自己分析ってなぜ必要?何の役に立つ?「トゥギャザーしようぜ!」のルー大柴さんに聞いてみた

誰しも自分を客観視するのは苦手なもの。それなのに就職活動ではなぜ「自己分析」が求められるのでしょうか? 悩める就活生のためにご登場いただくのは、「トゥギャザーしようぜ!」で一世を風靡し、ユニークな “ルー語”で注目を集めるルー大柴さん。

俳優になるという幼い頃からの夢に向かってもがき続け、幾度も挫折。でも決してあきらめずに自分自身を見つめ、長所と短所、過去の原体験、未来の目標を分析することで、エンターテイナーとして新たな境地を切り開いてきました。「自己分析」と「他己分析」が人生の中でなぜ大事なのか、ルーさんのエクスペリエンス(経験)から語ってもらいましょう。

ルー大柴さんインタビューカット

プロフィール ルー大柴1954年東京生まれ。タレント、俳優。CM『アデランス』の「トゥギャザーしようぜ!」というフレーズで人気に火がつき、1992年に『第29回ゴールデン・アロー賞』芸能新人賞を受賞。2007年、オフィシャルブログで披露される英語と日本語をミックスさせた“ルー語”が女子高生を中心に話題になり、再ブレイク。2007年NHK『みんなのうた』で放送された『MOTTAINAI』をきっかけに、富士山麓の清掃や地域のゴミ拾いをするなど、環境活動にも積極的に取り組む。趣味はドジョウやメダカの採集、水墨画。芸能活動のかたわら、茶道・遠州流師範、山野美容芸術短期大学客員教授も務める。

俳優を目指して、ただがむしゃらだった10代、20代

—ルーさんが芸能界を志したきっかけは何だったのでしょうか?

僕が最初に俳優になりたいと思ったのは、幼稚園の頃。発表会で劇をやってたくさん拍手をもらえた時から、ずっと憧れ続けてきました。中学校の時には映画の『サウンドオブミュージック』を観て、旅芸人になろうとも思いました。テレビ全盛の時代で、洋画や海外ドラマもたくさん放送されていて、それを観ながら自分の中でどんどんドリームを膨らませていました。

—その夢に近づくために、いつどんな行動を起こしまたか?

印刷会社の長男に生まれた僕は、小さい頃から大学を出て家を継ぎなさいと言われていたんです。それが僕には非常に苦だった。何不自由なく育てられたけれど、ずっと「自分の力で何かを成したい」「早く世の中に出たい」という焦りがありました。

思春期に入ってからは両親が不仲になっていたこともあり、家を出たいという思いが一層強くなりました。そこで家族を説得し、高校卒業後にヨーロッパに旅に出て、1年間放浪したんです。今思えばとりあえずの「自分探し」でしたね。旅でのエクスペリエンス(経験)は貴重なものでしたが、自分と向き合ったというより、勢いのままに行動した10代でした。
ルー大柴さんインタビューカット

—ヨーロッパから帰って本格的に俳優になる勉強をしたのですね?

帰国して俳優養成所に1年くらい通いました。その時に、大俳優の三橋達也さんが付き人を探しているという話があり、養成所の先生に紹介してもらいました。役者で売っていくためには、スターの付き人になるのが手っ取り早いというんです。会ってみると三橋さんは気難しい方で、最初は口もきいてもらえませんでしたね。

毎日雑用ばかりで休みもほとんどなく、最初は“スリーディズ坊主”(三日坊主)でやめちゃおうかなと思ったんですけど、途中から三橋さんに気に入られて、気づいたら歴代の付き人で最長の2年半も続けていました。この時に覚えた芸能界のしきたりや、三橋さんの仕事ぶりを見て学んだことは今も役立っています。でも、自分の俳優業には繋がらなかった。だから、一通りの仕事を覚えてやめさせてもらいました。

自己分析で俳優をあきらめたら、新たな夢の扉が開いた

—その後は俳優の仕事を得ることができましたか?

あちこちのオーディションを受けて、年に数本くらいドラマの端役をもらいましたが、とても食べていくことはできませんでしたね。がむしゃらに「絶対にやってやる!」と思ってオーディションに臨んでも、緊張から力を出し切れないこともありました。その後も鳴かず飛ばず。結婚式の司会やティッシュ配りなど、いろいろな仕事でしのぎました。

そんな中20代後半で結婚し、子どもも生まれて、母親に「女房子どもを泣かせるな。あんたの夢など捨てなさい」と怒られました。そこで30歳を過ぎてようやく、「俺には役者の才能がない。俳優の道にこだわってもダメだ」と、初めて現実と向き合い、遅すぎる自己分析ができたんです。芸能界に未練はありましたが、子どもの頃からの夢はほとんどあきらめていました。
ルー大柴さんインタビューカット

—30代後半で「ルー大柴」としてブレイクできたのはなぜですか?

