インターン参加の日なのに寝坊した!
インターンの会場に向かおうとしたら、駅の出口を間違えて道に迷った!
インターンの日程を1日勘違いしていた!
思わぬ事態に、頭が真っ白になる経験は誰にでもあります。
今回は、インターン(インターンシップ)に遅刻することが確定したときの対処法を、人事として新卒採用を20年担当してきた採用のプロ・曽和利光さんに聞きました。
曽和利光(そわ・としみつ)
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。最新刊『人事と採用のセオリー』(ソシム)も好評。
まずは、企業に遅刻することを連絡する
遅刻が判明した時点で、企業に対し一番にすべきことは「遅刻の連絡」です。
その際、以下2点を簡潔に伝えます。
- 到着予定時間の伝達
- 遅刻する旨のおわび
丁寧なおわびは、インターン終了後で問題ありません。遅刻を伝える際に長々と理由を述べるのはやめて、急いで現地に向かいましょう。
企業への連絡・おわびの方法は?【例文も紹介】
急ぎの連絡なので、電話を使うこと。時計の針は戻せないので、これからできることに目を向けて落ち着いて行動しましょう。
以下で、開催時間前に遅刻の連絡をする場合と、開催時間を過ぎてから連絡をする場合の例文を紹介します。
開催時間前に遅刻の連絡をする場合
本日御社のインターンに参加予定の〇〇大学〇〇学部の**(名前)と申します。人事の**様はいらっしゃいますか。
(電話が担当者に変わったら)
お忙しいところ、失礼いたします。〇〇大学〇〇学部の**(名前)です。
インターン開始時間より15分遅れてしまいます。ご準備いただいている中、ご迷惑をおかけして、大変申し訳ございません。急いで向かいますので、どうぞよろしくお願いいたします。
担当者につながらない場合、電話を受けた社員の方が、その日にインターンがあることを知らないケースもあります。
まずはインターン参加予定の旨を説明した上で、大学名、自分の名前、到着予定時間を伝えましょう。
日程間違いやインターン自体を失念していたなど、「インターン開始時間が過ぎてから気づいた!」いたというケースもあるかもしれません。たとえどんなに時間が過ぎていても、ミスに気づいた時点ですぐ連絡するのが最善です。電話連絡は必ず入れましょう。
開催時間を過ぎてから連絡をする場合
本日御社のインターンに参加予定の〇〇大学〇〇学部の**(名前)と申します。人事の**様はいらっしゃいますか。
(電話が担当者に変わったら)
〇〇大学〇〇学部の**(名前)です。
開始時間が過ぎているところ、大変申し訳ありません。インターンの日程を1日間違えて認識しておりました。遅刻の連絡もしないままこの時間になってしまい、本当に失礼いたしました。
今から急いで向かいたいと思いますが、到着が1時間後になってしまいます。参加は可能でしょうか。
(可能だと言われたら)
では、できるだけ早く到着できるよう急ぎます。大変ご迷惑をおかけしており、誠に申し訳ありません。どうぞよろしくお願いいたします。
大幅な遅刻の場合は、インターンのプログラム進行上、参加が難しいケースもあります。到着予定時間を伝えた上で、その時間から参加が可能なのか対応を企業側に相談し、先方の意向に沿って動くようにしましょう。
やってはいけない遅刻の対処法とは?
