エントリーシート(ES)の重要性は理解しているものの、どのように書けば採用担当者の印象に残るのかわからないと頭を抱えている人は少なくないでしょう。企業の目に留まるESの書き方のコツや注意点などについて、就活塾を主宰する我究館の立川雄太さんにお話をうかがいました。
2019年にエン・ジャパン(株)へ新卒入社。人材紹介事業部の営業担当として関西の大手から中小まで300社の担当企業の採用支援に携わる。落ち込んだIT領域の立て直しや積極的な面接対策等の求職者対応を通じて確固たる地位を築く。3年の勤務を通じ、目の前の人の「やりたい」を実現できる仕事に就きたいと考えて上京。2022年、我究館コーチに就任し、300名以上の就活生の支援を実施。
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ESとは
ESは、企業との最初の接点であり、志望動機や自己PRなど自分の特徴や企業への熱意を伝えるための応募書類です。
企業(採用担当者)はESをどのように見ている?
提出したESは、各面接を行う担当者に共有される事前資料となります。担当者は面接前にESを確認し、その情報から応募者がどんな人物なのかを想像します。
つまり、応募者の第一印象を形作る重要な要素の1つと言えます。
ESを書く際に意識するべきこと
意識するべきことは、書類選考の担当者にとって“易しい文章”を書くことです。あまり難しく考えずに、とにかくシンプルに、サラッと読んでも理解できるESに仕上げましょう。
選考でのポイントは、企業に自分のファンになってもらうこと。そして、自分のファンになってもらうために大切なのは、企業側の事情を意識することです。
ほとんどの就活生は自分に焦点を合わせてESを書いていますが、読み手を意識することも大切です。特に、人気企業の人事担当者は、膨大な量のESを確認しているため、企業側の事情を考えて、読みやすいESにすることは大切なポイントになります。
その上で重要となるのは、自分が企業の求める人物像に合う特徴を持っているかどうかです。企業は、求める人物像を設定して採用に臨みます。ですから、その特徴に当てはまる内容がESに記載されていれば、印象に残るだけでなく、高評価にもつながるでしょう。
例えば、企業が主体性のある人材を求めている場合、主体性を感じられるエピソードがESに記載されていれば、高評価につながると考えていいでしょう。
ESの書き方のポイント
ESの中で印象を大きく左右するのが、自己PR、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)、志望動機です。それらすべてに共通するのは、以下のようなテクニックです。
30秒で読んで理解できるような内容にする
繰り返しになりますが、数多くのESを見る書類選考担当の立場に立って、“サラッと読み”で理解できる内容を意識することが大切です。
そのためには次のようなポイントを意識して、各設問を30秒で理解できる程度に簡潔にまとめましょう。書き終わったら誰かに読んでもらい、スピーディーに理解できるどうか確認するといいでしょう。
【1文目で内容がわかるよう結論から書き、他者と差別化できる内容にする】
例えば、ガクチカの1文目に「学生時代に頑張ったことは、サークル活動でリーダーをしたことです」と書かれていても、書類選考担当の立場からすると、他者と似ているため最後まで文章を読まなければ区別がつきません。
一方、「文化祭実行委員にて、1年生という立場から周囲を巻き込み、組織の改善案を実現した」など、1文目が具体的な内容だと、容易に他者と差別化することができるので印象に残ります。
【論点を1つにする】
アピールしたい一心で複数の要素を盛り込もうとする人がいますが、自己PRに強みが2つ書いてあったりすると、読み手への情報が渋滞して理解しづらくなります。論点は1つに絞って、簡潔にまとめましょう。
【一般になじみのない(難しい)言葉は使わない】
一般になじみのない言葉は使わないようにしましょう。例えば、バイト先のコンテンストで受賞したCS賞(=接客が上手でお客さまを幸せにしたスタッフに贈られる賞)は、「CS賞」ではなく「接客賞」と書くなど、誰にでもわかる名称に置き換える配慮が必要です。
企業がESに設定している項目にきちんと答える
多くの企業は、求める人物像を見極めるために独自のESを用意しています。そのESにある設問にふさわしい内容を記入していて、その内容が求める人物像に合致していれば、次の選考に進める、と考えていいでしょう。
ESにある項目にきちんと答えていないと、仮に応募者が求める人物像に合致していたとしても、合致しているのかどうかの見極めができないため、選考での評価につながりません。自分を正しく評価してもらうためにも、企業がESに設定した項目にきちんと答えましょう。
定量的な実績がなければ、定性的な内容で構わない
定量的な実績がないといけないと思い込み、バイトでの実績など明確な数値を示せるエピソードがなくて落胆している就活生は少なくありません。
ですが、数値は相手にわかりやすく伝えるための手段であって、必須というわけではありません。数値化できない定性的な内容でも、次の選考に進むことは十分可能ですので、心配は要りません。
【例文】ESの書き方
ESでどのように書けばいいかと特に多く相談される「ガクチカ、自己PR、志望動機」の各項目について、例文をいくつか紹介しますので、参考にしてください。
