体育会学生は本当に就活に有利なの?プロがアドバイスする成功のカギは「強みの言語化」にあり

就活生なら一度は耳にする「体育会は就活に有利」といううわさ。実際「有名企業に先輩がいるから、自分も何とかなるだろう」と気楽に構えている体育会学生は多いのですが、意外と苦戦する体育会の就活生も少なくありません。社会や企業のあり方が急激に変化する今、本当に体育会にいるだけで就活に有利なのでしょうか?また、体育会の強みを正しく就活に生かすにはどうしたらよいのでしょうか?そんな体育会学生の就活最新事情を、アスリートの就活の専門家・竹田好洋さんと、リクルートキャリアで体育会の就活生と向き合っているキャリアアドバイザーの青木虹さんにうかがいました。

「体育会学生は就活に有利か?」のイメージ画像

プロフィール竹田好洋(たけだ・よしひろ)株式会社Criacao(クリアソン)・取締役CSO。
JR東日本にて運転士、駅ナカ開発、管理部門などに従事。2010年に起業。フットサルメディア「スマイルフットサル」を立ち上げコミュニティ事業を展開したのち、2014年にスポーツを通じた教育・研修事業や、体育会学生のリーダー育成やキャリア教育、サッカー・フットサルクラブ運営などを行う株式会社Criacao取締役CSOに就任。キャリア事業部の責任者として過去8000人の体育会学生のキャリアに携わっている。
プロフィール青木虹(あおき・こう)
株式会社リクルートキャリア・新卒領域キャリアアドバイザー。「就職活動を通じた自己の成長」をテーマに、数多くの文系学生の就活支援を担当。学生時代ラクロス部に所属していた経験から体育会学生の就活事情に課題を感じ、現在は体育会学生の就活支援事業を立ち上げ、全国の体育会学生を対象に就活と部活動、両方の充実を実現するための支援を行っている。

そもそも体育会学生が企業に求められる理由は?

「体育会系は就活に有利」といううわさを耳にしたことがある人は少なくないでしょう。
これは本当なのでしょうか?
そもそもこのようなうわさの背景には、企業が体育会学生を求める理由があるからだと、今回お話をうかがった竹田さんと青木さんは口を揃えます。
お二人の答えに共通するのは「スポーツ競技で培ったリーダーシップや自律性、自分らしさを発揮した経験が、企業から求められるのは事実。強くアピールできるものがあるという点では有利だと言える。ただし、それを言語化できることが条件になる」ということです。黙っていたって採用してもらえる、というわけでは、もちろんありません。体育会での経験からの学びや自分の強みを企業に伝えることが大切だということ、そこに気づけるかどうかが、『体育会学生が就活で強い』ことが実証できるかどうか、につながるといいます。

まずは、おふたりに、体育会学生が企業に求められる理由について詳しくうかがいました。

「ストレス耐性の高さ」は体育会学生の強み

企業が考える体育会学生の強みは “ストレス耐性の高さ”。これは昔も今も変わらず、人事担当者の間にベースとしてあるようです。」と青木さんは言います。
「大学であえて体育会という環境を選び、活動を続けてきたことは、高いストレス耐性の表れです。学生の時とはまったく違い、社会人になると責任を伴うので、そのプレッシャーに耐えてパフォーマンスを発揮できるかどうかは重要です。体育会学生にはその素養がある人材が多いと企業は見ています。
さらに、団体競技の組織で身につけてきたコミュニケーション力や、個人競技で常に自分自身と向き合い続けて培った分析力、また、時には仲間のサポートに回ることで組織に貢献できる協調性も、高く評価されることが多いようです。体育会学生の就活が商社や金融業界に強い印象があるのも、無形商材の営業にそうした“人間力”が生かせるという側面があるからでしょう」

企業が求める「変化に対応する能力」を、体育会学生は備えている

一方、竹田さんは「体育会学生が企業に求められる理由は、組織の変化に対応できる力を持っているからだ」と話します。
「体育会では学生の入れ替わりやポジション変更によって個々の役割が次々と変わるため、常に変化に対応し、組織での自分の存在意義を考えることが必然的に求められます。また、組織の変化が起きたとき、チームや個人の問題に向き合い、試行錯誤を繰り返した回数・経験値が圧倒的に多いです。体育会では勝利という明確な目標に向けて常にイノベーティブであることが求められます。こうした変化への対応や、革新的なことへの挑戦は、まさにこれからの企業が必要とするものだと思います」

