【チリ編】学生時代からの問題意識が海外駐在の原動力

Reported by 南一郎(仮名)
チリにある日系商社と現地企業の合弁会社の副会長兼ディレクターとして、サーモンの養殖・加工・輸出に携わる。現地での楽しみは、 釣りやゴルフ、山歩き、自然散策など。

難しいスペイン語も会話内容を類推できるように

こんにちは。南一郎です。今回は、海外駐在を通じて得たものについてお話しします。

 

チリの公用語はスペイン語ですが、赴任時に習った基礎レベルのスペイン語スキルで、なんとかコミュニケーションは取れるようになりました。1週間に3回、1回1時間の個人レッスンでしたが、海外出張や年末年始の休暇をはさんだため、30時間のレッスンをこなすのに5カ月ほどかかりました。あまりにも単語の活用の数が多かったため、毎日2時間は予習をしていたにもかかわらずなかなか習得できませんでしたが、今になってみると、以前よりも会話の内容を類推することができるようになってきたようです。

 

例えば、チリ以外の南米の国の人が来訪した場合、基本的にお互いがスペイン語を母国語とすることになるため、先方と当方の双方にスペイン語でプレゼンテーションするように促すようにしていますが、そういった場面で、「あれ? 今、何か大事なことを言った?」と思って英語で尋ねてみると、やはり重要なポイントだったりするのです。現地の美容院のスタッフも、私にスペイン語で話しかけてきますが、とにかく知っている単語を並べることで、なんとか会話は成り立っています。先日も、美容院でかかっていた曲がとても良い曲だったので、歌っていた歌手の名前を彼女に尋ねて、CDを買うことができました。そんなふうに意思の疎通が図れるようになったことで、チリでの暮らしは格段に楽しくなりましたね。

 

学生時代の問題意識が今の仕事につながった

そもそも私が商社に就職したきっかけは、学生の時に出合った『成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』という一冊の本でした。その中に書かれていた「資源・食糧などが必ず将来、地球の課題になる」という記述に衝撃を受け、こうした資源・食糧問題や南北格差(先進国と発展途上国にある経済格差や生活レベルの違い)を解決できる仕事にかかわりたいと考え始めたのです。商社に就職してからも、配属希望アンケートには、必ず「資源(エネルギー)」「食糧」「開発」希望と書いていたように思います。「南北格差解消」とは、すなわち所得格差の改善ですから、要は発展途上国が豊かになり、生活レベルが先進国に近づけば良いということ。南極にほど近いチリの小さな街を養殖業で豊かにしたことは、まさにその実現に大きく寄与していることになり、そう考えると実に感慨深いですね。問題意識を持ち続けることが、今の自分につながっているということなのでしょう。そう考えると、願いや思いがあれば、必ずチャンスは来ると思えてきます。

 

こうして海外で仕事をすることで、私自身の視野は、間違いなく広がりました。東京で仕事をしていた時よりも今の方が現場が近いので、自分たちが見つけたビジネスチャンスが本当に価値のあるものなのかどうかを、より直感的に現場の皮膚感覚で判断できます。また、過去に駐在した米国では、米国流の経営スタイルを理解した上で、関係会社の会長や取締役などとして一緒に仕事をすることができましたが、チリではパートナー企業から派遣されている会長と議論をする中で課題解決のための方向性を決める必要があり、経験の幅がさらに広がりました。特に、パートナー企業の経営の仕方、企業文化などを理解して尊重するというやり方は、合弁会社だからこそ身についたスキルではないかと思います。

 

日本の良さを再発見することもできました。私の住むプエルトバラスは、人口3万人ほどの小さな街ですが、ドイツ人が入植してつくったという背景もあり、ドイツ風の建物が立ち並ぶとても落ち着いた街並みです。アパートのテラスからは、琵琶湖の1.3倍の広さの湖と、富士山とそっくりの「オソルノ山」を望むことができるのですが、そうした美しい眺望に恵まれたこの街を、この街の人々が心から愛していることが、街のたたずまいからおのずと伝わってきます。すると、自分自身が育った田舎や東京の美しさに、あらためて気づかされたのです。「実家から見えた山々がきれいだったな」「山を眺めながらお茶を飲んだものだったな」といろいろなことが思い出され、自分が住んでいた街を「とても良い所だよ」と胸を張りたい気持ちが芽生えてきたものです。

 

海外駐在でつらいことは、時として家族と離れて暮らさなければならないことですが、子どもがある程度成長すると、定期的に会いに来てくれるので家族とのつながりが、より密になった気がします。日本で仕事をしていた時より、日本とチリとで離れている今の方が、短くてもじっくり過ごせる時間を持てているように思います。それも海外駐在の収穫だったのではないでしょうか。

 

将来、海外で仕事をしたいと考えている皆さんにまず言いたいのは、「言葉の問題は気にするな」ということ。もちろん、語学力を身につけることは大事ですが、そこにこだわるよりは、時には意見をぶつけ合いながらも、相手と本気で向き合うことが解決につながると思うのです。それから、短期でも良いので海外留学を経験することもお勧めします。将来、海外勤務を特に希望せずに日本国内で仕事をしたい人にとっても、今後、海外との接点はさらに増加するはずだからです。もちろん、海外で活躍したいと希望する人にとっても、海外留学を経験していることで、最初の一歩が踏み出しやすくなると思います。また、私の場合は学生時代遊んでばかりいた反省から皆さんには、将来どんな職業に就くのかを意識した学生時代を過ごすことをおすすめします。世界中の学生は私の学生時代よりも、もっともっと勉強していますよ。チリで養殖業に携わる若者たちも、水産大学に入った時から将来を見据えて大学で専門の勉強をしています。

 

インターンシップ制度を利用して、社会の一部を先に見ておくのも良いでしょう。アルバイトよりも、より密な形で企業とかかわることができるし、その中で、自分の職業観が磨かれ、「プロ意識」を持ってかかわり続けられるようなライフワークを見つけることができるかもしれません。

 

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スペイン語の教材。現地で購入したものは、もちろん、すべてがスペイン語で書かれている。

 

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国内の標識などもすべてスペイン語。これは、ホテル利用客以外は駐車禁止という意味の標識だ。

 

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オソルノ山でのトレッキング風景。標高は2652メートルで富士山よりも少し低めだが、頂上付近には富士山同様、雪が残っている。

 

 

構成/日笠由紀

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