「やりたいことがわからない」という就活生の悩み。NON STYLE石田明さんに聞いてみたら…?

NON STYLE石田明さんインタビューカット

プロフィール 石田 明(いしだ・あきら)1980年、大阪府生まれ。2000年、高校時代の同級生だった井上裕介とNON STYLEを結成。2008年にM-1グランプリ優勝。バラエティ番組などで活躍する一方、舞台出演も多く、脚本・演出も手掛ける。主な舞台出演作に『スピリチュアルな1日』(2011)、『ダンガンロンパ THE STAGE~希望の学園と絶望の高校生~』(2014)、『新・幕末純情伝』(2016)、『熱海殺人事件 CROSS OVER45』『火花~Ghost of the Novelist~』(2018)、『銀幕の果てに』(2019)など。

お笑い芸人として活躍するNON STYLEの石田明さん。実は、さまざまな舞台に出演し、時には作・演出も手掛ける舞台人でもあります。最新出演作『相対的浮世絵』(https://www.soutaitekiukiyoe2019.com)の話を入り口に、学生時代は「めっちゃ暗かった」という石田さんが、現在のお仕事に就くまでのお話をうかがいました。

一見するとポップなのに、えぐいところを突いてくるんです

―上演中(2019年10~11月)の舞台『相対的浮世絵』は、亡くなったはずの兄弟や旧友と再会する、かつての同級生たちの会話劇。石田さんが演じられる関守(せき・まもる)は後半に進むに連れ、本性が見えてくる面白い役柄ですね。

そうなんです。まさかの本性がね(笑)。ネタバレになるから言われへんけど。

―1カ月ほどお稽古されたそうですが、いかがでしたか?

日々、変化していきましたね。やり始めた時は「石田寄りの関」でしたが、今は「関寄りの関」になってきています。

―どのあたりが違うんですか?

関は、0か100かで考える現実主義の人。僕は65~70ぐらいをずっとさまよいたい人間なので、最初は関の「0か100か」の強さに勝てなくて。でも、ほかの人たちとのやりとりを稽古していく中で、少しずつつかめてきた感じですね。

―5人の人物が登場しますが、ほかの皆さんとは初共演ですね。

そうです、全員初めての方たちで。全員が違うリズムを持っているので、それがまた面白いですね。謎のセッションみたいで(笑)。

―亡くなったはずの同級生と再会するというのは、かなりイレギュラーな状況ですが、5人のたわいのない会話が面白くて引き込まれます。

本当にくだらない、男子の会話ですね(笑)。だから、稽古場も男子校みたいですよ。ホンマにくだらない話ばかりしています。

―石田さんも脚本をお書きになりますが、土田英生さんの脚本はどう読まれましたか?

会話の面白さはもちろんですけど、こんなにポップなのに、えぐみがある(笑)。結構えぐい人間の本質を突いてくる。そこがすごいですね。しかも、なかなかディープなところを突いているのに、最後、カラッと終われるんやなって。

―そうですね。

高低差だけを考えると、鼓膜はじけそうなぐらいなんですけど(笑)。全体的に、物語のきっかけになる「振り」と「キャラクター」がしっかり書かれているので、真面目にやればやるほど面白い脚本だなと思います。変にふざける必要がないですよね。そのキャラクターで全力で生きるのが、一番面白くなる気がします。

NON STYLE石田明さんインタビューカット

「こんなおもろい世界があんねんな」と思った

―石田さんは舞台出演も多いですね。もともと「生の舞台でお客さんと対峙(たいじ)すること」に面白みを感じて、この世界に入られたそうですが、石田さんの中で舞台とお笑いは同じところにあるものなんでしょうか。

はい、一緒ですね。区別はまったくないです。区別があるとすれば、舞台みたいな「生もの」か、テレビのような「映像」かの違いだけで。

―生の舞台、どんなところに魅力を感じますか?

舞台でも漫才でも、お客さんが乗り切れていないときは、なんとなくわかるんです。客席のエネルギーが伝わってくるので。その時にぐっとつかみにいって、どうやって関心を持ってもらうか。そういうところですね。

―学生時代から、そういうことがお得意でした?

いや僕はもう、めちゃくちゃ暗かったです(笑)。

―生の舞台にひかれたきっかけは?

家にテレビがなかったので、遊びといったら、みんなと体を使うことしかなかったんです。そんな中、姉がお笑いにハマって。当時、大阪にあった二丁目劇場に一緒に行ったんですよ。その時に観た漫才が、僕にとって初めての娯楽やったんです。「すげえ面白い、こんなおもろい世界があんねんな」と思って。

―おいくつの時ですか?

