「企業選びの軸」を“自己分析”と“本音”から定める方法と面接回答例

面接で「あなたの企業選びの軸はなんですか?」と聞かれることがあります。自己分析や業界研究の結果、絞り込んだ末の企業ならまだしも、「なんとなく」「大手だから」などの理由で応募したのが本音、という場合はどのように回答すればいいのか困ってしまいますよね。
なぜ、企業はこのような質問をするのでしょうか?「企業選びの軸」を聞かれる背景と、定め方、本音をどう伝えれば企業が納得する回答になるのかについて、リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザー・中里文香さんに教えてもらいました。

中里文香さんプロフィール写真プロフィール
中里文香(なかざと・あやか)
株式会社リクルートキャリア・新卒領域キャリアアドバイザー。専門商社で法人営業、総合商社で貿易事務を経験した後、2006年にリクルートキャリアに入社。主に理系学生の就活アドバイスを行っている。
→リクナビ就職エージェント公式サイト

なぜ「企業選びの軸」について聞かれる?

面接担当者が企業選びの軸について質問をする場合、担当者によってその意図は異なりますが、以下が考えられます。

  • 入社後の活躍がイメージできるか確認したいため、何に対して、どのくらい頑張れる人なのか知りたい
  • 学生の企業への興味度合いを把握したい
  • 学生と企業とのフィット感を確認したい

また、明確な「企業選びの軸」があれば、それが仕事への原動力になり、心の支えにもなります。もし壁にぶつかっても、努力してそれを乗り越えようというモチベーションになりうるため、企業選びの軸は「意欲を持って長く働いてくれそうかどうか」の判断材料にもなります。

企業は自社に対する「本気度」もチェックしています。「なんとなく応募した」のではなく、企業と自分について理解した上で自社を選んでくれたのかどうかも確認しています。したがって、自分が大切にしたいことを理解して、企業との接点を見つけ、それを面接担当者の視点に立って伝えることが重要です。

ところで「企業選びの軸」の定め方には、「自己分析から探す方法」と「本音から探す方法」の2つがあります。次から、順番にご説明します。

「企業選びの軸」定め方1:自己分析(自分の過去)から探る!

「どうやって応募企業を選べばいいのかわからない」「大切にしたいことがわからない」という人は少なくありません。このような場合は、「自己分析」で企業選びの軸を明らかにしていきましょう。

自分史を作る

自己分析の方法として有効なのは、「自分史」を作って自分自身を振り返ってみること。生まれてから現在までを振り返り、頑張ったこと、自分で選択したこと、楽しかったこと、挫折したことなど、印象に残っている出来事やエピソードを書き出してみましょう。そして、なぜ頑張れたのか、なぜ楽しいと感じたのか、なぜそれを選択したのか…などと一つひとつ「なぜ」を繰り返して深掘りしていきましょう。その過程で、自分が大切にしているものは何か、どんなことに価値を感じているのかが見えてきます。

書き出す出来事やエピソードは、大それたものでなくてもOK。例えば「自分で選択したこと」であれば、進学はもちろん部活やクラスの係、選択授業なども立派な選択の機会です。そして、書き出したものを第三者に見てもらうことをお勧めします。自分一人では、自分の傾向になかなか気づけないことがありますが、「新しいことにチャレンジしてきたんだね」「細かいことに取り組むのが好きなんじゃない?」など客観的な視点でこそ見えてくるものがあります。意外な自分の軸に、気づかされるかもしれません。

モチベーショングラフを作る

自分史ではなく、自分のモチベーションをグラフにしてみるのも一つの方法です。過去を振り返ってモチベーションが上がった時、下がった時をグラフ化し、上がった時・下がった時にそれぞれ何があったのか、その時に何を感じたのか自問自答することで、興味の軸を洗い出すことができます。

なお、自己分析の際は、幼少期まで振り返ってみるといいでしょう。今まで多くの学生に接してきましたが、幼少期にルーツがあったというケースが意外に多いのです。例えば、小さいころにブロック遊びで街や乗り物を作っていたから、物作りが好きになった…など。思い出すのは少し大変かもしれませんが、家族などに話を聞きながらぜひ振り返ってみてください。

