【シェアリング・エコノミー編】企業選びのプロが教えるキラリと光るビジネス

就活する中で多くの学生が迷う「業界選び」や「企業選び」。とはいえ、「行きたい業界や企業が決まっていない」「何を軸に選んだら良いかわからない」という方もいるのではないでしょうか。

そんな方向けに、就活情報サイトとは少し視点を変えて要注目のビジネスをご紹介するのがこの企画。「なんか流行っているけど、ビジネスとしての将来性はどうなんだろう?」「業界を横串でつないでいる新しいビジネスって、実際どうなの?」…など、ちょっと気になる、でもよく分からないビジネスを、シンクタンク・日本総合研究所の研究員がプロの目線で紹介します。

今回は「シェアリング・エコノミー」についてです。シェアリング・エコノミーってそもそも何?将来性はありそう?といったことに加え、企業の探し方もお聞きしました。ぜひ、参考にしてみましょう。

日本総合研究所・吉田賢哉氏株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉(よしだ・けんや)

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

シェアリング・エコノミーって何?市場規模はどのくらい?

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モノやサービスなどを共有し、必要なときに使う仕組みのこと

<シェアリング・エコノミーとは?>

シェアリング・エコノミーとは、モノやサービス、場所などをシェア(共有)することで、より大きな経済的価値を生み出そうとする考え方、あるいは社会的な仕組みを指します。現在、自動車・不動産・宿泊・人材・金融など幅広い業界で、シェアリング・エコノミーに関する動きが拡大しています。

これまで、暮らしに必要なモノやサービスは、お金を出して買うのが当たり前でした。例えば自動車は、「マイカー」として保有するケースが多かったものです。しかし、自動車を使うのは週末だけという人は珍しくありません。この場合、平日のマイカーは使うことができない、ムダな資産となっていました。一方、世の中には平日だけ自動車を使いたいという人もいます。そこで、「週末だけ自動車を使いたい」という人と「平日だけ自動車を使いたい」という人が1台の自動車を共有すれば、より安い費用で利用することが可能です。

このように、複数の人でモノ・サービスを共有し、必要な時だけお金を払って利用するというのがシェアリング・エコノミーの考え方です。

市場規模は約5000億円で、今後も有望

内閣府が2018年7月に公表した「シェアリング・エコノミー等新分野の経済活動の計測に関する調査研究」によると、2016年時点におけるシェアリング・エコノミーの市場規模は4700億〜5250億円程度だと見られています。

このうち、個人の自宅を貸し出す「民泊」など、場所の共有にかかわる分野は1400億~1800億円程度。自動車を共有する「カーシェアリング」や自転車を共有する「サイクルシェア」、宝飾品や雑貨など、モノの共有にかかわる分野は3000億円程度。イラスト制作や家事サービスの提供など、個人のスキル・時間の共有にかかわる分野は150億~250億円程度。一般の人から出資を募って事業を成立させ、出資者に見返りを与える「クラウドファンディング」など、お金の共有にかかわる分野は150億~250億円程度の市場規模があるとされています。

→出典:「シェアリング・エコノミー等新分野の経済活動の計測に関する調査研究」 報告書

政府が調査に乗り出すのはビジネスの新分野として注目されている証左でもありますが、シェアリング・エコノミーの市場規模は、今後も拡大が期待されています。理由としては、下記のようなものが挙げられます。

理由1. インターネットの普及により、より多くの貸し手と借り手が出会えるようになったこと

理由2. 個人同士のお金のやりとりが簡単になったこと

これらの理由の背景には、シェアリングサービスを提供する企業(「プラットフォーム事業者」とも呼ばれる)の登場や、フィンテック(金融=Financeと技術=Technologyを合わせた造語で、ITを活用した金融サービスのこと)の発達などがあると言われています。

シェアリング・エコノミーを「キラリと光るビジネスモデル」として選んだ理由

シェアリング・エコノミーが有望だと考えるポイントは、主に次の3つです。

1. シェアすることで多くの人に利益が生まれる仕組みであること

シェアリング・エコノミーに参加することで、モノやサービスの所有者も、その利用者も多くの利益を獲得したりコストを削減したりすることが期待できます。

例えば最近では、夜間だけ営業していた飲食店が、昼間の営業していない時間帯に、別の飲食店に店舗スペースを貸し出すケースが増えてきました。この場合、店舗スペースのオーナーは、持っている物件から新たな収益を得ることができます。一方、店舗スペースを借りる側も、一般より安い金額で借りることができるでしょう。シェアすることで、多くの人が金銭的なメリットを受けられるのです。

