【2024年版】建設業界とは?業種・職種から現状と課題、将来性まで解説【志望動機の例文あり】

建設業界には、ゼネコンをはじめとするさまざまな業種があり、手がけるビジネスもそれぞれに違います。建設業界と建築業界の違いも理解した上で、業種や仕事内容などを把握することがまず重要です。

本記事では、リクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザー(※)が、建設業界の代表的な業種や仕事内容、やりがい、将来性まで解説します。志望動機の書き方や例文も併せて紹介するので、業界研究や応募書類の作成に役立てていきましょう。

※キャリアアドバイザーは求職者のサポートを行い、リクルーティングアドバイザーは求人を出す企業の採用サポートを行う。

建設業界とは?

建設業界は、建物やインフラといった構造物を造り出す業界のことを指します。

大きくは2つに分かれ、ダムや道路、鉄道などのインフラを造る土木分野と、住宅やマンション、ビルなどの建築物を造る建築分野があります。

建設業界と建築業界の違い

建築業が手がけるのは一般住宅や商業施設、マンションやビルなどの建物のみです。

一方、建設業は、建築に含まれる住宅やビルに加え、土木に含まれる道路やダム、トンネルなどのインフラまで手がけるため、建築業と土木業の総称とされています。

建設業界の市場規模

国土交通省が令和6年1月に公表した「建築着工統計調査報告(令和5年計分)」(※)によれば、令和5年において、公共・民間、居住用・非居住用を含む建築物の総着工数は、床面積ベースで111,214(千㎡)、前年比-(マイナス)6.9パーセントと減少。新設住宅(持家、貸家、分譲住宅など)、民間非居住建築物(店舗、工場、倉庫など)共に減少傾向にあるようです(ただし事務所については増加)。

一方、工事費予定額ベースで見ると、285,652(億円)、前年比6.8%で増加となっています。今後は規模拡大に向かうことも考えられます。

※出典:建築着工統計調査報告(令和5年計分)│国土交通省

建設業界の代表的な業種7つ

ここでは、建設業界において代表的な7つの業種のビジネスを解説します。

ゼネコン

ゼネコンとは「ゼネラルコントラクター(general contractor)」の略称で、総合建設業者のことを指します。施主から工事一式を請け負い、マンション、オフィスビル、商業施設、テーマパーク、競技場などの大型建築案件を手がけ、設計・施工・研究をすべて自社で行います。また、スーパーゼネコンと呼ぶ場合は、一般的には「単独企業で売り上げ1兆円を超えていること」が指標とされています。企業によって、「土木に強い」「建築設計に強い」「どちらにも強みを持つ」などの違いもあります。

サブコン

サブコンは「サブコントラクター(subcontractor)」の略称です。施主から工事一式を請け負うゼネコンに対し、サブコンは一部の専門的分野を請け負います。建設・建築や設備関連など、企業ごとに専門とする領域は異なります。例えば、電気や空調をはじめとする各種設備の工事や、軟弱な地盤にくいを打ち込むくい工事、工事に必要な足場を組むとび工事などの領域が挙げられます。

マリコン

マリコンは、「マリンコントラクター(和製英語)」の略称です。港湾・護岸工事、海底トンネル工事などの海洋土木に特化した建設会社のことを指します。海や河川などの水中で行う工事には、専門的な知識・技術が必要です。また、作業を行うためには、起重機船、深層混合処理船などの大型専門船を保有していることが必須となります。陸上における土木を専門とするゼネコンが市場に参入することは難しいため、マリコンは競争相手が少ない特殊な領域と言えるでしょう。

デベロッパー

デベロッパーは、大型の宅地開発や新築マンション、都市開発、リゾート開発などを手がける不動産会社を指します。デベロッパーが土地を取得して開発計画を立て、建築物の設計を行い、予算を見積もった上でゼネコンに建築・建設工事を依頼するケースが一般的です。一部には、ゼネコンが建物のデザインや設計まで担当することもあります。一方、行政が主導する都市の再開発などの場合は、プロジェクトの事業責任者として委託を受け、設計や開発事業の管理を行います。

