【シンガポール編】30歳前後になると転職するシンガポールの人々

Reported by ベコ
シンガポールにある日系メーカーの営業拠点に勤務している。休日の楽しみは、シンガポール川沿いの倉庫跡地を再開発した観光スポット「クラークキー」のカフェで昼間からビールを飲むこと。

自分の評価に直結しない業務には無関心

はじめまして。ベコです。シンガポールにある日系メーカーの製造拠点に勤務しています。

 

直属の上司はインド人で、同僚は中国人、マレーシア人、インドネシア人、フィリピン人やドイツ人など計15カ国くらいの人々。顧客は、中国、インドなどアジア圏の企業が中心ですが、日本人同士のコミュニケーションができるという理由で当社を選んでいただいた日系企業も含まれます。

 

仕事で使う言語の9割は英語で、残りの1割が日本語といった感じです。日本語を使うのは、日本人同士で会話するとき。日本人以外の人が会話に入っていれば、必ず英語で話します。やはり、目の前でわからない言葉で話をされると、いい気持ちがしませんから。

 

ここシンガポールで仕事をしていて感じるのは、日本にいるときの要領では業務がスムーズに進まないということ。異業種からの転職者も多いので、仕事の進め方が異なり、なかなかノウハウを共有することができないのがその理由の一つです。また、日本人同士であれば特に指示しなくても自然とできるような配慮が、現地のスタッフには期待できないということも言えると思います。どうも広い視野から全体の業務を俯瞰(ふかん)することが苦手なようなのです。

 

例えば、日本では、製品の仕様を決めた背景や理由を担当者以外のスタッフや上司が後で確認できるように、統一したフォーマットで資料を残しますが、ここでは、そもそもそういった資料を作らなかったり、作っても共用サーバーに残さなかったりします。また、作ったとしても、フォーマットがまちまちなため、見づらいのです。業務が忙しくて余裕がないせいかと思いますが、それと同時に、「自分に設定された評価項目が達成できれば、それだけでいい。ほかの人のことは考えなくていい」という考えがその根底にあるような気がします。とにかく、自分の評価に直接影響しない業務や人には興味がないようなので、私の部下には、「資料を必ず残すように」「その際は、フォーマットも統一するように」ということを口うるさく指示しています。

 

出荷前の製品を実験に使いたいと社内のスタッフに言われて、仕方なく貸したところ、約束の日時になっても返してもらえなかったことがありました。どうやら実験装置に問題があり、やり直しが必要だったようなのですが、遅れるという連絡などはまったくなく、その上、それだけ遅れておきながら、自分は毎日定時に退社しているではありませんか。「残業してでも終わらせて、早く返さなくては」とは考えないようで、休日も当然のように休んでいました。結局、私が休日出社することで、ようやく期日通りに出荷できた次第です。

 

そのような状況なので、業務を円滑に進めるためには、部下に期待しないで、自分でやってしまうことも少なくありません。そうでなければ、部下が腰を上げるまで、根気強く黙って様子を見ます。イライラせずに、じっくり見守ることが肝要なのです。

 

部下や同僚に頼みたいことがあるときは、彼らがやりやすいように、しっかり段取りをしてあげたり、事前に関連部署に根回しをしておくこともあります。特に意識しているのは、段取りを「見える化」すること。「製品を作るための部品はどのくらいの量が必要で、いつ納入されるのか」「その結果、どのタイミングに、どんな順番で組み立てができるのか」といったフローを押さえた予定表を作ってあげるのです。そうすれば、「この部品が遅れた場合は、先にこの段取りを進めておこう」とか「この部品が遅れそうだから、先に納入日の確認をしておこう」といった対応が取りやすくなります。予定表には、「『全体のスケジュール』と、部品納入のような『個々の予定』を常に並行して確認しながら進めなさい」というメッセージを込めているので、それが彼らに伝わることを期待しています。

 

融通を利かせてほしいケースなどでは、本人には直接頼まずに、直属の上司か、さらに上の役職の人に頼むことも多いですね。あるとき、取引先の了解を得た上で、書類上の手続きを後回しにして、先に製品を納入してもらったことがあるのですが、後から書類を経理に提出したところ、経理部門のスタッフから「代金の振り込みはできない」と言われてしまったことがありました。理由を尋ねたところ、「通常の流れとは違う方法で納入されたため、システム上でまだ納入が済んでいないことになっているから」とのこと。先行で納入することについては前例もあったはずなのですが、担当者は、「通常の作業以外は認められていないので無理」の一点張りでした。「なんとかできるかどうか、上司に相談してみましょう」と歩み寄る姿勢もまったく見られなかったので、仕方なく私が彼の上司に直接相談をすることで、どうにか代金を支払うことができました。それでも、支払いがかなり遅れたことで、取引先には迷惑をかけてしまいましたね。こんなときは、日本で言う「部長」クラスの役職者だと、中途入社の人も多くて現場のことをあまり知らなかったりするので、「課長」クラスにお願いする方が話が早いですね。

 

より良い待遇を求めて転職する若手社員たち

30歳前後になると転職をする人が増えるのも、シンガポールのビジネス社会の特徴です。どうやらシンガポールでは、転職をしないと、「やる気がない」とか「モチベーションが低い」と判断されるようなのです。当社でも、新卒で入社して6~7年目にこの年代にさしかかると、大半の人が会社を辞めていきます。どうやら同じ会社に長くいると、仕事ができる人ほど業務が集中してしまい、給料と仕事量・プレッシャーとのバランスから判断して「割に合わない」と感じてしまいがちなようなのです。そのため、優秀なスタッフほど、他社からのオファーを待ってすぐに転職してしまうという印象です。

 

現地の人々がこう考えるのは、日本ほど年金制度が整っていないことなどによる、将来に対する漠然とした不安のせいだと聞いたことがありますが、定かではありません。ただ、「高校に進んだ時点で入学できる大学がほぼ決まってしまう」といった激しい競争を経験した人たちですから、日系企業に就職して、上層部は日本人が占めているという現実を目の当たりにして、「このままこの会社にいても、自分は偉くはなれない」と感じると、途端に意欲を失ってしまう傾向があるようです。その上、日系企業の企業文化に触れて日本のやり方を学んでいることは、ほかの企業に転職する際にかなりの「売り」になると言いますから、より良い待遇を求めて転職するのは無理もありません。特に当社のような製造業の場合、高い給料や昇給は望めないので、給料の高さ以外の点で、やる気やモチベーションを維持するのはなかなか難しいようです。そういう事情もあって、会社としては、いったん引き留めはするものの、あまり強くは慰留しないようにしている模様。そして、そのように人の出入りが多いためか、技術、経験や知識を社内に蓄積することや、次の代の社員に伝承していくことの難しさを痛感しています。

 

次回は、シンガポールの文化についてお話しします。

 

 

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シンガポールのビジネス街。金融、IT企業などがシンガポールの経済を支えている。

 

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エキゾチックな佇(たたず)まいのアラブ・ストリート。「バグダッド・ストリート」など、いかにもな名前の通りもある。

 

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アラブ・ストリートの界隈(わい)にあるモスク(イスラム寺院)。絨毯(じゅうたん)を売る店や、ペルシャ料理のレストランなどもある。

 

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シンガポールでは今、マラソンが盛ん。アジア最大と言われるマラソン大会も開かれている。

 

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SUNTEC CITYというショッピングモールの壁面ディスプレイに映し出されるシンガポール内の観光スポットの映像。

 

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シンガポールの高層ビル群。ウオーターフロントエリアに林立している。

 

構成/日笠由紀

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