EXILE 松本利夫さん「遊び仲間が、いつの間にか仕事仲間になっていた」

EXILE 松本利夫さん画像

プロフィール 松本 利夫(まつもと・としお)1975年、神奈川県生まれ。2001年にEXILEのシングル『Your eyes only ~曖昧なぼくの輪郭~』でデビュー。パフォーマーとして活躍。2007年の劇団EXILE第1回公演『太陽に灼かれて』に出演。以降、初主演映画『LONGCARAVAN』(09)や一人舞台「松本利夫ワンマンSHOW『MATSUぼっち』」(10)、初主演ドラマ『ビンタ!~弁護士事務員ミノワが愛で解決します~』(14)など、テレビや映画、舞台で活躍。15年の年末にEXILEパフォーマーを卒業。同年に立ち上げた劇団EXILE松組を起点に、幅広い活動を見せている。MCを務める深夜のバラエティー番組『MATSUぼっち』も好評放送中。

2020年3月に上演される舞台『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』(https://www.chikyu-gorgeous.jp/25th/)に出演するEXILEの松本利夫さん。初挑戦がいろいろあるという今作のお話はもちろん、充実した40代を迎えている松本さんに、16歳でダンスに出合ってから、現在に至るまでのお話をうかがいました。

周りに求められて、新たな性格が引き出される

―『星の大地に降る涙』にご出演されますね。

10年前に初演されたミュージカルの再演なのですが、EXILEの『愛すべき未来へ』という曲が主題歌になっていたので、僕も観ていたんです。まさか10年後に自分が出演するとは。本当にびっくりしています。

―これまでも舞台に出演されていますが、今回が初めてのミュージカルだそうですね。

そうなんです。グループでも僕はパフォーマーだったので、ステージ上では歌ったことがなくて。なのに今回、ミュージカルを長年やってきた方々の中で歌うので、正直、相当なプレッシャーですね。人生初のボイス・トレーニングも始めました。

―やってみて、いかがですか?

すごく新鮮です。ただ、僕ももう44歳のせいか、新しいことを吸収するのが難しくなってきていて(笑)。だから、とにかく練習を積んで、歌うことに慣れたいなと思っています。

―「地球ゴージャス」は岸谷五朗さんと寺脇康文さん、お二人の演劇ユニットです。公演ごとに、いろいろな役者さんが参加されていますが、10年前の初演のご感想は?

「地球ゴージャス」さんの作品は、毎回、華やかですよね。歌ありお芝居ありで、本当に大勢の人を楽しませるような。僕も舞台の演出・プロデュースをやらせていただいたことがあるので、それこそ予算の話だとか制作側のこともわかるんです。これだけ華やかな規模の舞台ができるというのは、本当にすごいことだと思いますね。

―劇団EXILEとして、ご自分のグループでも舞台をやられていますが、グループ外の公演はまた違いますか?

全然違いますね。自分たちの舞台だと、多少なりとも甘えが出てしまうので、気が引き締まります。経験してきたことと違う世界も見せていただけますし。今回、演出を岸谷五朗さんがやられるということで、演出する方の立ち居振る舞いみたいなものも勉強になりますね。

―今回、25周年の公演なんですね。

25年も続けているというのは本当にすごいなと思います。僕らは18年なんですけど、25年は近いようで遠いですね。

―その7年が大きいですか?

すごく大きいと思います。

―グループを続けてきたからこそ、おわかりになることもあると思うのですが。

「地球ゴージャス」さんは二人のユニットじゃないですか。二人というのは、難しいと思うんです。二人とも前に出てしまうと成り立たないから。どちらかが前に出て、どちらかが支える、そのバランスがないと。二人で25年というのは、本当に絆が強いんでしょうね。

―EXILEさんだと、どんな感じなんですか?

メイン・ボーカルが二人いて、僕らがそれを支えるっていう役割分担みたいなものがありますね。メインの二人だけでも、成り立たないと思うんです。そこを中和して、バランスを取る人たちがいないと。

―そのバランスの中の松本さんの役割は?

どうなんでしょう…僕は結構バラエティーに出させていただいていますけど…ただ、自分のもともとの性格は全然バラエティー向きではないんです。

―というと?

