シンガポールの日系企業現地法人に勤務。休日には、フィットネスやサイクリング、スイミング、映画鑑賞、音楽鑑賞など、多彩な趣味を楽しんでいる。
中国やインド、イスラムの文化に触れることができる
こんにちは。ちょんばるくいなです。今回は、シンガポールの文化についてお話しします。
シンガポールの社会は、中華系、マレー系、インド系などバラエティ豊かな人々から構成されています。中央部にはチャイナタウンがあり、その名もズバリ「China Town」という駅名もあるほど。中華系の人が多く住み、中国の文化が色濃く感じられるエリアです。都市部の北部には、「Little India」と呼ばれる地域があり、この地に降り立つと、エキゾチックな気分が味わえます。おいしいカレー屋さんがたくさんある魅力的なエリアもあります。また、シンガポールが一時期「マレーシア連邦」の一部であったことから、マレーシアに根付いた中華系移民の末裔(まつえい)「プラナカン」によるプラナカン文化の建築物をさまざまなエリアで目にすることができたり、イギリスの植民地時代に権力者の邸宅や軍用地跡であった界隈(かいわい)が、今は再開発されておしゃれなレストランやバーになっていたりして、地域ごとに特色のある街並みを楽しむことができます。
宗教でも、インドのヒンドゥー教、中国の仏教、マレーシアのイスラム教など、複数の宗教が共存しているのがシンガポールです。中でも一番気を使うのは、やはりイスラム教ですね。ただし、シンガポールのイスラム教徒は、さほど厳格なわけではありません。同じ東南アジアでも、インドネシアなどのイスラム教徒は、お祈りの時間はオフィスにあるお祈り用の部屋で皆で集まってお祈りをするそうですが、シンガポールでは、それほどではなく、お祈りの時間を認めてあげること、そして豚肉を食べない彼らに対する配慮さえ忘れなければ、大丈夫です。
ビジネスランチなどのときには、幹事が事前に、イスラム教徒向けに特別な加工を施した「ハラル食品」やベジタリアン・ビーガン向けの料理を手配しますし、レストランにはたいてい、そうしたメニューが用意されているものです。最悪、当日その場でレストランにオーダーすることになっても、対応してくれるところが多いですね。
欧米系の人たちは、プライベートでのホームパーティーもよく開いています。私たち日本人が開くときは、コンドミニアムの集会所などを使います。ケータリングサービスなどを利用して、気楽にやるのが日本との違いでしょうか。いずれにしても、皆さん、食べ物の制限については必ず招く相手に尋ねるようにしていますね。
マレー系の文化では、結婚式が見ものです。私が実際に経験したのは、公共の集合住宅の共有スペースを使ったビュッフェ形式のパーティーで、だいたい12時から17時ごろまで開かれています。招待客は、いつ来ていつ帰ってもOK。服装も、ネクタイなしのスーツに始まり、派手なTシャツとジーンズの人まで、なんでもありです。新郎新婦の親族やマレー系の人は、伝統的な民族衣装や、派手な帽子などで着飾っていました。
中国の文化では、旧正月など中国独特の行事が目を引きます。「ローヘイ」という、日本でいう「おせち料理」を囲んだり、「アンポウ」と呼ばれる「お年玉」をやりとりしたり…。「ローヘイ」は、にんじんやキャベツなどの野菜の千切り、白身魚の刺身、肉、ゴマなどがそれぞれ手のひらサイズの皿に載せられてパッケージで販売されている「ローヘイ・パック」があり、まずはそれらの中身を一つの皿にあけていきます。その上にゴマをかければ準備OK。テーブルを囲んだ全員が、箸でそれらの具をつまんで皆で叫びながら一斉に上に上げ、それからポトっと落とします。また拾い上げてまた落とす。それを繰り返してから、みんなで食べるのです。具をつまみ上げる動作が、「上昇」=「繁栄」を長続きさせることを意味していて、縁起が良いのだとか。つまみ上げが終わった後のテーブルは、皿の外にも材料が散らばって大変なことになっていますが、皿からこぼれた食材もきれいに平らげます。
「アンポウ」とは、本来は、お年玉に該当するお金を入れる赤い袋のことを指しています。日本のお年玉は親戚の子どもなどに渡しますが、シンガポールでは既婚者が未婚者に渡す習慣もあるようです。額は50~100シンガポールドル(2013年5月現在・約3500~7000円)くらいが相場でしょうか。私のいるオフィスでも、未婚女性スタッフに対して、上司から渡したりしています。旧正月が近づくと、カフェのレジや、仕事で打ち合わせをした顧客などから「アンポウ」用のゴージャスな封筒を渡されたりしますが、私自身は、どうしても日本式お年玉のイメージが根強く残っていて、部下の未婚者にアンポウを渡すことには少々抵抗を感じてしまうのですが…。
シンガポールの道路は「渋滞知らず」
シンガポールの風景として特徴的なこととしては、朝の通勤時や勤務時間終了後の夜6-7時ごろの時間帯を除けばほとんど道路が渋滞していないことが挙げられます。シンガポールでは、自動車を所有しようとすると、車両の代金以外に、COEという「車を購入する権利」を得るために現在の時価では500万円ほどの費用がかかる上、ERPという日本のETCのようなシステムがあり、都市部を走行すると課金される仕組みがあるため、車を所有しようというインセンティブが働かないからです。
加えて、シンガポールではタクシー料金が非常に安く、なおかつバス網の整備が進んでいます。タクシーは初乗りが150~200円前後と安い上に、SMS(ショートメッセージサービス)でブッキングすることができるので、非常に便利。空いている車があれば、すぐにタクシーの車両番号が記載されたメッセージが返ってきます。こうした交通機関が発達しているせいで、シンガポール国民は、車を持たなくても、十分暮らしていけるのです。そのおかげで、東南アジアの国としては珍しいほど渋滞風景が見られない国となっています。
次回は、シンガポールでの暮らしについてお話しします。
仏教寺院には、旧正月になると、多くの中華系の人々が初詣に訪れる。
マレー系の結婚式の様子。ウェディングドレスの裾を持っている親族も、伝統的な衣装に身を包んでいる。
渋滞とは無縁なシンガポールの道路。慢性的な渋滞に苦しむほかの東南アジアの国々とは大違い。
タクシーを予約した後にキャンセルしたときのSMSのやりとり。最低限の単語を入力するだけで用が足りる。
自家用車が少ないシンガポールだけに、道路を走っている乗用車の多くがタクシーだ。
構成/日笠由紀