都内某所にひっそりたたずむ、知る人ぞ知る会員制のマンガ専門貸本屋「ゆたか書房」。会員の中には、店主のゆたか まりさんに人生相談をする人も。悩みに答えるアドバイスと共に、オススメのマンガを紹介してくれると聞きつけて、はるばる店を訪ねる就活生もいるんだとか。
就活や「働く」ことに悩んでいるあなたの意識を変えてくれるかもしれない、とっておきのマンガを、店主の独断と偏見で紹介します。
華やかな仕事の裏側にも、地道な努力や作業がある。まずは仕事の全体像を知ることから始めるべし!
「どうせ働くなら、有名企業に入りたい」「なんとなく〇〇って仕事に憧れる」と思っている就活生もいるのでは?でも、表面的なところしか見ていないままだと、入社してから「なんか思ってた感じと違ってた」となる可能性もあるし、仕事全体を理解していなかったら選考突破も難しいはず。そこで今回は、華やかな仕事の「裏側」をイメージしやすくなるマンガをオススメするよ〜!
主人公の雪丸花子は札幌のローカルテレビ局、北海道☆(ホシ)テレビの新入社員。天然オトボケな彼女は謎の採用枠「バカ枠」で入社。そんな彼女を中心に、報道番組や情報番組の部署、編成部、営業部、アナウンス部、さらには編集、映像、音効(音響効果)などに携わる人々が登場し、笑えるエピソードの中でテレビ業界のいろんな仕事の裏側を描いている。
「ユーザー目線」のイメージだけじゃ、仕事の全体像はつかめない!
学生さんにありがちな考えの一つが、「地味な仕事より、華やかな仕事の方が楽しそう」ってことなのよね〜。もちろん、楽しさはあるだろうけど、どんな仕事にも裏側というものがあるわけだ。
もしキミが飲食店でバイトを経験したことがあるなら、「いらっしゃいませ〜」って接客してる時間だけじゃなく、開店の数時間前から料理の仕込みや食材の発注をしたり、店先やトイレの掃除もしたり、閉店後にお金を数えるレジ締めをしたり、な〜んていう裏側も見ているよね。
それって、テレビ局や広告代理店、出版社みたいな華やかな業界の仕事にも同じことが言えるのよ。番組や広告、出版物を楽しむだけの「ユーザー目線」では、裏側は見えてこないのよね。
例えば、毎日放送されてる情報番組の裏側を想像してみようか。
いろんなお店のグルメを紹介するコーナーがあった場合、まず、話題性のあるお店を探し、取材させてもらえるようにお願いする仕事が発生するよね。
台本や撮影シーンの構成を考えることはもちろん、出演するタレントやアナウンサー、撮影部隊のスケジュール調整も必要だし、取材が終われば、何十分も撮影した動画の中から必要なシーンを選んで短く編集し、BGMやテロップをつける作業が待っているわけだ。
さらに言えば、番組が間違いなくちゃんと放送されるように技術面を支えたり、トラブル対応に備えて見守ったりする仕事も必要。放送終了後には視聴率の分析をしたり、番組の編成を見直す仕事もある。そして、番組を作るためにはお金が必要であり、スポンサーを集める仕事も重要なのだ。
たった数分のコーナーだったとしても、放送できる形にするまでには膨大な時間と手間がかかっているし、なおかつ、いろんな仕事をする人がかかわっているんだよね。
そして、テレビ局に内定しても、入社後のキミがどんな仕事を担当することになるかは、配属次第なところが大きい。それによって、どの番組を手がけるのかも変わってくるし、あるいは番組制作とはまた違う仕事に携わる可能性もある。
まあ、ひと言で言っちゃえば、「どんな仕事も楽しいだけじゃない」ってことなのよ。そんでもって、「憧れの業界や企業に入れても、やりたいことと違う仕事をする可能性も全然ある」ってことだわね。
ただ、がっかりするにはまだ早い!
リアルを知ることが、「本当にやりたいこと」へと近づく第一歩になるってこと、今から説明するよ〜!
▲入社後、報道部の記者となりさまざまなドジを踏んで周囲を混乱させる花子だが、いつも一生懸命。ペットショップから脱走したトカゲのニュースを追えば、なぜか自分が捕獲してしまうなどのハプニング(?)も。
憧れの世界の裏側を知れば、本当にやりたい仕事かどうかが見えてくる
さて、ここで皆さんにあらためて質問するわ。
もしも業界や仕事の全体像を把握せず、イメージや憧れだけで志望したなら、その結果、どうなると思う?
おそらく選考受けても、単なる「記念受験」になっちゃうだろうね。
華やかな業界は当然のごとく競争率も高いわけで、本気で業界研究や企業研究してくる学生さんも多いものよ。そこを「なんとなく憧れてるんです」で勝ち抜けるかって言ったら、ほぼほぼ無理ゲーじゃない?
「でもでも、運が良ければ内定もらえるかもしれないじゃん」って?
うん、人によってはその可能性もあるよね。本人のキャラや勢いだけで入社できる人もいるかもしれない。だけどね~、華やかな部分だけしか見てない場合って、入社後に「こんな仕事だと思わなかった」とギャップを感じて辞めちゃう人も多いんだよね〜。
じゃあ、憧れだけで終わらせず、「その仕事がやりたい」「あの業界に入りたい」「この会社で働きたい」を実現するためにはどうすればいいかって?
