつ。役所などでの手続きは、余分にお金を払えば圧倒的に処理スピードが速くなります。空港の税関職員やビザ発給担当者、警察など、公務員が平気で賄賂を要求してくることにはただ驚くしかありませんが、インドで生まれた娘のビザ取得がなかなかできなかったときは、仕方なく1万円程度の現金と万年筆を渡すことに。その甲斐(かい)あって、すぐに発行されました。
なお、インドでは、接待の場が一種の“飲み比べ”となることで有名な中国と違ってお酒を強要されることはまずありません。お酒を飲む人も割合的には少ないし、飲む人でも、酒量はほどほどといった印象です。その代わりに「踊り」が大好きで、インド映画の音楽に合わせて激しく踊ります。忘年会のような会社のイベントでは必ず踊るし、業務の一環で行う「決起集会」的なイベントでも踊りまくります。決まった型などはなく、ディスコのように思い思いに踊るので、私もこちらに赴任して以来、散々踊りまくり、インド人と一緒にインド音楽に合わせて踊ることにまったく抵抗がなくなりました。なにしろ、彼らはダンスタイムになると、私をステージに呼び、自分の踊りを自信満々に披露しつつ、「こう踊るんだ!」みたいに教えてくれるのです。そうした経験を繰り返したおかげで、抵抗がなくなったのかもしれません。ダンスタイムにかかる曲は、大ヒットした映画の中で踊られている曲が多かったので、特にポピュラーな曲は、自宅のDVDプレーヤーで見ていたインド映画を通じて自然に覚えました。なお、散々踊った後、23~24時にディナーを開始するのが通例なので、皆さん本当に宵っ張りだと思います。
次回は、私のグルガオンでの生活についてお話しします。
カップルというわけではなくても、男同士で仲良く手をつなぐインド人。周りの人が気に留める様子もない。
病院の待合室。家族総出で大荷物を持って来院する人もいる。
同僚の結婚式。きらびやかな衣装に身を包んだ新郎新婦を祝いながら、出席者たちはやはり踊りまくる。
菓子店内の行列。前の人との間隔を詰めて割り込まれないようにしなければならない。
菓子店の菓子は、「ベジタリアン」は緑、「ノンベジタリアン」は赤のマークで表示されていることが多い。
構成/日笠由紀