就活の面接では、応募企業への志望動機だけでなく、「業界の志望動機」を聞かれることもあるようです。「この業界を志望した理由は?」と聞かれたら、なんと答えればいいのでしょう?答える際のポイントやまとめ方をリクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーに聞きました。具体的な例文も紹介しています。
目次
企業が「業界の志望動機」を聞くのはなぜ?
企業が自社への志望動機だけでなく「業界の志望動機」を聞くのは、大きく2つの理由があります。
この業界で働くイメージがつかめているかどうか知るため
企業で働くイメージだけでなく、「この業界で働く」イメージがつかめているかどうかを知りたいという企業は少なくありません。どの企業も、時間とコストをかけて採用するからには、自社で長く活躍し続けてもらいたいと考えています。業界の動向や特性などを理解している人の方が、思いを持って働いてくれそうだと判断できるため、業界の志望動機を重視するようです。
間接的に「自社への志望度の高さ」を測るため
学生の中には、仕事選び、会社選びの軸を持たず、「知っている企業だから」「大手だから」などとやみくもに応募している人もいます。たとえ優秀であっても、自分の軸がない学生だと入社後に「イメージと違った」とギャップを覚え、早期に辞めてしまうのではないか…と懸念する企業は少なくありません。
「なぜこの業界を志望するのか」が明確であり、かつ納得感が高ければ、自社への志望度、本気度もある程度高いと判断できるので、自社への志望動機とセットで重視している企業は多いようです。
「業界の志望動機」を答えるときのポイント
業界の志望動機を伝える際には、いくつかのポイントがあります。以下の点を考慮しながら、志望動機を考えてみましょう。
「この業界」を選んだ理由を明確に答える
「この業界ならでは」の理由を伝えることが何より重要です。
例えば、「仕事を通じて社会貢献がしたいので福祉業界を志望しました」というのは一見納得感がありますが、社会貢献は福祉業界だけでなくあらゆる業界で実現することができます。医療や製薬業界もそうですし、鉄道など公共機関も当てはまるでしょう。そもそもすべての業界が、事業を通じてなんらかの形で社会に貢献しています。
業界の志望動機を考える際には、「ほかの業界ではなく、なぜこの業界なのか」を今一度じっくり考えてみましょう。志望動機がまとまった後も、ほかの業界にも当てはまる内容になっていないかどうか、チェックするといいでしょう。
裏付けとなる実体験・エピソードとひも付けて伝える
上記の「この業界を選んだ理由」をより明確にするには、自身の原体験やエピソードとひも付けて伝えることが大切です。
先ほど挙げたように、「仕事を通じて社会貢献がしたいので福祉業界を志望しました」というだけでは「この業界ならでは」が伝わりませんが、自身のエピソードとひも付ければ「ならでは感」が強まり志望度の高さが伝わります。例えば、自分の祖父母が福祉施設にお世話になることで、家族の介護負担が減ったという実体験がある場合、それをエピソードとして伝えれば、ほかの業界ではなく福祉業界を志望する理由が明確に伝わります。
なぜこの業界に興味を持ったのか。そのきっかけを振り返りながら、自分との接点を見つけ志望動機に加えるといいでしょう。
業界の志望動機が思いつかない場合は?
それでも「どうしてもこれという志望動機が思いつかない」というケースもあるでしょう。とはいえ、その業界に魅力を感じているということは、言語化できていないだけで何かしらの理由があるはずです。
お勧めしたいのは、その業界で働く先輩の志望動機を聞き、共感できる部分を探すこと。ゼミやサークルの先輩など、志望業界で働いている近しい知り合いがいれば、OB・OG訪問をして業界の志望理由を教えてもらいましょう。先輩の思いを聞く中で、「自分も同じ気持ちだ!」と気づけるかもしれません。
近しい先輩がいなければ、志望企業の会社説明会や座談会で社員に質問してみたり、採用ホームページ内に載っている「先輩インタビュー」を読んでみたりするといいでしょう。業界を選んだ理由について共感する部分を見つけて、「なぜこれに共感したのか」を考えてみれば、言語化できていない理由にたどり着けるでしょう。
この方法以外では、業界研究を再度行って知識を深める中で、共感できる部分を探す方法や、一般消費者向けの商品やサービスを展開している企業であれば、その商品やサービスを購入・利用するのも一つの方法です。あるいは就職エージェントなどを活用して、なぜこの業界に興味を持ったのか一緒にひもといてもらうのもいいでしょう。
\就活を効率的に!納得のいく就活をプロがサポート/
「業界軸で志望企業を選んでいない」という場合は?