ハウスメーカー

ハウスメーカーは、住宅部門に特化した事業を手がける企業で、住宅メーカーを指します。自社開発の住宅ブランドを持ち、全国規模で営業を展開するなど、全国各地に営業拠点がある企業が多いでしょう。建売住宅を大量生産することが主な事業であるため、住宅に使う床材や壁材などを自社開発したり、規格化して工場生産したりしています。戸建て住宅に加え、アパートなどの賃貸住宅を扱っているハウスメーカーもあります。

工務店

工務店は、一般的には地域密着型で住宅などを建築する建築会社のことを指します。施主の希望や要望に柔軟に対応し、一から設計図を作るなど、規格化されていない住宅を扱うことが多いでしょう。また、新築工事のみならず、増築・改築などのリフォームまで手がける企業もあります。

設計事務所

設計事務所では、住宅の間取りなどの設計から、建築の施工管理なども行います。施主の希望に応えるーオーダーメードの住宅提案を強みとしています。

設計事務所は、大きくは2つに分類されます。「アトリエ系設計事務所」は、個人の建築家が主宰することが多く、作家性を強く反映した意匠設計を強みとする設計事務所の通称とされています。

一方、「組織系建築設計事務所」は、設計を専業とする規模の大きな建築設計事務所に対する通称とされており、意匠設計だけでなく、建築構造・建築設備・エンジニアリングシステムなどの計画・設計も手がけます。どちらにおいても、現場工事の監理を行うケースもあります。

国家・地方公務員にも建設業界で活躍する職種がある

国土交通省などの官公庁や、地方自治体などで「建築職」として働く公務員は、道路や橋・河川などの土木建築、都市開発、公共施設の建設など、公共事業における建設工事を取りまとめています。建築物の建築・維持管理、建築関連の法令管理、まちづくりの計画などに携わり、ゼネコンやデベロッパーと連携して公共事業を進めています。

建設業界の年収・社風・売り上げランキングの調べ方

建設業界の主な企業の年収は、『会社四季報』(東洋経済新報社刊行)で調べることができます。個別の売上高や事業利益などは、それぞれの企業のWebサイトでも確認することができます。

また、業界ごとの企業ランキングや業界の現状・傾向などを確認したい場合は、業界地図と銘打たれた各出版物で調べることができます。

社風や待遇、キャリアステップなどを具体的に知りたい場合は、採用ページの情報などを参考にするだけでなく、OB・OG訪問を行ったり、会社説明会に参加したりすることをオススメします。

業種によって社風・待遇・キャリアステップは異なりますし、全国に拠点があるハウスメーカーなどの場合は、地域・拠点などによっても職場の雰囲気が異なる可能性があります。実際に働いている社員から直接話を聞くことで、より実態をつかみやすくなるはずです。

就活生に向けてオフィスや店舗を見学する機会を提供している企業もあるので、活用するのも良いでしょう。

建設業界の主な職種と仕事内容

ここでは、建設業界の主な職種と仕事内容を解説していきます。

施工管理

建設工事には、予算管理から資材発注、スケジュール調整、作業員の手配まで必要であり、かつ、工事に着工する前にも施工計画が必要です。これらの業務を一手に担うのが「施工管理」ですが、以下のように、手がける工事の内容によっても担当領域は異なります。

  • 建築施工管理:ビルや戸建てなどの住宅・マンションや商業施設などの建物の工事を担当
  • 土木施工管理:道路や上下水道・電力・トンネルなどのインフラ整備や保全を行う工事を担当
  • 設備施工管理:電気・配管・空調設備・造園・電気通信などの設備に関する工事を担当
  • プラント施工管理:工場などのプラントの工事を担当

また、建物を建築した後に、保守・運用・点検・補修などを手がけるケースもあります。

設計

「設計」は、施主の要望に応え、技術力や発想を生かして設計図を描きます。設計の種類は以下の3つに分類されます。

  • 意匠設計:建築物の構造、施工、工事価格、維持管理などを踏まえてデザインを行う
  • 構造設計:建築物や土木構造物の構造について、自重・地震・風力などによって倒壊・損傷させないために、使用する建材・資材の数量を算出して図面や計算書に反映する
  • 設備設計:電気・ガス・給排水・空調などの設備について、適正な配置を計画する