2. 世の中の価値観が「シェア」へとシフトしている

世の中の価値観は、「所有」から「シェア」へとシフトしつつあります。今は、「無駄の多い資産を購入・保有するより、必要なときだけ使う方が合理的だ」と考える人が増えているのです。これらの理由により、シェアリング・エコノミーは今後も拡大すると予想しています。

3. 支配的な企業がほぼなく、多くの企業にチャンスあり

シェアリング・エコノミーの市場は、まだまだ生まれたばかりです。そのため、絶対的な支配者として振る舞う企業はほとんど存在していません。今後の競争環境には未知数な部分も多いのですが、しばらくの間は、競争はそれほど厳しくなく、どの企業にも大きなチャンスがあると言えるでしょう。

シェアリング・エコノミーでは、どんな仕事がある?

シェアリング・エコノミーは、それ自体が単独でビジネスとしての「業界」を形成するというよりは、幅広い業界に変化をもたらす新しい「トレンド」と捉えることができます。ですので、シェアリング・エコノミーはさまざまな業界に関連し、その仕事内容は千差万別。ただし、どの業界でも以下の仕事は必要とされています。
シェアリング・エコノミーを手がける企業の中には、創立から間もなく規模の小さなところが目立ちます。そのため、1人のスタッフが複数の役割を果たすことも珍しくありません

事業企画

新たなビジネスの枠組みを考え、実現のために手を尽くす役割です。どんな人を対象にどんなサービスを提供するのか。たくさんの人々に参加を促すため、どのような仕組みを整備するのか考えなければなりません。

営業

資産などを持っている人たちにアプローチし、自社サービスへの参加を提案する役割です。例えばカーシェアリングの場合は、駐車場などのオーナーに向け、スペースの一角を使ってカーシェアリング事業を展開しないかと提案します。

情報システム

複数の人が資産を共有したり、モノ・サービスの所有者と消費者を結び付けたりするには、インターネットを通じたシステムが不可欠です。そこで、効率よく人々を結び付けたり、決済を手助けしたりするITシステムを構築する担当者は非常に重要な役割を担っています。

審査担当

マナーが悪かったり、不正を行ったりするような参加者が増えると、シェアリング・エコノミーの仕組みは崩壊のピンチに立たされます。そこで、そうした参加者により不利益を被る人が出ないように監視したり、利用者やサービス提供企業を審査したりする職種も必要です。

シェアリング・エコノミーのホットトピックス

シェアリング・エコノミーの関連分野では、このような動きが表れています。

ライドシェアに関する動きが加速

アメリカなどでは、一般の人が使う自動車に相乗りする「ライドシェア」というサービスが拡大中です。代表的なのは「ウーバー(Uber)」で、運転する側には利用料金が得られるメリットが、利用者側にはタクシーより安く移動できるというメリットがあります。
日本では法律の規制があり、一般の人が客を運送することは禁じられています。ただし、ライドシェアサービスを提供するウーバー・ジャパンとタクシー会社の第一交通産業が2019年3月に提携を発表し、一部地域でウーバーアプリを使って第一交通産業グループのタクシーを呼べる仕組みを提供し始めました。
今後、日本で実現可能なライドシェアの形が模索され、それが拡大していく可能性もあるでしょう。

スキル・時間をシェアするサービスが続々登場

民泊やカーシェアリングといった場所やモノを共有するサービスは、すでにある程度の市場規模となっています。一方、スキルや時間を共有するサービスはさほど大きくはありませんでした。ところが、余った時間を使って家事・育児・教育・モノづくりなどのスキルを役立てようとする人と、消費者をつなぐサービスが続々と登場。この分野でも、市場の拡大が期待できそうです。

シェアリング・エコノミー関連企業の探し方

最後に、シェアリング・エコノミー関連の企業をどうやって探したらいいのかご紹介します。

就職情報サイトを使う場合

リクナビなどの就職情報サイトを使って企業を探す場合は、業界から絞って探すのは難しいため、下記のようなキーワードをフリーワード欄に入れて探すと良いでしょう。

  • シェアリング
  • カーシェア
  • 民泊
  • クラウドファンディング
  • オンライン マッチング

ご自身でシェアリングサービスを利用している場合は、運営元の企業名で探すと良いかもしれません。

 

取材・文/白谷輝英
撮影/平山 諭
イラスト/安西哲平


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