15歳ぐらいですね。その後、家にテレビが来て、その人たちのネタを見たんですけど、「あれ、あの時の感動がない」と。でも、また劇場に行ったら、「やっぱりおもろいやん!」って。なんなんこれ?と思ったら、生で受け取るパワーが違うんです。

―生の舞台ならでは、ですね。

生の舞台は、お客さんが面白いと思うところに自分でピントを合わせにいくじゃないですか。でも、テレビは誰かの感覚で編集されている世界。自分が面白がっているポイントじゃないところにスイッチングされているんですよね。

―面白いと思うところに自分でスイッチングする…学生時代は暗かったとおっしゃっていましたが、周りのこともよく見ているタイプでしたか?

見ていましたね。常にさめた目で(笑)。それは周りだけじゃなく、自分の行動についても。暗かったから、浮かれていないのがよかったと思います。人気者って浮かれているじゃないですか(笑)。

―そうですね(笑)。

クラスの中心みたいな感じではなかったし、ボクシングで言えば、ずっと王道じゃない “アウトボクシング”で戦ってきた感じです。ただ、当時は手までは出せなかったのが、今は出せるようになりました(笑)。

―それは、何がきっかけなんですか?

この仕事を始めたことだと思います。

―生の舞台の面白さに気づかれた後、現在のお仕事に至るまでは?

18歳で普通に板前として就職しているんです。その後に高校の同級生ふたりに「石田、お笑いやろうや」って言われてやり始めたんですけど、全然ダメで、1年ぐらいで解散して。その次は、劇団に入ったんですけど、これがめちゃめちゃおもろない劇団で。今でも覚えているせりふが「骨が全部知ってるよ」。

―(笑)

ほぼ無言の舞台で、関西でこんなの絶対にはやらんなと(笑)。そういうのを経て、NON STYLEを組んで。道ばたでやった(=路上ライブ)のはデカかったですね。すごく勇気を出せるようになって。アウトボクシングでパンチを出せるようになったのは、この時だと思います。

―詳しくうかがえますか?

最初は怖かったんですよ。声も出なくて、小さい声でやるから、誰も立ち止まってくれないんです。取りあえず、商店街で20本ダッシュしたら、テンションが上がって、「どうもー!」って大きな声で出ていけて。そうしたら、みんな結構笑ってくれて。

―すごいですね。

「オレが考えていることは、ちゃんと届けば、人が笑ってくれるんや」と。「そうか、学生時代は面白いと思っていたことを誰にも届けていなかったんや」と、届ける努力をしていなかったことに気づいたんです。だから、それからは届くように頑張ってきましたね。でも、しゃべるのは今でも得意じゃないです(笑)。いつも緊張します。

―ネタを書いたり、脚本を書いたりする方がお好きですか?

好きですね。作るだけの方が好きです。人前に出るのは好きじゃないです。漫才でも舞台でも、人と一緒なら楽しいんですけど、1人で1時間、講演してくださいって言われたら、迷うことなく断ります(笑)。

―お笑いで食べていくのは難しいとよく言われますが、食べていけると思ったのはいつごろでしたか?

職業にしようという感覚は、どこなんかな。井上は就活しながら、吉本の活動していましたからね。僕が一つ強かったのは、1回就職していたことですね。次の就職先として芸人を選んでいるから、食えなくて当たり前というか。板前時代の方が食えなかったんですよ。

―そうだったのですね。

板前の時は一番若手ですから、誰よりも早く店に入って、一番最後に帰って。それで、手取り11万でしたからね。芸人はもうかれへんと言われるけれど、板前のころと比べたら、めっちゃ時間あるやんと思ったし。だから、僕は普通に吉本に就職したつもりでいました。

―好きな仕事をしているというところも強みでしたか?

それはそうかもしれないですね。漫才も料理も好きでしたし。あと、自分の中で過信がないというか…。

―先ほど、学生時代は周囲をさめた目で見ていたとおっしゃっていましたが…。

そうなんです(笑)。僕、いつもどこかで「こんなもんでしょ」って思うんです。今も「石田もっと(給料)もらわんとあかんで」と先輩から言われたりするんですけど、いやいや十分ですよって。自分のやっているレベル以上はもらっていますから。

―その考え方は、どういうところから来るのでしょう。

芸人はフリーランスみたいなものなので、自分で稼ぐことが考えの軸にあるんですよね。でも、僕は板前を経験しているから、まずは会社の利益を上げなアカンっていう考えがあるんです。だから、自分でイベントをやるときも、どれだけ予算を抑えて、会社の負担をなくしつつ売り上げを上げられるか。その中でどれだけ演者側が楽しめるかというのを考えるんです。

―そのバランスの中で、考えるんですね。

そうなんです。さめた目があるのもそうですし、僕は全体的に欲望が薄いですね(笑)。もともとの性格でしょうね。多分、職人気質というか。オーナーにはなられへんけど、黙々とやりたいっていう。雇われる側が合っているんですよね。

NON STYLE石田明さんインタビューカット

やりたくない仕事は、加点方式で面白さが見つかる

―ところで、就活生の中には、「やりたいことがわからない」という人も少なくないようです。石田さんは「やりたい仕事」について、どう思われますか?

