【スペイン編】スペインの人々に見る独特な時間感覚

Reported by SAKURADA
スペインにある日系企業子会社に勤務。現地での楽しみは、スペインの軽食喫茶兼居酒屋であるバルで、おいしいタパスをつまみながらワインを味わうこと。朝市で新鮮な野菜や地元の特産品を手に入れるのも現地でのうれしい習慣のひとつ。

コーヒーブレイクの間は役所の窓口が無人に

こんにちは。SAKURADAです。今回は、スペインの人々の時間感覚などについてお話しします。

スペインで暮らしていて感じるのは、スペインならではとも思える特別な時間感覚が共有されていること。例えば、スペインでは午前10時ごろに「コーヒーブレイク」と称する休憩を取る習慣があるのですが、公務員でさえもこの時間は総出で持ち場を離れてしまうのにはビックリ。一度、書類申請に行った先の窓口で、15分ほど放置されてしまったことがあり、それ以来、日本人の上司が同行する際などには、コーヒーブレイクの時間帯にかからないようにと、なるべく朝一番を狙って行くようになりました。当社にも同様の休憩時間はありますが、そもそも長時間席を外したりはしない上、グループごとに交代で席を外すようにしているので、オフィスに誰もいなくなるようなことはまずあり得ません。

役所のコーヒーブレイクに象徴されるように、スペインの人は、非常にのんびりしています。そのため、日本でよくあるような「時間があったらお願い」「できるときにやっておいて」といったお願いの仕方では、後回しにされるか、最悪忘れられてしまうことも。本当に必要なことは、ダイレクトにお願いしないとやってもらえないのです。なかなか動いてもらえないときは、しつこく何度も依頼することも必要。スペイン人上司とスペイン人部下とのやりとりを見ていると、「あんなにきつく言われたら、私だったらビビっちゃうよなあ」と思うほどのきつい口調だったりしますが、ここではそれが当たり前のようです。

私自身は、それほどきつい口調は使いませんが、それでも、本当に何かをしてほしいときには、スペイン語のテキストに出てくるような「~していただきたいんですが」「~することは可能ですか?」といったようなソフトな表現は使いません。「~してください」「~しなければなりません」とダイレクトに言った方が良いようなのです。そのせいなのか、日本語を話すときと、スペイン語を話すときとでは、私自身も性格が変わるような気がします。スペイン語モードのときには、割とアグレッシブで歯に衣を着せなくなるのです。よく知っている相手と軽く口ゲンカをするときも、日本語だったら絶対に言わないようなきつい言葉を口にしてしまいます。例えば、「Eres un inutil(役立たず)!」といったような厳しい言い方もスペイン語でだとなぜか平気なのです。

スペイン人の時間感覚のもう1つの特徴は、食事の時間が非常に遅いこと。昼食は13時半から14時半くらいまでで、夕食は20時くらいからが普通です。つまり、13時半までお昼が食べられないことになるわけで、慣れない間は私も、12時になるとお腹(なか)が空(す)いてグーグー鳴ってしまったりして。私の周りでは、夕食も20時から21時の間から始める家庭が多いようです。子どもは、それまでにお腹が空いてしまうので、学校から家に帰るとすぐにBOCATA(フランスパンにチョリソーやハムなどを挟んだもの)を食べておきます。そうすることで、夜に大人と一緒に食事するまでお腹が持つわけです。私の子どもも、17時におやつを、19時半ごろから夕食を食べています。

スペインは、「シエスタ」という昼寝の習慣でもよく知られていますが、その名残りで、売店などは、昼間から夕方までは閉まっていることが多いですね。聞くところによると、昔は8時間労働の仕事が少なく、大半の人が2カ所の仕事を掛け持ちしていたそう。朝8時から13時までが午前中の仕事、それから移動して、17時から20時は別の仕事をしていたことから、その働き方が生活に定着し、昼休みの長い「シエスタタイム」ができたというのです。スペイン南部のアンダルシアなど夏が暑い地方では、昼間はとても肉体労働などできる気温ではないため、昼の時間帯を避けた結果今のような時間割になったという説も。いつしかスペインでの食事のペースに慣れてしまった私は、旅行先のフランスでのんびりしすぎてお昼を食べそびれたこともあるほどです。フランスでは日本と同様、14時くらいにはランチタイムが終わってしまっていたんですね。

地域ごとにそれぞれの文化が

スペインでは、当然スペイン語が公用語ですが、地域ごとに方言もあります。ポルトガルと国境を接するガリシア州ではポルトガル語混じりの「ガリシア語」、バルセロナではフランス語混じりの「カタルーニャ語」、バスクではスペイン語とはまったく異なる「バスク語」が話されています。バルセロナになると、スペイン語で話しかけても、カタルーニャ語で答える人も多数。私自身、スペイン語には不安はないものの、カタルーニャ語やガリシア語はなんとなく理解できる程度のレベル。“なんとなく”なので勘違いすることもあるし、バスク語となるとちんぷんかんぷんです。知人の日本人男性には、バスク地方へ車で旅行に行き、道路の標示のバスク語がわからず走っていたところ、気がついたらフランスにいたという笑い話もあるほどです。