研究・開発

個人の住宅、商業施設、空港や橋梁(きょうりょう)、河川工事など、多種多様な工事には、施工が難しいものや特殊な技術・道具が必要なケースもあります。

「研究・開発」の仕事では、現場の意見を取り入れたり、将来を予測したりしながら、新しい建築技術の研究・開発を行います。また、現場ごとに求められる建築技術の提案を手がけます。

企画・開発

デベロッパーには、都市開発の企画・開発を手がける仕事があります。

「企画」の仕事では、「どのようなまちづくりをするのか」というコンセプトから考え、建物や緑化などを含めた地域全体の計画を立てます。「開発」の仕事では、それらを基に建物の設計図を描いたり、外観・内装をデザインしたりします。

一方、ハウスメーカーの場合は、自社で販売する住宅商品の企画・開発を手がけます。購買層のマーケティング分析で需要を探り、コンセプトを決めてどのような住宅とするのかを考えます。

営業

「営業」の仕事は、大きくは民間営業と官公庁営業に分かれます。

民間営業は、一般企業や個人を対象とした営業です。ハウスメーカーや工務店、建築事務所の場合は、家を建てたい個人に向けた営業活動を行います。

デベロッパーの場合は、広大な土地を所有する企業や個人に対してマンションなどの建設計画を提案します。デベロッパーが自社で土地を購入し、オフィスビルや商業施設を建てて賃貸物件とした場合は、テナントを誘致して収益を上げることが必要になります。その際、ビルや施設の特徴に合わせ、入居してくれそうな企業に向けた誘致活動を行うことも営業の仕事です。

ゼネコン・サブコン・マリコンの場合は、自社が持っている技術やノウハウを不動産会社やデベロッパーなどに売り込み、施工予定の工事案件を受注します。

一方、官公庁営業では、国や自治体などの公共工事を受注するために活動します。公共工事の場合は、入札によって仕事が発注されるので、工事入札の公告の確認から入札申請に必要な書類の作成、入札会場で実際に入札を行うところまで手がけます。

また、入札に参加しそうな競合他社の情報などを調べたり、過去の落札情報の把握・分析などを行ったりすることも必要です。官公庁営業を行う業種としては、デベロッパー・ゼネコン・マリコンが挙げられます。

事務

工事に使用する建築材・備品の発注、支払い、在庫管理などにかかわる事務を担当します。

建築業の事務職は、ほかの業界の事務職と経理処理の方法が大きく異なり、1度の取引や1件の工事で動く金額が大きく、かつ、工事が長期化して年度をまたいで行われることもあります。

そのため、建築・建設業の経理に特化した「建設業経理士」という資格もあります。また、工事以外のさまざまな事務作業や手続きなどを担当する管理事務の仕事もあります。

建設業界で働く若手の社会人2人

建設業界のやりがい、魅力

建設業界で働く魅力とやりがいについて紹介します。

自分の仕事が目に見える形になる

建設業界では、自分の仕事が目に見える形になるため、そこにやりがいを感じる人は少なくありません。

業種によって手がける建築物や構造物は異なりますが、一般の住宅から大規模な公共工事や都市開発まで、実際に完成したものを見ることができるため、大きな達成感を得られるでしょう。

地図に残る仕事ができる

建築物や構造物は、ほかの業界で扱う商品に比べて巨大であり、長く残されることがほとんどと言えます。

オフィスビルや商業施設の場合は、地域におけるランドマークとなったり、地域の観光スポットとしてニュースに取り上げられたりすることもあります。高速道路や橋、港湾施設などの場合は、多くの人の生活を支えるものとなります。

