人事採用のプロがアドバイス。 もし「就活ハラスメント」に遭遇しそうになったら…?

多くの就活生は、OB・OG訪問などで、社会人と接点を持つ機会が増えることでしょう。OB・OGと話すことで、企業や業界を知るきっかけになります。しかし、なかには就活で知り合った社会人に個人的に呼び出されたり、採用の可否を匂わせつつ男女関係を迫られたりするという悪質なケースも報道されています。そのような、いわゆる「就活セクハラ」に遭遇しそうになったら、学生はどう対処すれば良いのでしょうか。採用と就活の最新情報に詳しい曽和利光さんに聞きました。

株式会社人材研究所 曽和利光さん写真プロフィール曽和利光(そわ・としみつ)株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。最新刊『人事と採用のセオリー』(ソシム)も好評。

OB訪問をお願いしたら、終電間際に呼び出され…

2018年秋から本格的な就活を始めたという大学3年生のA子さん。大学のキャリアセンターで、志望企業に勤めるOBを探し当てて連絡を取り、OB訪問を依頼しました。ところがそのOBが面会を指定してきた時間は大変遅く、話が十分聞けなかったので、もう一度会うことになったのですが、今度は終電間際に呼び出されました。「仕事が忙しいのはわかりますが、会うのが常に深夜で、男女の関係を求められているとしか思えなくて。結局、連絡を取るのをやめてしまいました」とA子さん。「ほぼ本命の企業だったのに、選考を受けるのが怖くなって途方に暮れています」。

A子さんの場合は事が深刻になる前に関係を断つことができましたが、このような就活セクハラは、過去に何度か事件にもなっています。例えば、ある企業の採用試験を受けた女子学生が、幹部社員から採用の見返りに不適切な関係を迫られたというケース。また、就職説明会に参加した女子学生が、人事採用の責任者から「作文を添削してあげる」とホテルの一室へ呼び出され、関係を迫られたという事件も世間を騒がせました。

企業の採用する側であるという優位な立場を悪用したセクハラは、就活の妨げになるだけでなく、被害者にとって心の傷になったり、ひいては将来の夢をあきらめることにもなりかねません。万一自分の身にこうしたことが起きたとき、就活生はどのように対処したら良いのでしょうか。

「就活ハラスメント」に悩む就活生のイメージ画像

今の企業は就活セクハラ防止に細心の注意を払っている

「確かに過去には、社会人が就活生と深夜までお酒を飲むような、かなりルーズなリクルーティングのスタイルも多々見受けられました。けれど最近は、企業側がそういったことにかなり神経をとがらせてきています」。そう説明してくれたのは、人事として新卒採用を20年担当し、最近の就活事情にも詳しい、株式会社人材研究所・代表取締役社長の曽和利光さん。

今の時代は、就活生に対して少しでもセクハラが疑われるような行為をする社員を、企業が許すことはまずありえません。というのも、ひとたび問題が起きたときに、社会の猛烈な批判にさらされ、会社の評判や信用が失墜するリスクがあまりにも大きいからです。たとえ一社員の行為であっても、企業全体が火の粉を浴びることになりますから」(曽和さん)。

とりわけ最近は、社員の紹介によって新たな社員を採る「リファラルリクルーティング」という手法が新卒採用でも注目されています。リファラルリクルーティングを行えば、必然的に社会人と学生がコンタクトする機会も増えることになります。ですから、万が一にもこうしたトラブルを回避するために、厳しくルールを設ける企業が増えています。

「例えば異性の学生との面会は日中にオープンな場所で行うとか、何時以降は面談禁止にするとか、就活生と二人きりでの飲酒は禁止する、などです。遅い時刻に会う場合は必ず男女の社員が一緒に行動する、といったルールを決めている企業もあります」(曽和さん)。

従って、世の中全体でいえば就活生に対するセクハラ行為が発生するリスクは以前よりも減っているのではないかと曽和さんは推測します。

おかしな要求は毅然(きぜん)と拒否し、企業に配慮を申し入れよう

「ただ、残念ながら企業の管理外でこうしたことを行う不届きな人をゼロにするのは難しいところがあります。けれどもはっきりと言えるのは、就活を目的として会った社会人におかしな行為があれば、きっぱり拒否して構わないということです。そもそも許されないことですから、企業側にも『こんなことがありました』と伝えるべきでしょう」と曽和さん。

でも、採用「される」側の就活生の立場は、相対的に強くはありません。ハラスメントに対して抗議するのはやはり勇気がいるものです。

「もし選考で落とされたら、入社後に何か言われたら…などと不安に感じる場合は、別のOB・OGを探したり、見つからなければ企業人事にお願いして誰かを紹介してもらうなど、相手にバレずにこっそり配慮するように企業にお願いすればいいと思います」(曽和さん)。

「そうした問題のある社会人は、基本的に会社の中でもダメな人で社内での影響力も強くないはずです。ですから学生が後のことを気にする必要は何もありませんし、正しく行動したことが就活にマイナスに働くという心配もないでしょう」と強調します。

ただ、まれに悪意のある人物にかかわってしまった場合、拒否されたことを根に持って、会社に対して悪いフィードバックをする可能性もないとは言えません。

「そうした最悪のケースを想定すると、その気もないのに恋愛関係を迫られてから気づくのでは遅いかもしれません。少しでも“この人危ない”と感じたらそれ以上近づかず、すぐに関係を切りましょう。いまどきの採用コンプライアンスの基準で言えば、そうした行為は明らかに“アウト”なのだと、就活生側もしっかり認識しておくことが大事です」(曽和さん)。

就活ハラスメントは決してひとごとではなく、「いつ自分の身に起きても不思議ではない」と心構えをしておくことが大事です。そして万一被害に遭いそうになったときは、何よりもまず自分の身の安全を優先に。一人で悩まず周囲に相談したり、起きている状況を整理したうえで、勇気を持って対応するようにしましょう。

取材・文/鈴木恵美子
撮影/刑部友康

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