体育会学生が抱える課題とは

体育会学生が企業から求められる理由が強力であるなら、どうして、一部の体育会学生は就活で苦戦するのでしょう。社会や企業から求められる要素がある一方で、彼ら特有の課題もあります。現在の体育会学生が抱える課題について、青木さんと竹田さんにうかがいました。

最大の課題は、コミュニティが狭くなりやすいこと

体育会学生の弱みは、組織の中にとどまる時間が長いためにコミュニティが狭くなりがちなことです。練習、試合、授業、バイトという忙しさの中で毎日が完結してしまい、部外の組織やほかの就活生とも交流する機会がないため、情報量が少ないのです。
情報量の少なさは、体育会学生の就活における視野の狭さに表れます。例えば『先輩がいるから』と金融や商社ばかり訪問したり、単純に『自分にとって身近だったから』という理由でスポーツに直接関係する業界や食品業界を志望したり。表面だけを見て判断する傾向がありますし、業界全体や仕事内容、働き方については情報がないから深く考えない。ちょっともったいないしミスマッチも起きやすくなりますね」(青木さん)

コミュニティが狭いことからくるもう1つの弱点は、「自分を客観的に見られない」ということだといいます。「例えば、体育会学生なら当たり前のようにやっている練習の設計や改善、チーム作りなどは、自分で考え行動できる実行力や、信頼関係構築力として就活の場面では高く評価されることが多いスキルなのです。それを自覚していない方が多い。もったいないことです。組織の中では当たり前のことでも、ほかの学生などとのコミュニケーションの中で、自分の活動の真の価値や、自分の強みなどをより明確にすることができます」(青木さん)

株式会社リクルートキャリア・新卒領域キャリアアドバイザー_青木虹さん_インタビューカット

自分がやっていることを「言語化」できないケースが多い

竹田さんは、「大きな課題は、多くの学生が体育会の活動を『言語化』できないこと」と言います。「『言語化』できない結果、自分の価値に気づけず、企業にもうまくアピールができません。スポーツには、非言語的に問題を解決していく側面があります。競技者同士が感覚で通じているため、いちいち言語化し、説明したりロジックで理解しなくても先に進めてしまう。ですからせっかく問題解決のスキルを持っていても、人に伝わるようにアウトプットができないケースが多々あるんです」

就活の早期化が、体育会学生の向かい風に

竹田さん、青木さんが共に指摘する課題は「就活の早期化」です。数年前までは企業説明会をもって本格的な就活がスタートしましたが、今はもっと早い時期に行われるインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムに応募したり参加したりする学生が急激に増えてきています。部活動に拘束される体育会学生は、一般学生のようにインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムに参加する時間を取ることができず、そのまま本番の就活にも乗り遅れてしまうことが少なくないのです。

体育会学生の強みを最大限引き出す就活術とは

では、体育会学生が強みを最大限引き出して就活を行うためにはどのようにすればいいのでしょうか?竹田さんが、この疑問に答えてくださりました。

取り組みを「言語化」することで効果的な自己PRに

「多くの体育会学生は、競技で収めた成績や成果が自己PRになると考えがちです。しかし企業が知りたいのは結果ではなく、目的に向かってどんなアプローチをしたのかというプロセスや、どんなロジックを組んで行動したのかという思考力です。体育会系学生はスポーツで結果を出したことが自分の魅力だと定義しがちですが、それはその人のほんの一部分でしかありません。実業団でもない限り、入社してから同じ競技の成果でお給料をもらうわけではないのです。部活動の大半は、苦しい体験や失敗の連続だと思いますが、あなた自身がそれとどう向き合ってきたのかということにこそ、本当の価値があります。企業が知りたいのは、まさにそこなんです。『体育会の活動の中で、どのような課題観や目標を持って、どのように考えどんなアプローチをしたのか』を言語化することで効果的な自己PRをすることができます」(竹田さん)