中には、業界軸ではなく別の軸で、志望企業を決めている人もいると思われます。そういう場合は、「業界に対しての志望動機は特にない」と正直に伝えてOKです。
ただ、それだけで終わらせてしまうと、どんな軸で就活を行っているのかが伝わらないので、「業界ではなく○○という軸で選んでいる」と明確に示すことが大切です。
例えば、「仕事で鍛えられ、早く成長したいという思いが強いので、若手にも裁量権を与え責任ある仕事を任せてくれるかどうかという軸で志望企業を選んでいます。そのため、業界に対する志望動機は特になく、IT業界や金融業界など幅広い業界の企業に応募しています」などと伝えるといいでしょう。
業界の志望動機の構成要素&【業界別】例文を紹介
業界の志望動機は、企業の志望動機と同様、次の4つの構成で考えるといいでしょう。
- 端的な志望動機
- 自身の原体験・エピソード
- 志望動機の再掲
- 自分の強みをどう業界に生かしたいか
上記の構成要素を網羅した業界別の例文をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。例文の内容に対して想定される追加質問もいくつか挙げていますので、併せて回答をイメージしておくといいでしょう。
【例文】メーカー業界
子どものころから興味を持っていた自動車を通じて、人々の生活をもっと豊かで便利なものにしたいと思い、自動車業界を志望しました。
車好きな父の下、幼いころから車に慣れ親しんできました。初めて乗ったのは軽自動車でしたが、弟、妹と家族が増えるにつれセダン、SUV、ミニバンと少しずつ大きくなり、夏はキャンプ、冬はスキーと家族でいろいろな所に行きました。車を見ると家族の笑顔を思い出すほど、私にとって大きな存在となっており、高校時代から漠然と「将来は自動車にかかわれる仕事に就きたい」と思うようになり、機械工学を学べる大学に進学しました。
現在は弟妹も実家を離れているため、実家の車は再びぐっと小さくなり、現在の父の愛車は御社のコンパクトEV○○です。電気自動車の魅力を語る父の姿を見るたびに、電気自動車の設計にかかわることでもっと皆の生活を便利にしたいという思いが強まり、自動車業界を志望しました。
大学の研究室では設計工学を専攻し、電池技術やモーター技術の研究に取り組んできました。これらの経験と知識、そして自動車に対する熱い想いを自動車業界で発揮し、電気自動車のさらなる技術向上に努めたいと考えています。
想定される追加質問
- 具体的にはどのような職種に就きたいと考えていますか?
- 国内の人口減少や自動車離れなど、自動車業界が抱える課題について、どのように考えていますか?
【例文】金融業界
大学で経済学を学んだ中で、金融業界が企業に与える影響の大きさ、人や企業の挑戦を支援している側面があることを知り、自分のやりたい仕事とマッチすると考え志望しました。
私は、昔からお金に対しての興味・関心が強く、また高校時代の政治経済科目に強い興味を抱いていたことから、大学で経済学部を専攻しました。実際に大学でマクロ経済、ミクロ経済、金融経済など幅広い分野を学んできましたが、金融機関が社会に大きな影響を与えるとともに、支えているということを強く実感しました。また、私は塾講師のアルバイトにも力を入れてきました。特に生徒一人ひとりに合わせた指導方法を心がけてきました。その経験から、目の前の人を支援し成長につなげることこそが自分のやりがいだと感じています。
以上のように、金融経済に関しての興味・関心の強さ、人の成長を支援することが自身のやりがいであること、この両方を満たせる金融業界を志望しました。
塾講師経験で培った多様な人と信頼関係を構築する力を生かし、多くのお客さまの成長を後押ししたいと考えています。
想定される追加質問
- 金融業界の中でも○○(銀行、証券など)を志望する理由は何ですか?
