インセンティブ制度があると働きやすい?導入企業の特徴や自分に合っているか判断するポイントを解説

就活の企業研究をしていく中で出会う「インセンティブ」という言葉。実力次第で年収が増えるなど、魅力ある制度として紹介されているようですが、実際どのような制度で、どんな企業で導入されているのかイメージできていない就活生も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、キャリアアドバイザーがインセンティブ制度の仕組みについて解説、自分に向いているかどうかを判断するポイントも併せて紹介します。

プロフィール
上原佳良子(うえはら・かよこ)
キャリアアドバイザー。教育事業会社に7年間勤務したのち、2018年、株式会社リクルートキャリアに入社。同年、国家資格キャリアコンサルタントを取得し、コンピュータソフトやスマホアプリ、人材や広告などの無形商材の営業領域の転職を支援。現在は、26歳以下の営業領域全般の転職をサポート。月間30件以上の転職相談に対応している。

「インセンティブ」ってどういう意味?「歩合制」とはどう違うの?

インセンティブとは、目標を達成した社員に支給される報酬

インセンティブ(incentive)とは、刺激、動機、励み(となるもの)という意味です。ビジネスでは一般的に、目標を達成するなど社員の頑張りに対し、企業が給与に上乗せする報酬と理解されています。

報酬として最もポピュラーなのは「金銭」でしょう。ほかにも最優秀者を表彰したり、会社が用意した旅行へ招待したり、提携している福利厚生サービス企業のポイントを付与し、ためるとさまざまな商品や映画鑑賞、宿泊やスポーツジム利用などに交換できるなど、近年のインセンティブ制度は多様化しています。中には、自社株を一定の価格で購入できる権利「ストックオプション」を付与する企業もあるようです。

インセンティブの評価基準は、企業や職種によってさまざまです。成約件数や売上高、昨年対比○%アップなどの数字目標達成のほか、応募件数や商談率など、目標を達成する過程での達成度合いを設定する企業もあります。また、評価の対象期間や支給時期も、四半期や半年ごと、あるいはそれを月単位に落とし込んで毎月支給している場合もあるようです。

「歩合制」「完全歩合制」「報奨金」「賞与」とはどう違う?

インセンティブ制度と似た言葉に「歩合制」があります。歩合制は、1件ごとの成果に対して報酬を支払うもの。さらに歩合制には、「基本給+歩合給」の場合と「完全歩合制」の場合があります。完全歩合制の場合は、成果を上げないと収入を得ることができません。

「報奨金」は、一般的にインセンティブとほぼ同義で捉えられています。インセンティブほど制度化して支払われるものではなく、企業が特に注力したい商品などを一時的に設定する営業のキャンペーン目標に付与する金銭や、表彰に伴う「金一封」というイメージが近いようです。

広く知られている「賞与(ボーナス)」は、個人が目標を達成した実績だけでなく、その人の勤務態度や職種、仕事のレベルや勤続年数などによる評価に加え、企業の業績など、複合的な要素を加味して支給される報酬のこと。ですからインセンティブとは異なり、目標を達成した実績以外の要素で支給額が増減することも考えられます。

どんな企業がインセンティブ制度を導入している?その目的は?

インセンティブ制度が最も活用されているのは、営業職でしょう。業種としては、高単価な商材を扱う医療機器業界や不動産業界、自ら新規開拓していくことが求められる広告業界や保険業界などが多い傾向にあります。また、1件の商談が高額な外資系コンサルティング会社なども、「基本給+インセンティブ」で高収入に結び付いているようです。

ところで、企業はなぜインセンティブ制度を導入するのでしょう?

最大の目的は、社員のモチベーションを高く維持することにあります。成果を上げた分、収入が増えるので、次も頑張ろうと考える社員が増え、企業の業績を向上させることができます。また、インセンティブ制度によって貢献度の高い社員のモチベーションを維持できれば、優秀な社員の定着率を高めることにもつながります。さらに言えば、注力したい分野や商材にインセンティブを設けることで、会社として進みたい方向に事業をけん引していくことが可能になるというメリットもあるのです。営業先で商談するビジネスマンのイメージ

インセンティブ制度がある企業に向いているかどうかを知るには?

