【絵を描く仕事に就きたい人向け】どんな仕事、働き方がある?就活で気をつけるポイントは?

就活を進めていくと、自分の好きなことや価値観について考える機会が出てくるでしょう。例えば、芸術系の学校に進学したわけではないけれど、絵を描くことが好きで、関連する仕事に就けたら…と考えている人もいるのではないでしょうか。

「絵を描く仕事」は具体的にどんな種類があり、どういった働き方の選択肢があるのでしょうか。また就職したいと志望したとき、就活を進める上でどんなことに気をつけるとよいのでしょう。数多くのクリエイターを輩出しているデジタルハリウッド大学のキャリアカウンセラー・座間味涼子さんに話を聞きました。

デジタルハリウッド大学・座間味涼子さんプロフィール写真プロフィール 座間味 涼子(ざまみ・りょうこ)デジタルハリウッド大学キャリアセンター・マネジャー。デジタルハリウッド大学の学生のキャリア相談を担当。近年増えている留学生の就活相談などにも対応している。GCDF-Japanキャリアカウンセラー保有。

絵を描く仕事の種類、仕事内容は?

まず、絵を描く仕事にはどのような種類があるのでしょうか?実際に絵を描く仕事だけでなく、絵を描くことが強みとなる仕事も含めた4パターンの仕事を座間味さんが紹介してくれました。

イラストレーターとして働く

広告や雑誌、商品パッケージ、Webサイトなどで使用するイラストを描く仕事です。イラストが使われる場面は多岐にわたりますが、自分ならではのテイストで売っていくことができるプロのイラストレーターの数は、かなり限られてきます。というのも、アーティストのように自分の好きなものを自由に描いていくより、「こういうイラストを使いたい」というクライアントのニーズがあって、それに見合ったものを提供する機会の方が多いからです。

また、イラストのテイストに流行があるため、今の時代に求められるイラストを描けるスキルも必要となります。

働き方も、正社員として企業が採用するケースは多くないでしょう。イラスト専門の広告会社がイラストレーターを採用するケースはありますが、会社の数が少なく、クライアントから依頼されたイラストを描くのが業務になるので、自分のテイストと異なるイラストを描く場面も出てきます。

ただし最近では、企業に所属しなくても自分の作品をSNSやイラスト専門のサイトに投稿して、一般の人にイラストを購入してもらったり、企業の人の目に留まって仕事の依頼につながったりするケースも増えてきています。

2Dデザイナー、3DCGデザイナーとして働く

ゲームメーカーやゲームの制作会社に就職し、ゲームのキャラクターや背景、武器、ゲームの世界観などを描く仕事です。企業によってデザイナーと言ったり、2Dデザイナーやキャラクターデザイナーと細分化されていたりと、職種名や業務内容はさまざまです。

2Dのデザインを3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)技術を使って、奥行きのあるCG作り出す3DCGデザイナーという仕事もあります。工程ごとにモデラー、アニメーター、エフェクターなどのポジションがあり、3DCGの専門性が必要とされますが、ポジションによって絵心が必要とされる場合もあります。

2Dデザイナー、3Dデザイナー共に新卒の採用募集は多く出ています。ただ、技術力が必要となるため、その分野を専門的に学んだ経験が必要でしょう。雇用形態も、正社員や契約社員のほか、業務委託(企業と雇用関係を結ばず、企業と対等の立場で仕事の依頼を受ける雇用形態)としての働き方などもあります。

アニメーターとして働く

アニメのキャラクターや背景、動きなどの作画を担当する、アニメーターとして働く道です。就職先としては、アニメの制作会社などがあるでしょう。近年では、紙にペンで描いていくアナログの作画に加え、パソコンやタブレットを使ったデジタル作画の技術も求められています。

ただし、制作会社の数はあるものの、アニメーターを正社員として雇うよりも業務委託とするケースの方が多い状況です。アニメーターとして仕事を取るための高いスキルも求められます。

デザイナーとして働く

ポスターや商品パッケージ、雑誌などのデザインを担うグラフィックデザイナーやWebサイトなどのデザインを担当するWebデザイナーなどがあります。

絵を描くことがメインの仕事ではないですが、デザインを作り上げていくクリエイティブな仕事であるため、“絵心”があることは強みとなるでしょう。デザイン上必要になったイラストをイラストレーターに発注せずにデザイナーが担当するなど、「絵が描ける」ということが強みになるケースもあるでしょう。

近年ではWebデザイナーのニーズは高く、正社員での雇用もほかの仕事に比べると多くあります。Webサイトを見た人の数やどのように行動したかを計測することができるため、数字と対峙(たいじ)するなど、デザインだけでなく、数字やビジネス的な視点も求められるでしょう。

絵を描くことが好きな学生のイメージ

絵を描く仕事には、どんな働き方がある?