- 金融の中でもどんな職種に就きたいと考えていますか?
【例文】IT業界
私の趣味はeスポーツで、趣味を通じてインターネットに興味を持ちました。そして業界研究を進める中で、インターネットの仕組みを裏で支えるSE(システムエンジニア)の仕事に興味を持ち、IT業界を志望しました。
私が特に得意としているのは、チーム戦による格闘ゲームです。ほかのプレーヤーとコミュニケーションを取りながら、それぞれのキャラクターの性能や自分との相性などを理解し、強みを生かし弱みを補完し合いながらチームを強くすることに力を注いできました。
IT業界におけるSEの仕事は、チームワークを重視しながらエンジニア一人ひとりが強みを生かし、精度の高いシステム開発を目指すことだとうかがいました。インターネットに関する仕事にかかわりながら、自分が注力してきたチームワークを追求できる場があると感じ、この業界を志望しました。
趣味を通じて培ったコミュニケーション力を生かしつつ、みんなと協働する喜び、やりがいを感じながら働きたいと考えています。
想定される追加質問
- ゲーム業界に進もうとは考えなかったのですか?
- チームワークのために自分なりに努力、工夫してきたことを教えてください
【例文】インフラ業界
鉄道を通じて地域の人々の暮らしに貢献したいという思いから、鉄道業界を志望しました。
私の実家がある○○県△△市は過疎化が進んでおり、最寄り駅は今では電車が1時間に1本しかないローカル線の駅です。ただ、バスの廃線が相次ぐ中、なくてはならない交通手段となっており、近所の人たちの生活を支えています。私自身、大学進学で上京するまでは、毎日その電車を使って通学しており、多少雪が降ろうが台風が来ようが、地域のために日々正確に運行してくれることに感謝していました。
以前から社会貢献に興味を持ち、なんらかの形で社会貢献できるような仕事に就きたいと考えていましたが、地域の人々の生活をダイレクトに支える役割に大きな意義と使命感を覚え、鉄道業界を志望しました。
大学では建築を専攻し、主に都市開発について学んできました。その知識を生かし、駅や沿線周辺地域の開発にかかわることで、その地域に住まう人々の暮らしをより豊かに、便利にしたいと思っています。
想定される追加質問
- 人々の暮らしに貢献する方法はほかにもありますが、鉄道業界である理由を教えてください
- 鉄道会社の都市開発では、どういった業務に携わりたいと考えていますか?
【例文】広告業界
Web広告の力で消費者の視野を広げ、新たな行動を促進したいとの思いから、広告業界を志望しました。
高校時代、ネットで部活動用のランニングウエアを購入したところ、その後関連グッズなどが頻繁に表示されるようになり、Web広告の仕組みに興味を持ちました。自分が興味を持って調べたことに関する広告が出てくることで、「こんな商品・サービスもあるんだ」と気づかされ、興味の範囲も広がりました。
より深く仕組みを知りたいと思い、大学ではメディア学を専攻。授業を通して、企業と消費者を結び付けるデジタルマーケティングの面白さを実感し、自分の手で企業と消費者をつなげ、世界を広げるためのサポートがしたいと思うようになりました。これらの経験から、広告業界、中でもネット広告業界で力を発揮したいと思い志望しました。
大学ではデジタルマーケティングのほか、ゼミでは統計学を専攻し研究を続けてきました。これらの知識を生かしながら、企業と消費者をつなぐ活動に注力していきたいと考えています。
想定される追加質問
- 総合広告代理店でもネット広告にかかわる機会は多いですが、ネット広告業界に絞っている理由はなんですか?