モチベーショングラフのイメージ
▲モチベーショングラフのイメージ

参照記事:自己PRすることがない。悩み過ぎて自己分析が進みません。【就活なんでも相談室】Vol.7

“自己分析”で軸を見つけた先輩たちの実例

自分史、もしくはモチベーショングラフによる自己分析で、より自分らしい軸を見つけた例をご紹介します。考え方の参考にしてみてください。

●文系・女性Aさんの自己分析「手作業が好き」
→軸「物作りに携わる仕事がしたい」

実例:技術職として内定
一つのことに集中してコツコツ取り組むのが得意だったことから、最初は事務職を希望していたが、あらためて自己分析を行い、過去の経験をひもといていくと、子どものころから手芸や編み物など手作業で何かを作ることが好きだったことに気づき、「物作りに携われる」という軸で企業を選択。文系でも応募可能なメーカーの技術職(製品設計)に就職。
●文系・女性Bさんの自己分析「結果が見えやすいものが好き」
→軸「短期間で成果が出る仕事がしたい」

実例:営業職として内定
街づくりに興味があったことから、大手不動産デベロッパーの企画職を志望していたが、これまでの経験から長期間をかけて少しずつ成果に結び付けることよりも、結果がすぐ明確に見えるテニスや数学が好きだった。そこから、短期間で契約に結び付けることができ、経験が多く積める仕事が向いていると判断し、不動産の賃貸営業を選択。
●文系・男性Cさんの自己分析「整理整頓が得意」
→軸「現状把握や課題特定など整理する仕事がしたい」

実例:コンサルティング会社やSEに内定
海外への憧れから総合商社をイメージしていたが、インターンシップに参加して違和感を覚え、自己分析を実施。部屋の整理整頓が好きなことから、現状を把握して課題を特定し、解決に導く仕事が向いていると判断。コンサルティング会社やSEへと志望業界・職種を変更した。
●理系・男性Dさんの自己分析「数学が好き、計算が好き」
→軸「理論立てて考えたり計算する仕事がしたい」

実例:SEに内定
「今までの人生は消去法で選んできたから、自分の意思で選択したものはない」という男性。しかし選択した場面を詳しく掘り下げていくと、「考える」「計算する」ことが必要な方を選んでいることが明らかになり、IT関連会社にSEとしての入社が決まった。
●文系・女性Eさんの自己分析「新しいことにワクワク」
→軸「人と出会い、介在価値を感じられる仕事がしたい」

実例:人材業界に内定
大手志向でメーカーや金融、総合商社などを志望していたが、物やお金には興味が持てないことに気づく。子どものころまでさかのぼり、人と新たに出会ったり、新しいことに挑戦したりするときにワクワクし、人が自分とかかわって変化が起こることに面白みを感じていたことに気づき、「人と出会い、介在価値を感じられる」という理由で人材業界へ就職。

中里さんインタビューカット

「企業選びの軸」定め方2:本音(現在の希望)から考える!

「給与がいいから」「有名だから」「おしゃれな雰囲気だから」など、自分の「本音」から掘り下げていくという方法もあります。本音の奥には、「自分の価値観」が隠れているからです。よく耳にする「本音」を、企業選びの軸に変えるための方法をご紹介しましょう。

例えば、航空会社の客室乗務員、マスコミやアパレルなど、かっこいいイメージがある業界や企業を目指す人は多いですが、それだけでは「単なる憧れ」と見なされてしまう可能性があります。同様に、「有名だから」という理由で企業を選ぶ人も少なくありませんが、「有名である」以外の説明がないと、意欲を伝えることはできません。ひかれている理由をなぜ?と何度も掘り下げ、仕事内容や求められる能力との接点から軸を考えていくといいでしょう。

例えば、客室乗務員に憧れているならば、「小学生の時、家族旅行で初めて飛行機に乗ったのですが、とても怖くて不安でした。そんな時、客室乗務員の方に優しく声を掛けていただいたことから不安が晴れ、旅行を楽しむことができました。その時以来、自分もお客さまの気持ちに寄り添って、きめ細かいサービスを行いたいと思うようになりました」など、「ひかれる理由・エピソード+その仕事内容」という構成で伝えれば、軸として成り立ちます。

