就活の第一ステップとして、避けては通れない「自己PR」。でも、いざ考えてみると「自分には自己PRできることがない・見つからない」と頭を抱える人も多いのではないでしょうか?
そんな悩める就活生の相談を、仏のような慈愛の心で受け止め、女神のように温かく励ましながら、これからのことを一緒に考えてくれるキャリアアドバイザーがいます。この連載では、彼らの元を訪れる就活生とアドバイザーとのやりとりを公開します。同じ迷いや悩みを抱える就活生は、きっとヒントが見つかります。なお、記事の中で自己PR作成のポイントをまとめています。ぜひ参考にしてください。
<今回のご相談>
特別な経験のない私には、自己PRがありません。このままでは就活がうまくいかない気がします。
大学3年生のM子さん。就活に当たって自己分析に取り組んでいますが、自己PRがどうしても思い浮かびません。周りにはボランティアのリーダーをしたり、留学した友人もいるそう。でも「私は勉強もそこそこだし、バイトも普通にやってきただけ。何かに強く没頭してきたこともありません」。「一体どうしたら、自己PRが作れるんでしょうか?」
※相談内容の掲載および本記事に掲載した内容については、ご本人の了承を得ています。
<答える人>

→リクナビ就職エージェント公式サイト
目次
自己PRは「あなたが誰か」を伝えるもの。すごい話は必要ない

キャリアアドバイザー渡辺(以下、CA渡辺) M子さんの考える自己PRとはどんなイメージですか?
M子さん(以下、M子) 留学したり、リーダーとしてサークルを引っ張ったり、販売のアルバイトで売り上げトップになったり。そういった実績や成果を語っているのが自己PRというイメージです。ただ私はそういう経験が何もないんです。以前にインターンシップで一緒になった就活生もすごい人ばかりで自信がありません。
CA渡辺 そうなんですね…。でも大丈夫!まず知ってほしいのは、企業が就活生に自己PRを求める理由です。
企業が自己PRに求めるものは、主に3つあります。1つは純粋に、その学生さんがどんな人かを知りたい。2つ目は、これまで熱心に取り組んできたことを知りたい。3つ目は、「自分はこんな人です」と分析できているかどうかを知りたい。
なぜかというと、企業選びには自己分析が不可欠だからです。企業が確認したいのはその3つと考えていいと思います。実はとてもシンプルなのですよ。
M子 ええっ、本当にそれだけですか?
CA渡辺 自己PRというと「特別な経験や実績がなければ」と考える学生が多いですよね。もちろんあればいいのですが、先ほど挙げた、企業の知りたいことに答える内容でなければ意味がありません。逆に言うと、トップを取ったとか、海外にいたなどの特別な実績がなくたっていいんです。大事なのは人と比較してすごいことではなく、あなた自身のことだから。熱中してきた趣味とか、頑張った勉強とか、自分なりのどんなことでもいい。それでも思いつかなければ、今までの人生で楽しかったこととか、モチベーション高く取り組んできたことを思い出してみれば、必ず何かが見つかるはずです。一緒に探してみましょう。
M子 そうなんですね!少し気持ちが楽になりました。
ポイントまとめ
- 企業が自己PRを聞く意図は純粋に「あなたを知りたい」というシンプルなもの
- 特別な経験はいらない!誰でも掘り下げれば必ずいいところが見つかるはず
自己PRが見つからないなら、自分の過去を「見える化」してみよう
CA渡辺 自己PRに悩んでいる方にオススメなのが、「モチベーショングラフ」を描くことです。心の動きを縦軸に、幼少から現在までの時間を横軸にした紙があるので、これまでの人生を思い出しながら、その時々の満足度やモチベーションの変化を描いてみましょう。楽しくてモチベーションの高い時期なら上へ、逆につらくてモチベーションの低い時期なら下へと、1本の曲線でつないでみてください。
M子 そのグラフを描くと、何がわかるんですか?
CA渡辺 人は誰でも常にやる気があるわけではなく、必ず浮き沈みがあります。言い換えれば、どんな人生でもその人なりに頑張っている時や、充実した時期があるんです。まずそれをグラフ化して、自分が楽しかった時に何があったのかを思い出す。さらに「なぜモチベーション高く取り組めたのか」を考えることで、自分がどんな時、なんのために頑張れる人なのかが見えてきます。それが自己PRの手掛かりになるはずですよ。
M子 わかりました。やってみます…。
(しばしグラフ作りに熱中)
M子 うーん…。

M子 できました!こんな感じです。
CA渡辺 ありがとうございます。波がありますね。ではこれを基に少し質問させてください。
M子 お願いします。これで自己PRが見つかるんでしょうか…。
ポイントまとめ
- まずモチベーショングラフで過去の自分を「見える化」してみる
- 特にモチベーションが高かった時期の出来事を思い出してみよう
自己PRを見つけるヒントは「モチベーションが上がった」タイミング

