自己PRの一つとして、就活の選考で聞かれることが多い「あなたの長所・短所を教えてください」という質問。「短所は思いつくけれど、長所が思い浮かばない」「人に言える長所なんて特にない…」と頭を抱えてしまってはいませんか?長所、短所を聞く企業側の意図や、言語化する際のポイントなどを、学生へのキャリア支援を多く行う就活のプロにうかがいました。
プロフィール 西村武士(にしむら・たけし)実践型就活&キャリアデザインゼミナールReaL代表。都内カーディーラーでトップセールス。大手人材紹介企業、コンサルティングファームでの採用統括マネージャーを経て2012年に独立。大手からベンチャーまで幅広い企業規模の採用コンサルティングや、企業研修の企画実施に従事。スポーツ選手のキャリア研修も手掛ける。また、「全国就活学外ゼ
ミ」である、実践型就活&キャリアデザインゼミナールReaLは15年間で1030名の卒業生を輩出し、現在も全国8拠点で大学生が主体的に活動中。
企業が就活で長所や短所を聞く意図は?
長所・短所を聞くことは、就活における「王道の質問」の一つ。昨今は、
「あなたの秀でているところを教えてください」
「あなたが一番直したいと思っているところを教えてください」
「今までで一番輝いていたときはどんなときでしたか?」
などと少しひねった質問の仕方で、長所や短所を引き出すことも多いといいます。
そもそも企業側は、就活生の「長所」「短所」から「自分自身を理解しているか」「どういうタイプの人なのか」「就活の準備をしているか」の3つを知りたいと考えている場合が多いでしょう。
以下本文で、詳しく理由を解説していきます。
1. 自分自身を理解しているか知りたい
企業が長所、短所を聞くことで知りたいのは、「自分自身を理解しているか」だと西村さんは話します。
「今までの自分を客観的に理解できているか、が大切です。どんな場面でどういう気持ちになるのか、どういう行動を取るのかといった“行動特性”を理解していれば、環境の変化にも柔軟に対応できるからです」
2. どういうタイプの人なのか知りたい
また、企業は採用した後の行動についても知りたいと思っていると西村さんは話します。
「企業から見ると長所や短所を知ることは、入社後の人間関係でどういう動きをするかをイメージしやすくなるため、カルチャーマッチや適材適所な人事配置を考える際の貴重な情報となります。仕事においてチームワークは欠かせないので、周囲の人間観察力、察する力など、チームにどんな貢献をするのかも見ているでしょう」
3. 就活の準備をきちんとしているか知りたい
そして、西村さんによると、就活のための“準備”をきちんとしてきたかも、企業が見たいポイントの一つなのだそう。
「自分の強み、弱みについて理解を深めることは、就活で自分を“魅せる”上で、必要最低限の準備です。人生が大きく変化する就活という機会に、きちんとその準備ができているかどうか。企業はその姿勢も見たいと思っています。なぜなら、大事な準備ができていない人は、仕事においても、会議の準備、商談の準備などさまざまな場面でつまずくことが予想されるからです」
長所はどうやって見つける?
西村さんが今まで接してきた多くの学生の中には、「短所は見つかるけれど、長所は特にない」「普通に生きてきてしまって、語れるエピソードは何もない」などと自己評価の低い人は少なくないそう。では、長所を見つけるにはどうしたらよいでしょうか?
「長所を見つけるために、『短所の捉え方』を変えましょう。短所は『長所の行き過ぎている部分』と考えてみるのです。そして短所を書き出し、そこから長所を考えてみましょう。
例えば、『あまりに集中して、時々周りが見えなくなってしまう』のが短所だとすると、『一点に集中して突き詰める』のが長所。『決めたことにかたくなになってしまうことがある』が短所なら、『やると決めたことは最後までやる』のが長所になります。もし短所しか見つからないのであれば、まずは短所を書き出してみて、そこから長所を考えてみるといいでしょう」
しかし、実際にやってみると難しい…。考え方のコツはあるのでしょうか?