株式会社Criacao(クリアソン)・取締役CSO 竹田好洋さん_インタビューカット

「言語化」のためにオススメ。自分に問いかける5つの質問

それでは、体育会の学生が自分のスキルを言語化、就活でのアピールポイントにするにはどうすればいいのでしょうか。「取り組みを言語化するためには、これらの質問を何度も反復してみましょう」と竹田さんは「5つの問い」を挙げてくれました。

体育会学生の自己PRのための5つの問い
  • 大切にしている価値観とは何か。それは具体的に自分のどういう言動に表れるか。
  • 理想を実現するために取り組んだとき、どんな課題があったか。
  • 課題を解決するためにどんな手段を取ったのか。それはどうしてか。
  • 活動で辛かったことや悔しかったことは何か。
  • その状況と向き合ったときに何を考え、どう行動したか。

「これらの問いから得られた答えを『目標(理想)―現状=課題』という方程式に当てはめて考えていくことが大事」と竹田さんは言います。

「〇〇という目標を持って取り組んでいましたが、当時の現状は△△でした。なので□□が課題であると考え、××という取り組みを行った結果、目標に届きました」

というような形で、普段なんとなく行っている取り組みを言語化できるとよいでしょう。

以下に、実際にこの5つの問いを活用して、自己PRを磨いた例があるのでご紹介しましょう。

【体育会ラクロス部女子Aさんの自己PR】

Before
「日本一」を目指す女子ラクロス部において、スタメン出場に向けて練習をしていました。3年次の部活が始動したとき、トップチームにいてもベンチメンバーに入ることすらできずにいました。そこで練習の1時間前に来て自主練をし、練習メニューは一つひとつ妥協せずに全力で取り組みました。また、具体的に自分に 何が足りないのかを幹部に聞きに行って自分の苦手克服に努めました。練習がない日も海外のプロ選手の動画を見て知識を増やすなどラクロスに費やす時間を増やしました。
After
「日本一」を目指す女子ラクロス部において、スタメン出場に向けて練習をしていました。3年次の部活が始動したとき、トップチームにいてもベンチメンバーに入ることすらできずにいました。不器用なため基礎技術が足りずミスが多く、また特別な武器といえるプレーがないのが原因でした。努力の量も質も高めることが必要と考え、量的観点では毎日練習の1時間前に来て自主練習に取り組み、練習中のプレーでは試合をイメージして全力で取り組んで負荷を高めました。また、質的観点から幹部に自分の足りないところを聞いて自主練のメニューに反映させたり、練習がない日は海外の選手の動画を見てほかのチームメイトが知らないプレーの知識を増やして実践しました。

「A子さんの例では、Beforeではやったことを書いてあるだけですが、5つの問いを活用しながら、何が課題なのか、課題を克服するためにどのような過程や方法を用いたのかを『言語化』してAfterのように整えることで、聞き手が具体的に背景を理解できるようになり、自身の強みや持ち味を相手に伝えられるようになりました」(竹田さん)

体育会学生へのメッセージ「スポーツの原理原則は社会のそれと似ている」

体育会学生の就活には課題はありつつも、強みをうまくアピールできれば、企業に魅力を十分伝えられることがわかりました。

自己分析を苦手とするのは何も体育会学生に限ったことではなく、一般学生も同じです」と青木さんは言います。「一方、体育会学生は、競技でリーダーシップや自分らしさを発揮した経験が豊富なので、言語化さえできれば、非常に強いアピールができるんです」。冒頭でもご紹介した通りです。そこに気づけるかどうかが、「体育会学生が就活で強い」ことを実証できるかどうかの分かれ目、といえそうです。

一方、竹田さんは「実はスポーツの原理原則と、社会の原理原則はよく似ています」と話します。どうしたら勝利を収められるのかという、答えの用意されていないことにチャレンジする力は、変化を続ける時代に欠かすことのできないものだといいます。「ですから、体育会の皆さんはもっと自信を持ち、スポーツの持つ力が社会に貢献できることを信じてください」と、エールを送ってくれました。

取材・文/鈴木恵美子
撮影/刑部友康


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記事作成日:2019年1月31日 記事更新日:2024年2月1日

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