山崎直子

やまざきなおこ・1970年千葉県松戸市生まれ。93年東京大学工学部航空学科卒業。96年同大学大学院航空宇宙工学専攻修士課程修了。96年4月よりNASDA(宇宙開発事業団。現JAXA:宇宙航空研究開発機構)に勤務し、日本実験棟「きぼう」のシステム・インテグレーション(開発業務)に従事。99年2月NASDAよりISS(国際宇宙ステーション)に搭乗する日本人宇宙飛行士の候補者に選定され、宇宙飛行士の基礎訓練に参加。2001年9月に宇宙飛行士として認定される。10年4月、スペースシャトル「ディスカバリー号」によるISS組み立てミッションに参加、ロードマスター(物資移送責任者)として、物資移送作業全体の取りまとめや、ISSおよびスペースシャトルのロボットアームの操作などを担当。帰還後、JAXA勤務の傍ら東京大学で航空宇宙工学の研究に従事。11年8月にJAXAを退職後は内閣府の宇宙政策委員会委員や立命館大学、女子美術大学客員教授を務める。著書に『何とかなるさ!』(サンマーク出版)、『瑠璃色の星』(世界文化社)、『夢をつなぐ』(角川書店)など。15年7月に日本ロケット協会理事に就任し、「宙女(Sorajo)」ボードを設置。

自分のスペシャルを持つ、そして目標達成への道は一つではない

宇宙への憧れは子どものころからですが、宇宙飛行士を目指して一直線に突き進んだというわけではありません。宇宙飛行士になりたいと思っても、当時はどうすればなれるのか、そんな情報さえありませんでした。ですから、どんな仕事をしたいかを考えたときに、宇宙にかかわる仕事がしたい、宇宙開発に携わりたいというのが最初にあって、それでエンジニアを志し、大学院で航空宇宙工学を専攻して、当時のNASDAに入社したわけです。

 

大学院在学中にアメリカへ留学をしている時、たまたま宇宙飛行士の募集があり、それに応募したのですが、結果は不合格。それで、悔しくて、でも挑戦すること自体が楽しくて、「次は頑張ろう!」と思いつつ、その後NASDAで働いて3年目の時に、2度目の挑戦で宇宙飛行士の候補になることができました。

 

宇宙飛行士の試験は1年がかりで行われるんですね。書類審査に始まって1次試験、2次試験と、1年という長い期間をかけて選考していく。一つひとつのステップごとに、面接や作文などを通じて「なぜ宇宙に行きたいのか」をより深く考えることになるわけです。何度も自分に問い直すうちに、「宇宙に行くだけが目的じゃない。そこで何をしたいのか」を、深く考えることができました。一般の就職活動においても、漠然とその会社に入りたいというだけでなく、なぜ入りたいのか、そこで何をしたいのか、について深く考えることが大切だと思います。

 

宇宙飛行士の条件の中には「自然科学系の研究・開発の仕事に携わった経験が3年以上あること」という項目があります。これはキャリアを積み上げて、その得意分野を宇宙で生かしてもらうことを意図したものです。まずは実務経験を重ねて自分自身の強みをつくる、何か一つ「自分はこれのスペシャリストです」と言えるものを持つことがマストなんですね。これは何も宇宙飛行士の世界に限ったことではありません。就職に際して、その会社でどんな仕事をしたいのかを考えると同時に、自分自身に何ができるのか、何をもってその会社に貢献できるのかを考えてみてください。そうすれば、何が足りないのかわかるでしょう。足りないものがわかったら、少しずつそれを身につけていくことから始めてみてはどうでしょうか。

 

そのとき、多くの人は最短ルートをたどろうとします。それは間違いではないけれども、ゴールへの道は一つではないということをわかってほしい。決して焦らないでもらいたいですね。すべてが自分の思い通りに進み、ステップアップしていける人はほとんどいないのではないでしょうか。希望とは違う仕事を与えられたとしても、その仕事をこなしていく中で、また別の道が見えてくることもあります。

 

私はNASDAに入ってから、ISSへ日本が提供する実験棟「きぼう」プロジェクト・チームに配属されたのですが、実はそれは私の希望とは違うものでした。でも結果的には、そこでの仕事が私にとって大きな財産になりました。自分が思っていたものではなくても、長い目で見てみると大きな意味を持つことがあるとわかったんです。プロジェクト・チームにはたくさんのメンバーがいて、自分の考えだけでは前に進めません。さまざまな状況の中で、希望通りにならないことが多いのですが、その道をどう歩むかは自分でコントロールできるんですよ。What(何をするか)の部分は思い通りにならなくても、How(どうするか)の部分では自分で決めてほかの人と違いが出せる、そのHowを意識して仕事に向かうことが大切だと思います。だから、焦らずに長い目で見てほしいですね。人生のどこかで必ずチャンスがあると信じることができれば、下積みにも意味が生まれてきます。目の前にある仕事をつまらなく感じることがあっても、まずはそれに注力してみることで、何か新しいものが見えてくるはずです。環境や周りのせいにしたり、言い訳をしていると、新しい発見や出会いに気づかずやりすごしてしまう。それを生かして自分の強みに変えられるかどうかは、本人の考え方次第なのではないでしょうか。