元はすごい引っ込み思案で(笑)。僕らのグループでいうと、MAKIDAIがムードメーカーだったんです。思い返せば、幼稚園のころからずっと男のグループにいるんですけど。

―歴史が長いですね。

そうなんです(笑)。だから、バランスを見て、自分の立ち位置を測るのが習慣になっているというか。年齢ごとにグループの立ち位置って変わってくるんですよ。先輩といるときは後輩の役割になるし、同級生だとまた違ってくるし。その中で、自分自身がわからなくなることが多々あったんです。本当の自分はこんなんじゃないなとか。

―新入社員の人たちに後輩ができたり、人間関係のバランスで、発揮する性格が変わるというのは、仕事上でもよくありますね。

そうなんですよね。求められていることに応えていたら、こうなったという。本来の引っ込み思案のままだったら、バラエティー番組をやることもなかったと思うし、それはそれで自分なんですけど。この年齢になってあらためて、本当の自分ってどうなんだろうなと考えることが増えましたね。

EXILE 松本利夫さんインタビューカット

好きなものとの出合いは、意外なところに!?

―松本さんはダンス・ユニット「ZOO」を観て、ダンスに目覚めたそうですね。

16歳ぐらいの時ですね。深夜番組の中のワンコーナーだったんです。深夜番組の中でダンス・ユニット「ZOO」というのが出来上がっていくのを毎週観ていて、めちゃくちゃかっこいいなと。それが初動ですね。俺も踊りたいと思って、録画したビデオを観ながら見よう見まねで踊っていました。

―独学なんですね。

僕はほぼ独学ですね。当時、日本でHIP-HOPは今ほど知られていなかったので、習う場所もなかったですし、今みたいにやっている人も多くなかったですから。しかも、ダンスやスケボーは、真面目から外れた人たちの遊びだったので(笑)。

―不良のにおいですね。

そうです(笑)。若いころってヤンキーに憧れるとか、あるじゃないですか。ダンスかっこいいな~って好きになって、どっぷりハマって今に至るという感じです。

―一人で踊っていたのが、誰かと踊るようになったのは?

当時通っていた学校には同じ趣味の人がいなくて。僕、同じ高校の友達がほぼいないんですよ(笑)。だから、他校の同じ趣味の友達と遊んでいて、当時出会ったのがMAKIDAIとかうっさん(ÜSA)で、好きなものが一緒の人たちと遊んでいたのが、今につながっているんです。

―遊んでいた仲間が、そのまま仕事になっていくっていいですね。

一番幸せなことだと思っています。遊びが仕事になるというのは、好きなことが仕事になっているということなので。ダンスに出合ったことが、自分の人生ではありがたいことだし、良かったなと思います。

―大きな出合いですね。

ダンスがすべての出会いをつくってくれたなと思います。違うものを好きになっていたら、きっと全然違う人たちと出会っているのかなと。ダンスを好きになったことで、今周りにいる人たちと出会えたから、感謝ですよね。

―どんな思いで続けてこられましたか?

うまくなりたいという気持ちが一番でしたね。好きなことだから無我夢中だったので、練習を努力とも思わなかったですけど、努力することが自信につながっていくのかなと思いますね。だから、いくつになっても学ぶ努力は忘れちゃいけないなと思います。目下の目標は、ボイス・トレーニングですね。44歳なので、だいぶ定着が遅いですけど(笑)。

EXILE 松本利夫さんインタビューカット

大事なのは、心と言葉が一致していること

―好きなことを仕事にしたいという人は多いですが、振り返って思うことはありますか?

僕の場合は好きなものを探していたという感覚もなく、ダンスに出合って衝撃を感じて。そうやって出合えたのが良かったなと思います。好きなものがあるのなら、それを追い求めることを僕は応援したいですけど、ほとんどの人は、好きなことが見つからないって人だと思うんですよ。

―就活中の皆さんからも、そういう声が多く寄せられます。

日本は、みんなと同じ方向に乗っていく文化があるじゃないですか。もちろん、その中に日本文化ならではの美しさもあると思うんですけど、人と違う自己主張がしづらいというネックもあって、それが好きなものを見つけにくい環境にもつながっているのかなと思うんです。

―やりたいことの一歩が踏み出しにくいんですね。

そうですね。僕も同じ高校に友達がいなかったけど、好きなものがあったので、全然気にならなくて。普通は通っている高校のクラスに誰も友達がいなかったら怖いじゃないですか。

―俺って変わってるのかな…とか若干、気弱になりそうです。

最近は、会社にデスクがなくて、どこで仕事してもいいっていう企業も出てきているじゃないですか。そういう働き方が広がると、周りと足並みをそろえる必要がなくなるから、仲間外れになる怖さもなくなると思うんです。すると、今より一歩が踏み出しやすくなるんじゃないかと。

