広報ってどんな仕事?必要なスキルは?新卒でもなれる?現役広報が解説します

製品発表の記者会見やテレビ番組などで「会社の顔」として登場する広報。表舞台に出る印象が強く「華やかそうだし、やりがいもありそう」というイメージで憧れる学生も少なくない職種です。しかし、実際はどんな仕事なのか、よく知らないという方もいるでしょう。そこで、現役の広報担当者に仕事内容や大切なスキルについてうかがいました。

プロフィール
川村美貴(かわむら・みき)
2002年、株式会社リクルートに入社。営業職と営業マネジメントを7年、新規事業における営業企画・営業推進などを約4年経験後、リクルート分社化に伴い2014年に株式会社リクルートライフスタイルの広報部門立ち上げのグループマネージャーとして着任。2020年より株式会社リクルート広報推進部部長として、リクルートグループにおける社外広報基盤の構築や社内広報戦略などの企画設計などを担う。

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企業にとって「広報の役割」とは?

広報の役割は、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーと信頼関係を構築し、企業価値の向上に努めることと言えるでしょう。ステークホルダーとは、企業が活動を行うことによって影響を受ける利害関係者のことを指します。企業にとっては、一般消費者から地域住民や取引先、行政機関や株主、NGO、従業員などでしょう。

こうしたステークホルダーと信頼関係を構築するための広聴機能(※)のほかに、企業の経営方針や財務状況、製品やサービス内容、人事施策、研究開発の内容といった、事業活動に関する情報全般を開示するためコミュニケーションをつかさどるのが広報です。企業の顔つきを作っているのも広報だと言えるでしょう。

(※)公衆の声を聞き、経営に反映させる世論の収集活動(社外情報のインプット)とともに、社内の情報収集、蓄積(社内情報のインプット)などを行うこと。広報の役割の1つ。

広報は、どんな仕事をしている?

広報の仕事内容は、「社外広報」と「社内広報」の2つに大別できます。

「社外広報」の仕事とは?

社外広報には、消費者に対して製品や事業サービスの情報を発信するマーケティング広報、企業の社会的貢献活動を中心に発信するCSR(Corporate Social Responsibility)広報、株主や投資家に対し、財務状況など投資の判断に必要な情報を提供していく活動を担うIR(Investor Relations)部門と連携して情報を発信するIR広報などがあります。

社外広報の手法としては、自社WebサイトといったオウンドメディアやSNSを使って自ら発信したり、報道機関・メディアを通じ、取材していただく中で情報発信したりします。

また、経営に影響を及ぼすと考えられるトラブルやリスクが起こった際、被害を最小限に抑えられるよう迅速に対応し、再発防止に努める姿勢を示すリスクマネジメント(危機管理)広報も、ステークホルダーの信頼をつなぎとめ、事業を継続させていくために欠かせない重要な仕事と言えるでしょう。

「社内広報」の仕事とは?

対して、企業で働く従業員に向けて情報を発信することで、会社との結び付きを深め、エンゲージメント(従業員エンゲージメントのこと。従業員の企業に対する愛着や信頼)を高めることが社内広報の役割です。社長や役員から経営方針や従業員へのメッセージを発信することや、働く現場の取り組みなどを紹介することで、企業の目指す価値観を浸透させていくほか、企業が向かうべき方向性を示し、ガバナンス(企業のルールなどを浸透させ、社内を統制させる仕組み)上、必要なお知らせをすることもあります。手法は、従来の紙媒体に加え、近年はWebやオンライン動画での配信が一般的になりつつあります。また、全従業員が参加するイベントなどの設計も社内広報の仕事となることが多いでしょう。

「花形」に見えるのは、広報業務のごく一部

広報は、報道機関とかかわり表舞台に立つことも多いため、花形職種のように語られることもあります。しかし、記者会見やテレビで見かけるような華やかな仕事はほんの一部で、広告宣伝業務に近い仕事だけでしょう。広報の役割や仕事内容は、企業によってまったく異なりますし、同じ企業であっても経営方針が変更されるタイミングによっては広報の役割が変わることを理解しておくと良いでしょう。

広報のイメージ画像

広報で働くやりがい、大変なことは?