「有名な企業がいい」と思っている人も、有名ならばどこでもいいというわけではないはず。どの分野、どんな特徴を持つ企業がいいのか洗い出し、その業界の特性・特徴と組み合わせて考えてみましょう。

業界の特徴例

鉄道会社
多くの人の安心・安全を支える仕事をしたい、当たり前にできていることを支える仕事に使命感を覚える、など。
メーカー
世界に誇れる技術を持つ企業で自信を持って働きたい、日本の物作りの発展に貢献したい、など。
総合商社
世界を股にかけて働きたい、一からマーケットをつくる仕事に携わってみたい、など。

面接を受けている就活生

“本音から”軸を定めた場合の面接回答例

具体的な本音を基に、「企業選定の軸」を定める場合には、それぞれで気をつけるポイントがあります。また伝える際には、できるだけエピソードを具体的にし生かしたい強みについても語るようにすると、企業は入社後の活躍のイメージを持ちやすいでしょう。ここでは、いくつか例をあげて、より良い伝え方についてご紹介します。

●本音1「給与が高いところがいい」
→軸「成果が正当に評価され、報酬として自分に返ってくる企業」
給与額を重視する裏には、これまでにアルバイトで努力をした結果、昇給したことに喜びを感じたり、グレードを上げていけることに面白みを感じたりした経験があるのでは?または「自分に対して返ってくる価値が大きい方が自分の価値を感じられるので、成果の分だけ大きな報酬が得られるところで仕事をしたい」という人もいるでしょう。
給与という明確な結果が得られることが、やりがいにつながり頑張れるということを、エピソードを交えて伝えましょう。「稼ぎたい」というのは一見ネガティブに見えるかもしれませんが、その理由までしっかり語れれば問題ありません

面接回答例:
「ファミリーレストランのアルバイトで、効率のいい配膳方法を考えたり、リピーターになっていただけるような接客を実践するなどして、高く評価され短期間で昇給した経験があります。自身の創意工夫が正当に評価され、報酬として返ってくる環境は、モチベーションを高く持って頑張り続けられると考えています。成果にこだわって努力する力を生かし、より早く責任ある仕事を任されるよう頑張りたいと思います」
●本音2「ゲームが好きだからゲーム会社に入りたい」
→軸「好きなものを自分の手で作ることで人に喜び、楽しみを与えたい」
「〇〇が好きだから〇〇業界」という選び方をする人は多いですが、「なぜ」好きなのか掘り下げてみることが必要です。例えば、「人間関係に悩んでいた時に、ゲームを通じてさまざまな人と交流ができて自分が人の役に立つことが実感した」「ゲームをクリアするために論理立てて考え、戦略を立てることでさまざまなステージをクリアでき、自信を得た」など、好きな理由があるはず。それを軸として伝えましょう。

面接回答例:
「高校時代、なかなか友人ができずに、勉強も何もやる気を失っていた時期がありました。そんな時、趣味のゲームを通してできた友人と本音で話をすることができたことをきっかけに、自信を取り戻し、前向きになることができました。自分自身の人生が変わったことで、ゲームは人の価値観に影響を与えることができることに魅力を感じました。ゲームをクリアするために論理立てて考えたり、何がユーザーにとっての面白さなのかを比較分析していたので、多角的な視点から考え整理をすることを生かして多くのプレーヤーが楽しめるゲームを作っていきたいと思います」
●本音3「定時で帰りたい」
→軸「定時は理由にならないが、副業を支援している企業には伝えても良い場合も」
「定時で帰りたい」だけでは仕事への意欲を問われかねませんので、「仕事は業務効率を意識し、クォリティーを上げていくことに達成感を得られるため、無駄を省いて集中して業務に取り組みたいと思います。」というように、仕事への意欲や生かせる強みを伝えるようにしましょう。
最近は、副業支援をするため、一定の業務経験後は働き方を選べる制度のある企業もあります。「業務時間内に効率的に仕事に取り組み、アフターファイブはインプットに使ってほしい」と考えている企業であれば、以下の例のように、目的を伝えれば好意的に受け止めてくれるでしょう。