 

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プロフェッショナルは学び続け、行動することから生まれる

仕事をする上で大切にしているのは、学び続けることです。宇宙飛行士はプロフェッショナルが集まっていますが、そこに身を置くようになり、前に進めば進むほど、知らないことがいかに多いかを知り、愕然(がくぜん)とするときがありました。だからこそ、謙虚に学び続けることが大切です。

 

スペースシャトル1号・コロンビアの船長を務めた、ジョン・ヤングさんは引退してからも、スペースシャトル計画やISSのミーティングに参加されているのですが、ヤングさんの現役当時と比べて当然、機器やシステムは大きく進歩していますし、体制や外部環境も変化しています。その中で、ロシアの有人宇宙船「ソユーズ」との連携などについても議論するわけですが、あれだけのベテランで、私たちからすれば神様のような人が「このシステムは何ですか?」「この略語は何という意味ですか?」と、質問をされるんです。「ぼくは古い人間だから新しいことは教えてくれ」とか「日本の『きぼう』をよく知らない。どのような目的を持っているのか教えてくれ」と聞かれるんですね。いくつになっても知識欲が旺盛なんです。真のプロフェッショナルとは、このように学び続ける姿勢から生まれるのだと実感しましたし、それはずっと見習っていきたいと思います。

 

世の中はものすごい勢いで進歩しています。IT、医療、介護、どの分野をとってみても、今の常識がいつまでも常識であるとは限らない、今の正解がこの先も変わらず正解であるとは限らないということです。そういう問題意識を持って学び続けていけば、いつか自分の道が見つかり、自分なりの答えを導き出せるのではないかと思います。

 

それからもう一つ、学んだら試してみる、行動に移すことが大切だと思っています。やりたいことやゴールは向こうからはやってきません。自分から行動を起こさなければ、わからないことがある。本や資料を読む、情報を集めるだけでは知り得ないことがあります。よく考えていたつもりでも、実際に行動してみたらまったく違っていたという経験は誰にでもあるでしょう。それに、行動することによって自分がやりたいことに気づく、目標がはっきりしてくることがあると思います。最初からゴールが見えている場合もあるでしょうが、私の場合は動いていく中で見えてくることが多かったですね。中学生の時にアメリカの女の子と文通をして、留学したいという目標を持つようになりました。また、留学先で70代の現役パイロットの方に出会ったことで、宇宙飛行士への夢を再確認しました。動くことによって新たな出会いが生まれ、それが刺激となってまた次の道につながっていくのだと思います。ですから、勇気を持って行動してもらいたいですね。そのとき自分を勇気づけてくれるのは、どれだけ真摯に学んできたか、考えてきたかということだと思うんです。

 

今後の目標についてですが、私自身はまた宇宙に行きたいと思っています。それが一つと、さらには、宇宙をもっと身近なものにしていくことがもう一つの目標です。

小惑星探査機「はやぶさ」などを通じて、宇宙に興味を持つ人が増えてきています。だから多くの人が宇宙旅行に行くとか、宇宙空間に工場をつくるとか、宇宙を身近なものにしていくことが重要になってくるはずです。そのために、これまであまり宇宙と関係がなかった分野と宇宙を結び付ける、宇宙のことをリアルに伝えるなどの活動を通して、少しずつですが裾野を広げる努力をしています。高い山ほど広い裾野を持っていますね。もっと多くの人が宇宙に行けるようにして、宇宙を身近なものにするなど、裾野を広げていけたら、先端部分の研究や開発をさらに高いところへ押し上げられるのではないかと思います。

 

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INFORMATION

日本ロケット協会に設置された「宙女(Sorajo)」ボードの委員長に就任した山崎直子さん。NASAでは副長官に女性が就任するなど、欧米では女性の力が宇宙開発に生かされている。まだまだ男性比率の高い日本の宇宙開発の現場で働く女性のネットワークづくりからスタートした「宙女」。宇宙航空業界での男女共同参画を推進する活動に注目。

http://www.jrocket.org/#02

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取材・文/狩野健二 撮影/鈴木慶子

 

 

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