私はこれまで、社外広報と社内広報の両方に携わってきましたが、それぞれの役割や仕事内容によって、やりがいは異なります。

社外広報としてやりがいを感じるのは、企業として世の中にアピールしたいと考えて発信した情報が社会やステークホルダーに広くインパクトを与えることができたときです。その発信情報に対して、社内外にポジティブな反響があるとうれしいですね。
トラブルに速やかに善処できたときにも、大変でしたが達成感はありました。関連部署と連携して対策を考え、誹謗(ひぼう)中傷などに広がることなく事態を収拾できたとき、誠実な姿勢や気持ちが正しく伝わったのだという安堵(あんど)と満足感を得られます。トラブル対応はネガティブなコミュニケーションではありますが、企業には必要不可欠な仕事ですし、かつ広報としてとても大切な役割です。

社内広報としてやりがいを感じるのは、さまざまなインナーコミュニケーションを通じて、従業員が士気を上げて、自分の所属する部署でもっと良い仕事をしようとモチベーションを高めたり、「いい会社だから人に薦めよう」と思ったりするときです。社内広報は、経営陣が伝えたいことを従業員の受け取り方を想像しながら演出を考え、発信しています。後から実施したアンケートで良い反応を得られると、その努力が報われたのだとうれしくなります。

一方、広報の仕事で最も大変なことは、情報発信によって起こりうるあらゆる事態を想定しておかなければいけないことでしょう。利害の異なる複数のステークホルダーを想定し、その情報を発信するメリットとデメリットを考え、事前にリスクをつぶしておくことはとても難しいからです。

広報として働く上で必要なスキルは?

これまでに紹介した広報の仕事内容から、私が考える働くために必要なスキルは、「コミュニケーション能力」と「想像力」です。

情報を正しく伝えるために必要な「コミュニケーション能力」

コミュニケーション能力は、どのような仕事にも求められる力です。私が広報として特に意識しているのは、企業の顔としての公共性と正しく伝えるためのコミュニケーションです。経営の立場や理念に沿った発信をすることも多いので、個人ではなく企業の視点で話すことを心がけ、ステークホルダーに違和感を持たれないよう言葉を選んで、「どう伝えれば正しく伝わるか」を常に意識しています。そのためにも、記者の関心や世の中のトレンドを捉える情報収集力、伝えたい情報を誤解なく魅力的に伝えられるような企画力も、広報に大切なスキルと言えるでしょう。

情報がどう伝わるかをイメージする「想像力」

「ステークホルダーがその情報をどのように捉えるか」をイメージできる想像力は、広報のスキルとして、非常に大切です。冒頭でも述べましたが、ステークホルダーとは利害関係者のこと。消費者、投資家、取引先、従業員など、受け手(ステークホルダー)によって、同じ情報でも“利”になったり“害”になったりする可能性があります。ですから、「伝えたいポイントがステークホルダーにどう伝わるか」を常に意識して、相手の立場で考える想像力が求められるのです。加えて、さまざまな情報を発信してステークホルダーとの信頼関係を構築するためには、自社についてはもちろん、経営トップの意思を深く理解しておくことが大切であると言えるでしょう。

新卒から広報として働くことはできる?どんなキャリアが広報に役立つ?

新卒で広報に配属されるかどうかは、入社された企業の方針次第です。新卒でも広報として働くチャンスがあるかもしれませんし、ジョブローテーションによって途中から広報に配属ということもあるかもしれません。ただ、広報部員の人数は従業員数が数万人を超えるような大手企業でも100人以下ですし、企業規模によっては数人というのが現実です。

新卒で広報に配属となり、仕事を一から覚えていく道もありますが、私の経験から言えるのは「いろいろな部署で経験を積んでからの方が即戦力になる」ということです。私自身、異動する前の営業や企画職での経験が、広報の仕事にとても役立っています。

さまざまな業界に営業アプローチした経験が各業界の特性理解に役立ちましたし、新規事業の立ち上げで社内の複数の部門と連携した経験があったことで、各組織の役割や利害バランスがつかめました。記事に売り込むコミュニケーション力も、営業により培ったスキルが生かせていると思います。

広報の仕事を目指して、学生時代からできること

私が広報を目指す学生さんにオススメしたいのは、“想像力”を日常の中で養っていくことです。ステークホルダーのような立場による違いは、皆さんの身の回りにも存在しています。例えば、就活中は学生視点でしか状況が見えていないことが多いですが、企業の採用担当者の視点に立ったらどう見えるかなどを想像してみてください。

また、もしあなたが飲食店でアルバイトをしているなら、オーナーの視点やお客さまの視点で想像してみてください。「なぜこんなに丁寧に接客しなければいけないの?」と思っているサービスが、オーナーの視点で考えると「リピーターを増やすために絶対に必要なこと」かもしれません。お客さまの視点に立てば、「サービスが良いからこの店に来ている」という人もいるでしょうし、「サービスは簡易で良いから、もっと価格を下げてほしい」というお客さまも中にはいるでしょう。

このように視点を切り替えてみると、立場によって利害の捉え方が変わることが認識できるようになり、想像力のトレーニングになります。私も、広報になったばかりのころ、想像力を鍛えるために意識して取り組んでいました。

そして想像力を養うためにも、これからの学生生活の残りの時間を、視野を広げる経験を積むことに費やしてみてください。知らないことに触れるとものの見方が変わっていき、それが想像力を養うことにつながっていくに違いありません。

取材・文/笠井貞子


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