就活を振り返り、「もっとこうすれば良かった…」と悔やんでいる人は、実は少なくないようです。できることなら、納得のいく就活を行いたいもの。
この記事では、先輩たちが何に後悔しているのかをアンケートで聞き、キャリアカウンセラーの山田英子さんに具体的な対応策を解説していただきました。
山田 英子さん(やまだ・えいこ)早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒業。
大手ファーストフードサービス企業、人材サービス企業を経て、IT系コンサルティングファームに入社。採用部門のリーダーとして新卒・中途採用業務全般に加え、就職セミナーでの講演等の広報活動や人事制度設計等に携わる。2005年5月に個人事業主として独立し、大学生の就職活動支援、社会人の転職支援などを中心に活動中。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー
就活で後悔した先輩は約3割。動き出し時期や自己分析に関する後悔が上位に
2024年卒業の先輩たち500名を対象にした就活についてのアンケートによると、「就職活動で後悔していることはありますか」との問いに対し、33.2%の人が「はい」と回答。実に3人に1人が、就活に関して何らかの後悔をしていることが明らかになりました。
- 就職活動で後悔していることはありますか。(単一回答・n=500)
「後悔していることがある」と答えた人に一番後悔していることを聞いたところ、就活を始める時期が遅かった、自己分析が甘かった、業界・企業研究が甘かった、などについて後悔している人が多いという結果になりました。
- 就職活動で後悔していることがあると回答した方は、何に対して一番後悔していますか。(単一回答・n=166)
「後悔している理由」別に、プロが対処法を紹介
先輩たちが「就活で後悔している理由」別に、キャリアカウンセラーであり各大学などで就活相談に乗っている山田英子さんに、どのように行動すれば後悔のない就活ができるのか、アドバイスを頂きました。
※ここでは上記アンケートのうち、上位7項目を紹介します。
後悔理由第1位:就活を始める時期が遅かった
【先輩たちの声】
- なんでもかんでも先に素早く動く方が良かったんじゃないか、と思った
- 早い時期からいろいろなジャンルの企業を見ておけば良かったと思った
- 周りが決まりだして焦っていろいろ手付かずの状態になった
就活のスタート時期が遅くなる人の中には、「就活に対して漠然とした不安を抱えていて、最初の一歩が踏み出せない」というケースが多いようです。
誰しも、就活は不安なもの。その不安が明確であればどう対処すればいいかわかるので行動に移しやすいですが、不安の正体がわからない場合「不安なことはやりたくないな」と先送りしてしまう傾向にあります。
不安の正体を明確にするためにも、まずは自己分析をして自己理解を深めることをお勧めします。その一歩もなかなか踏み出せないという場合は、学校の就活プログラムに参加することから始めてみましょう。
例えば、就活ガイダンスやES(エントリーシート)・面接セミナー、学校主催の合同企業説明会など、学校が用意してくれた任意参加のプログラムに「まずは乗っかってみる」。
自分の力で一歩踏み出そうと思うと、不安が勝ってしまうかもしれませんが、用意されたものに乗っかることで、行動できるようになるかもしれません。
後悔理由第2位:自己分析が甘かった
【先輩たちの声】
- 自己分析を始めるのが遅く、内容も深いものではなかったので、面接での返答がうまくできないことがあった
- 自己分析や、志望動機が固まっていないまま面接に臨み、その場ですべて考えていたのでしどろもどろになる場面や、後から、こう言えば良かったと思い返すことがあった
自己分析は、過去を振り返ってワークシートに自分史を書き出したり、モチベーショングラフを作成したりして行いますが、学生の中には「自分が経験してきたことをすぐには思い出せず、作業が大変だ」という人も少なくありません。
これまでの自分を振り返り、深掘りできないと、自分の強みや持ち味は把握できません。
また、自己分析のやり方がわからず、「なんとなく自分はこれに向いていそうだ」と安易に自己判断をして行動した結果、後悔の残る就活になった…という人もいるようです。
