メーカーでの海外技術営業の豊富な経験を生かし、香港現地法人の日本側責任者として出向中。週末には、トレッキングなどのスポーツを家族で楽しむ。
800名の香港人に囲まれて、香港流ビジネスを獲得中
はじめまして。ニューヨーク、ロンドンと並ぶ、アジアの世界都市である香港は、その地の利から、日本人に人気がある観光地の一つです。特に2014年は、選挙制度をめぐって、民主派団体と学生が中心となり政府に抗議デモを起こした様子が連日のように報道され、世界的に注目されていました。そんな香港で働くHMが、リアルライフをお伝えします。今回は、まず仕事の現場から。
およそ800名の職場のスタッフは、私を含めた2名の日本人を除き、すべて香港人です。通常、会議では英語を使いますが、香港人同士の簡単な打ち合わせや会話は、広東語が使われています。1997年の中国への返還以降は、基本法で公用語は中国語と定められており、私自身、北京で会社の制度を利用して4カ月ほど中国語の語学研修を受けました。でも実際に、香港で最も使われているのは広東語。9割の人が理解できると言われています。ちなみに香港では共稼ぎ世帯が多く、小さいころから外国人の家政婦と英語でのコミュニケーションが必要になるので、日本人より英語を話すということに抵抗がないと感じることが多いですね。
南シナ海沿岸の地域を中心に話される広東語はそもそも文字文化にはそぐわないようで、香港の同僚は常に自分の意見を口にして仕事を進めます。日本では、会議前に綿密な資料をそろえ、それに基づき結論を導こうとしますが、香港人はとことん話し合い議論を尽くして、一つの結論にたどり着きます。会議の前後でも、「あれっ?」と疑問に思うような点が生まれると、すぐに電話で直接聞いてきますね。常に会話が先にあり、メールや文字に残すのは、会話によって決まった要点だけのようです。
おそらく、仕事中の会議だけではなく、何かを決めるときにはまずお互いに意見を言うというのが前提なのではないでしょうか。香港ではどこへ行っても携帯電話で話をしている人を見かけます。街角で電話に向かい大声で話している人を見かけると、最初はケンカをしているのかと驚きましたが、やがて慣れました。どこにいてもメールを打つのに没頭している日本人とは違いますね。
出身地の文化を重んじ、オン・オフを上手に使い分ける
ランチは、日本と同様、お弁当を持参する人や外に食べに行く人もいますが、最も多いのは、「外買」といわれる、近くのレストランからのテイクアウトです。いずれの場合も、香港の同僚は、食事中、よくしゃべります。会話を楽しみながらゆっくり食事を取ることを大切にしているという印象です。
多様な民族と文化が混在する香港では、中国各地方の料理はもちろん、タイ、ベトナム、インドなどアジア各地のさまざまな料理専門店があります。日本食は、とても人気があり、すし、ラーメン専門店はもちろんのことですが、比較的手ごろな価格で日本食を楽しめる「日式」とよばれる日本風レストランもたくさんあるのです。香港には、日本の外食チェーン店が積極的に出店しているので、オフィス街で気軽に日本食を味わうこともできますよ。
香港のスタッフは、ほとんど残業をしません。就業時間は9時~18時なので、8時50分ごろ出社し、18時20分には誰もいなくなります。退社後は、公営のスポーツ施設で、テニスやバドミントン、卓球などを楽しみながら過ごしているようです。香港は、公的保険制度や年金制度がほとんどなく、個々が健康維持に熱心。早朝や休日には、公園で体操やストレッチ、太極拳など、老若男女こぞって熱心に体を動かしている人を見かけます。
一方、日本人は、テレビ会議などで、極力日本時間(時差は1時間)に合わせるため、どうしてもランチタイムがずれたり、残業せざるを得ません。また、日本はほとんど完全週休2日制ですが、香港は、サービス業では隔週で土日休業制を取っている企業が多いため、日本と比較すると年間の就業日数は多くなります。
次回は、香港の住宅・交通事情など実際の暮らしについてお話しします。
港の歴史を思い出させる街、大墺(タイオー)。香港のベニスとよばれるが、最近は水上生活者が少なくなってきた。
どこのスーパーにもある、すし、そば、丼物などの日本食はランチタイムにも大人気。
HMの住む香港島から南シナ海をのぞむ。都会の喧騒(けんそう)とは別世界の自然美が広がる。
毎年6月に各地でドラゴンボート大会が開かれるが、香港島南部にあるこのスタンレーでの大会が最も国際色豊か。日本人チームや企業チームも参加する。
飲茶(ヤムチャ)は駐在員にも人気。メニューは英語と中国語と両方用意してあるが、英語のメニューを頼むと料金が高めに設定されているので、ご用心!
構成/釣田美加