答えは単純明快!
結局のところは、「裏側」を知って、「そこで働く姿」をイメージすることが大事なんよ。そうすれば、そもそも本当に興味が持てる仕事なのか、目指すだけの納得感があるのかどうかがわかるんじゃないかな。
もしキミが「キラキラ感ある仕事」でチャラつきたいだけだったり、友達に自慢したいだけだったりするなら、目指したところで、あまりいい結果にはならないだろうね。
さらに興味を持っていろんなことを調べていけば、同じ業界でもいろんな仕事があることも自然にわかるものなのよ。
そうすると、例えば「テレビ局じゃなくても、制作会社やリサーチ会社でも番組には携われるんだな」てな感じに選択肢が広がったり、「自分はバラエティーよりも報道がやりたい」てな具合に目標が定まってきたりするんだよね。
そして、そういうことをちゃんと考えたプロセス自体が、選考に大きく影響してくるんだな。「なぜこの仕事がやりたいのか」っていう志望動機も具体化されるだろうし、面接で話す内容にも説得力が増すってもんなのだよね〜。
そう、結果的に「やりたい仕事」に近づいていけることになるんですわ。
てなわけでね、今回は「一つの業界や企業、そして仕事の中でも、こんなにいろんな裏側があるんですね」ってことがわかるマンガ『チャンネルはそのまま!』を紹介するよ〜!
主人公は、ローカルテレビ局の新入社員、雪丸花子。入社後、報道部門に記者として配属されるんだけど、ド天然でバイタリティーいっぱいの彼女は、規格外の行動でドジを踏みまくり、周囲を混乱の渦に巻き込みまくるのよ。
でも、いろんな仕事を任されながら花子が引き起こす笑えるエピソードを通じて、「記者や番組制作の仕事って、地味な作業もめっちゃ多いんだな」ってことがわかるはず。
ほかの部門に配属された同期の仲間たちも登場し、「ひと口にテレビ局と言っても、いろんな部門のいろんな仕事があるものなんだな」ってことも見えてくるよ!
テレビ業界だけでなく、ほかの業界にも通じる内容だから、自分が「いいな」と思っている業界に置き換えて、その裏側を想像してみるといいかもね!
「憧れ」だけで終わらせないためにも、これを読んで、働くイメージ膨らませてみない?
オススメのひとコマ
カッコよく見える職業にも、やらねばならないつらい仕事はある
これは、殺人事件の報道にかかわるエピソードの中のワンシーン。花子は上司から「被害者の“ガンクビ=顔写真”を手に入れてこい」と命じられ、被害者の親戚や友人、仕事関係者の元を訪ねて回るんだけど、「他人の不幸をメシのタネにするなんて!」と怒鳴られ、追い返されてしまうんだよね。
他局が写真を手に入れる中、おくれを取っていることを上司に叱られた花子は、「他局と競争することがそんなに大事なことなのか」「取材しても誰も幸せにならないのに」と疑問を抱く。
花子はこの後、写真を入手したんだけど、さらに「現場から逃げた重要参考人の両親からコメントを取ってこい」と言われてしまうわけ。そこで両親の家に向かうんだけど、そこにはすでに他局の報道陣が押し寄せていたのだ。
インターホンを押しまくり、何とかコメントを取ろうとする姿にドン引きした花子は、「両親だって何を話したらいいかわからないはず」と率直な気持ちを上司に伝えたけれど、「報道記者なら報道魂を見せてみろ」と言われてしまうのよ。
それでも彼女は、両親の気持ちを尊重しようと考え、手紙を書いて自分の思いを伝えるという意外なアプローチをかける。そして、報道陣の中でただ一人、インタビューに成功するのだ。
上司は苦しみながらも自分なりの方法を見つけた花子を、「報道記者が皆通る道」と見守りつつ、「彼女が感じた疑問は、この仕事をする上で本当は忘れてはいけないことなのだ」と思うんだよね。
報道記者という一見カッコよく見える職業にも、カッコいいだけじゃないつらい仕事はあって、そして、そこにはちゃんと意味があるってことなんだよね。
これはもちろん、すべての仕事にも言えること。やりたいことをやるためには、やらねばならないこともあるのだ!キミもそこを理解した上で仕事を選べば、きっと長く働き続けることができると思うよ〜。
(c)佐々木倫子/小学館
都内某所で50年以上続く貸本屋「ゆたか書房」を引き継いだ3代目店主。毎月、50〜70冊程度の新刊マンガを入荷し、年間1000冊前後のチェックを続けている。2016年、旧店舗立ち退きにて、新店舗への移転を果たし、現在も会員の無理難題に応えながら、面白いマンガをオススメし、広めていくことをテーマとしている。(※会員制につき、いちげんさんへのマンガの紹介はお断りしています)
・就活始めるのがユーウツな人には、『重版出来!』
・「就活にイマイチ本気になれない…」人には『BLUE GIANT』
・「社会人が怖い」人には『中間管理録トネガワ』
・選考がうまくいかずに落ち込んでいる人には、『フットボールネーション』
・「就活しないで遊んでたい」と思っている人には、『おいピータン‼』
文/ゆたか まり
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