遅刻は、誰にでも起こりうるミスです。だからこそ、「遅刻したこと自体よりも、遅刻した後の対処法」の方が企業への印象を大きく左右します。
インターンの遅刻はいわば「ミスのリカバリー方法を学ぶ機会」。では、どんなことに気をつけるべきなのでしょうか。
印象を悪化させる2つの対処法として「嘘をつく」「到着予定時間に遅れる」があります。企業側の心理を解説していきます。
やってはいけない遅刻の対処法(1)嘘をつく
遅刻の理由は正直に伝えることが一番です。自分の非を潔く認め、同じことを繰り返さないよう気をつける旨を伝えればそれでいい。もちろん、自分に過失がない場合も、その事実を伝えればいいでしょう。
絶対にやってはいけないのは、嘘をつくことです。「電車が遅延しました」と嘘をついたところで調べればすぐにわかりますし、ほかのさまざまな言い訳も、嘘はたいていバレるものです。
遅刻自体はささいなことであっても、自分を正当化するために嘘をつく、つまり隠蔽(いんぺい)する行為は、人の評価をかなり悪化させます。遅刻という、誰でもやってしまう小さなミスすら隠蔽するとなれば、仕事でミスが生じたときに隠そうとするだろうと容易に想像ができるからです。
業務上でミスが起きたときは、その理由を追究して初めて改善策を考えられます。ミスを隠されてしまえば、物事の本質的な解決に近づかず、企業としては大変なロスになるのです。保身のための小さな嘘が信頼を失う、余計な代償は避け、正直に頭を下げましょう。
やってはいけない遅刻の対処法(2)到着予定時間に遅れる
遅刻のリカバリーミスで多くの人がやってしまうのが、自分で伝えた到着予定時間よりさらに遅れてしまい、“2度目の遅刻”をすることです。
遅刻が判明したとき、人はその場しのぎの安心感を得たいと思ってしまうため、10分遅れでギリギリ到着できるかどうかという時間でも、「10分遅れます」と伝えがちです。しかし、結局15分遅れの到着になってしまい、自分が伝えた時間からまた遅刻することに。こうなれば、相手の心証はさらに悪くなります。
一方、「15分遅れます」と伝えた上で、10分遅れの到着であれば「予定より早く着いた」という点にフォーカスされ、遅刻のイメージは和らぎます。これは、心理学ではゲインロス効果と呼ばれるものです。最初にマイナス要素を伝えた上でその後プラス要素が加わると、大幅にプラスの印象を与えてくれる効果のことを指します。
5分でも15分でも、遅刻は遅刻です。到着予定時刻は余裕を持って伝えるようにしましょう。
インターンに間に合わない場合、このままばっくれてしまってもいい?
遅刻が確実になり、「どうしよう…」とパニック状態に陥ると、「いっそのこと、このままばっくれてしまった方が楽なのでは」なんて思いに駆られることもあるでしょう。
でも、企業側にとって、無断欠席の上、音信不通になるほど迷惑なことはありません。
何の連絡もないままインターンに来なくなるということは、自社の社員が「突然会社に来なくなり消息を絶つ」と同じことです。事故や事件に巻き込まれたのではないかと大騒ぎになるでしょうし、業務の引き継ぎ上、お客さまにも大変な迷惑がかかります。これからの長い社会人生活を考えても、絶対にするべきではないでしょう。
インターンをばっくれようと思う心理には、「遅刻して顔向けできない。この企業から内定をもらえなくてもいいから逃げてしまおう」という保身があるのかもしれません。確かに、その場は逃れられるかもしれません。
しかし、社会は思ったよりも狭いものです。インターンを受けようとしたということは、その業界に興味があるということ。つまり、似た業界や企業に入る可能性があるということです。社会人になってから、そのインターン先の関係者に会い、一緒に仕事をすることがないとは限りません。その際、信頼が失われた状態から相手との関係を築くのは難しいものです。長いキャリアの中で、人と人との信頼関係は何よりも大切な財産ですので、社会人をスタートさせる前からわざわざ自分の顔に泥を塗る行為をするべきではありません。
企業にとってだけでなく、将来の自分のためにも、インターンの無断欠席や企業と音信不通になることは、絶対にやめましょう。
インターンは、社会に出る前に就業体験ができる機会です。「学生だから大丈夫だろう」と安易に考えるのではなく、社会人としてどう振る舞えばよいかを考えてみましょう。
取材・文/田中瑠子