住宅メーカー編

売り上げ増も中長期的には懸念材料あり。需要が高まる地域・分野の見極めが大切に

住宅メーカーとは、一戸建て住宅などの設計・施工を行う会社のこと。大手企業の中には、マンションや商業施設などを手がける企業もある。

 

一戸建て住宅は、「注文住宅」と「建売住宅」とに分けることができる。注文住宅は、施主(発注者、家を建てるオーナー)の要望に応じ、間取りや設備を決定して建てられるもの。一方、建売住宅はハウスメーカー側が土地を取得し、間取りや設備を決定して建築・販売される。注文住宅はオーダーメイドで、建売住宅は既製品と考えるとわかりやすいだろう。

 

大和ハウス工業、積水ハウス、住友林業、旭化成ホームズなどの大手メーカーは、注文住宅を中心に事業を展開している。一方、近年では飯田グループホールディングスやオープンハウスなどのように、建売住宅を中心に扱って売り上げを伸ばす企業が登場。これらの企業は、比較的低価格の建売住宅を次々に建築・販売するビジネススタイルで、「パワービルダー」と呼ばれることもある。

 

国土交通省の「建築着工統計調査報告」によると、2016年度における新設住宅着工数は97.4万戸。前年度の92.1万戸から5.8パーセント増え、2年連続でプラスとなった。背景にあるのは、節税や資産運用を目指した貸家の建築需要の高まり。2015年に相続税が改正されたことで、節税を目指す人の多くが不動産投資に注目した。また、継続的な家賃収入を期待し、資産運用の一環として不動産を保有しようとする人も少なくない。そうした層が賃貸向け住宅を求めたことで、着工数が増えたのだ。住宅メーカーもこうした流れに対応し、賃貸物件として他人に貸し出す部分と自宅部分が一体となった「賃貸併用住宅」に注力するなどの取り組みを進めている。最近では、広い賃貸スペースを確保するため、5~7階建て程度の住宅を提案するケースも多い。

 

ただし、中長期的に見ると懸念材料は少なくない。日本の総人口が減少していく中で、不動産需要は減少に向かうと考えられる。また、空き家の増加も指摘されており、新たに家を建てずに既存の住宅で安く暮らすことを選ぶ人も増えると想定されるからだ。そこで、住宅メーカーはさまざまな方向性を模索している。

 

まず1つ目は、住宅ニーズの高いエリアへの注力だ。地方で人口減が加速しているのに対し、都市部では人口が増加傾向のところもある。各メーカーには、これから需要が高まりそうなエリアを見極め、そこで事業基盤の強化を加速することが求められるだろう。ただし、こうした地域ではライバルとの競争が激しくなるため、設計力や提案力などで差別化を図ることが不可欠だ。

 

2つ目の方向性は、今後ニーズが拡大しそうな建物への対応力を高めていくことだ。例えば、介護サービスを提供する施設は、今後ニーズが高まると予想される。そうした建物を他社に先駆けて数多く手掛ければ、豊富な実績とノウハウを蓄積でき、施主からの信頼を得やすくなるだろう。

 

そして3つ目が、自社住宅の機能性をアピールしていくことだ。例えば、省エネ性能に優れた家であれば、冷房・暖房にかかる電気代が抑えられる。また、家庭のエネルギー利用を管理するHEMS(下記キーワード参照)を導入し、経済性や快適性を高める取り組みも盛ん。高付加価値路線で差別化を図る動きは、技術力の高い大手を中心に活発化している。

 

「リフォーム」「リノベーション」(下記キーワード参照)需要の取り込みを狙う動きもある。従来の住宅メーカーは、「住宅を建て、販売したらそれでビジネスは終了」という傾向があった。しかし現在は、一つの家を修理しながら長く住み続けたいと考える人が増えており、リフォーム・リノベーションへのニーズが高くなっている。住宅メーカーは、最初の家を建てた事業者という立場上、施主からの信頼を得やすいポジションと言え、リフォーム・リノベーション分野での事業拡大も期待できそうだ。また、所得が伸び住宅を求める層が増えているアジア新興国などに進出し、売り上げ拡大を目指す住宅メーカーもある。

 

住宅メーカー志望者が知っておきたいキーワード

HEMS
Home Energy Management Systemの略で、「ヘムス」と読む。センサーやITシステムなど活用して家庭内で使われるエネルギーの状況を可視化し、効率的に管理・制御することで、エネルギー消費を抑制する仕組みのこと。
リフォーム、リノベーション
リフォームとは、建物に生じた不具合を元に戻したり、小規模な改良をしたりすることを指す。一方リノベーションは、建物全体の価値を大きく高めるための大改修を指す。両者の間に明確な区切りはないが、一般には、リノベーションの方がリフォームより大規模なことが多い。
ZEH
Zero Energy Houseの略で、「ゼッチ」と読む。HEMSなどによって家庭内のエネルギー消費を抑え、かつ、太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入することで、エネルギー消費の収支をゼロ以下にすることを目指した住宅のこと。省エネルギーの観点などから、日本政府が普及の後押しをしている。

このニュースだけは要チェック<海外市場の取り込みは成長のカギを握りそう>

・飯田グループホールディングス傘下の飯田産業が、インドネシア住宅国営企業の連結子会社と合弁会社を設立。インドネシアにおける戸建分譲住宅事業を推進する方針を明らかにした。同社は、すでに、ロシア、米国、フィリピンにも進出を果たしている。(2017年11月27日)

 

・積⽔ハウスが、全戸にZEHを導入したマンションの分譲を開始。LED照明の導入や断熱性の向上などによってエネルギー消費を抑制し、太陽光発電システムと燃料電池を導入することでZEHを実現した。このように、省エネ性能などで他社住宅との差別化を図ろうとするケースは今後も増えそうだ。(2017年11月11日)

 

この業界とも深いつながりが<省エネ実現にはITや電子部品が不可欠>

IT(情報システム系)
ZEHなどの省エネ住宅には、ITを使った管理システムが欠かせない

電子部品メーカー
高機能な住宅には、たくさんのセンサーや電子部品が使われている

電力
全てのエネルギーを電力でまかなう「オール電化住宅」分野で協力
 

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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