また、住宅の場合は、人々が長く暮らし続けていく住まいを提供することができます。地図に残る仕事にやりがいを感じる人も少なくはないでしょう。

専門性を磨いて成長できる

建設業界の仕事では、設計や設備、建築物に関連する法律など、職種に応じてさまざまな専門知識が求められるため、専門性を磨きながら成長していくことができます。

また、業種や企業によっては、巨額の予算を投じる大規模案件に携わるチャンスもあります。

よりスケールの大きな案件にチャレンジしながら、自分の能力を高めていく喜びを感じることもできるでしょう。

チームワークで達成感を味わえる

建設業界では、社内外の多くの人々と協力し合うことが基本となります。

例えば、設計・施工に携わる職種の場合は、社外の協力会社と力を合わせて進めていきますし、営業職の場合でも、設計部門や工事部門と連携することが必要です。

チームワークで1 つのものを造り上げる達成感を味わうことができます。

頑張った分だけ、返ってくるものがある

建設業界には、インセンティブ制度を設けている企業も少なくありません。営業職だけでなく、設計や施工などの職種でも、自分の受け持ち分以上の案件を手がけた場合などは、1件ごとにインセンティブがプラスされることも珍しくはないでしょう。

また、そうした積み重ねは、昇給にも反映されます。自分が頑張った分だけ、報酬として返ってくるものがあるため、モチベーションも上がりやすいでしょう。

建設業界に向いている人、求められる力とは?

建設業界に向いている人の特徴や、建設業界で働く際に求められる力について解説します。

建設業界に向いている人の特徴

建設業界には、ビルや工場、道路、橋、ダム、水道など、大規模な建造物や社会インフラを手がける企業が多くあります。また、住宅などの建築物を手がける場合でも、自分の携わった仕事を長く残すことができます。

そのため、「自分がかかわった仕事を地図に残したい」「スケールの大きな仕事に挑戦したい」「自分の仕事で社会全体を支えていきたい」「社会的影響力の高い仕事がしたい」などの志を持つ人に向いていると言えるでしょう。

また、プロジェクトの中では、社内の関係部署やさまざまな協力会社と連携することが必要なため、チームで団結して取り組むことに喜びを感じる人にも向いています。

建設業界で求められる力

社内外の人と連携する場面が多いため、コミュニケーション力が求められます。特に、建設業界は1つの案件が終了するまでのスパンが長いため、長期的に信頼関係を築くことが重要です。

また、納期に間に合わせるためには、自分の仕事の前後の工程に携わる人たちとスピーディーに連携する力も求められるでしょう。

例えば、営業職の場合は、工期に必要な期間を踏まえ、施主の要望をなるべく早く取りまとめ、設計担当者に伝えなくてはなりません。設計職の場合は、図面を描く際、工期や予算の面から施工内容に無理がないか、施工管理などの工事担当者に迅速に確認しながら進めていくことも必要です。

自分が担当する仕事に対し、かかわる範囲や求められる質の高さなどを把握し、納期に間に合わせるためにどれくらいのコミュニケーションが必要なのかを具体的にイメージできることが大事です。

「建設業界が自分に合うのか不安」という場合は?

「建設業界の仕事内容が自分に合うのか不安」「ハードな働き方のイメージがあるため、やっていけるのか心配」と考える人もいるでしょう。

企業サイトに掲載されている先輩インタビューや会社説明会などに登場する先輩社員は、社内でも優秀な人物であったり、大きな成果を上げている人物であったりすることも多いため、自分との距離を感じてしまう人は少なくないものです。

こうした場合は、なるべく年齢の近い先輩社員に絞ってOB・OG訪問を行う方法があります。経験豊富な社員よりも自分に近い存在であるため、日ごろの働き方や仕事のやりがい・大変さ、壁を乗り越えた経験などを聞くことで、入社後の姿をイメージしやすくなるはずです。

建設業を取り巻く現状と課題

ここでは、建築業界の現状と課題を解説します。

建設業界の現状

建設業界では人手不足が深刻化しており、就業者だけでなく、技能者、技術者も減少し、高齢化が進んでいる状況があります。国土交通省が公開している「建設業を巡る現状と課題」(※)によれば、建設業就業者数(2022年平均)は479万人で、ピークを迎えた1997年と比べると約30パーセント減となっています。また、建設業就業者の年齢層については、55歳以上が35.9パーセント、29歳以下は11.7パーセントで、次世代への技術継承をどうしていくのかが大きな課題となっています。

