都内某所にひっそりたたずむ、知る人ぞ知る会員制のマンガ専門貸本屋「ゆたか書房」。会員の中には、店主のゆたか まりさんに人生相談をする人も。悩みに答えるアドバイスと共に、オススメのマンガを紹介してくれると聞きつけて、はるばる店を訪ねる就活生もいるんだとか。
就活や「働く」ことに悩んでいるあなたの意識を変えてくれるかもしれない、とっておきのマンガを、店主の独断と偏見で紹介します。
社会人ライフは、思っているより自由だし、新たな出会いもたくさん待っている!
就活を始める時期は人それぞれ。インターンシップに参加したり就活準備を進めたりする人もいる一方で、「まだ学生でいたい!」「就活を始めたらマジメな生活に一直線になっちゃう。そんなの嫌!まだ遊んでたい」と思っている学生さんは多いもの。そこで今回は、就活&社会人ライフがちょっと楽しみになるような、そんなマンガをオススメするよ〜!
表紙に登場している二人の 男女を中心に、いろんな立場の社会人たちの日常の中で起きる、ちょっとした“あるある”を描くオムニバス・ストーリー。仕事で悔しかったことやうれしかったこと、恋人と過ごすささやかな幸せや、ずっこけ話など、クスッと笑えたり、学生でも「わかる!」と共感できるエピソードが満載。同じ職場で働く一組 の男女が恋に落ちるホンワカすてきなラブ・ストーリーも必見。
社会人になったら、「自由がなくなる」わけじゃなく、むしろ「自由の幅」が広がる!
学生さんの中には、「社会人ライフ=仕事一辺倒で、つらくて苦しい」と考えてる人も多いよね。そんな人は、「就活なんて、地獄への扉を開く行為じゃないか!」なんて思ってたりしない?
社会人になったら、「仕事に縛られて自由がなくなる」「会社のために自分の個性を殺さなきゃならない」「社会のルールに迎合する日々が待ってる」って?
「就活は、そんな地獄のような生活に向かう最初の一歩」だって?
…いやいや、そんなことはないんですよ。
会社は軍隊でも刑務所でもないし、まして地獄みたいなところなんかじゃないからね?
鬼軍曹にしごかれるわけでもなく、厳しく見張る看守がいるわけでもない。トゲトゲの付いた金棒で問答無用にぶったたいてくるような地獄の番人もいないからね?
想像以上にみんな和気あいあいと働いてたりするもんだし、上司や先輩ともフツーにいろんな話をしたりする会社もあれば、仕事だけじゃなくて、恋愛の相談までできちゃうほど仲がいい職場もある。アフター5や休みの日にまで一緒に遊んだりしてる先輩・後輩も結構いるもんなのよね〜。自分の個性を殺す必要もなければ、プライベートがなくなるわけでもない。
そう、学生さんと一緒で、社会人も仕事で笑ったり泣いたりずっこけたりする一方、恋愛や趣味もこれまで同様に楽しんでいるんですわ。
確かに、学生時代と比べれば、自由になる時間は少なくなる。
んでもって、学校の課題や自分の趣味とはまた違って、仕事には責任が発生するのも事実ではある。
けど、それってさ〜、「やってることのステージが変わる」ってだけなのよ。
キミたちは小・中・高・大学というステージを経験する中で、授業の時間が長くなったり、課題の提出や単位の履修が自己責任になったりと、すでに変化を経験してきてるよね?
社会人もそれと同じ。別に今までの自分を捨てる必要はないし、変化にも次第に慣れるものなのよ。
さらに言えば、これまでの学生ライフとは違うステージだからこそ、たくさんの新しい出会いや面白いことが待ってるわけ。いろんな世代や業界の人に出会えたり、仕事を任される達成感を味わったり、成長していく中でできることが増えていく楽しさを実感したり。それから、自分でお金を稼ぎ、それを好きなことに使えるようにもなるのだよ。
つまり、社会人ってのは、自由がなくなるわけじゃなくて、本人次第で自由に楽しめることの幅をどんどん広げていけるものなんだよね。
▲デブで眼鏡の大森さんと、引っ詰め髪で眼鏡の渡辺さんは、職場の同僚から恋人同士に。二人が運命を感じたのは、一緒に飲みに出かけた時に「おでんを頼む順番が一緒だったから」。彼らの恋愛模様を軸に、周囲にいるいろんな社会人が登場し、ちょっと笑える「社会人あるある」が描かれている。
「運命の出会いが待ってるかも」と思えば、自分と相性のいい会社を探したくなるはず!
「そうは言っても、やっぱりまだ就活始める気になれない」「本当に社会人って自由なの…?」と いう人に向けて、モチベーションをアップする考え方を話しておこうかな。
さっきもちょろっと書いたけど、社会人ライフって、「新たな出会いの宝庫」だったりするんだよね。先輩社員や同期はもちろん、取引先や一緒に仕事する協力会社の人々など、仕事を通じての出会いって、本当に多種多様なのだ。
その出会いの中から彼氏・彼女ができたり、一生付き合える友人や愉快な遊び仲間ができたりする人もいるし、生涯の相手に巡り合って結婚する人も当然いる。この先、何らかの「運命の出会い」が待ってるかもしれないって思ったら、かなり楽しくない?