不思議なもので、僕が夢を追いかけなくなったら夢の方が僕を追いかけてきた……という感じですね。たまたま、ある深夜のお笑い番組に呼んでもらったら、少しずつテレビの仕事が増えて、役者としてではなく、バラエティータレントとしての道が一気に拓けたんです。

当時の僕は、清水のステージからダイブする思いでした。「俺がルー大柴だ!」と、激しく明るいキャラクターでがむしゃらにアピールしました。たとえブームが長続きしなくても、一度名前を覚えてもらえば次に繋がるからです。芸能界でサクセス(成功)するには運もあるし、時代も味方にする必要があります。その意味で僕はまさにラッキーでした。ただ確かに言えるのは、あのまま僕が俳優業にこだわっていたら、今のキャリアはなかったでしょうね。

でも40代に入るとブームは去って勢いがなくなり、また仕事が遠のいてしまいました。そこでもう一度自己分析してみると、キャラクターが確立されてしまったバラエティーの「ルー大柴」に、僕自身が飽きていたんですね。自分にはもっと違う一面があるし、もっと舞台もやりたかった。しかも特定の層にはすごく嫌われちゃったし(笑)。僕自身は覚えてもらえればそれでいいと思ってきたけど、嫌われ続けるとやはり疲れるものです。

「新しいルー大柴」を作ったパートナーの「他己分析」

—その後「ルー語ブログ」などで、再びブレイクされましたね。

それは、今のマネージャーの増田順彦のおかげです。これから進むべき方向性が見えなかった50代の時に、彼と出会いました。一緒に仕事をするようになって数カ月した頃でしょうか。一回り以上も年下の彼が、強烈な「他己分析」をして、僕に足りない部分や、まだ活かせていない可能性についてズバリと指摘してきたんです。それが的確で、「この若さで俺の分析ができるのか」と驚きました。本人は僕と出会ってから、四六時中考え抜いたようですけどね。
ルー大柴さんインタビューカット

その結果から、ブログを始めたり、『みんなのうた』に出たり、ルー語をバージョンアップして復活させたりと、僕がやれば面白いと思うことを彼はどんどん提案してきました。すると、昔の僕を知らない若者たちがたくさん飛びついてきた。「絶対に将来に繋がるから」と茶道を勧めてくれたのもマネージャーの増田です。まさに彼との“二人スリー脚(三脚)”で、新たなルー大柴として50代を走り抜くことができました。僕は彼に出会って初めて、他己分析の力を知りましたね。

—お二人はどんなふうに自己分析・他己分析をしているのですか?

それは普段のマネージャーとのコミュニケーションですね。移動時の雑談などで、話しているうちに今の自分のことや、考えていることが客観的に見えてくる時がある。あえて「俺のことどう思う?」なんて聞くことはないですね(笑)。また、今の時代はブログやTwitterがありますから、そこに書き込まれたコメントも読みますよ。多くの他者の意見も、自分の分析に役立っています。

—マネージャーさんから「弱み」を指摘されるのはつらくありませんでしたか?

もちろん僕も自分なりの道を歩いてきたから、年下に痛い指摘をされるとムッとしましたよ。でもよく考えてみると、仕事が少なくて腐っていた自分にも、心のどこかに奢りがあったと気づくことができた。それで素直に受け入れたんです。やっぱり人間は、自分がいちばん可愛くて甘やかしたいので、自分のことを自分ではなかなかわからない。だから、第三者からの指摘によって気づいたことはとても貴重です。それを前向きなエネルギーにできたから、今の自分があると思っています。

写真左:ルー大柴さんのマネージャー増田順彦さん
(写真左:ルー大柴さんのマネージャー増田順彦さん)

でも、他人から評価されるのがどうしても苦手な人もいますよね。そんな人は友達や家族から自分がどんなふうに扱われ、どんな接し方をされているかを通じて、自分を評価してみてはどうでしょう。本を読んだり素敵な映画を観たりして、自分自身と会話してみるのもいいかもしれません。

自分を「リセット」することが、前へと進む力になる

—ルーさんが考える、自己分析や他己分析のメリットとは何でしょうか?

自己分析しないよりも、やって裏付けを持って進んだ方が、結果に対する納得度が上がりますよね。僕らの場合はプロなので完全に結果が全てです。正しく分析ができていると、面白いように仕事が来るんですね。

他己分析をしてもらう良さは、勘違いして「裸の王様」にならずに済むこと。企業の経営者や戦国武将もそうだけど、はっきり進言してくれるブレーンが近くにいないと、会社や国はダメになるものです。自分で自分の見えない部分は山ほどあるんだから、違う方向から見てくれる人がいることはすごく大事ですね。
ルー大柴さんインタビューカット

—最後に、これから就活に取り組む学生にメッセージをお願いします。

これから就活し、自分での力で道をディスカバーして(拓いて)いく皆さんには、まず夢を持って羽ばたいていただきたい。ただ基本的に「すべては世に出てから覚えていくものだ」と覚えていてほしいですね。これまでの学生生活で得てきた知識や経験はもちろん素晴らしいものだけど、それだけで頭でっかちにはならないこと。

もし想定していたキャリアと現実にギャップがあったとしても、すぐ転職してしまってはもったいないし、「ストーンの上にもスリーイヤーズ(石の上にも三年)」という言葉があるように、何かを成し遂げるには忍耐も大事です。世の中に出てからいろいろあることを知った上で、余裕を持ってフューチャーを見つめていきなさいと言いたい。それは、僕自身が世の中に出て痛いほどわかりました。

その意味で自己分析や他己分析っていうのは、就活の時だけで終わるものじゃなく、人生の岐路ごとに必要だと思います。「俺、このままでいいのかなあ」と思った時に海を見に行ったりするだけでもいいよね。たとえ明確な答えが出なくても、なんとなく自分がリセットされる。それがまた、前に進むパワーになると思うんです。

文/鈴木恵美子
撮影/向山裕太
聞き手・編集/鈴木健介

 

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