また、昨今の国際情勢や円安などによって、輸入建築資材が高騰しているため、海外から資材を輸入している企業においては、コスト面で打撃を受けているケースも見られます。一部には、自社内でボルトなどの部品を作り、内製化を進める企業も出てきており、自助努力でコスト削減を図っています。

※出典:参考資料「建設業を巡る現状と課題」(国土交通省)

建設業界の課題

建設業界が抱えている課題について解説していきます。

深刻な人手不足と若手人材育成の遅れ

「建設業を巡る現状と課題」によれば、60歳以上の技能者は77.6万人で全体の約4分の1(25.7パーセント)を占めており、10年後にはその大半が引退することが見込まれています。 これからの建設業を支える29歳以下の割合は全体の約35.3万人で、12パーセント程度にとどまっている状況です。若手人材の育成が遅れ、技術継承ができていない状況があるため、今後は若年層の入職者を確保し、育成していくことが大きな課題とされています。

2024年問題への対応

国による「働き方改革関連法」が適用開始されたことで、「時間外労働の上限規制」に従うことが義務化されていますが、建設業界は慢性的な人手不足のため、一部の働き方改革関連法案の適用に5年間の猶予期間が設けられています。建設業界は、法案適用となる2024年4月までに労働環境問題を改善しなくてはならず、「2024年問題」として注目を集めています。

また、2023年4月より労働基準法が改正され、中小企業における60時間を超える法定時間外労働の割増賃金率を25パーセントから50パーセントへと引き上げる法案が適用されており、今後の労働時間の上限規制適用と相まって、さらなる人手不足を引き起こすことが懸念されています。そのため、国土交通省は、若手人材の育成とともに、担い手の処遇改善、働き方改革、生産性向上を一体化して進めることが必要であるとしています。

DX 化の推進

建設業界では、2024年問題に対応するために、DX(※1)を進めています。国土交通省は、ICT(※2)施工や建設生産プロセス全体で3次元データを活用し、収集したビッグデータビッグデータを集約・管理するなどの施策「i-Construction」を推進しています(※3)。

全国的な浸透を図るとともに、デジタル化も活用したきめ細やかな施工・執行管理や、地方自治体の取り組みの「見える化」を通じて、施工時期の平準化などを実現し、より生産性向上を図ることを目指しています。

※1 「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略。「進化したデジタル技術を活用し、ビジネスだけでなく人々の生活をより良い状態へ変革する」という概念を表す。

※2 Information and Communication Technologyの略。情報通信技術のこと。

※3 出典:参考資料「建設事業各段階のDXによる抜本的な労働生産性向上に関する技術開発」(国土技術政策総合研究所 社会資本マネジメント研究センター)

建設業界、今後の展望は

政府統計「建築着工統計調査(年次)」(※1)によれば、2021年以降、工事費予定額ベースにおける国内の建築物総着工数は増加し続けています。

その背景の一つに、「インフラ老朽化問題や防災インフラの充実・強化」に対する需要が挙げられます。建設物は一定の年数で設備の入れ替えや建て替えが迫られるものであり、加えて将来的に災害の発生も想定される中、今後も対策を講じていかなければなりません。政府の国土強靱化基本計画(※2)においても、防災インフラの強化は5本柱の一つに掲げられています。

さらにその中では「建設・医療を始め国土強靱化に携わるあらゆる人材の育成」が基本方針として盛り込まれており、「建設業界の課題」の項でも触れたように、「人手不足」の課題に対し、国も施策を打とうとしていることがうかがえます。これは、業界に対する期待や注目度が高いと見ることもできるでしょう。

国はまた、日本の技術力を海外のインフラ案件にも生かそうと、企業や地方自治体に海外展開を推進してします(※3)。「建設」もその取り組みが期待される分野の一つであり、橋梁(きょうりょう)設計や建設技術、道路計画を有する業界にとって、企業規模を問わず進出のチャンスとなるはずです。