「『私の短所は、神経質』だと思ったら、それを、よりポジティブな言葉へと換えていきます。言葉の連想ゲームのようにいろんなフレーズを出していくのがオススメです。神経質であれば、『さまざまなことに敏感である』『変化によく気がつく』『きめ細やか』といった神経質という言葉よりも、よりポジティブな表現が出てくるはず」
「つまり、神経質というのは、『細かいところまで気を配れる』という長所が、少し行き過ぎているところなのです。短所から長所を考え、その長所が過剰となっているところはないか、と探していくとまた新たな短所が見つかります。短所→長所→短所と言葉遊びをしていくと、自分の理解も深まっていくでしょう」
「言い換えの言葉が見つからない場合は、同義語を調べてみるといいでしょう。例えば、神経質の同義語には『敏感』『多感』といった言葉が出てくると思いますが、神経質よりもポジティブに感じませんか?しかし、これをそのまま長所として使うにはまだ足りません。そこで次は『敏感』の同義語を見てみると、『感受性が豊かである』といった言葉が出てきます。『感受性が豊かである』は、長所と言えるでしょう。このように、出てきた言葉を繰り返し調べてよりポジティブな表現のものを選んでいけば、おのずと長所が見つけられます」
面接で長所を伝えるポイントは?
自己PRで長所を伝える際は、具体的なエピソードを引き出して「説得力」を持たせることが重要です。また、短所も併せて伝える際は克服のための努力や具体例も一緒に伝えましょう。
「伝えたい長所、短所が出てきたら、それらを示す具体的なエピソードを引き出しておくと良いでしょう。エントリーシート(ES)や面接では、長所や短所をただ伝えるだけでなく『自分自身にその長所、短所があると説得力を持たせる』ことが重要。それらを含めて伝えるようにしましょう。また、短所を伝える際は、短所を克服するために今どういう努力をしているのか、という具体例も一緒に出すといいでしょう。『今も壁にぶつかっているけれど、きちんと向き合っている』という姿勢を見せられるどうか。それは、自分の弱さを認知して行動できる人か、自分で乗り越えようとする強さがあるかどうかを示す、大切な情報です」
長所・短所の「伝え方」については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
関連記事:エントリーシート・面接で「自分の強み」を聞かれたら?「強みや長所」の見つけ方・伝え方<回答例も紹介>
関連記事:面接に役立つ“短所”の答え方 <よくある短所一覧と回答例文付き>
長所を伝えるエピソードはどう選べばいい?
エピソードは、あなたの人となりがわかるものを選びましょう。企業は学生に輝かしい成果や実績を求めているわけではありません。「何も出てこない」と思ったら、周りに相談して客観的なアドバイスをもらうのもよいでしょう。
長所というと「私には人に話せるような実績がない」など、成果の良し悪しを長所と混合してしまう人もいます。しかし、企業は輝かしい成果や実績を求めているわけではありません。
「部活で総合優勝した、実行委員長をやった、インターンシップでこういう評価を受けた…など、傑出した成果を語ろうとする学生は少なくありません。一方、『長所がない』という学生と話すと、多くが『私にはすごいところなんてないから、話すことがない…』と迷っている。しかし、長所はそういうものではありません。日常生活の些細なシーンでも、その人の“人となり”がわかる出来事があればいいのです。
何も出てこないと思考停止に陥ってしまったら、友人や家族、先輩と話をして客観的な意見をもらうのもいいでしょう。無料で就活を支援するサービス(※)の機会も増えていますので、キャリアアドバイザーと一緒にこれまでの人生の振り返りをするのも一つの方法だと思います」
長所なんてない…と自信をなくしていた皆さん。まずは短所を書き出すところから始めてみると、自分ではなかなか気づけなかった自分の強みが見つかるかもしれません。
「エピソードの作り方」についてはこちらの記事でも紹介しています。
関連記事:平凡でOK!「学生時代頑張ったことない」人も必ず見つかる、魅力的なエピソードのつくり方
実際にキャリアアドバイザーに悩みを相談したら、どのように答えてくれるのでしょう。以下の記事も参考にしてみてください。
自己PRすることがない。悩み過ぎて自己分析が進みません。【就活なんでも相談室】Vol.7
取材・文/田中瑠子
撮影/刑部友康
\リクナビからのお知らせ/
簡単5分で、あなたの強み・特徴や向いている仕事がわかる、リクナビ診断!就活準備に役立ててみませんか。
▼2026年卒向けはこちら▼
▼2025年卒向けはこちら▼