ブラジルにある日本のとある法人のサンパウロ事務所に勤務。現地での楽しみは、サンパウロ近郊への小旅行や日本人同士の飲み会、読書など。
良く言えばおおらか、悪く言えばいい加減
こんにちは。E.カルロスです。今回は、ブラジルの社会についてお話しします。
ブラジルという国は、ひと言で言うと「自由」な国です。それを良しとするかどうかはその人次第かと思いますが、とにかく時間を守りません。そのほかにも、あらゆる場面で「いい加減」でいられる国だと思います。例えば、ビジネスの場面でも、1時間近く約束の時間に遅れるのはいつものこと。ただし、日系人の集まりだと話は違って、彼らは日本人と同様に、時間はきちんと守っています。また、比較的規模の大きなスーパーでも、正確な額のおつりが返ってくることは少なく、切りのいい数字に丸められてしまいます。20円程度の誤差は日常茶飯事で、その都度、得したり損したり。トータルでトントンということなのでしょう。ドタキャンもOKで、現大統領のジウマ氏も、訪日を2回ドタキャンしています。
そういうわけで、良く言えば「何事にもおおらか」で、悪く言えば「いい加減」。几帳面な日本人にはストレスがかかりますが、慣れてくると、これも価値観の違いかと受け入れられるようになるのかもしれません。私自身、赴任2年目の今は、半分慣れたような慣れないような感じです。ただ、私自身はさほど几帳面ではないので、ブラジル生活が5年を超えるころには、自分ならブラジル人に同化できるような気がしています。
「個人主義の国」でもあり、ある意味、すべてにおいて「自己責任」の範囲で何をやってもOKというお国柄と見受けられることから、いろいろな光景を目にします。地下鉄の中、ショッピングセンターの中、路上など、至るところでカップルがディープキスを披露しているのも、ブラジルならではの光景なのかもしれません。しかも、キス時間は数分間と“長時間”に及ぶうえ、1日10組のキス場面に遭遇することもしばしば。最近は、カップルのキスシーンなどすっかり見慣れて、何とも思わなくなってきました。なお、こうした行為に及ぶのは、若いカップルに限ったことではありません。50代以上の白髪姿の夫婦でも、地下鉄の中で濃厚なキスをしているところを見たことがあります。もちろん、注意する人など誰もいません。また、手をつないで歩く老夫婦は、さらに頻繁に目にします。ただし、ブラジル人に聞いたところ、すべての人が公衆の面前でキスすることに抵抗がないわけではなく、そうしない人もいるとのことです。要は、誰が何をしようが、社会全体が寛容ということなのでしょう。
ビジネスシーンでもスーツは着ない
服装も自由です。ブラジルでは、ごく一部の会社や政府の幹部を除くほとんどの業種・職種の人が、背広を着ません。公式な場以外では、普段着で職場に出勤するのが常であり、これは首都ブラジリアの役所でも同様。私自身も、ジーンズに半袖のTシャツか、あるいはトレーナーを着て出勤していますが、ブラジリアの役所を訪れる際は、相手が背広を着ている場合もあることから、さすがに背広で行くようにしています。式典に出席する際や、日本からの来客をアテンドするときも同様です。なお、女性の場合は、役所でどんなに地位が高くても普段着っぽい服を着ていて、スーツ姿ということはまずありません。
ちなみに、服装がラフなのは、治安の悪さとも関係しているようです。きちんとした格好をしていると強盗やひったくりなどに遭いやすい傾向があるためと思われます。私も、背広を着ないだけでなく、腕時計もしないようにしています。
公共スペースでのマナーは決して良くありません。ブラジルの通りには、たいていゴミが散らかっています。歩きながらタバコを吸う人も多く、順番を守らずに列に割り込まれることもしょっちゅう。一般的に、マナーはその地域の教育水準ともリンクしていると言われています。特にブラジル北部は、総じて非識字率が高く、マナーも悪ければ、治安も非常に悪い印象があります。
職場の備品など、業務で使うものを勝手に持ち帰り、売り飛ばしてしまったりする人もいます。履歴書にも平気でうそを書くので、現地で人を採用する際は、履歴書に書かれている学歴が本当に正しいのか、書かれている資格を本当に取得しているのかなどを、確認しなければなりません。大卒なのに簡単な計算ができなかったりするからです。
次回は、サンパウロでの私の生活についてお話しします。
2016年3月13日にブラジル全土で起こった反大統領デモ。サンパウロでも大規模なデモ行進が行われた。
全国規模のデモの中、デモグッズ屋も現れ、あまり緊迫感がないのがブラジル風。
ゴミが散乱する街角。ゴミ袋や食べかすなどは平気で道端に捨ててしまう。
路上に設けられたゴミ箱にきちんと捨てる人もいるにはいる。
構成/日笠由紀