そのほかにも、国内では半導体製造工場、データセンター、新幹線の設備、スタジアムやアリーナなど、さまざまな建設プロジェクトが進行しています。

こうしたことから、建設業界への需要は新規受注からメンテナンスまで、今後も絶え間なく続くと言えるでしょう。

※1 出典:統計で見る日本│e-Stat

※2 出典:国土強靱化基本計画│内閣官房

※3 出典:「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画2022」を決定│国土交通省

建設業界の動向

ここでは、建設業界の最新動向について解説していきます。

BIM/CIMなどのICT活用

「BIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)」は、 測量・調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理・ 更新の各段階においても3次元モデルを連携・発展させる仕組みです。

これにより、事業全体における関係者の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図ることができます。

また、機械土工においては、生産性の高いICT建機活用手法も検討されています。国全体で活用を推進するために、国土交通省は「建築BIM加速化事業」に取り組んでいます。

環境への配慮

国土交通省によれば、日本の産業部門におけるCO2排出量は、建設機械における排出量が約571万トンで、産業部門全体の35パーセントのうち1.4パーセントを占めています(※)。

このほかにも建設工事現場で使用されるエネルギーの燃焼により、多くのCO2が排出されている状況があります。建設施工におけるカーボンニュートラルの実現においては、施工の効率化・高度化 ・ディーゼルエンジンを基本とした燃費性能の向上・革新的建設機械の導入拡大などの項目が挙げられています。

※出典:国土交通省における 地球温暖化緩和策の取組概要

さらに、経済産業省・国土交通省・環境省が連携する形で、ZEH(※1)の普及促進にも取り組んでいます。ZEHは、「省エネ・省CO2化に取り組み、エネルギー収支をゼロに抑えることを目標とした住宅」を意味します。

国は、2020年までにハウスメーカーなどが新築する注文戸建て住宅の半数以上をZEHにし、2030年までに 建売戸建てや集合住宅を含む新築住宅の平均でZEHを実現することを目指しています。

また、大手ゼネコンでは、コンクリートにおける産業副産物の使用割合を極限まで高めた「環境型配慮型コンクリート」を開発し、適用している企業もあります。

ハウスメーカーにおいても、ITを用いた省エネルギー住宅を提供する「スマートハウス」や、AI(人工知能)やIoT(※2)を用いた便利で安心できる生活空間を提供する「スマートホーム」に積極的に取り組む企業も登場しています。

※1 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称。高断熱化と高効率設備によりできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電などによりエネルギーをつくることで、1年間で消費する住宅のエネルギー量を実質的にゼロ以下にする住宅のことを指す。

※2 「Internet of Things」の略。「モノのインターネット化」とも呼ばれ、モノがインターネット経由で通信することを意味する。

M&Aによる経営強化と高齢化に伴う後継者問題

近年の建設業界では、M&Aが活発化しています。事業エリアの拡大や人材の獲得を目的とした買収が行われたり、技術力・ノウハウなどを獲得することを目的にゼネコン同士でM&Aが行われたりしたケースが見られます。

また、設備工事会社やハウスメーカーがゼネコンを買収した事例なども登場しています。さらに、工務店やサブコンなどの中小規模の事業者は、経営者の高齢化が進む中、経営を引き継げる後継者が見つからないという問題も発生しています。

建設業界の志望動機のポイントと例文

建設業界の志望動機で意識したいポイントと職種別の例文を紹介します。

建設業界の志望動機で意識したいポイント

建設業界ではスケールの大きな案件を手がけることが多く、華やかなイメージを抱く学生もいますが、その裏側では、地道な仕事を積み重ねています

例えば、デベロッパーが都市の再開発を手がける際には、行政とやりとりしながら法的な基準をクリアするために緻密なリサーチを行ったり、近隣の住民から理解を得るための説明会を開催したり、各種工事を担う協力会社と綿密なスケジュール調整を行ったり、関係各所と地道にコミュニケーションしながら一つひとつクリアしていくことが求められます。

