就活では何社受ければいい?応募社数の考え方とスケジュールの立て方

「これから就活を始める学生さんから『いったい何社くらいに応募すればいいのでしょうか』と相談を受けることはよくあります」と語るのは、リクナビ就活エージェントのキャリアアドバイザーの横山仁美さん。応募社数に“正解”はありませんが、就活生の平均的な応募者数については調査データがあります。また応募社数が多過ぎる場合、少な過ぎる場合、どのような影響があるのか、知っておきたいものです。

そこで、横山さんに、応募社数の目安と応募先の組み立て方、スケジューリングの方法について、アドバイスをいただきました。

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プロフィール 横山仁美(よこやま・ひとみ)リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザー。2018年、株式会社リクルートキャリア(現・株式会社リクルート)に新卒入社し、1年目は東京、2年目以降は関西にて、理系(機械・電子・化学・物理)と文系領域を担当。年間400~500人をサポートしている。学生自身が納得して社会人としての一歩を踏み出せるようにアドバイスすることを心がけている。

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応募社数の目安はあっても「これが正解」というものはない

大前提として、応募社数に「これが正解」というものはありません。就活のスタイルは、ひとりとして同じ人はいません。そのうえで、この記事では「おおよその目安」として、応募社数の考え方をご説明します。

リクルートの就職みらい研究所『就職白書2022』によると、2022年卒学生のエントリーシート(ES)提出数は平均17.33社。この数字が、応募社数の一つの目安と言えます。就活スタートの段階では、この社数を意識してみてはどうでしょう。

この社数を多いと捉えるか、少ないと捉えるかも、個人差があると思いますが、一つの考え方として、内定から逆算して考える方法があります。

1社から内定を得るためには、3~4社は最終面接に進んでおきたいところ。二次面接で半数ぐらいまで絞り込まれることを考えると、一次面接を15~18社程度確保しておきたい…と逆算できます。

そして、ES通過はおおよそ5~6割程度と言われていますので、ESを提出するのは30社程度と考えられます。私たちが多くの学生さんから相談をいただく際には、一つの考え方として、このようにご説明することが多いです。

このシミュレーションは、文系学生のケースです。理系学生は専門性を軸に応募先を絞り込む人が多いので、20~25社程度が目安になるでしょう。また、大学院生は研究が忙しく就活に割く時間が限られるため、15~20社ほどが目安になります。

もちろん、これらの社数はあくまでも「目安」。目指したい業界や応募企業の組み合わせによって、目安となる社数も異なります。学業や課外活動などとの兼ね合いを考慮しながら各自で調整しましょう。

応募社数が「多過ぎる」「少な過ぎる」とどうなる?

前述の「応募社数の目安」から大幅にずれると、就活がスムーズに進まなくなる可能性があります。多過ぎる場合、少な過ぎる場合に分けて、どんな影響が考えられるのかご説明します。

応募社数が多過ぎると「スケジュール管理が難しくなる」「抜け漏れが増える」

応募社数が多過ぎるのはどんな方に多いのかというと、不安傾向が強く「できるだけ多くの企業に応募したい」と考えている人、自分の軸を決めずに知っている会社に片っ端から応募して「広く話を聞いてみてから決めよう」と考えている人などです。

多くの企業に応募して機会を増やそうとする前向きな意欲は大切なことですが、応募社数が多過ぎると、選考が進んだ場合のスケジュール管理が難しくなります。会社説明会の時間が他社と重なり遅刻してしまった、日にちや時間を間違えてしまった、提出書類などの期限をうっかり忘れてしまった…などのミスをよく耳にします。

1社当たりにかけられる時間も必然的に減ってしまうので、企業研究が十分にできないままESを出すことになったり、準備不足のまま一次面接に臨むことになったりする恐れもあり、結果的に、通過率を下げてしまうことになりかねません。

就活ばかりの日々になってしまうことでストレスを感じたり、学業や課外活動とのバランスが崩れ、忙しさのあまり体調不良になったりする人もいるようです。自分の生活とのバランスを考えながら、応募社数を検討することが大切です。

応募社数が少な過ぎると「すべての応募企業で不採用になる可能性がある」「面接の経験が積めない」

応募社数が少な過ぎるケースは、希望条件を絞り込み過ぎている人に多いように見受けられます。「〇〇業界しか応募しない」とか「〇〇制度や、〇〇の福利厚生がある会社がいい」と自ら応募条件を決めてしまい、視野が狭まっているケースです。また、部活が忙しい、研究室が忙しいなどの理由で応募社数を絞り込む人もいます。

ただ、応募社数が少な過ぎると、就活途中で応募する企業がなくなってしまう恐れがあります。新たな応募先を探すために「一からやり直し」を繰り返すのは心身共に負担が大きいですし、そうこうしている間に採用を終えてしまう企業も増え、就活が長引いてしまう可能性もあります。