面倒くさい、大変だと感じるかもしれませんが、自己分析は、ESや面接のために行うものではありません。社会人としてどう生きていきたいのか、どんなキャリアを歩みたいのかという、これからの人生に大きくかかわるものです。時間をかけてじっくり自分自身に向き合い、分析してみましょう。
洗い出された結果を、深掘りしてみることも大切です。
例えば「人と接するのが好き」という思い一つ取っても、「どう接したいか」によって向いている仕事は変わります。
多くの人と接したいのであれば、販売職のように接客する職種などが当てはまりますし、限られた人とじっくり長期的な関係性を築きたいのであれば、法人営業やルートセールスなどが向いているでしょう。
そして、総務や人事なども、見方を変えれば「社内の人と数多く接して働きやすさ向上につなげる」仕事と言えます。
このように深掘りすることで、より自分の志向に合った業界・企業・仕事に気づくことができれば、「自己分析が甘かった」と後悔するリスクも減らせるでしょう。
後悔理由第3位:面接準備が不十分だった
【先輩たちの声】
- 対人での面接練習が不足しており、普段通りに話すことができるようになるまで時間がかかった
- 第1志望の企業の最終面接で緊張しすぎてうまくいかなかった。今思うと、インターンシップ選考などで面接の場数を踏むべきだった
面接がうまくいかない要因の一つが、「志望動機を正しく伝えられていない」点。志望動機は、どの企業も重視している項目です。どの会社にも当てはまりそうな志望動機ではなく、応募企業の事業内容や特性と、自身の強み・持ち味をひも付けて志望動機を伝えることが大切です。
また、面接の場で過度に緊張してしまい、うまく受け答えできないケースも多いようです。
緊張を軽減するには、面接の場数を踏むことが一番なので、学校のキャリアセンターなどが実施している模擬面接をうまく活用したり、面接での受け答えを家族や友人などに見てもらったりして、第三者からのアドバイスを得るといいでしょう。
就職エージェントのキャリアアドバイザーに相談してみるのも一つの方法です。リクナビ就職エージェントでは、専門知識に長(た)けた専任アドバイザーが、マンツーマンかつ無料で就活をサポートしています。面接についても、準備から最終確認まで一緒に行いますので、ぜひ頼ってください。
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後悔理由第4位:業界・企業研究が甘かった
【先輩たちの声】
- もっと企業・業界研究をしておけば良かった。就活を終えてから魅力的な業種をたくさん知ることとなった
- 同じ業界でも複数の企業のインターンシップに参加して比較できるようにしておくべきだった
「業界・企業研究が甘かった」と後悔するのは、いくつかの要因が考えられます。
まずは、企業研究しているつもりが、給与や休みなど自分が気になる条件ばかり見ていたというケース。
働く上では本来、社風や文化、事業展望、求める人物像などの情報の方が、「自分に合う・合わない」の判断材料になるはず。これらを調べておくことで、志望動機もうまくまとめられるようになるでしょう。
また、第1志望の企業についてはしっかり調べても、同業他社などは調べていないという人も多いようです。
例えば、同業他社と比較して、何がこの会社の強み・特徴なのかをつかんでおかないと、「なぜライバル社のA社ではなく、うちの会社なのか?」を聞かれたときにうまく答えられなくなります。
比較した結果、実は別の会社の方が自分の志向や価値観に合っていたと気づくケースもあるでしょう。
業界や企業に関する情報は満遍なく収集し、ライバル社と比較し異なる点を洗い出すことをお勧めします。
後悔理由第5位:インターンシップ等にあまり参加しなかった
【先輩たちの声】
- もっといろいろな業界のインターンシップに早くから参加しておけば良かった
- 学業が忙しくてインターンシップにあまり参加できなかった
- インターンシップに参加しなかったため、自分が何に向いているのかさえわからなかった
「興味があるプログラムがないから」「部活やゼミが忙しいから」などの理由でインターンシップを見送る人は少なからずいます。