※各項目はそれぞれ別の就活生によるものです。実際にガクチカ、自己PR、志望動機を書く場合は一貫性を意識しましょう。
人見知りの性格を克服するために、ファストフード店の接客担当として1日当たり100名を超えるお客さま対応をしました。大学入学時に、周りから「第一印象が暗くて話しかけづらい」と言われ、悔しい思いをしたので、自分を変えたいと思いました。そんなとき、笑顔を絶やさず働く同店の社員に憧れ、挑戦の意味を込めてアルバイトを始めたのです。最初は、お客さまの目を見ることすらできませんでしたが、先輩方のようになりたい一心で努力を重ねました。毎日鏡を見て笑顔の練習をしたり、接客のロールプレーイングを先輩に申し込み、その様子を撮影して研究したりしました。また、接客に慣れるには経験数も重要だと感じ、店長に接客時間の延長を依頼し、毎回100名以上の接客ができる環境に身を置きました。その結果、接客賞を受賞し、人見知りを克服して明るくコミュニケーションを取れるようになりました。
目標であった海外留学に行くため、仲間を巻き込みTOEICスコアを380点から800点まで伸ばしました。外国語学科に入学しましたが、コロナ禍で学生生活の制限に加え、留学も一時停止となっていました。先が見えない中、チャンスが来た際にいつでも留学に行けるよう、TOEICの勉強に力を入れました。最初はモチベーション維持や知識不足に悩みましたが、その課題に対し友人を巻き込むことを実施し解決していきました。自分がTOEICスコア750点計画を実施することをSNSで公開し、一緒に達成する仲間を募集しました。2名が参加を希望してくれ、3名で目標達成を目指しました。モチベーションが上がりやすいよう、学習スケジュールをシェアし合い、タスクが終わるごとに報告し合うこと、そして毎晩一日の振り返りを実施することにより、計画的にモチベーションを保ちながら学習を進めていけました。結果、3名とも目標であった750点を超え、留学の権利を獲得することができました。
私は、当たり前なことを誰よりも極め、信頼を得られる人間です。小学生のころ、授業中の先生の発言に毎回反応をしていることを評価していただいた経験から、当たり前なことを継続する重要性に気づきました。それ以来、凡事徹底を意識するようになりました。大学時代には、授業の予習を毎回A4ノートにびっしり書き込んで最前席で授業を受け続けたところ、事前準備の量を見て教授が感動してくださり、授業アシスタントに抜てきされました。このように、社会人になってからも信頼を得られる人になれるよう、当たり前なことに誰よりも真摯(しんし)に取り組んでいきたいと考えています。
私は、周りから「鋼のメンタル」と言われるほど、忍耐強く難しいことに挑戦し継続することができます。幼少時から極度な人見知りだったのですが、母の支援もあり無遅刻無欠席を達成できた喜びから、つらい状況でも続けることが自分の自信につながることに気づきました。その経験以降、難しい環境にあえて飛び込み継続するようになりました。小・中学校では学校一小柄な体格にもかかわらず、バレーボール部に参加。厳しい監督の下、9年間続けることで、リベロとして試合に出られるようになりました。また、高校では全国レベルのソフトボール部に初心者として入部しました。3年間で一度も試合に出場できませんでしたが、1日8時間の練習を3年間欠かさず参加し続けました。社会人になってからも、どんなにつらいことがあっても続けることで自信につながることを信じ、難しいことに挑戦していきたいと思います。
「正しい仕事がしたい」という目標が貴社でかなうと考え、志望しました。幼いころ、いじめを受けていた友人を助けたことがあったのですが、当人がそれを卒業後も覚えてくれていた経験から、自分が正しいと思ったことを貫ける仕事がしたいと思うようになりました。そんな中、貴社の考え方や正しさを追求するための取り組みに魅力を感じ、応募しました。「IT業界の労働環境格差をなくす」という貴社のビジョンは、私にとって正しい考え方であり、被害を受けている下請けの人々を助ける活動に共感しました。また、貴社はビジョン追求のために、格差を生んでいる元請けのコンサル企業や現場エンジニアへの実態ヒアリングを週に複数回実施するなど、正しさを徹底的に追求できる環境であることがわかりました。
貴社に入った際には、持ち前の正義感を生かして業さきのようさ界変革の立役者になれるよう精進していきたいです。
「IT技術の進化により傷つく人を減らしたい」という思いが貴社でかなうため、志望いたしました。私は高校時代に家族の端末情報が盗まれ、多額の損失を被りました。その経験から、IT技術を駆使して悪質な犯罪を実行する人々の対策となるサイバーセキュリティについて関心を持ち、大学ではコンピュータサイエンスを専攻しました。そんな中、貴社は提供するセキュリティシステムを高頻度にアップデートし、新しいセキュリティシステムの開発をスピード感を持って実施されています。貴社であれば、日々手口を探し続ける犯罪者に負けないようなセキュリティが提供でき、私たちのように傷つく人々を減らすことができると感じました。貴社に入った際には、セキュリティエンジニアとして日本の情報社会の安全性を高める存在となれるよう精進していきたいです。
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取材・文/笠井貞子