面接回答例:
「高校時代からアカペラサークルの活動に力を入れており、入社後も継続をして、会社以外でも社会とのつながりを持っていきたいと考えております。サークルでは、チームメンバーのサポート役としてチームの成果に貢献してまいりました。チームやメンバーの状況を見て、相手に合わせながら対応をしてきました。今後ともチームで結果を出すために周りを支援し、一体感を得ていきたいと思います」
●本音4「とりあえず海外に行きたい」
→軸「グローバルに活躍したい」
「海外に行ってみたいから」という理由で総合商社や外資系企業を選ぶ人がいますが、なぜ海外に行ってみたいのかを掘り下げ、海外で何を実現したいのか考えてみましょう。自分ならではのエピソードに、きっと気づけるはずです。

面接回答例:
「大学1年の時にアメリカに1カ月間短期留学して、言葉や文化の違う海外の人とかかわることで知見が広がり成長を実感できました。そこで、日本の日用品や、食品の包装材など、日本で日常的に使用している製品の使いやすさや機能の高さをあらためて感じました。入社後は御社の製品の魅力について、グローバルに発信していきたいと考えています」
●本音5「地元から離れたくない」
→軸「地元企業に貢献したい」
「地元に友達がいるし、愛着があり離れたくない」という場合は、その地元愛を「地元の発展」につなげて説明するのも良いでしょう。
住み続けたいだけでなく、地域に貢献したいことを伝えると、地域に根差し、地域密着経営を続けている企業に好印象を与えられるでしょう。

面接回答例:
「生まれてからずっと地元を出ず、進学先も地元の大学を選びました。海も山もある自然豊かな環境で、人とのつながりが深いこの土地に愛着があり、今後の発展を支えたいと真剣に思っています。昔は近所に伝統産業に従事する工場も多くありましたが、県外に出る若者も多く、そのような工場が閉じて活気がなくなっていくことを目にして、なんとかしたいという思いを持ちました。地元の昔からの技術を基に製品を作る御社の発展に貢献し、地元の雇用拡大やエリア外への売り上げ増加を目指し、エリアを活性化していきたいです」
●本音6「早く出世したい」
→軸「早く責任ある仕事を任される存在になりたい」
「出世したい」の裏にある気持ちを掘り下げてみましょう。出世はすなわち、「責任ある仕事を任される存在になる」ということ。
高い志を持っていることはそのまま伝えても評価をされると思いますが、なぜ出世したいと思うのか、出世してどうなりたいのかを考えることが大切です。

面接回答例:
「高校時代の部活や大学時代のサークル、アルバイトなど、これまでの人生においてリーダーシップを取ってチームづくりを行った経験が多く、自分で一つの組織を動かせた時には大きなやりがいを得ました。御社のサービスでは、よりスマホ環境でも使用できるようなサービスをつくるとユーザーも増えると思います。いち早く成長をして、事業の発展に向けて、一つのプロジェクトを立ち上げて動かしていきたいと考えています」
●本音7「営業は嫌だから事務がいい」
→軸「サポートする仕事にやりがいを感じる」
「営業は大変そうだから」と消去法で事務、という方も少なくありませんが、「営業が嫌な理由」「事務を選ぶ理由」を明確にしないと企業選びの軸とは言えません。嫌な理由・選ぶ理由をそれぞれ掘り下げて明らかにしていくことで、自分がやりたいこと、大切にしたいことが見えてくるでしょう。

面接回答例:
「自分が前に出るよりも、人をサポートすることが得意でやりがいを感じます。大学ではサッカー部のマネージャーを務めていますが、選手が困っていること、やってほしいと思うことを想像し、先回りして手掛けることを徹底してきました。この経験から、相手が動きやすいように考え、支援する営業事務の仕事に魅力を感じています」

最後に、面接では面接担当者とのフィット感も確かめられています。そのため、等身大で自分自身を見つめ、相手に伝えることは重要です。自分ができない点にも逃げずに向き合って、相手に共有ができる、素直さを評価する面接担当者も多いと思うからです。

入社後も自分らしく楽しく働くために、どんな軸で会社を選ぶか、入社後も見据えて考えていきましょう。

取材・文/伊藤理子
撮影/刑部友康
編集/粟屋寛子

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