また、「まだ就活準備ができていないから、企業にマイナス印象を持たれてしまうのではないか」と不安を覚え、参加をためらう人もいるようです。
しかし、インターンシップは働く現場を体感できるまたとない機会。気になる企業がある場合はなおのこと、社風や社内の雰囲気、仕事そのものにリアルに触れられる貴重な場になります。「まずは参加してみる」という姿勢が大切と言えます。
インターンシップはまた、業界や企業、仕事に関する視野を広げる場でもあります。
たとえよく知らない企業や、あまり興味が持てないプログラムであっても、仕事の現場を体感することで新たな発見が得られるはずです。思わぬ業務、役割にやりがいを覚え、志望業界や企業が定まったりすることもあるでしょう。
自身の可能性を広げるためにも、インターンシップの場を有効活用しましょう。
後悔理由第6位:学業やアルバイトとの両立ができず、どちらかをおろそかにしてしまった
【先輩たちの声】
- 学業との両立ができず、就活に時間をかけられなかった
- インターンシップで時間を費やし、アルバイトができず経済的に苦しかった
特に理系の学生などは、ゼミや研究室が忙しく、なかなか就活に割く時間が取れないという悩みを抱える人が多いようです。
担当教授に就活について普段から共有しておく、試験勉強や研究などは空いている日・時間に集中して進めておく、などの対応策が考えられますが、有効なのは同じゼミや研究室の先輩に相談すること。学業と就活をどのように両立したのか、どんな工夫をすればいいのか、具体的なアドバイスがもらえるでしょう。
アルバイトの場合も、就活が入らなそうな時期に集中してシフトを組んでもらうなど、勤め先に事前に相談しましょう。面接が立て込む時期にはアルバイトに入りにくくなるため、生活費などの不安がある人は就活がピークに入る前に集中して働くなど工夫することをお勧めします。
後悔理由第7位:希望業界・企業を初めから絞りすぎた
【先輩たちの声】
- 志望業界を絞りすぎていたので、後になってこの業界で良かったのか不安に感じた
- 就職活動自体に焦ってしまって、内定をもらうことがゴールになってしまっていた。もっとほかの業界や会社も見れば良かった
「大手にしか行きたくない」「絶対に○○業界に入りたい」など、就活を本格的に始める前に志望業界を絞り込んでしまう人がいますが、あまりお勧めできません。
別の業界・企業の方が自分の強みや持ち味、価値観に合っている可能性を探らないままでは、選択肢を最適ではない形で狭めてしまうことになるからです。
それに、1つの業界や分野に絞り込んでしまうと、もしもなかなか内定が決まらず応募先がゼロになった場合、応募先を一から探す羽目に陥ることも考えられます。
就活スタート時は絞り込みすぎず、できるだけ視野を広げて就活に臨みましょう。
就活で後悔しないために、心がけておきたいこと
近年はスカウト型採用を取り入れたりSNSで積極的に発信したりするなど、企業側から学生にアプローチするケースも増えています。
学生の皆さんにとってはいずれもチャンス拡大につながるため、できるだけ有効活用するといいでしょう。企業からアプローチがあったらひとまず話を聞く、など流れに乗ってみるだけでも、視野が広がります。
ただ、最も大事なのは、自分は何をしたいのかという「就活の軸」をぶれさせないこと。そのためにも、まずは何をおいても自己分析です。
軸さえあれば、環境がどう変化しようがぶれずに突き進めますし、たとえ選考に通過できなくても、自身の原点に立ち戻ることでリスタートしやすくなります。
就活は内定を得るために行うのではなく、「自分が目指す人生」を送るために行うもの。就活中はどうしても視野が狭くなり、目の前の選考を通過することばかりに気持ちが向かいがちですが、そんなときこそ意識して視座を高く持ちましょう。
「目指す人生を送るためにはどんな企業や仕事を選べばいいのか」と、より具体的な行動に落とし込んでいくことで、後悔するリスクを最小限に減らせるでしょう。
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【調査概要】
調査期間:2024年3月1日~3月6日
調査サンプル:2024年3月卒業予定の大学生、大学院生500人(文系250人、理系250人)
調査協力:株式会社クロスマーケティング