だからこそ!
自分に合ってる会社を探すことって大事だと思うのよね〜。
例えば、趣味とか好きなものが同じなら話が合うし、相性も良かったりするじゃない?それって、自分が興味を持てる事業をやってる会社の方が、相性のいい人がいる可能性も高いってことだよね。今の時代、「残業なんてしたくない!」って学生さんも多いけど、毎日定時に帰れたとしても、全然話が合わない人たちと一緒に働くのってキツくない?
さらに言うと、同じスポーツをやる集団でも、バリバリ体育会系の部活と、仲良く楽しもうっていうサークルでは、そこにいる人の考え方も雰囲気も全然違っちゃうものだよね。だから、会社選びでも、事業内容だけじゃなく、働く人の雰囲気や社風に自分が共感できるかどうかも大事。
インターンシップって実際に職場を見たり、社員と話せたりするから、まさにそれを体感できるわけさ。
それでもって、インターンシップや会社説明会には学生同士の出会いも多いわけだ。普段なら出会わない他校の学生と仲良くなって就活の悩みを話せる良き友人になったり、時には恋に発展しちゃったり…、なんてこともあるもんなのだよ。
そんなわけで、今回のオススメは、働く社会人たちのささやかな日常と悲喜こもごもを描いたマンガ、『おいピータン!!』ですよ〜。
会社の同僚たちとたわいもない話で盛り上がったり、仕事の失敗や失恋からたくましく立ち直ったり、職場での出会いが恋愛に発展したり、恋人とささいな出来事で愛を深め合ったり…。中には大人だからこその「恋人あるある」「結婚あるある」などのエピソードも。いろんな社会人のホンワカ笑えるエピソードを読めば、「社会人って思ってたよりも自由で、みんな自分らしく仕事も恋も楽しんでいるんだな」ってことがわかるはず。
キミたちが自分らしい社会人ライフを送れるかどうかも、運命の出会いを引き寄せられるかどうかも、これからの就活次第!まずはこのマンガを読んで、期待を膨らませていこう!
オススメのひとコマ
社会人も人間らしく腹を立てるし、我慢ばかりしてるわけじゃない
これは、女性社員が上司を見直した時のひとコマ。取引先でお尻を触られるというセクハラに遭い、ついつい相手を殴ってしまった彼女は、上司の大森さんと一緒に謝罪に行くことに。
だけど、彼女は納得がいかず、「あやまってんじゃねーよ。もっと頼れると思ってたのに」と心の中で憤慨するのね。さらに、なぜかセクハラした男性に「近所のうまいラーメン屋はどこか」と聞く大森さんに怒りMAX!
二人は謝罪の帰り道にそのラーメン屋に行くんだけど、店を出た直後、大森さんは「アイツとはもう仕事の縁を切っていい」と言うのよ。その理由は、「こんなラーメン屋をうまいと思っているようじゃ、本人にもセンスがない」から。
彼はいつも、判断が難しい仕事相手にオススメのラーメン屋を聞くそうで、「おいしかったらイヤなやつでもガマンしてみる。おいしくなかったらガマンしない!!」と決めているんだとキッパリ!女性社員は、そんな上司を「カッコいい」と見直すのだ。
あくまでもマンガの中の話だから、セクハラ対応の良し悪しは置いとくとして、まあ、この上司のマイルールっぷりはなかなかのもんだよね。
学生さんには「社会人になったら、波風立てないために自分を殺すもの」というイメージを持つ人もいるけど、マンガだけでなく、現実の世界も実はそうでもないんだよね。もちろん、仕事をうまく進めるためには、理不尽なことにも耐えた方がいい場面もあるっちゃ、あるけどさ。
だけど 、大森さんのように、部下をかばってその場を丸く収めつつも、大人になり過ぎずに人間らしく腹を立て、自分で判断を下す社会人もたくさんいるのよ。
ただ、社会人が実際にどんな感じなのかも人それぞれではあるし、会社によっても職場の雰囲気は結構違うものだったりはするのよね。つまり、会ってみて、自分で「あ、こういう人たち、好き」「こういう人と働くのは無理!」を確認してみないとわからないってこと。
会社説明会やOB・OG訪問で先輩社員の話を聞いたり、インターンシップに参加して職場の雰囲気や上司と部下がどんな会話をしているのかを観察してみたりするといいんじゃないかな。
(c)伊藤理佐/講談社
都内某所で50年以上続く貸本屋「ゆたか書房」を引き継いだ3代目店主。毎月、50〜70冊程度の新刊マンガを入荷し、年間1000冊前後のチェックを続けている。2016年、旧店舗立ち退きにて、新店舗への移転を果たし、現在も会員の無理難題に応えながら、面白いマンガをオススメし、広めていくことをテーマとしている。(※会員制につき、いちげんさんへのマンガの紹介はお断りしています)
・就活始めるのがユーウツな人には、『重版出来!』
・「就活にイマイチ本気になれない…」人には『BLUE GIANT』
・「社会人が怖い」人には『中間管理録トネガワ』
・選考がうまくいかずに落ち込んでいる人には、『フットボールネーション』
・「華やかな仕事って楽しそう」と思っている人には、『チャンネルはそのまま!』
文/ゆたか まり