CA渡辺 小学校の時に何度も浮き沈みがありましたね。
M子 小2の時に引っ越しして、寂しくて落ち込んだんですが、友達ができて盛り返しました。小4でへこんだのは入院して1カ月も学校に行けなかったから。でも看護師さんがいい人ですごく楽しくて、友達もお見舞いメッセージをくれたので元気になりました(笑)。
CA渡辺 中学校に入ると一度落ち込み、後は高い状態が続いたのはなぜですか?
M子 中学校では友達と一緒に運動部を選びましたが、入ってみると上下関係が厳しくてつらかったんです。でも友達と励まし合いながら続けるうちに楽しくなりました。良い成績は残せませんでしたが、チームとして頑張れたので良かったです。
CA渡辺 上下関係がきつくても、辞めずに続けられたのはなぜだと思いますか?
M子 辞める勇気がなかったのと、友達がいたから。朝練に一緒に出たり、部活の後におしゃべりしたり、そういう小さな日常が心の支えになって続いたんです。後は、部活中の長距離走で「今日はこの子に勝てた!」とか…そんなことを日々の糧にしていました。
CA渡辺 高校時代もモチベーションが高いですが、その前後が落ち込んでいますね。
M子 実は中学で部活と勉強の両立がうまくいかずに成績が落ちてしまい、第3志望の高校にしか進めず…それでへこみました。その後復活したのは、美術部に入って今でも仲のいい友達ができ、部活が楽しかったからです。次に下がったのは進路を決める時。本の装丁に興味があり、美術系の専門学校に行きたかったんですが、親に「大学は出ておきなさい」と反対されました。でも受験も失敗してしまい、第2志望の大学に進みました。
CA渡辺 大学でまたモチベーションが上がっていますね。
M子 授業で一緒になった子が誘ってくれて、絵本の読み聞かせをするサークルに入ったんです。病院や地域のイベントで子どもたちに読み聞かせして、子どもたちの喜ぶ顔を見るのが楽しくて、充実した日々でした。局所的に下がっているのは恋愛の挫折です(笑)。そして就活を始めた今は、やりたいことが見つからず落ちています。以前は本の装丁などを手掛けるブックデザイナーになる夢があったんですが、専門学校への進学をあきらめてからはまったく考えていなかったので…。
CA渡辺 高校、大学と希望通りの進路に進めなくても辞めずに続けたことは今のご自分にとって良かったと思えますか?
M子 すべて納得しているとは言えません…。受験でもう少し頑張っていれば、いろいろ変わったと思うからです。でも部活を続けたとか、仲間ができたのは大きな財産です。高校受験の失敗から私を引き上げてくれたのも、放課後に美術室で友達と過ごす時間でした。小学生の時の看護師さんや、周りの友達など、人にはいつも恵まれてきました。

CA渡辺 今までのお話に共通するのは、逆境や困難を感じてもすぐに投げ出さず、行動でモチベーションアップにつなげているところですね。部活も辞められたはずですし、進路も変更できたかもしれない。でもまずはここで頑張ってみよう、やりがいを見つけようという姿勢は素晴らしいと思います。社会に出てからも思い通りにならないことは多いと思うのですが、置かれた環境に順応して力を発揮できるのは、M子さんの大きな強みですよ。
M子 ええっ、そうですか?自分では全然気づきませんでした!
CA渡辺 こういう作業は客観性が大事。人と話していると見つかったりするんですよね。
ポイントまとめ
- グラフを俯瞰(ふかん)して、上下したタイミングを「なぜ?」と深掘りしよう
- グラフが上がった時の行動や気持ちの中に共通点を見つけて、自己PRにつなげてみよう
- 自分だけでは気づけないこともある。客観的な視点も取り入れて、自己PRを明確にしていこう
あなたの良さを求めている企業は必ずあるはず!
M子 でも…嫌になるほど普通の人生ですけど、これで自己PRになりますか?
CA渡辺 大丈夫。M子さんにとってしっくりくれば、それは自己PRになります。後はそれを企業に伝えられるよう磨いていきましょう。
M子 エントリーシート(以下、ES)ではどんなふうに書けばいいでしょうか?
CA渡辺 構成としては、最初に「私の自己PRは〇〇です」と結論をシンプルに書くこと。次にその力が発揮されたエピソードを書き、結びで「この力を御社でも生かしていきたいと思います」というのが鉄板ですね。
人事・採用担当者はすごい数のESを読むので、いきなりエピソードから書きだすと頭に入ってこないこともありますから。M子さんであれば、例えば「私の強みは、逆境を楽しさに変える力です」から入り、今お話しされたような、モチベーションを上げた時のエピソードにつなげていくといいですね。基本的には面接も同じだと思います。
M子 ありがとうございます。自分のPRポイントが少しクリアになったみたい。教えていただいた構成に沿って作ってみます!でも…。
CA渡辺 何か心配なことがありますか?
M子 頑張って作っても、ESが通過しなかったり、面接で落とされることもあるんですよね…。
CA渡辺 もちろんないとは言えません。でも、企業が採用に当たって学生に求めることは本当にいろいろで、同じ内容でも受け取り方が全然違うのです。ですから、ここは素直に自分なりのPRを表現して、後は企業側が判断するものと割り切りましょう。大切なのは内容がどうというより、「いかに相手にわかりやすく伝えるか」を考えてブラッシュアップしていくこと。きっと大丈夫!初めにも話しましたが、どんな人にもPRできることがあり、M子さんを求めている企業は必ずあります。それを忘れないでくださいね!
M子 ありがとうございました。頑張ります!
ポイントまとめ
- ESは「私の自己PRは〇〇」と結論を最初に書き、次にエピソードという構成で
- 大事なのはエピソードのすごさよりも、「いかに相手にわかりやすく伝えるか」
- 自己PRの基本構成
1.初めに「私の自己PRは〇〇です」と結論をシンプルに書く
2.その力が発揮されたエピソードを書く
3.「この力を御社でも生かしていきたい」と結ぶ
その後…
M子さんは、CA渡辺のアドバイスを求めながら自己PRの表現をブラッシュアップ。ある出版社の制作部門で、無事内定を得ることができました。
文/鈴木恵美子
撮影/刑部友康
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