やりたい仕事…芸人を始めたころは、僕のやりたいことなんて1割もできていないですよね。多分、今だって半分もできていないと思うんですよ。やりたくないことの方が多いのが当たり前なので、やりたくないからってやめちゃうのはもったいないなと思います。

―その中に面白いことがある、と?

そうですね。板前のときも、料理が好きだから入ったけど、僕がやったことといえば、鍋を洗って、砥石(といし)を磨いて、ぼろぼろの包丁を研いで、あとはアユをひたすらデコピンし続けるっていう(笑)。

―気絶させるってことですか?

そうです。そのあと、焼き場の人に渡すんです。そういうことをひたすら繰り返すだけなので、面白いとかじゃないですよね。だけど「今日、石田まかない作れ」って言われたら、それは楽しい仕事でしたし、朝、料理長と一緒に市場に行くとか、だんだん楽しいことが増えていって。

―面白くなっていったんですね。

逆にやりたい仕事というので入っちゃうと、減点方式になっていくから、つらくなったりすると思うんです。実は、やりたくない仕事の方が加点だから、「あれ、やってみたら、結構楽しいやん」てなることも多いので。それはいいのかもしれないですね。

―さめた目から入るのも悪くないってことですね。

入ってみたら面白いことって、ありますからね。生の舞台にしか興味がなかったから、テレビの仕事は全然興味がなかったけど、やってみたら、こういう仕事は楽しいなとか、でもやっぱりこれは好きじゃないなとか、同じテレビでもいろいろな仕事があって。舞台はもともと好きでしたけど、その中で嫌いなところもやっぱりあるし。

―先ほど、お客さんが乗っていないときは、ぐっとつかみにいくというお話がありましたが、就活の面接にも通じるところがあるように思います。面接では、緊張してしまう人が多いようです。

緊張は、していいものだと思うんです。緊張せえへんくなる方が人生もったいないと思うので。いろいろ慣れて鈍感になって、どんどん緊張することが減ってきますし。だから、「緊張できるというのは、すごくいいことなんだ」ということは、覚えていた方がいいと思います。

―勇気づけられますね。

僕も緊張しまくりましたから。昔、トーク番組に出たときに、「このトークを、この“間”で、このタイミングで、この言い方で」って決めて出ていったら、がちがちになって何も言えないんですよ。「こう話さなあかん」って決めていると緊張するんだと思うんです。もし決めるなら、何かひとつに絞った方がいいんですよ。

―大事なことは、ひとつだけにするんですね。

そうです。あとは、自分の感覚だけで。下手でもいいから、自分の言葉で話すことが大事なんです。漫才も、僕の書いたせりふを井上が言っても面白くないんです。井上が言いたい言葉の方が受ける。それはアイツの言葉になっているから。人柄が伝わることが大事だから、下手でもいいんです。熱量が伝わるわけだから。

―自分の感覚だけで臨むのが不安という人に向けて、何か準備できることはありますか?

その場で考えて、自分の言葉で答える自信がないなら、まずは面接マニュアルの定型文を覚えて、それをいろいろな人に話してみるといいと思います。ちょっとずつ自分の言葉に崩していくんです。

―自分の言葉にしていくんですね。

そうです。トークでもせりふでも、最初に話した時が一番面白いんですよ。感じた時の熱量が全部出るから。その後は、最初の面白さの焼き直しになるから、少しずつ面白くなくなっていくんです。でも、ずっと人に話し続けていると、ほんまに自分が面白いと思っている話はちゃんと面白くなって、自分の言葉になっていくんです。それをやってみたらいいんじゃないかと思います。

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人生の曲がり角に差し掛かった、かつての高校の同級生たち。高校時代に事故で亡くなったはずの兄弟や同級生と再会し、懐かしいノリで盛り上がるが、ある事件の話が出ると風向きが変わって――。最後まで飽きさせない、土田英生作の傑作コメディ。
演出:青木豪
作:土田英生
出演:山本亮太(宇宙Six/ジャニーズJr.)、伊礼彼方、石田明、玉置玲央、山西惇
東京公演:10月25日(金)~11月17日(日)下北沢 本多劇場
大阪公演:11月22日(金)~24日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
公式サイト:https://www.soutaitekiukiyoe2019.com

取材・文/多賀谷浩子
撮影/中川文作

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