企業や職種によって担う部分は違っても、建設業界では安全性を守るための厳しい基準をクリアすることが求められ、地域・社会にも大きく影響するため、足元を固める地道な仕事の積み重ねが必須と言えます。

そうした部分にも目を向け、企業研究をしっかりと行うことが大事です。具体的な仕事内容をイメージした上で、「なぜその仕事がしたいのか」を明確にし、それを裏付けるエピソードまで伝えましょう

文系・営業職の例文【ハウスメーカー志望】

暮らしを豊かにする住宅を届け、多くの人を幸せにしたいと考え、貴社(※面接など、口頭の場合は「御社」)を志望いたしました。

私は、小学生の時に新築住宅に引っ越した経験があり、家族みんなでワクワクする暮らしを実現する楽しさを味わいました。あの時の幸せな気持ちを多くの人にお届けしたいと思っています。貴社は、私が生まれ育った地域に密着した住宅造りを展開されているので、地域貢献したい思いもかなえることができると考えています。また、学生時代、アパレルの接客販売のアルバイトで、お客さまのニーズを引き出し、新しいコーディネートの提案をして喜んでいただくやりがいを味わったため、さまざまな提案ができる貴社の注文住宅事業に大きな魅力を感じました。

入社後は、アルバイトで培ったコミュニケーション力を生かし、お客さまの生活をより豊かにする提案をしながら、地域に貢献していきたいです。

理系・技術職の例文【ゼネコン志望】

貴社を志望したのは、多くの人に利用される大規模建造物の設計に携わりたいと考えたためです。

幼いころから大規模な建造物が好きで、大学では建築を学び、大規模商業施設を設計する課題などに取り組む経験をしてきました。設計の際には、さまざまな商業施設に出かけ、利用する人々を観察し、何が求められているのかをイメージすることを大事にしてきました。貴社は、居心地の良い空間づくりをコンセプトとする設計を大事にしているため、利用者の姿をイメージしながら設計課題に取り組んできた自分の思想にマッチしていると考えました。

入社後も、地道にフィールドワークを重ねた経験を生かし、利用者の層や利用目的に合わせた設計で、より快適な空間づくりに貢献していきたいと思います。

文理を問わない企画・開発職の例文【デベロッパー志望】

地域の人々の暮らしを大切にしながら、より豊かなまちづくりを手がけることができると考え、貴社を志望しました。

高校時代、私の住んでいた地域が再開発され、人々の暮らしが便利で豊かになる様子を目の当たりにしました。その一方、子どものころから慣れ親しんだ公園や並木道がなくなってしまい、「残すことはできなかったのだろうか」という寂しさも味わいました。都市開発の仕事に興味を抱いてデベロッパーの仕事を調べた際、貴社では何年にもわたって地域住民の方々と話し合う機会を持ち続け、みんなが最大限に納得できるように取り組んでいると知り、その姿勢に強く共感しました。私は学生時代を通じて地域のボランティア活動に参加し、地域のさまざまな人とコミュニケーションを取りながら活動を推進してきたので、多くの人とかかわるまちづくりの仕事に、身につけたコミュニケーション力を生かしていきたいと考えています。

貴社に入社した際は、地域の人々の思いも大切にしながら、誰もが豊かに暮らせるまちづくりに貢献していきたいです。

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プロフィール
佐藤光紘(さとう・みつひろ)
キャリアアドバイザー。2017年に株式会社リクルート(旧リクルートキャリア)に新卒入社。以来、一貫して新卒の学生向けのアドバイザー業務に従事。関西のキャリアアドバイザー組織の立ち上げにも携わり、現在は全国の学生の就活サポートに力を注いでいる。

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プロフィール
西野康介(にしの・こうすけ)
リクルーティングアドバイザー。2017年に、大手ハウスメーカーへ入社後、2022年に株式会社リクルートへ中途入社。現在はリクナビ就職エージェントにて、大手企業をメインに担当。学生さまの納得感のある選択を提供できるよう、日々奮闘中。

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