言葉の違いの背景には、もちろん、文化の違いがあります。スペインには、地方ごとに異なる風土と文化があり、各地を訪れることで、違いや味わいを楽しむことができます。例えば、前述のアンダルシアは、情熱的な人々、灼熱の太陽、フラメンコに闘牛など、日本人が「スペイン」と聞いて思い描くイメージのモデルになっていると言っても過言ではないでしょう。アンダルシアにあるアルハンブラ宮殿やコルドバのメスキータ(聖マリア大聖堂)の前に立ったときには、まるでその時代にタイムスリップしたかのような感覚さえ覚えました。12月の訪問だったため、風が非常に冷たく、とても寒い思いをしましたが、それでも、自動車の中で窓ガラス越しに受ける太陽の光は非常に強烈で、車内がサウナのように暑くなったことにはビックリ。「真夏はフライパンの上で料理されているかのように暑い」と言われていることにも思わず納得してしまいました。

バスク州は、ひときわ特徴が際立った地域で、いろいろな意味でアンダルシアとは対照的。ここ最近、日本でも穴場の観光スポットとして注目され始めてきているサン・セバスチャンという街は、比較的気温が穏やかで、冬季は雨が多いため緑に恵まれていて、やはりアンダルシアとは大違いです。物価はスペイン国内でもっとも高く、アンダルシアでビールを頼むとタパス(つまみの軽食)が無料でついてくるほどリーズナブルなのに対し、ここではタパス(ピンチョと呼ばれる串焼き)が1個2ユーロほど。それでも、料理の質はナンバーワンだと思います。観光客が多い夏の時期には、スリなども出るようですが、それでもスペインのほかの都市に比べると格段に犯罪が少なく、安心して出歩くことができます。アンダルシアの人は人なつっこくてすぐに友達になれますが、バスクの人々は日本人に似ているようで、他人との距離を保とうとする印象も。とはいえ、親切な人が多くて、日本人には居心地のよい場所です。

ポルトガルと国境を接するガリシア州の都市、サンティアゴ・デ・コンポステーラは、キリスト教の聖地として世界中からキリスト教徒が巡礼で訪れるにふさわしい「威厳」のある場所。特定の宗教を持たない私ですら、目に見えない神々しい存在を信じるような気持ちになったものです。年間降水量が多く、雨がちなだけに、石造りの建物にコケが生えていたりと、独特の風情が。近郊にある海沿いの小さな町では、牡蠣(かき)やカニ、亀の手といったシーフードも堪能できます。

バルセロナは、ガウディの未完の建築物サグラダ・ファミリアで知られる有名な都市。ここは、「自分はスペイン人である」というよりもむしろ「自分はカタルーニャ人である」という意識を持つ人々が、今でもその独立を求めて活動している土地でもあり、今後の動向が見逃せません。

首都であるマドリードは、東京と同じくらいさまざまな人種の人々が集まっている大都市。美しい建物も有名な美術館もあり、生活するには便利ですが、地方ほどの個性を感じないのも確かです。日本よりも“テクノロジー化”が進んでいる部分もあり、ナイトクラブの中には、入場チケットの代わりに腕にマイクロチップを埋め込んでスキャンする方法を取っている店があると聞いたことがあります。かなり物騒な街なのも事実で、公園のベンチにカップルが仲良く寄り添ってロマンチックな雰囲気に浸っている隙に、女性の脇に置かれていたバッグがいとも簡単に置き引きされるのを目撃したことがあります。叫んで知らせようとしたら、「あとで報復されるからよした方がいい」と、地元の友人に止められました。

次回は、スペインでの私の生活についてお話しします。

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アンダルシアには、イスラム支配期の文化を伝える史跡が多く残っている。

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カタルーニャは奇岩の山で有名なモンセラットという街でよく知られている。

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バスク州の都市、サン・セバスチャンの旧市街。ビスケー湾に面しており、保養地としても名高い。

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ガリシア名物「亀の手」。噛むと紫色の汁が飛び出すが、意外と美味。

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バルセロナのグラシア通りに面して建つスペイン人建築家ガウディ設計の集合住宅「カサ・バトリョ」(中央)。別の建築家による左の「カサ・アマトリェール」も個性的。

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マドリードにある菓子店。ドーナツ1個は1.4ユーロ(約190円・2013年10月現在)。

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クリームがてんこ盛りなスペインのケーキ。口にするたびにコレステロール値が気になる。

構成/日笠由紀

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