―そうですね。

僕らも海外にいるメンバーとスマホで会議したりしますけど、IT化が進んで、そういう会議の仕方が日常になると、移動の時間も必要なくなるから、その分、それぞれの人が自分のやりたいことに時間を使える環境になっていくんじゃないかと。より自分のやりたいことにのめり込みやすい環境になっていくなと思うんです。

―より、好きなことができますね。

これからの時代、環境もどんどん変わっていくと思いますね。僕にも3歳の子どもがいますけれど、とにかく好きなものを見つけてほしいなと。自分から進んで何かをやりたい気持ちが芽生えてくれるといいですね。好きなものがあると、好きなものが一緒の人と出会っていけるから。

―初期メンバーのÜSAさんやMAKIDAIさん、長いお付き合いですね。

なんでこんなに続いているのかなと思うと、好きなものが一緒だから、お互いに共有できるものがあるってことなんですよね。学校の友達は、限られた地域の中だけど、好きなもので出会っていく人間関係はそこから広がっていくので。そういうところも、「地球ゴージャス」さんと似ているなと思います。

―すてきですね。そういう友達関係は、仕事になっても変わらないですか?

変わらないですね。やっぱりバランスなんですよね。

―3人から、大勢に広がりましたね。

生意気に思われるかもしれないですが、EXILEは結成当時から、100年続けたいという思いがあるんです。世代を受け継いで、違う形になってもいいんですよ。とにかく100年後もEXILEという名前を残していくという自覚を初期メンバーは持っていると思うんですよね。それに賛同してくれたのが今の後輩たちというか。

―後輩の方をオーディションする側にいらっしゃいますが、何か思うところはありますか?

これ、矛盾する話なんですけど、すごい真面目なヤツは好きになっちゃうんです。でも、すごい生意気なヤツも魅力的に思えるんですよ。どちらかに振り切れている方が気になるというか。もちろん嫌われても仕方ないですけど、なんとなく真ん中にいるよりは、その方がいいのかなと。

―突き抜けてしまった方がいい?

そうですね。その方が、「あ、何か持っているな」と伝わりやすいというか。もちろん、企業の面接はまた違うところがあるでしょうけれど。

―面接のやりとりについては?

ありきたりな言葉を言う人も多いと思うんです。「一生懸命頑張ります」とか「命懸けて頑張ります」とか。そういう言葉を聞くと、「いや懸けないでしょ」って思っちゃうというか(笑)。無理しない、等身大の言葉でいいんですよね。思いの強い人は、それに見合った言葉が出てくるんです。だから、伝わるんですよね。その人と言葉が一致しているから。

―本当の思いを伝えるってことですね。

そうですね。伝え方とか技術より、質問をされたときに、自分が本当に思っている気持ちがあれば、自然とあふれるものだから、最終的にはそれが結果につながるのかなと思います。

―緊張して、うまく思いが伝えられないという学生さんも多いようです。

人って緊張を隠そうとするけれど、それは緊張が恥ずかしいこととされているからなんですよね。でも、緊張って決して悪いことじゃないと思うんです。誰でもしますから。緊張を怖がらなくていいと思いますね。かんでいても、伝わるときは伝わるから。オーディションでも、そういうことより、思いを見ていますから。思いが伝わることが、一番大事なのかなと思います。

『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』PR画像ダイワハウスSpecial 地球ゴージャス二十五周年祝祭公演『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』
岸谷五朗・寺脇康文が主宰する演劇ユニット「地球ゴージャス」の25周年公演。舞台は戦乱の世。戦いに敗れ記憶をなくした青年(新田真剣佑)が流れ着いた小さな島。そこで「シャチ」と呼ばれた彼は、ステラ(笹本玲奈)という女性と出会う。しかし、彼の記憶が戻る時、そこには悲劇が待っていた――。

作・演出:岸谷五朗
出演:新田真剣佑、笹本玲奈/松本利夫(EXILE)、湖月わたる、愛加あゆ、島ゆいか/森公美子/岸谷五朗・寺脇康文ほか
東京公演:2020年3月10日(火)~4月13日(月)舞浜アンフィシアター
大阪公演:2020年5月3日(日・祝)~5月14日(木)フェスティバルホール
公式サイト:https://www.chikyu-gorgeous.jp/25th/

取材・文/多賀谷浩子
撮影/八木虎造
ヘア・メイク/稲野麻亜里(cheeks)
スタイリング/jumbo(SPEED WHEELS)


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