- 最初から希望の部署への配属ができるとは限らないのですが、問題ないですか?
【例文】商社業界
両親の仕事の関係で、中学3年まで海外で生活した経験から、世界を股にかけてグローバルに活躍したいという思いが強く、総合商社を志望しました。
私の父は化学メーカーの海外営業として長く働いてきました。フリーで翻訳業を行う母と共に、子どものころはアメリカ、中国など6カ国での生活を経験しました。さまざまな地に順応し、バリバリ働く両親の姿を見て、私も将来は世界を舞台に働いてみたいと思うようになりました。
その足掛かりとして、帰国後には英語、中国語、スペイン語の勉強を継続しています。そして、総合商社に就職したゼミの先輩が、化学素材の担当としてヨーロッパを飛び回り働いていることから、私も先輩のような働き方をしたいと総合商社を志望しました。
海外を転々としていたころは、言葉がわからないながらも各国の文化に親しみ、人間関係を築いてきました。海外生活を通してコミュニケーション力も養われたと思います。これらの経験は必ずや、総合商社の仕事で生かせると考えています。
想定される追加質問
- 英語以外の言語に中国とスペイン語を選んだ理由を教えてください
- 海外の人とコミュニケーションを取るときに気をつけていることはありますか?
【例文】小売・流通業界
毎日のように利用しており、私の生活になくてはならないコンビニのサプライチェーンを支える仕事に就きたいと思い、この業界を志望しました。
大学入学後から現在に至るまで、近所のコンビニエンスストアでアルバイトをしていますが、子どもからお年寄りまで日々さまざまな人が利用してくださり、この店が地域の生活を支えていることを実感しています。また、売り上げや発注データ、物流データなど、店舗経営に関するさまざまなデータを見る機会があるのですが、コンビニには原料メーカーや製造会社、物流会社などさまざまな業界がかかわっており、サプライチェーンも長く複雑であることを知りました。
このアルバイトを通じて、サプライチェーンを支えるさまざまなシステムに携わりたいと思うようになったのが、この業界を目指すようになったきっかけです。
現在はコンビニと並行してアプリ開発のアルバイトをしていますが、その経験も生かしながらサプライチェーンの維持・精度向上に貢献できると考えています。
想定される追加質問
- サプライチェーンの中の、どのシステムに興味を持っていますか?
- コンビニを支えるシステムの中で、もっとブラッシュアップが必要だと思われる部分はありますか?
キャリアアドバイザーからのアドバイス
上記の例文のように、この業界に注目した理由を「自身の原体験・エピソード」を交えて伝えると、「この業界ならでは」が伝わる志望動機になります。
原体験・エピソードは、大学の授業やゼミで学んだこと、アルバイトや部活動、サークル、ボランティアで経験したことなど、実際に自分が体験し心に残っているエピソードを伝えるといいでしょう。
それでも業界の志望動機がうまくまとまらない場合は、就職エージェントの力を借りてみましょう。
リクナビ就職エージェントでは、業界の志望動機を添削したり、これまでの経験を振り返って一から共に志望動機を考えたりしています。志望動機だけでなく、どんな悩み・不安でも、専任のキャリアアドバイザーが伴走しながらサポートします。
就活中に悩んだり迷ったりしたら、まずは一度相談してみることをお勧めします。
\リクナビ就職エージェントをご存じですか?/
『リクナビ就職エージェント』は就活を無料で支援するサービス。
会員登録後、専任のアドバイザーが個別に電話相談を行い、あなたの希望や適性に合う企業選びを一緒に考えます。
エージェントだからこそできる求人情報の紹介、面接アドバイスやOpenESの添削なども行っています。
プロフィール 佐藤光紘(さとう・みつひろ)
キャリアアドバイザー。2017年に株式会社リクルート(旧リクルートキャリア)に新卒入社。以来、一貫して新卒の学生向けのアドバイザー業務に従事。関西のキャリアアドバイザー組織の立ち上げにも携わり、現在は全国の学生の就活サポートに力を注いでいる。