また、就活には「面接などで経験値を積み重ねて慣れる」ことも重要です。

例えば面接にしても、最初は緊張もしますし、ぎこちない部分は誰にでもあるものです。何社かで面接を受ける中で、次第に自分らしい発言ができるようになることはよくあります。志望度の高い企業に絞って応募すると、面接の経験が乏しいために緊張し過ぎてしまったり、やりとりがうまくいかなかったりと、100パーセントの力を発揮できずに終わってしまう可能性もゼロではありません。第一志望群の業界や企業だけでなく、第二志望群、第三志望群も検討することをお勧めします。

就活中の学生のイメージイラスト

応募社数の組み立て方と、スケジュールの立て方

応募する企業をどう組み立てればいいのか、そして抜け漏れを起こさないためにはスケジュールをどう立てればいいのか、ご説明します。

就活をスムーズに進める、応募社数の組み立て方

途中で応募企業がゼロになるリスクを抑えつつ、スムーズに就活を進めるための一つの目安として、例えば「第一志望群5割、第二志望群3割、第三志望群2割」くらいの割合で応募先を考えるといいでしょう。第一志望群をもっと増やしたいと思われるかもしれませんが、多くの場合、第一志望群の企業は人気企業や知名度の高い企業の場合が多く、通過率が下がる可能性が予想されます。

そこで、第一志望群のほかにも、「就活を始めるまでは知らなかったけれど、自分の強みや持ち味に合いそうな企業」なども応募企業に組み込むことをおすすめしたいと思います。

就活が始まったら、「選考中の企業が常に5社ほどある」状態を維持するのが理想的です。1社落ちてしまったら、1~2社応募先を追加するぐらいのイメージで、常に追加で応募したい企業を検討しておくといいでしょう。

スケジュールは紙に書き出して可視化し、抜け漏れを防ぐ

就活が始まったら、会社説明会、ESの提出締め切り、筆記試験、面接…とどんどん予定が入ってきます。スケジュール帳などに、いつ何の予定があるのか、いつまでに何をしなければならないのか、書き出しておきましょう。もちろん、スマホのカレンダーやメモ機能でもOK。スケジュールを一覧化し、可視化することで「うっかり忘れ」を減らすことができます。

表を作って企業ごとに整理するのも有効です。縦軸に企業名、横軸に提出物の締め切りや面接などに日時を書き出し、終わったものは線を引いて消していくと、すでにやり終えたこと、これからやらねばならないことがひと目でわかるので、抜け漏れを防ぐことができます。

もし応募先がすべて不採用になってしまったら?

もし応募企業がすべて不採用になってしまい、受ける企業が無くなってしまったら、いったん立ち止まり、これまでの就活を振り返ってみることをお勧めします。焦りからどんどん応募数を増やしたくなりますが、やみくもに応募するのは就活を長引かせる結果になりかねません。

あらためて考えてみてほしいのは、自分にはどんな強み、持ち味があるのか、どんなことにやりがいを感じるのか、どんな環境でどんな人と働きたいと考えているのか。その理由を深掘りし、自分が大切にしたい軸をもう一度整理してみましょう。その上で、その軸に合いそうな業界・企業に視野を広げ、応募先を検討することが大切です。

就活を進めていく中で不安を感じたら「就職エージェント」も活用してみよう

私たち就職エージェントに相談してもらうのも有効だと思います。一緒にこれまでの就活を振り返り、軸の整理を行った上で仕切り直しをサポートします。

例えばこんな例があります。

ある機械系の理系学生は、「研究室の先輩はみんな2、3社だけに絞って応募し、内定を獲得できていたから」という理由で、大手自動車メーカーの技術職だけに応募。しかし、残念ながらすべて不採用だったため、相談にいらっしゃいました。

そこで「なぜ自動車メーカーが良かったのか」を共に振り返り、理由を深掘りしたところ、「みんなが生活で利用するものの開発にかかわり、社会の役に立っていることを実感したい」という思いに行き当たりました。その思いをベースに視野を広げ、いくつかの業界に応募、最終的には半導体メーカーから内定を獲得しました。半導体はあらゆる家電やIT機器などに使われているので、貢献実感が得られやすいことが自分の軸に合っている、と納得の上で入社を決めることができました。

リクナビ就職エージェントの場合は、志望業界や出身学部ごとの担当キャリアアドバイザーが、納得のいく就活が行えるよう伴走し続けています。自分の軸を洗い出すためのサポートや、志望業界や企業の洗い出しはもちろん、一人ひとりに合った応募社数の考え方やスケジューリングのアドバイスも行います。仮に応募企業がなくなっても、自分の軸に合った求人を紹介してもらうことも可能です。就活の中で悩んだり迷ったりしたら、活用してください。

取材・文・編集/伊藤理子


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