インセンティブ制度がある企業の働き方や社風を知っておこう

インセンティブ制度のある働き方を選ぶ主な理由として、大きく2つ考えられます。

1つは、インセンティブが金銭で支給される場合、実力次第で収入が増えること。「若いうちからとにかく稼ぎたい」と考える人にとっては、チャンスの大きい働き方だと言えるでしょう。
もう1つは、自信や満足感が得られること。インセンティブ制度によって「自分の頑張りが正当に評価されている」と実感でき、それが仕事に対する自信や満足感につながるのです。

ここまで読むと、「インセンティブって素晴らしい制度だな」と早合点してしまいそうですが、人によっては長所ばかりとは言えません。インセンティブ制度がある企業の職場は、成果を上げている人が偉いという風潮があったり、個人主義が当たり前になっていたりするため働きにくいという声もあります。そんな職場の雰囲気になじめず、退社していく人が少なからずいることも事実なのです。

一方、人によってはこういった社風の方が合っていると感じる人もいます。インセンティブ制度がないと、どんなに頑張って会社に貢献しても評価されている実感が湧かず、やる気が出ないしモチベーションが下がるという人もいるでしょう。

大切なのは、インセンティブ制度の意味や実態を承知した上で、「インセンティブ制度がある働き方や制度がある企業の社風は、自分に合っているのか」をしっかり見極めること。そのためには、自分はどんなタイプなのかを冷静に分析する必要があるでしょう。

自己分析で、自分はどういうタイプなのか、どう働きたいのかを理解しよう

そうは言っても就業経験がない学生の皆さんには、働き方と言われてもピンとこない方も多いかもしれません。そういう人たちは、受験や学業、部活やサークル活動、アルバイトなど、これまでの経験を思い出して自己分析をしてみましょう。

自分はどのタイプ?

  • メンバーをまとめ上げ、成果に対して貪欲に取り組める「リーダー派」か、メンバーに寄り添い良好な関係を保つように支える「調和サポート派」か?
  •  自立して成長できる「個人プレー派」か、メンバーと一丸になって成長を目指す「チームプレー派」か?
  •  既存のルールにとらわれない「改革派」か、既存のルールを守る「保守派」か?

自己分析の結果はどうでしたか?

断定はできませんが、インセンティブ制度がある企業は、成果主義でかつ個人主義な社風となる傾向があるので、調和サポート派よりはリーダー派、チームプレー派よりは個人プレー派、保守派よりは改革派のほうが、インセンティブ制度のある働き方に向いているようです。

例えば、個人競技のスポーツで実績を残した経験があるなら、自立して成長することに意識が向いているタイプだと考えられます。ほかにも、サークル活動でリーダーシップを発揮した、アルバイト先で何か改善提案をして採用されたなど、自分のタイプを知る手がかりになる経験を思い出してみてください。

参照記事:Stepで解説! 「自己分析」の方法

また、働く上では「挑戦したい気持ちがあるかどうか」も重要です。
たとえ、現在の適性が合わないかもしれないと思っても、社会に出てから成長していく部分もあります。「やってみたい」という自分の意思を尊重することも大切です。仕事は、常にいい成果を残せるとは限りません。だからこそ、成績が振るわないときも楽観的に構え、自分を俯瞰(ふかん)で捉えて「長期的に成長していければいい」と考えられる心意気を持っていることも、向いている資質の1つと言えそうです。

インセンティブ制度を導入している企業をリサーチするときのポイントは?

自分のタイプを知るだけでなく、インセンティブを導入している企業についてリサーチすることも大切。ポイントは以下の2つです。

(1)研修制度が整っているか

目標への到達方法を指導してもらえる環境が整っていれば、たとえ短期間で成果を上げることができなくても、先が見えるので頑張れるはず。もしも、達成方法から自分一人で考えなければいけないような環境なら、新卒から入社する場合、仕事のハードルはかなり高いと言わざるを得ないでしょう。

(2)収入に占めるインセンティブの割合はどの程度か

インセンティブが金銭の場合、基本給に上乗せされるので、目標を達成できなくても基本給は確保できます。ですが、インセンティブが給与全体に占める割合は、企業によって異なります。

企業ホームページやナビサイトなどで月給の記載しかのないときは、説明会や面接などで採用担当者にインセンティブの割合を聞いてみるとよいでしょう。質問しにくい場合は、「成果を創出することがモチベーションに繋がると思い、確認したい」「頑張ったことが評価される場所で自身を成長させていきたいと考えている」など、質問の意図を一緒に伝えると聞きやすくなります。

インセンティブの割合が低い場合、収入が大きく変動する心配はないので、大きなプレッシャーを感じることなくチャレンジできるでしょう。逆に、インセンティブの割合が高い企業で、ハイリターンを狙いたい人もいるでしょう。

いずれにしても、入社してから「こんなはずじゃなかった」と後悔することのないよう、給与の基本給とインセンティブとの割合をしっかり確認しておくことが重要です。


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取材・文/笠井貞子

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