アメリカ・ニューヨークにある日系金融機関の支店に勤務。週末は、妻と共通の趣味であるサイクリングのイベントに参加したり、地元のおいしいレストラン巡りを楽しんでいる。
スピーキングとリスニング強化で英語力がアップ
こんにちは。音速の貴公子です。今回は海外駐在に対する心がまえについてお話しします。
私自身が海外駐在のためにしたことは、赴任直前に英会話学校に通って英語のトレーニングを受けたことと、当時担当していた業務に懸命に取り組み、自分の専門性を高めることでした。英会話学校では、約2カ月半の間、平日の朝9時から夕方5時くらいまで、英文法・英作文・リスニングのトレーニングなどで英語漬けになっていました。ビジネスディスカッション、ディベート、プレゼンテーション、研究発表といった実践型のレッスンなど多岐にわたるプログラムだったのですが、今振り返ると、正直あまり役に立っていないように感じます。この学校のレッスン内容は、どちらかというとリーディング・ライティングに重点が置かれ、リスニング・スピーキングのトレーニングが少なかったような気がするからです。個人的に、言語を身につけるには、リスニング・スピーキングの訓練をする方が効果的だと考えているので、違う順序で学習するやり方は、私には合っていなかったようです。
そこで、ニューヨークに赴任してからすぐに、週1回、英会話学校に通い始めました。学校でスピーキングとリスリングを中心としたトレーニングに加えて、職場で現地スタッフと雑談をする時間を増やしたり、字幕なしで英語の映画を見たりしています。こうして、「英語で理解し、英語で考え、英語で伝える」ということを意識的に行った結果、赴任前は730点くらいだったTOEIC(R)テストのスコアが、赴任1年後には885点になっていました。
現地スタッフとの雑談は、週末や旅行の予定などの話題が多いですね。また、新婚なせいか、結婚生活に関する話をしたり、夫婦円満の秘訣(ひけつ)などお説教じみたことを言われることもあります(笑)。仕事に飽きたときも含めて、とにかく話したいと思ったときが話す機会だと思っているので、あらゆるチャンスを逃さずに会話をするように努めています。現地スタッフたちも、よほど忙しくない限りは喜んで話し相手になってくれています。こちらの人はスポーツの話が好きなので、フットボール、野球、バスケットボール、アイスホッケーの「4大スポーツ」の話をすることも多いですね。4大スポーツの情報は、インターネットなどから意識的に集めるようにして、話のネタに使っています。
気が向いたときにミュージカルや映画を字幕なしで見るのも、英語のトレーニングの一部となっています。赴任した直後は月に1~2回はミュージカルを見ていましたが、最近は数カ月に1回程度になりました。これまでにすでに20本弱見ましたが、どのミュージカルも発音がよく聞き取れず、何を言っているかわからないことが多いので、実はあまり英語学習向きではないのでは?と最近気がつきました。
映画は月に1~2本程度のペースで、iPadを使って見ています。現地の英会話学校の先生に、「気に入った映画を繰り返し見て、フレーズを書き取る訓練(『ディクテーション』と呼ばれているもの)をするのが良い」と教えられましたが、私は同じ映画を何度も見るのがあまり好きではない性分なので、見たい映画を好きなように見るようにしています。毎日の通勤時間や入浴中に、PodcastでCNN、Wall Street JournalやBBCなどのニュースも聴いてリスニング力を鍛えています。
自分の適性を見極めてから海外に飛び出そう
将来、海外で仕事をしたいと考えている学生の皆さんに伝えたいことが2点あります。まず1点目。自分がどんな人間かをしっかり見極めましょう。何が好きで、何が嫌いか。何が得意で、何が不得意か。どんな環境なら最も能力を発揮できて、どういう環境だとダメなのか。そういったことを真剣に考えてみてから、本当に海外に行きたいのかどうかを自分に問いかけてほしいのです。なぜなら、海外駐在は、自分の思うようにはいかないものだから。そもそも、海外駐在と海外旅行は180度異なります。海外旅行の場合、自分の好きな国を選んで、その国を訪れることができますが、海外赴任だと、多くの場合、派遣先の決定は会社に委ねられています。先進国ではなく、新興国に派遣されることもあるでしょう。新興国に派遣された場合、先進国の生活とは大きなギャップがあり、自分の望んでいる生活レベルを維持するのは困難なケースが多いようです。海外駐在を希望する人は、そういったギャップを正しく理解し、自分がそうした環境をエンジョイできるかどうかを一度、確認しておくことをお勧めします。
そして2点目。海外で仕事をすることに対して過度の期待をしないようにしましょう。海外での生活には、楽しいこと、エキサイティングなことが多々ある一方で、大変なこと、辛(つら)いことも同じくらいあります。日本と連絡を取るため連日深夜まで働き、日本からの急な質問に対応するため、休日出勤して対応することもしばしば。楽しい一面だけを見て海外赴任に対する思いを強めると、実際に赴任した後のショックが非常に大きくなってしまうので、「海外駐在は、良いこと半分に嫌なことも半分、足してちょうどプラスマイナスゼロ」くらいの期待値にとどめておく方が無難かもしれません。少しネガティブな観点からのアドバイスになってしまいましたが、相応の心がまえをした上で、海外駐在の希望を叶(かな)えてほしいと思います。
アメリカNHL(ナショナルホッケーリーグ)のアイスホッケー場。アメリカでアイスホッケーは、アメリカンフットボールのナショナルフットボールリーグ(NFL)、野球のメジャーリーグベースボール(MLB)、バスケットボールのナショナルバスケットボールアソシエーション(NBA)と並んで北米4大プロスポーツリーグとして称されるほど、人気の高いスポーツだ。
ニューヨークは新鮮な魚介類が豊富なので、寿司(すし)はおいしくて人気のメニュー。
旅行で訪れたナイアガラの滝。ニューヨークからは、飛行機で日帰りしたり、バスで行って現地で宿泊したりと、いろいろな楽しみ方が可能だ。
構成/日笠由紀