【メキシコ編】 火事場の馬鹿力で帳尻を合わせるのが上手なメキシコの人々

Reported by うこ
メキシコにある日系メーカーの現地法人に勤務。現地では、日本からはなかなか行きにくいところを旅するのが楽しみ。特に、メキシコの有名な観光地カンクンは、何度でも行きたい魅力的なリゾート地だとか。

数時間でプレゼン資料を用意

はじめまして。うこです。メキシコにある日系メーカーの現地法人に勤務しています。

職場で一緒に働いている人たちの約7割はメキシコ人。あとは日本人とアメリカ人が約1割ずつで、ブラジル人が5パーセントほど。残りはフランス人やドイツ人などです。仕事相手としては、メキシコ人と日本人が約4割ずつ、アメリカ人が約1割、残りはルーマニア人、ブラジル人、ほか南米の国の人々といった顔ぶれとなります。

仕事で使う言語は、約6割は英語、約3割が日本語で、残り1割がメキシコの公用語であるスペイン語といった感じです。スペイン語は、赴任前はまったくできませんでしたが、今は、日常会話や、会議でどんなことを言っているのか、ポイントは理解できるようになりました。

メキシコで仕事をしていて驚くのが、スケジュールがどんなに遅れていても、突発的な馬力でなんとか間に合わせてしまうこと。どうやら彼らは、計画的にものごとを進めるのが、日本人と比較するとかなり苦手なようで、ギリギリまで何の用意もしていないことが珍しくありません。例えば、プレゼン当日の朝に、資料ができているかどうかを確認すると、当然のように「できていません」という答えが返ってきます。では間に合わないかというと、それから数時間で、どうにかこうにか形にして、間に合わせてしまうのです。そうして、大急ぎで資料を作成するようなやっつけ仕事なのにもかかわらず、プレゼンそのものは非常に上手。悪く言えば、資料の不備もしゃべりでごまかしてしまうという感じです。

また、数カ月前から準備が必要な案件については、それこそ何カ月も前から「準備はどう?」とフォローアップするようにしているのですが、それにもかかわらず、1週間ぐらい前からしか動きません。その時期から「間に合うの?」と圧力をかけることで、なんとか当日にはバッチリ全部そろっている、という状態です。日本の感覚だと、このくらいの準備なら1週間前にはそろえていることが多いのにと思いますが…。

これは私の個人的な考えなのですが、日本は四季がはっきりしているので、昔から、農作業も冬に向けて計画的に実施しなければならないことから、計画を立てて、その通りに進めることに長(た)けているように思います。一方でメキシコは、常春と言われるほど気候に恵まれ、土地や食物が豊富なことから、そこまで計画を重視しなくても、なんとかなってきたのではないでしょうか。その分、火事場の馬鹿力たるや半端なく、最後の最後に皆で力を合わせ、どうにか帳尻を合わせることができてしまうのではないかという気がしています。この瞬発力には、いつもながら感服してしまいます。

仲が良いかどうかで優先順位が決まる

そして、仕事よりもプライベート、仕事上の責任などよりも自分が一番大事、という優先順位のつけ方も、メキシコの人々の特徴のように思います。どんなに業務でプレッシャーがかかろうとも、失敗をしようとも、自分のライフスタイルを貫き通すのです。特にFIFAワールドカップ(TM)大会のときに、それが顕著。緊急かつ重要な課題を抱えているにもかかわらず、従業員総出で、仕事そっちのけでワールドカップのメキシコ戦を応援するのです。2014年のリオデジャネイロ大会のときも、6000件のデータの誤りが発覚し、どう考えてもその日のうちに修正が必要なときに、そのチームのメンバー全員が、データ修正を後回しにして、メキシコ代表チームを応援していました。ある意味、ストレス耐性が日本人よりもはるかに強いのではないかと思ってしまいます。

なお、FIFAワールドカップ(TM)は、メキシコの人々にとってとても重要なイベントなようで、当社でも、社員全員が、社内で一番広いスペースである社員食堂に集まり、大画面で試合を見ながら応援しました。

