【ニューヨーク編】チップがモノを言うアメリカの社会

Reported by 音速の貴公子
アメリカ・ニューヨークにある日系金融機関の支店に勤務。週末は、妻と共通の趣味であるサイクリングのイベントに参加したり、地元のおいしいレストラン巡りを楽しんでいる。

チップを忘れると店員が追いかけてくる

こんにちは。音速の貴公子です。今回は、アメリカの社会についてお話しします。

アメリカで暮らしていて、つくづく感じるのは、「チップ」の重要さです。こちらには、レストランのウェイター・ウェイトレスや、タクシーの運転手などにチップを支払う習慣がありますが、私たちがともすると「小遣い程度」と考えがちなチップは、彼らや彼女らにとっては、実は重要な収入源なのです。

チップの目安は、タクシーの場合だと支払額の10パーセント、レストランなどで受けたサービスに対しては、15~20パーセント程度が妥当といわれています。私の住んでいるニューヨークは、現在、消費税が8.875パーセントなので、レストランなどでチップを支払う際は、だいたい消費税の2倍程度の金額を支払うようにしています。このくらい払っておけば、まず文句を言われることはありません。

現地の英会話教室でアメリカ人の講師から聞いた話ですが、こちらのタクシードライバーやウェイター・ウェイトレスの基本給は、もともとかなり低く設定されているそうです。必然的に、収入に占めるチップの割合が非常に高くなるわけで、チップの額が生活に直接、影響を及ぼしてしまうのでしょう。そのため、チップを渡すのを忘れたり、少額のチップしか渡さなかったりすると、文句を言われることも少なくありません。それどころか、最悪の場合、トラブルに巻き込まれることもあるほどです。以前、タクシーに乗った時に、運転手のマナーが悪い上に、行き先も間違えられたことがあり、精算時にチップなしでタクシー代だけを渡したところ、運転手が激高し始めたことがありました。あまりに怒鳴り続けるので、やむなく1ドルを渡しましたが、「君の態度は間違っている」とひと言残して、タクシーを降りたことを覚えています。レストランでチップを店員に渡し忘れた友人が、その店員に追いかけられたこともあります。あわててチップを渡したら、店員も笑顔で店に戻って行きましたが、チップに対する執念を感じる瞬間でした。

クリスマスチップを渡した途端に態度が一変

クリスマスの時期に渡す「クリスマスチップ」も同様。アメリカでは、クリスマスの時期になると、自分の住んでいるビルディングのコンシェルジュやドアマンたちに、1年間の感謝の気持ちを込めて20~40ドル程度(2300~4700円程度・2014年12月現在)のクリスマスチップを支払いますが、この時期にしっかり渡しておかないと、困ったときに協力してくれなかったり、協力してくれたとしても対応が遅くなったりすることがあるのです。コンシェルジュやドアマンは住人の顔と名前をしっかりと覚えているので、もしチップを渡さなかったら、「この人はチップを渡さない人だ」と認識されてしまうのでしょう。

赴任当初はクリスマスチップの習慣を知らなかったので、ドアマンには何も渡していなかった私でしたが、会社の先輩から「クリスマスチップっていう習慣があるんだよ」と聞いて急いで渡したところ、その日からドアマンの態度が一変。それまでまともにあいさつすらしてこなかったドアマンたちが、毎日私に名前で呼びかけながらあいさつをしてくるようになりました。「さすがニューヨーク。金がすべてなんだな」と痛感するとともに、チップがいかに重要なものであるかを身をもって感じました。

クリスマスチップは、紙幣を封筒に入れて表にドアマンの名前を書いて渡します。クリスマスシーズンになると、クリスマスチップ用のクリスマスカードと封筒のセットが売り出されるので、そのカードにお礼の言葉を書き添えた上で、お金を入れて渡すのが一般的です。

次回は、海外駐在に対する心がまえについてお話しします。

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レストランでの支払い方法は、税込の代金とチップを現金で払うか、あるいは税込の代金とチップをクレジットカードで払うかのいずれかが主流。だが、クレジットカードで支払うと、ウェイターやウェイトレスに対するチップの支払いが遅くなったり、カード会社に手数料が引かれて受け取るチップの額が減ってしまうことがあるので、この写真のように、代金だけクレジットカードで支払い、チップは現金で支払うという方法もときおり利用する。ただし、代金の金額が大きくなるとチップも高額になるため、その場合は、すべてクレジットカードで支払うことが多くなる。

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メジャーリーグの試合が行われるスタジアム。野球だけでなく、プロボクシングやサッカーなどの試合も行われる。

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“ラーメン・ブーム”が到来しているニューヨークでは、通りに行列ができるほどラーメン人気が高い。

構成/日笠由紀

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