「絵を描く仕事」と言っても、さまざまな仕事があり、働き方にも選択肢があることがわかりました。続いて、それぞれの働き方にはどんなメリット・デメリットがあるか座間味さんに聞きました。

企業に勤める

企業に就職することの大きなメリットは、「安定」です。技術力を磨くことが必要な仕事だからこそ、雇用の安定が確保された環境でスキルを身につけられるのは、将来の糧になるでしょう。周りに同じ職種の先輩や同僚がいることで日常的に刺激を受けられ、モチベーションにつながることも、企業に勤める魅力になります。

ただし、企業に所属しているからこそ、求められる責任を果たさないといけないという側面もあります。また、自分が得意なテイストと異なるイラストでも、クライアントのニーズや依頼に応える品質で描けないといけない場面も出てくるでしょう。アーティスト志向が強いと窮屈に感じてしまうかもしれません。

フリーランスとして働く

個人で依頼を受けて仕事をする以外に、業務委託で特定の企業の案件を中心に受ける働き方などもあります。在学中からアルバイト先やインターン先、知人の紹介で依頼を受けてきた人は、学校卒業後すぐにフリーランスの道を選ぶパターンもあります。

フリーランスのメリットは、スキルがあれば自分のやりたい仕事を選べる自由度がある点でしょう。一方で“仕事を選べる”ようになるには、実績を積んだり人脈を広げたりするなど、仕事が舞い込む状態を自分自身で築いていかなくてはいけません。
営業に行く行動力や交渉力なども必要になり、絵を描く仕事以外の業務も自分で対応する大変さがあります。

副業で働く

本業では絵を描く仕事とは関係のない企業に勤めながら、副業で自分の作品を売るという働き方も増えています。最近ではSNSや作品を投稿できるサイトや、ネット上で仕事の外注・受注ができるクラウドソーシングサービスなどを利用して仕事を探せるようになってきています。

この方法なら、すぐにフリーランスになる自信や実績がないという場合でも、雇用の安定を保ちながら、絵を描く仕事のキャリアを探れます。ただ、企業によっては副業が認められないケースがあるので、入社前や副業を始めたいと思った際に就業規則を確認しておいた方がよいでしょう。

デジタルハリウッド大学・座間味涼子さんインタビューカット

絵を描く仕事に就くための就活とは?

絵を描く仕事に就くための就活を進める際のポイントについて聞きました。

ポートフォリオで自分のスキル・実績をアピール

絵を描く仕事の就活では、ポートフォリオの提出や持参を求められるケースが一般的です。就活時に使用するポートフォリオは、エントリーシートのように作品を使って自分のスキルを企業にアピールするために使います。在学中に仕事を受けたり、コンクールに応募して入賞したり、インターン(インターンシップ)で絵を描く仕事をしていた人は、それらを実績としてポートフォリオに盛り込むことができます。

ポートフォリオを作る際は、ただ作品を羅列するのではなく、「自分の作品やスキル、実績が企業の求めるものに合っている」ことを伝えられるように作品を選ぶ必要があります。例えば、子どもの絵を使った作品を多く手掛けているアニメの制作会社の選考を受ける際に、大人の女性を描いた作品だけを載せたポートフォリオを提出しても、「うちの会社に入って、子どもの絵を描くスキルを持っている人なのか?」が企業に伝わりません。

また、面接時には「ポートフォリオにある、この作品について説明してください」と聞かれることも多く、数ある作品の中からなぜそれを選んだのか、どんな意図で作成したのかなど自分の言葉で語る力も求められます。作品のほかにも表紙や目次などで相手に伝わる工夫をする必要もあるでしょう。

ポートフォリオが提出できない場合は?

絵を専門で学んだり在学中に絵を描く仕事を受けたりしたことがない場合、ポートフォリオを制作することが難しい人もいるでしょう。就活時だけでなく、インターンでも、ポートフォリオが準備できない場合、応募するのは厳しいのが実際のところです。

ただ、新卒時の就職は難しくても、副業で絵を描く仕事を探したり、社会に出てから専門の学校で絵を描くスキルをつけて仕事を探したりすることで、絵を描く仕事に就く道が開けるかもしれません。また、「スキルがある人がいれば、いつでも採用したい」という企業もある業界なので、通年採用や中途採用での入社という道もあります。

絵を描く仕事に就くために大切なことは?

最後に、絵を描く仕事に就く上で大切だと思うことを座間味さん聞いたところ、「継続力」と「+αの強み」と語ってくれました。

「プロのイラストレーターさんなどにお会いすると、皆さん本当に日々コツコツと技術を磨いていらっしゃいます。ちょっとした待ち時間に周りの風景をスケッチするなど、隙間時間すら無駄にしない。絵を描くスキルを向上させようという継続力は、プロであるほど高いなと実感します。

また、絵を描く仕事は狭き門なので、絵が描ける以外にも強みがあるといいでしょう。例えば、自分で営業ができるイラストレーター、プログラミングができるデザイナーなど、+αのスキルがあれば、いろいろな現場で仕事を得ながら道を切り開いていけると思います」(座間味さん)

デジタルハリウッド大学・座間味涼子さんインタビューカット

正社員で絵を描く仕事はポストが限られていたり高いスキルも求められるので、なかなか難しいのが実情ですが、副業で始めたり、スキルを磨きながら作品を発信することでチャンスが来る可能性もあります。営業や社内広報用のプレゼンテーション資料、社内掲示用のチラシやポスターの作成など、絵を描く仕事以外でも「絵を描くのが得意」という強みを生かせる場面もあるでしょう。

また、新卒時点では絵を描くこととは全然関係のない業界に進んだとしても、その経験と絵が描けることが自分ならではの強みとなっていくでしょう。

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それぞれの仕事の採用の状況や自分の現在地などを踏まえて、どのような形で絵を描くことに携わっていきたいのか、就活時に考えてみてはいかがでしょうか。

取材・文/田中瑠子
写真/鈴木慶子

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