優先順位ということでいうと、「リレーションシップ」がとにかく大事だということも、特筆すべきポイントです。前述の通り、あまり計画を立てない上、仕事を頼まれれば、決して「NO」とは言わないメキシコ人なので、そうして引き受けているうちに、やるべき業務が山積していることもしばしば。そんなとき、メキシコ人は何から手をつけるのかというと、なんと「自分が一番仲の良い人」から頼まれたものから、手をつけるのです。例えば、総務担当のスタッフが車両の手配を頼まれた場合であれば、かなり前から希望の車種を伝えていた社員の車を後回しにして、自分と仲の良い社員の車を先に探してあげたりします。その結果、前から頼んでいたにもかかわらず、希望の車種が見つからずに「別の車だけど我慢してください」となったりすることも時にはあるほど。

出張旅費精算も、普通は提出順に処理すると思いますが、仲の良い社員の分を優先するので、1年半放置されることもザラにあります。私は、担当者が自分の部下と仲良しだったおかげで、ずいぶん優遇してもらった覚えがあります。

親しければ親しいほど、便宜も図ってもらえるようです。私は自動車通勤なので、勤務先に駐車スペースを確保してもらう必要があるのですが、勤務先から少し離れた駐車場を用意されてしまう社員もいる中で、オフィスのあるビルの駐車場を用意してもらえました。駐車場を手配する担当者が、私の上司と仲良しだったおかげです。

このように、人間関係がすべてに優先するので、部下とは特に良好な関係を築くように、普段から意識しています。毎日、必ず朝に「おはよう! 今日の調子はどう?」と声を一人ひとりにかけておくことは、とても大切。急いでいるときほど、簡潔に会話を終わらせようとしてしまいがちですが、ここでは、どんなときでも、笑顔を崩さずに、まずは相手の話を聞いてあげるようにしています。会話の最初は、「今日も元気? 週末は何をした? 今日の洋服かわいいね」と業務と関係ない話から。「この人は、私との個人的な関係性を大事にしている」と相手に思ってもらうようにすることが、業務を円滑に進めるコツだからです。そうしてチームのメンバー全員に、「この人に言われたことなら、頑張ろう」と思ってもらうことが、案外、仕事を早く進めるための一番のポイントだったりするのです。

同時に、「けんかは絶対にしない。敵を作らない」ということも重要です。怒らず、いらいらせず、とにかく笑顔で接することが肝要なのです。どんなに腹が立っても、怒ったことで関係が崩れてしまったら意味がありません。なぜなら、彼らは、仲の良い相手からの頼み事を最優先にするだけでなく、仲の悪い相手からの頼み事は一切やらなかったりするからです。部下から、「あの人が開く会議なら出席したくありません」という耳を疑うような言葉を聞いたこともあります。そのため、何かのプロジェクトにチームのメンバーを参加させるときは、一緒にプロジェクトを進めるカウンターパート(社内外の関係者)と仲の良いメンバーを選ぶといった配慮も必要です。

次回は、メキシコでハッピーに暮らすコツについてお話しします。

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メキシコシティの中心地の南にある住宅街。閑静で交通の便が良いことで人気がある。

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同じくメキシコシティのコヨアカン(Coyoacan)という街。緑豊かで歴史があり、メキシコの女流画家フリーダ・カーロの生家があることでも知られる。

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メキシコシティの再開発地サンタ・フェ(Santa Fe)。高層ビルや大規模なショッピングセンターがあり、メキシコ人をして「ここはメキシコではない」と言わしめた街だが、だからなのか、このエリアに好んで住む駐在員もいる。

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メキシコシティ中心部から車で1時間ほどの穴場観光スポット「ソチミルコ(Xochimilco)」。運河の上を行き交うカラフルな船に乗って、ゆったりと観光できるため、「メキシコ版ヴェニス」といった趣きだ。

構成/日笠由紀

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